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ワンポイント英語塾コミュの76. エンティティ

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また前回から間が開いてしまいました。
すみません。頑張ります。



今回は、"entity" です。

ちょっとカタいビジネス英語の話ですが、お付き合いください。



この単語、最近のビジネス文書や法的文書、財務・会計系の文書などで
非常に良く使われます。

便利な言葉なので、私も良く使います。



が、なかなか日本語に訳しづらい単語でもあります。

ぴったり来る概念というか言葉が、いまいち日本語にないんですよね。


辞書を引くと、「実在するもの」、「実体」 といった訳語が出てます。

でも日本語の文書で、「実在」 とか 「実体」 とかふつう、使いませんよね?



では、どう訳すか。


答えを書いてしまうと、「事業体」 という訳が多いようです。

国際会計基準の翻訳などでは、定訳としてこれを当てています。


ただし他の単語と組み合わせて使う場合は、この限りではありません。
これは後述します。



次に何を指すかですが、まず、

「ビジネス文書では、だいたい 「会社」 を指す」

と理解してかまいません。

9割方、会社です。

entity ≒ company です。



では、なぜ 「だいたい」 なのか。

言い換えれば、なぜ company ではなく、entity なのか。



それは、会社と似た性質を持ちながらも会社とは呼べない、
別の形態をもった何かを含めた総称だからです。



以下、解説。



まず会社は、法人 (corporation) です。


なので特に米国では、事業法人 (business corporation) である
株式会社のことを一般に、corporation と呼ぶ場合が多くあります。


しかし、事業を行うための組織は、会社だけとは限りません。


たとえば、米国には partnership という制度があります。
Limited liability partnership (LLP) という制度もあります。

これらは会社とは異なり法人格を持ちませんが、法律事務所や、
会計事務所、コンサルティングファームなどの専門家集団の場合、
意思決定や組織変更の手続きが会社に比べて容易なことなどから、
会社ではなくこうした形態を取っているところがあります。


また会社を設立せず、個人事業主 (sole proprietorship) として
事業を営む人もたくさんいます。これは日本でも同じですね。


上記のように会社以外の事業体も含めて総称したい場合に、
business entities と呼ぶことがあります。



次に、事業を行う目的ではなく、財務的な目的などから、
ペーパーカンパニーのようなものを設立することがあります。

たとえば話題のサブプライム問題でも出てきますが、
一定の資産を証券化 (securitization) という手法を用いて
譲渡しやすくしたり、資金調達の裏づけにしたい場合に、
いわゆる特別目的会社 (special purpose company, SPC) を
設立する場合があります。

形だけの会社を作ってそこに資産の所有権を移転し、
その資産を担保にして債券を発行したりするんですね。
(いわゆる資産担保証券 (asset backed securities, ABS)。)

これは別に違法ではありません。
そのための特別な法律もあるぐらいです。

この「特別目的会社」、日本ではSPCという呼称がポピュラーですが、
実際には会社という形態だけではなく、信託 (trusts) などの
会社以外の形態を取る場合もあるので、国際的には、
SPEs (special purpose entities) という呼称がスダンダードです。

日本語に訳せば、「特別目的事業体」 ということになります。

(厳密には事業をやるための器ではないので、「事業体」 という訳は
おかしいといえばおかしいのですが、前述の通り entity の訳語として
「事業体」 が一般的になってきているので、こうせざるを得ません。)


この SPE 、数年前に米国で大きな問題となったエンロン事件や、
日本のライブドア事件でも出てきたので、一部には粉飾決算などの
諸悪の根源みたいに思われている向きもあるようですが、
SPE や証券化といった財務手法自体は非常にポピュラーなもので、
実は日本でも非常に多くの大手企業が資産運用や資金調達に
当たり前のように活用しています。

でもその実態は、会社形態の場合もあり、そうでないものもあり。

一概に指すことができないので、entity と呼ぶのです。



さて、この entity という単語の便利なところは、
SPE もそうですが、他の単語と組み合わせて使いやすいところ。


たとえば、legal entities という表現があります。

これは、「法人」 と訳されることが多く、また実際に多くの場合、
やはり会社などの法人を指す場合が多いといえます。

厳密には、法人格を持たない (unincorporated) とされる
partnerships 等も legal entities に含まれるということなので、
「法人」 ではなく 「法的主体」 と訳すべきものですが、
そのあたりは日本と米国で法制度も異なり、わかりにくいので、
契約書等で厳密な翻訳が要求される場合は 「法的主体」 と訳し、
一般の文章であれば、「法人」 と訳しても大きな問題はありません。


(※ 初稿において、上の箇所につき誤った説明を記載していました。
そのため、2008年1月11日、本稿を修正させていただきました。
誠に申し訳ございません。詳細は下のコメントをご参照ください。)



そのほか、 entity / entities を使った表現として見られるのは、

accounting entities (会計主体: 会計単位となる企業や企業グループ等)

reporting entities (報告事業体: 報告元となる事業体)

public entities (公的事業体、公共団体)


・・・などなどがあります。



こうしてみると、"entity" 単独ではどう訳したら良いのかわかりませんが、
組み合わせた言葉の意味は何となく、わかりやすいと思いませんか?




最後に、この entity をIT用語辞典 e-Words (http://e-words.jp/)で
調べてみると、次のような定義が出てきます。


「一単位として扱われるデータのまとまり。なんらかの標識に対し、その実体であるデータの集合を指す。XMLやJava、データベース等で用いられる用語である。

 プログラミングの分野では、オブジェクト指向の「オブジェクト」や「インスタンス」とほぼ同義の意味で使われることが多い。具体的にどういったデータがエンティティとして扱われるかは分野によって異なるため、注意が必要である。「実体」と訳されることもある。」

・・・とのことです。


私はITの専門家ではないので、上の説明では何となくしかわからない
(というか、何となくわかった気になっているだけかもしれない・・・(笑))
のですが、ともあれ、IT関係の文書で entity が出てきたときには
上の意味であることもありうるので、注意が必要ということになります。

(IT関連では普通の言葉に特殊な意味が多いのはこれに限りませんが。)



今回も長々と書きましたが、以上です!

コメント(1)

【修正・追記】

本文にも記載しました通り、legal entities に関する記述が、
初稿において誤っておりました。誠に申し訳ございません。


以下、かなりマニアックではありますが、補足説明しておきます。

(半分、独り言です。興味のある方だけお読みください・・・。)


◇◇◇◇◇◇◇◇

本日、たまたまある研究会の方がまとめた小論文(コラム?)を
インターネットで発見しました。

いわゆるLLC制度との関連で書かれたもののようですが
(LLC制度の解説などは、ここでは割愛させていただきます)、
この小論文(コラム)の筆者は、「corporation も legal entity も
『法人』 と訳すのはやめよう!」 と提言しておられます。

趣旨としては―これもトピック本文に若干触れましたが―、
日本と米国では法制度が異なり、coporation , legal entity とも
日本でいう 「法人」 とは別のものであるからということです。

ではどう訳すかということなんですが、筆者の方は代替案として、
corporation を 「有体会社」、legal entity を 「法的主体」 と
訳すことを提案なさっています。

法的主体はともかく、「有体会社」 はちょっと・・・ と思います。
(小論文を読めば趣旨はわからなくもないのですが、日本語として、
一般に理解が普及していない用語をいきなり持ってくるのはどうか。)


小論文(コラム)は税制、法制度、会計制度等を幅広くカバーする、
少々難しいものですが、リンクを貼っておきますので、興味のある方は
挑戦してみてください(小論文自体は日本語です)。

1ページ目(Word 文書です)の後半から 「法人」 という日本語と、
corporation および legal entity についての考察がなされています。

http://www.llc.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp/Column/Column%20No15%20rev7/Stop%20translating%20both%20Corporate%20and%20Legal%20Entity%20into%20HOOJIN_rev7.doc

「LLC制度研究会」 サイトの一部です。
URLからすると、東京大学の中にある研究会のようですね。
http://www.llc.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp/


なお、小論文の中で "entity elements" (主体格要素) という
法制度論の中の概念についても紹介がなされています。

ここではこれ以上 掘り下げませんが、私自身、これを読むまで
"legal entities" ≒ 法人 と理解していました。

まったく不勉強で、お恥ずかしい限りです。


英語はいくら勉強しても、わからないことが多く、
本当に奥が深い・・・ と思います。

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