ヨーロピアンサークル（仮）コミュのパンドラの箱

パンドラはギリシャ神話に出てくる人物です。
パンドラの箱とは、決して開けてならないという箱をパンドラが好奇心から開けてしまい、
この世にありとあらゆる災難・苦悩が飛び出してしまった。と言う話で、禁断の扉を開く事に
よく例えられています。

さて、びっくりしてすぐ閉じたが最後に残ったのは「希望」だけ、「希望」があるから人間は
災難・苦悩にあっても生きていける。
何かしっくりしない気がしませんか?
「希望」が箱の中に残っているとしたら、「希望」を人間は手に入れる事はできなかったはず。
何か、解説が必要ですね。
ギリシャ神話とは何か?　パンドラの箱の謎、「希望」とは何か?　のお話の始まりです。

＜ギリシャ神話＞
紀元前２千年の初めに北方よりギリシャの地にインド・ヨーロッパ語族に属する古代ギリシャ人が
入り、当時地中海世界に栄えていた高度なクレタ文明と融合しながら、紀元前１５−１４世紀に
独自の文化であるミュケナイ文明を築いた。
その時に、北方のインド・ヨーロッパ(ゼウス)、地中海先住民(アポロン、ガイア)、西アジアなどの
オリエント(ウラノス、クロノス、ゼウス)などの神々を混合しギリシャ神話とし成立し、ローマ帝政
期に体系化が行われた。

神々の誕生は諸説あのますが、一例として書きます。パンドラが登場するまでを簡単にまとめました。

世界のはじまり
最初にカオス(無秩序に諸要素が散らばっている「混沌」で、すべてを含んだ物)が誕生しました。
カオスは自らガイアという女神を生成し、このガイアによりいくつもの神が生まれる事になります。
「旧約聖書」の場合、カオスをつくったのは神であるのに対し、「ギリシャ神話」の場合は神より
もカオスが先であり、カオスはあくまでも自然発生と説明されているところが違います。
ガイアは自身の息子のウラノスと交わり、六人の男神、六人の女神を産みました。
この12人をティタン神と呼びます。
その後、醜い子供(巨人キュクロプス(3人)、怪人ヘカトンケイル(3人))を産みますが、
ウラノスはこれを嫌い、子供達を大地の奥底に閉じ込めてしまいます。大地の奥底をガイアの腹の
中とする説もあります。
つまり、無かったものとしたのでしょう。この仕打ちに、ガイアはウラノスへの復讐を決意します。
ガイアはアマダスという硬い金属の大鎌をつくり、子供達12人にティタンたちにウラノスの暗殺を
呼びかけました。
子供達は横暴な父を恐れてましたが、末っ子のクロノスが名乗りをあげます。
その夜、クロノスは暗闇に身をひそめて、寝ていたウラノスの男根を切り飛ばします。
ウラノスは「やがてお前も自分の息子に王位を奪われるだろう」と言って逃げ去ります。
クロノスは、父に代わって天界の王位につき、兄弟のティタン達と一緒に、世界を支配することに
なりました。

ゼウスの誕生
父の言葉が不安でたまらないクロノスは、姉のレアと結婚しますが、子供が生まれるとすぐに
自分の腹に飲み込んでしまいます。なんと、5人の子供を飲み込でしまったのです。
レアは6人目の子供を宿すと、夫に隠れてクレタ島に行き、男の子ゼウスを無事に出産します。
その子を山の洞窟に隠してクロノスの元に戻り、かわりに大きな石を産着(うぶぎ)にくるんで
クロノスに渡すと、クロノスは疑いもせず、一気にそれを飲み込んでしまいます。
そして、クロノスは兄弟（ティタン神）達と相変わらず世界を荒らすばかりでした。
成人したゼウスは、クロノスを騙して吐き薬を飲ませ、飲み込んだ兄弟を吐き出させます。
生まれた順番とは逆の順番で吐き出されので、末子であったゼウスが長兄とし慕われます。
ここから、暴れまわっているクロノスを含める兄弟（ティタン神）達とクロノスの息子達の戦いが
始まります。
この戦いはティタノマキアと呼ばれ、10年経っても決着がつきません。
そこで、ガイアの知恵により、醜い子供(巨人キュクロプス(3人)、怪人ヘカトンケイル(3人))を
助け出し、見方につける事にしました。大きな戦力を得たゼウス達に、クロノス達は遂に敗れ、
闇の世界タルタロスに閉じこめられます。
タルタロスの城門には大きな鉄の扉がはめ込まれ、ヘカトンケイルが見張る事となりました。
ゼウスは天を、ポセイドンは海を、ハデスは地下を、大地は皆の物とし、世界をゼウスと二人の
兄と分かち合いました。

ゼウスは色々な女性と交わり子供達ができます。ギリシャ神話のほとんどは、この子供達にまつ
わる物語です。

プロメテウス
人類は、黄金の種族、銀の種族、青銅の種族、鉄の種族があります。現在の人間の祖先につなが
るのは鉄の種族です。この鉄の種族は、ゼウスの命令によりプロメテウスが水と土から創ったも
のとされています。
プロメテウスは、ティタノマキア(ティタン神との戦い)では、ティタン神(イアペトス)の息子で
ありながらティタン神一族で唯一ゼウスに味方しました。プロメティスは、賢い上に先見の目が
あったからです。
とは言うものの、ゼウスに全面的に従属するつもりはありませんでした。

ある時、神々と人間たちの間で牛の分け前について争いが起こりました。ゼウスは、牛の取り分
で神と人間を区別しようと言い出します。その役目に名乗り出たのがプロメテウスでした。
プロメテウスは牛を手際よく殺すと、二つの山に分けます。一方は食べられない牛の皮で包んで
いますが、中身はおいしい肉と内臓。もう一方は白い脂で包まれておいしそうですが、実は食べ
られない骨でした。ゼウスにこの二つの山を差し出しゼウスに選ばせることにしました。
ゼウスは、迷わず白い脂で包まれ方を選びました。しかし、これはゼウスが騙されたフリをした
だけの事だったのです。以後、死んでも朽ちない骨は不死の象徴となって神に捧げられ、おいし
いけれど時間が立てば腐ってしまう肉と同様に、人間は死を迎えねばならない運命となりました。
食べれない物を偽っておいしそうに見せた事に対し、ゼウスの心は怒りで一杯でした。
その矛(ほこ)先は人間に向けられ、人間から火を取り上げてしまいます。
それに対し、プロメテウスはゼウスに黙って、火を奪い人間にもどしたのでした。
（取り戻したのではなく、最初に人間に火を与えたとの説もあります。）
人間が火を使ってることを知ったゼウスは憤慨し、プロメテウスを岩山に鎖で縛りつけの刑に処
します。昼間に大鷲にプロメテウスの肝臓を食わせ、不死の神であるプロメテウスは肝臓は朝ま
でにすっかり元にもどっています。毎日毎日、肝臓を食われる苦痛の繰り返しを与えたのでした。
これは、ヘラクレスがプロメテウスを助け出すまで続きました。

パンドラの箱
プロメテウスを罰してもゼウスの人間とプロメテウスへの恨みは、なかなか消えるものではあり
ません。ゼウスは次の策略を練ります。

ゼウスは鍛冶の神ヘパイストスに命じ、女神によく似た美しい人間の女性を作らせました。
技芸の女神アテナによって知恵と織物の技術、愛と美の女神アプロディナによって男を悩ます
美貌と魅力、音楽のアポロン神からは音楽の才能と治療の才能、狡猾なヘルメス神によって
泥棒・偽り・好奇心を与えられました。
この女性をパンドラ（「あらゆる贈り物を与えられた」の意）と名付けました。
彼女をプロメテウスの双子の弟エビメテウスの所へ花嫁としてつれて行かせました。
エピメテウスはプロメテウスと違い、賢者ではありませんでした。
エピメテウスはプロメテウスに "ゼウスからの贈り物は決して受け取ってはならない" と強く
言い聞かされていましたが、パンドラを見た瞬間、その美しさに忠告をすっかり忘れて彼女を
妻に迎えてしまいます。
ゼウスはパンドラに「決して開けてはいけない」という事を告げて、一つの壺を持たせていま
した。(壺がいつの間にか箱に変わったとの説があります。また、エピメテウス家に元々、壺
があったと言う説もあります。)
この壺の中には、この世のありとあらゆる災難・苦悩が入っていました。
ゼウスは、自らではなく、人間のパンドラによって災難・苦痛をもたらす事を考えついたのです。
パンドラは、好奇心に負けて箱を開けてしまい、一瞬にしてありとあらゆる災難・苦悩が、世
界に広がっていったのです。
慌てて蓋を閉めますが、壺の中に残ったのは「未来を全て分かってしまう災い」であり、人類
は希望だけは失わずにすんだと言われます。こうして、以後人類は様々な災厄に見舞われなが
らも希望だけは失わず（あるいは絶望することなく）生きていくことになりました。



＜まとめ＞
ギリシャ神話は、登場する神が多すぎるのと、同じ神でも日本語表記で違った名前になってい
る事が多くて、ここまで理解するのにかなり時間がかかりました。この後も物語が続き、広大
な話になります。私は、ここでくだけました。
さて、最初の疑問の「希望」だけが残ったの解釈を本文にも書きましたが、
「予知の災い」が残ったので、未来を開拓する「希望」が持てることから、「希望」だけが
残ったと言う事になったのですね。納得です。

ゼウスの人間への恨みは、「希望」が残った事により、はばまれたかの様に思われるが、実は
狙い通りなのかもしれない。ゼウスは賢いので「想定内」の事だったのかもしれない。
「希望」があるからいつまでもあきらめないで「苦痛」を味わい続ける様子をあざ笑っていた
のかもしれないと思うのは私だけでしょうか?