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F・ポール・ウィルスンコミュの始末屋ジャック短編 「デュアン・リードでの一夜」?

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彼はドアを開けて、中を覗き込んだ。テーブルとサンドウィッチの包み紙以外は何もなかった。それにもちろん、出口はなかった。
左後方から足音が聞こえてきた。彼はドアをバタンと閉めて右へ走って行った。彼はさっきのエンドキャップに戻り、後ろを覗いてみようとした。
ジャマールは周囲を歩き回り、ドアの前で滑り込んで足を止めると、ニヤリとした。
「捕まえたぜ、クソッタレめ」
身を低くし、銃を構えると、ジャマールはドアを開けた。少し待ってからジャマールは部屋に入った。
これはジャックにとってチャンスだった。彼はバーベキュー用のヘラの取っ手にある革紐に手首を通してギュッと握り、のこぎり状の縁を前にしてサムライが刀を構えるように真っすぐ頭上に掲げた。そして彼は行動を起こした。ジャマールの背後に滑り込んで、頭めがけて振りおろした。何か聞こえたのかもしれないし、影が見えたのかもしれない、あるいは第六感を持っていたのだろう。理由は何であれ、ジャマールはわきへ飛び退き、狙いが外れてしまった。縁が肩に命中すると、ジャマールはわめき声をあげた。ジャックはヘラをバックハンドで振り上げたが、この大男は見かけによらず、かなり機敏であることを証明した。男は振り向いて銃を構えた。
ジャックはヘラで銃を振り払ったが、ヘラは銃を落とさずに跳ね返された。
(逃げ時だな)
彼はジャマールが構える前に動いた。最初の1発目は、ジャックがドアの隙間から逃げだそうとしたとき、彼の頭から数インチほど左のドア枠に当った。2発目ではジャックは床に伏せて前転した。残りは2発だ。ジャマールが予備の弾丸を持っていなければだが。彼はジャマールが先のことを考えるような男だとは想像できなかった。
裏口へ向かう途中、機会があるたびに通路を換えた。エクアドルが店の反対側から怒鳴る声が聞こえた。
「ジャマール! 奴を捕まえたか? 捕まえたか?」
「いいや! もう少しでやられるところだったぜ! 野郎をとっ捕まえて生皮をひん剥いてやる!」
「そんな時間はねぇぞ! トラックがもうすぐ来る! 何としても金庫を開けるんだ! ウィルキンス! こっちに戻って奴を捕まえろ!」
「入口は誰が見張るんだ?」
「入り口なんかほっとけ! 鍵は掛けてあるんだろ?」
「ああ、けどよ・・・」
「奴を捕まえろ!」
「分ったよ。俺がお手並みを見せてやるぜ」
ジャックは今、エクアドルとジャマールがいるところで、かなり良いアイデアが浮かんだ。バーベキュー・コーナーに戻る危険を冒すことになるが。彼は表口へ向かった。ウィルキンスのほうへ。あのウィルキンスが閉めたなら、鎖も弱いに違いない。
彼は通路を駆けながら棚を調べた。彼はまだヘラと櫛とブタン・マッチを持っていたが、何か燃えやすいものが必要だった。
抗生物質軟膏...下剤...マシュマロ...
(くそっ!)
彼はヘアケア・コーナーに辿り着くまで通路を駆け巡った。ここなら何かあるはずだ。スプレー缶が必要だ。
(何だこりゃ・・・?)
どれもポンプ式のボトルだった。必要なのはフルオロカーボンだ。(必要な時にフルオロカーボンがないのはどういうことだ?)
ジャックはデオドラント製品売り場へ行った。どれも回転湿布式薬か塗り薬だった。ライト・ガードはどうなっちまったんだ?
ジャックは棚の一番下に緑色の缶があるのを見つけた。ミッチャムのブリュットの後ろに半分隠れていた。彼はそれを手に取ってラベルを見た。

危険:火気厳禁

(これだ!)

ちょうどその時、ウィルキンスが歌うような口調で呼びかけながら、ゆっくりと通路を歩いてくるのが聞こえた。
「ハロぉ〜、ミスター・おバカさ〜ん。どこにいるんだぁ〜い? ジミーがプレゼントを持ってきてやったぜ〜」そう言ってクスクスと笑った。「いや、ちょい待ち。ジミーから6つのプレゼントがあるぜ〜。6発のプレゼントだよ〜。こっちに来て取りにおいで〜」
ジャックはそのプレゼントを取りに行くことにした。
彼はウィルキンスのいる通路の反対側の棚にぴったりと身を寄せながら、ブリュットの蓋を外した。そのブリュットの缶を構え、そのスプレー口の前に火のついたマッチを掲げた。ウィルキンスの顔が見えるや否や、ジャックは缶を前へ突き出してノズルを押した。数十センチほどの炎が噴きあがり、ウィルキンスの目と鼻を焼いた。
ウィルキンスはわめき声を上げて銃を落とし、よろめきながら離れていき、手足をばたつかせて悲鳴を上げた。彼のドレッド・ヘアが火に包まれた。
ジャックは後を追い、ヘラで缶のノズルを叩き落とした。デオドラントがそのまま数フィートほど吹き出し続けた。ジャックはその缶をウィルキンスのだぶだぶのジーンズの後ろに突っ込み、マッチを擦った。文字通り、彼の尻が火を噴いた。ジャックは銃を拾って、通路を駆け抜けた。背後では、まだ悲鳴が上がっていた。
(1人始末した、あと3人だ)
彼は進みながら銃をチェックした。旧式の38口径のリボルバーだ。シリンダーを開けたみた。強装弾が6発装填してあった。ガラクタだ。しかし今では彼の《ガラクタ》だった。
オッズは少しだけ良くなってきた。
店の前方へ向かう数人の足音が聞こえた。彼の思惑通りに、ウィルキンスの悲鳴が仲間らを動揺させた。「ああっ、クソッ!」
「畜生!」
「あいつ、いったい何しやがったんだ?」
ウィルキンスは泣き叫び、その悲鳴はガラスを割りそうなほどだった。「ペペ! 助けてくれ! 死んじまうよぉ〜!」
(ペペ...エクアドルの名前だな)
「ああ」ペペが言った。「死ぬようだな」
ウィルキンスが叫んだ。「やめろ!」
銃声が響いた。357リボルバーに違いない。
「畜生!」ジャマールが叫んだ。「そんなことするなんて信じらんねーぜ!」
後ろから声がした。「いったいどうしたんだ? 何があったんだ?」
「何でもねーよ、デモント!」ぺぺが答えた。「いいからそこにいろ!」
それから低い声でジャマールに言った。「ウィルキンスは足手まといだったんだ。奴が電話をするまえに見つけるんだ!」
ジャックは振り向くと、白く薄らとした煙が天井に昇っているのが見えた。彼は警報が鳴り、スプリンクラーが稼働するのを待った。
何も起きなかった。
(いったいどうすりゃ良かったんだ? 焚き火か?)
ジャックは再び従業員用ラウンジを見つけて足をゆるめた。(まさか、2度も上手くいかないだろうな)彼は先へ進んだ。アイスクリーム・フリーザーのわきを通った時、右側で何かが破裂し、ガラスの扉が割れた。アイスクリーム・サンドイッチやコーンが飛び散った。
ジャックは3つ奥の通路にデモントが立ち、ショットガンに弾を装填していた。
「こっちだ! 野郎を見つけたぜ!」
ジャックはデモントが割れたガラスを踏みながら近づいてくるまで、棚のエンドキャップに身を潜めた。生理用品売り場で立ち止まり、耳を澄まして、デモントが十分近くまで接近するのを待った。銃を棚のユニット後部の薄い金属板から2インチほど離して構えると、その棚には家庭用の膣洗浄器が置いてあった。(家庭用なんてあったのか?)
デモントがまさにその板の向こう側に現れ、ジャックは即座に2発撃った。ジャックは4発撃ちたかったが、ガラクタ同様の銃では満足に撃てなかった。向こう側では、デモントが唸り声を上げていた。ショットガンが暴発し、天井に穴が開いた。
ジャックは銃を放り投げた。デモントは倒れたが、死んではいなかった。何か使えるものが必要だった。(膣洗浄器にはホースが付いてなかったか?)彼は箱を開けた。(あったぞ)赤くてうねのあるホースが入っていた。彼はそれを取り出した。
足音が聞こえ、ジャックは陰から覗き見ると、デモントが右肩を押さえていた。ショットガンを落としたが、また拾おうとしていた。
ジャックは飛び出してショットガンを蹴ると、デモントの細い首にホースを巻き、粉々になったアイスクリーム・コーナーのドアまで引きずっていった。金属フレームの最上部にホースを結び、デモントを宙づりにした。小男は大暴れすると、ジャックはホースを挟むようにドアをバタンと閉めた。彼はホースが外れないように2回巻き、床に落ちてるショットガンへと滑り込んだ。ペペとジャマールが現れ、ジャックは使用済みの薬莢をチェンバーから排出し、砲弾を新たに装填して引き金を引いた。何発かペペに命中したが、致命傷を負ったのはジャマールのほうだった。ジャマールのシャツは血で真っ赤に染まっていた。ジャックが新たな砲弾を装填し終えた頃にはペペは姿を消していた。振り向くと、デモントの顔が青黒くなり、蹴りも弱くなっていた。前方ではジャマールが両手足を広げ、かっと見開いた目で天井を見つめていた。
(さて、どうする? ペペを追うか、それとも火を放つか?...火だ。それもど派手なやつを。消防車が飛んでくるような火だ...だがバーベキュー・コーナーはどっちだ?)
彼は方角がさっぱり分からなくなっていた。だが真ん中あたりだということは覚えていた。
通路を3つ走り抜けると、彼はバーベキュー・コーナーに突き当たった。そしてペペもいた。小走りで逃げながら肩越しに振り返っていた。ジャックはショットガンを構えて撃ったが、ぺぺはダブルオートが命中する寸前にしゃがんた。だがそれは意図してではなかった。床にこぼれていたライター・オイルで足を滑らせたのだ。砲弾はぺぺの頭をかすめて、バーベキュー用品に当った。ブリケッツの袋やライター・オイルなどの缶が爆発した。破裂したレイド(*殺虫剤)の缶はあちこちに飛び散り、周囲に真っ白な煙をまき散らした。
ぺぺは何度も立ち上がろうとしたが、そのたびに足を滑らせて倒れた。357リボルバーを持っていなければ、さぞかし可笑しい場面だったであろう。ジャックは砲弾を装填し、狙いを定めて引き金を引いた。

カチャリ

砲弾切れのようだ。
ぺぺは膝をついて身を起こした。彼は銃を構えながらニヤリとした。ジャックが床に伏せると、次から次へと飛んでくる弾丸は冷凍食品やボトルに命中し、ジャックはロビタシン(*風邪薬)やナイクィル(*のど飴)でずぶ濡れになった。
ジャックはペペが撃った回数を数えていた。6発だ。彼はぺぺが凄腕の装填技を持っているか知らなかったし、知りたくもなかった。彼はポケットからマッチを取り出し、火をつけた。スクレッツのケースをトリガーガードに差し込み、炎を着けたまま、棚の向こうに投げた。ガソリンに火が引火する「ボワーッ!」というような音は聞こえなかったが、ペペが泣き叫ぶ声は聞こえた。その叫び声はレイドのまき散らす殺虫剤で苦痛と恐怖の悲鳴に変わった。
ジャックは床を這って棚の隅から覗き見た。
ペペは炎に包まれていた。彼は飛び散るレイドの缶から目を守ろうと両手で覆い、火のついたライター・オイルの中に転がったが、それが彼にとっては最悪の事態となった。真っ黒な煙が天井へと昇った。
そして突然それは起きた。警報が鳴り響き、冷たい水が溢れ出た。
(いいぞ!)
ジャックは床に357リボルバーが落ちているのを見つけた。彼はどしゃ降りの中を薬品売り場へと飛び出して、銃を遠くへ蹴った。床にこぼれた何ガロンものアイスクリームで足を滑らせながらも、ジャックはロレッタやカウンターの後ろに隠れていた人質らを見つけた。彼はキー・リングを引っ掴んでパテルに投げ渡した。「出るんだ! みんなここから出るんだ!」
出口へ殺到しはじめた中で、ロレッタが叫んでるのが聞こえた。
「ちょっと、みんな聞いて! 彼はあんたたちの命の恩人よ! 彼に恩返ししたけりゃ、彼のことは誰にも言わないで! 彼は存在しなかった! あの強盗団は仲間割れして互いに殺し合ったって言うのよ、いいわね?」
彼女はジャックにキスを送り、大移動に加わった。ジャックも彼らの後に続こうとしたが、間近にあったマウスウォッシュのボトルが破裂した。2発目の銃弾が飛んできたとき、ジャックはかろうじて避けた。彼は薬品売り場のカウンターの奥へ飛び込み、恐る恐る覗き見た。
黒焦げになった全身から煙が湧き、びしょ濡れのぺぺが小型のセミオートを構えてジャックの行く手に立ちはだかっていた。ジャックはペペが予備の弾丸を持ってるかどうか判断しかねた。結局のところ、焼き殺そうとしてもどうにもならなかった。スプリンクラーがぺぺを救ったのだ。
ぺぺは無言のまま向かってきた。何か言う必要もなかったのだろう。その目には殺意がみなぎっていた。そして彼はジャックを追い詰めていた。
ぺぺは再び撃ち始めた。弾はジャックの右6インチほどのカウンターに当り、ジャックの頭に破片が降り注いだ。
罠にはまった。ぺぺのマシンガンから逃げる手立てを講じなくては。だがどうやって? あの手のセミオートは10発は装填できるものが多い。
ジャックはまたカウンターから覗き見た。ぺぺのゆっくりとした歩調で、今では6フィートの距離にまで迫っていた。ジャックがしゃがむと、明るい黄緑色をしたものがぼんやりと視界に入った。
ロレッタがジャックの考えうる以上の速さで突進してきて、アイスクリームの入った1ガロン容器を両手で頭上に持ち上げていた。ぺぺはスプリンクラーの音や水しぶきがなければ、ロレッタが近付いてるのに気付いただろう。だがロレッタがぺぺの背後に近付いて、その頭にアイスクリーム容器を叩きつけるまで気づかなかった。
ジャックはぺぺが床に倒れながらショックと苦痛で目玉が飛び出るのを見た。おそらくコンクリート・ブロックで殴られたと思っただろう。ぺぺは顔を床に打ちつけ、ロレッタはその場に立ちはだかっていた。まさに、彼の真上に。彼女はひざで背中の真ん中に飛び乗った。肋骨がガラスのように砕け、苦悶の呻き声とともに肺から空気が抜け出た。
だがロレッタはまだ終えるつもりはなかった。叫びながら言葉に抑揚を付けながら、容器を頭や首に叩きつけた。
「もう! 二度と! あんたに! 銃口を! 突き付け! させないわ!」
ジャックは彼女のそばに寄り、彼女の手に触れた。
「奴はメッセージを受け取ったと思うよ」
ロレッタは彼を見上げ、それからペペを見つめた。ぺぺの顔は床の上で潰れ、頭は不自然な角度に傾いていた。もう息はしてなかった。
彼女はうなずいた。「そうみたいね」
ジャックは彼女を立たせて、出口へと連れ立った。「行くぞ!」
だがそれでもロレッタはやめるつもりはなかった。彼女は振り向いてぺぺの脇腹に蹴りを入れた。
「言ったでしょ、あたしは気分最悪だって!」
「ロレッタ...来いよ!」
2人は出口へ向かった。彼女が言った。「ジャック。あたしたち、互角だったわね」
「ああ、そうだな」
「気分最悪だって事、言ったかしら?」
「ああ、そう言ってたな。だが時には気分最悪なのもいいもんだな」

完

コメント(1)

 最高!
 KENNY-J さん、翻訳お疲れ様でした。
 本当にありがとう。

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