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F・ポール・ウィルスンコミュの始末屋ジャック短編 「デュアン・リードでの一夜」?

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この短編は『THRILLER』というアンソロジーに所収されていた始末屋ジャックの短編『Interlude at Duane's』です。現在未訳なので、自分で翻訳してみました。お楽しみください。ド素人の翻訳なので、読みづらい文章、または意味不明な箇所もあると思いますが、何卒ご勘弁ください。あせあせ


「これだけは言わせて、ジャック」58番街を歩きながら、ロレッタが言った。「こういう変わったことをするのって気分最悪よ! ほんとに。足だってすごく痛いし」
ジャックはうなずき、つとめて誠実さをみせようと心掛けていた。それ以上に彼は通行人に気を配っていた。服を着ないで一日を過ごすのはどんな感じかを考えていた。
彼は素っ裸で街中を歩いている気がした。彼は自分が一番信頼できるグロックを家に置いてきたのだ。それもこれも毎年恒例のエンパイア・ステート・ビルへの観光のためだった。彼は4月19日のキング・コング・デイに行くと決めていた。毎年、彼はでっかい奴への思い出のために小さな花輪を置きに行くという巡礼をしていたのだ。その巡礼での大きな欠点は、誰でも2階に上る者は金属探知器の前を通過しなくてはならないことだった。
彼は自分が妄想気味だとは思っていなかった。いや、たぶん、少しは。だが、彼は街中で人々を怒らせて、素っ裸で走り回ることは望んでいなかった。
花輪を供えるという式典のあと、彼はウエストサイドにある自宅まで歩いて帰ろうと決め、その途中でロレッタと出くわした。
2人は西四番街にある古びれたトラットリアで出会った。彼女はミシシッピから出てきたばかりで、彼はほんの数年ほど前にニュージャージーから出てきたばかりだった。
ロレッタはジャックよりも10歳は年上だった。たぶん、もっと・・・50代だといってもおかしくないだろう。
2人は六番街通りまで歩きつづけた。曲がり角で止まり、信号が青になるのを待っていると、2人のアジア人女性が近付いてきた。
背の高いほうが声をかけてきた。「五番害ってどこかしら?」
ロレッタは顔をしかめた。「五番街っていうのよ、バカねぇ」彼女はため息をついて、親指で後ろを指した。「あっちよ」
ジャックは彼女に目を向けた。「気分最悪ってのは冗談じゃなかったようだな」
「ジャック、私がいままで冗談を言ったことがある?」彼女は周囲を見回した。「ねぇ、あたし家庭料理っぽいものを食べたいんだけど。チョコレート・ピーナッツバター・アイスクリームみたいなやつ」彼女は通りの向こうを指した。「あそこよ」
「ありゃドラッグストアだぜ」
「ハニー、もっとよく勉強したほうがいいわね。デュアンには何でもそろってるのよ。他のどこにも肉屋がなかったら、私を撃ってちょうだい。さぁ、来て」
彼が何かを言う前に、彼女は彼の手を掴んで強引に通りを渡った。
「あそこの化粧品が特に良いのよね。いくつかの店舗にはカヴァーガールもあるのよ。もしあなたがブロンドだったらよかったんだけど。気が付いたかどうか知らないけど、白はこの辺りじゃ人気ないのよ。誰もかれもが黒が好み。もちろん、あなたは別だけどね。あなたが注目されたくないのは分かってるわ、ジャック。でもクリームの中にほんのちょっぴりコーヒーを垂らしても、それぐらいじゃコーヒーにならないわよ」
ジャックは透明になる努力に多くを費やした。彼は平均的な身長、中肉中背、ごく普通の茶色い髪、そしてごく平凡な顔つきを受け継いだ。今日、彼はメッツの帽子をかぶり、フランネルのシャツを着て、リーヴァイスとぼろぼろになったブーツをはいていた。ただの普通な男だ。まるで建設作業員のようにズー・ヨーク(Zoo York)の通りをのんびりと歩いていた。
ジャックは入口に近づくと、さらに歩く速度をゆるめた。「ロレッタ、また今度にしたほうがいいと思うんだが」
彼女はジャックの手をより強く握った。「あなたはそうでしょうね。でもあたしはお腹が空いてんのよ。マウンテンデューをおごるわ。それともカフェインがまだあなたのドラッグなの?」
「まあね。ビールが飲み頃になる時間まではな」彼は手を振りほどいた。「分ったよ。それじゃ5分だけなら付き合うよ。けど5分経ったら、俺は出ていくからな。やることがあるんだ」
「5分ぐらい何でもないでしょ」
「お先にどうぞ。君の後についてくからさ」
彼はゆっくりと彼女のあとについて歩き、入口を丹念にチェックした。ドアの内側に監視カメラがあるのに気付いた。出入りする客を見張ってるのだ。
彼は帽子を深くかぶり、頭を下げた。彼はロレッタに追いつくと、強い訛りで大声を上げる男の声が聞こえた。
「おい! おい! おい! あのすっげえケツ見てみなよ!」
彼は自分のことを言われてるのじゃないと願った。彼が頭を上げると、ニヤついた顔に口髭を生やしたラテン系の男が建物の壁に寄り掛かっていた。栗色のスポーツ・バッグがその男の足元にあった。その男の髪は黒ツヤで後ろに撫でつけていて、手の甲には刑務所で入れたようなタトゥーがあった。
ロレッタは足を止めて男を睨みつけた。「あたしに向かってそんな口を利かないほうがいいわよ」
男のニヤついた顔はさらに広がった。「けど姉ちゃんよぉ、俺の国じゃ俺みたいな男に褒められたら喜ぶもんだぜ」
「あんたの国ってどこよ?」
「エクアドルだよ」
「あのね、あんたは今ニューヨークにいるのよ。そしてあたしはブロンクス出身のイカれ女よ。今度そんな口を利いてみな、ブルース・リーみたいにあんたのケツを蹴とばすわよ」
「けど俺の顔に跨ってみたいんだろ」
「どうして? あんたの鼻はチンポよりもでかいから?」
その言葉に店から出ていく若い女性たちが大笑いした。ミスター・エクアドルの顔が暗くなった。そのジョークを受け付けなかったようだ。
ジャックはロレッタが先に店に入ると、頭を下げて後ろ手で扉を閉めた。
彼女が言った。「言ったでしょ、気分最悪だって」
「はいはい、そうだね。5分だけだぞ、ロレッタ。いいな?」
「分ったわよ」
彼が肩越しに振り返ると、ミスター・エクアドルがスポーツ・バッグを持って中に入ってくるのが見えた。ロレッタが化粧品売り場へと向かうと、ジャックはその場で足を止めた。彼はエクアドルが彼女に手を出すのではないかと見ていたが、男はそのまま真っすぐ進み、裏口へと出て行った。
デュアン・リード・ドラッグストアはニューヨークでの生活に欠かせない存在だ。この街には何百という店舗がある。ここに何度も足を運ぶのは上品ぶったアッパー・イーストサイドの住人ぐらいだろう。このチェーン店の一貫した特徴は、一貫性に欠けていることだった。2つと同じものは何一つ置いていない。確かに、このチェーン店は化粧品を前面に置いているが、その向こうに何か隠しているかもしれないと客に思わせるようになっている。ジャックにはその狂気的な手法が分っていた。客たちは買うものを探すために時間を費やし、そのついでに買う必要のないものまで買わせようという魂胆なのだ。
この店はかなり在庫が薄くなっていて、ジャックは帰る前にアイスクリームを探そうと店の中を歩き回った。通路を歩きまわっていると、方向感覚を失ってきた。全体的に通路はLの字型になっていたが、奥へ行くほど、どこも似たような通路でジグザグになっていた。誰だろうとこの通路を設計した者は、カオス・セオリーの愛好家かミステリーサークルのデザイナーだったのだろう。
痔の薬が陳列してある6フィートの高さの棚の間を歩いていると、後ろから声がした。
「あっちに行け。向こうに戻れ」
ジャックが振り向くと、そこには赤いタンクトップを着たステロイド剤常用者のような巨漢の黒人男が立っていた。剃り上げた頭はピカピカに黒光りしていた。左の眉の上には大きな傷痕があり、ギラついた両目の下には獅子鼻が鎮座していた。38口径のリボルバー。古めかしいサタデーナイト・スペシャルだ。
ジャックはひるむことなく落ち着いて言った。「何の真似だ?」
男は銃を上げて、映画でよく見るように横へ振った。
「その面をぶん殴られる前にさっさとケツを動かせってんだよ」
ジャックはその男がもっと近づいて、銃に手が届く範囲に入るまで待った。だが男は動かなかった。この手のことは経験済みなのだろう。
こいつはまずい。一番気にかかることは、これが個人的なことかどうかだった。人質となった脅えた顔をした客たち−白い服を着てるのは店員に違いなかった−がカウンターの前でひざまずき、両手を頭の後ろで組んでるのを見た時、これが個人的恨みの類ではないことが分かった。
(安心したぜ・・・・少しはな)
ジャックはミスター・エクアドルがニッケル・メッキを施した357リボルバーを持って立っているのを見た。
(強盗か。オッケー、とりあえず頭を下げてカメラに映らないようにしよう。そうすりゃみんなと一緒に外に出られるからな)
黒人男が彼を後ろからどついた。
「そこに入れ、クソッタレが」
ジャックは薬局エリアにカメラが2台あるのに気付いた。彼は並ばされた人質たちの列の左端にひざまずき、頭の後ろで指を組み合わせ、目を伏せた。動揺するようなざわめきが聞こえるとジャックは目を上げて、左に視線を向けた。赤・黄・緑のニット帽をかぶった痩せこけた小柄なサミー・デイヴィス似のラスタマンが、銃身の短いポンプ式の12ゲージ口径を構えて人質たちの前に立っていた。脅えきった顔をしたロレッタが人質たちの中にいた。
そして4人目(まったく、いったい何人いるんだ?)は、薄汚れた、だらしのないライトブラウンのドレッドヘアに、だぶだぶのジーンズ、ニューヨーク・ジャイアンツの帽子、まるでヒップ・ポッブのカタログを背負ってるようだった。
彼はさらにもう1人の男がいるのに気付いた。暗褐色の肌で、インド人かパキスタン人だと推測した。
全員、石のように無表情だった。
(なんて奴らだ。おそらくライカーズ刑務所で知り合ったんだな。でなきゃ墓地だろう)
「マネジャーさんをとっ捕まえたぜ」白人男が調子良く言った。
エクアドルが白人男に目を向けた「入口を閉めたか?」
白人男はキーチェーンをジャラジャラと鳴らしてカウンターの上に投げた。
「おう、出入口は全部閉めたぜ」
「ようし。あっちに行って、まだ誰か残ってないか調べてこい。誰も外に出すわけにいかねえからな」
「あぁ、ちょっと待ってくれ。その前にやることがあるからよ」
男はマネジャーを前へ突き出し、それからカウンターの奥へ入り、薬品棚へと姿を消した。
「ウィルキンス! 言っただろ、前に立ってろって!」
ウィルキンスが現れた。その手には3つの大きなプラスチック・ストックボトルがあった。彼はそれをカウンターに置いた。ジャックはそれにラベルが貼ってあるのが見えた。パーコセットとオキシコドンだ。
「これはオレのもんだからな。誰も触んなよ」
エクアドルが歯を噛み締めて言った。「前に立ってろ!」
「わかったよ」ウィルキンスはそう言って前へ出てきた。
傷眉男はマネジャーのジャケットをつかんで揺さぶった。「金庫の暗証番号だよ、さっさと言え」
ジャックはマネジャーの名札を見た。J.パテル。彼の褐色の肌は薄い色になっていた。その哀れな男は今にも気絶しそうだった。
「知らないんだ!」
ラスタマンはショットガンを構え、パテルの震えている喉に銃口を突き付けた。
「聞いてんだろ、さっさと答えろ!」
ジャックはパテルの股間から濡れた染みが広がっているのが見えた。
「マ、マネジャーは、が、外出中だ。私は暗証番号を、し、知らないんだ」
エクアドルが一歩前へ出た。「それじゃ、俺たちのお役に立てないってのか? え?」
パテルは膝をガクガクと震わせ、両手を挙げた。「やめてくれ! 私には妻と子供がいるんだ!」
「家族とまた会いたきゃ、言うんだな。現金回収車が毎週火曜日に来ることは知ってんだ。ずっと見てたんだからな。今日は火曜日だ、さっさと言え」
「けど私は知ら・・・!」
エクアドルが銃でパテルの頭を殴り、パテルは床に倒れた。
「ボスの金を守って死にてぇのか? 頭を撃たれたらどうなるか見たいか? そうか。それじゃ見せてやるぜ」
男は人質たちのほうを見た。「でけぇ口を叩きやがったクソ女はどこだ?」そしてロレッタを見つけるとニヤッとした。「そこにいたのか」
(クソッ)
エクアドルは彼女のドレスをつかむと、そこから人質たちの前へ引きずり出した。
「むこうを向け、このクソ女」
ひざまずいたまま、彼女は人質らのほうに向いた。彼女の下唇は恐怖のあまり震えていた。彼女はジャックと目を合わせ、無言で訴えかけた。(何とかしてよ、お願い!)
(こんなことになるなんて)
彼の心の中では彼女を救うべくいくつかのシナリオが出来上がっていたが、どれもうまくいきそうになかった。
エクアドルが357リボルバーを構え、ロレッタの後頭部に突き付けた。ジャックはセキュリティ・カメラがあるのを思い出した。彼は言った。「テレビに出たいのか?」
エクアドルが銃をジャックに向けた。「何をほざいてんだ?」
周囲を見回さずに、ジャックは薬局コーナーのセキュリティ・カメラを指した。「'ドッキリ・カメラ'に出てるぜ」
「気になるのか?」
ジャックはきまりが悪そうにニヤリとした。「別に。とりあえず言っとこうと思ってな。こんなことをして、ライカーズ刑務所の連中がこの騒動に気付かないとはな。だが俺は気付いたぜ。・・・ウソじゃない。俺は、気付いた」
エクアドルはカメラを見上げると、一言いった。「くそっ」
彼はラスタマンに目で合図し、上を指した。ラスタがニヤリとすると、金縁の差し歯が見えた。そしてショットガンを上に向けた。
ジャックは最初の一発で、全員の目が粉々に吹っ飛ぶカメラに向いた瞬間に動き出した。二発目で、頭を覆って通路の奥へと素早く走っていった。
彼の背後でエクアドルが叫ぶ声が聞こえた。「おい! あの野郎はどこだ? ウィルキンス! 誰でもいいから来い!」
白人男が返事するのが聞こえた。「俺が行く!」
ジャックはウィルキンスの不意を突いて銃を奪うことを考えていたが、そううまくはいかなかった。(くそっ!)別の日なら、彼は9ミリのホロウ・ポイントを装填していて、いつでも撃てるようになっていた。
彼は即興でやるしかなかった。
ジグザグの通路を進みながら、マニアックに並べられた棚に無言で感謝の念を送った。もしこれらの棚が一直線に並んでいたら、1分ももたなかっただろう。まるで迷路の中のネズミのようだったが、この奇妙な、迷路のような形状は彼にチャンスを与えた。
彼は走りながら、何か使えそうなものを探した。ナイフさえ持っていなかったのだ。
乾電池...ノートブック...マーカー...ペン...ガム...挨拶状...(どれも役に立たないな)
彼は先がとがった取っ手のクシを見つけ、それを取った。足を止めずに、それをビニール袋から出してポケットに入れた。その時、エクアドルが「俺はこっちに行く、ジャマールはあっだ、デモントはこいつらを見てろ」と怒鳴っているのが聞こえた。
バンドエイド...アイスクリーム...ストレート・アイロン...(こんなのが使えるか? 使えないな)
ヘアカラー...加湿器...チートス...ビーフジャーキー...(おいおい!)
彼は通路を曲がって、バーベキュー・セット売り場に入った。イス...(役に立たない)傘...(これもダメだ)。ジャックは特大サイズのヘラを見つけ、それを手に取って振ってみた。重さも丁度いい、ステンレススチールの刃が付いていて、その反対側はノコギリ状になっていた。(これなら多少は対抗できるだろう)ブタン・マッチが束になっているものがあり、それも1つ掴んだ。このマッチの火では相手にダメージを与えなれないだろう。
(火か・・・)彼は上を見上げてスプリンクラー・システムを見た。ニューヨークのどんな店にも必ずあるものだった。火でスプリンクラーを稼働させれば消防局に警報が伝わるだろう。
(やるんだ)
彼はライター液の缶を掴み、棚に撒きはじめた。半分ほど使って液が床に流れてくると、マッチを手に取って・・・・
そのとき1発の銃声が響いた。弾丸が頭をかすめた。振り向くと、眉傷男(こいつがジャマールにちがいない)が10メートルほど先に立っていて、38口径でまた撃とうと構えていた。
「おい! 奴を見つけたぜ! こっちだ!」
ジャックは伏せて、2発目が飛んでくると同時に通路の角を曲がった。(あの手のクソ野郎の特有だ。まともに銃も撃てない)ジャマールが持ってるようなクズ鉄は接近戦には有効だった。
背後で足音がし、ジャックは棚のエンドキャップで立ち止まると背後の通路を覗き見た。誰もいない。彼は次の通路へとダッシュすると、その先は壁だった。3メートルほど右手にドアがあった。


【従業員専用】

?へ続く

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