埋もれた香港映画たちコミュのオフィス･ラブの鎮魂歌

原題：你OK,我OK!(You're O.K, I'm O.K!)
香港　Ｄ＆Ｂフィルムズ作品　87年　86分　カラー　日本劇場未公開(ビデオ)

監督：レイモンド･ファン
出演：チャン･コッキョン／メイ･ロー／ケン･トン／キャリー･ン

－解説－
会社の上司に浮気の場として部屋の鍵を貸出し出世をねらう若者。彼は想いを寄せる受付の女性と社長との不倫を知り思い悩むが､彼女が自分の部屋で自殺未遂を図ったことから急接近する。出演は『チャンピオン鷹』(83年)などのチャン･コッキョン(張國強)､『開心楽園』(85年､映画祭のみ)などのメイ･ロー(羅美薇)､『狼の流儀』(82年､テレビ放送)などのケン･トン(湯鎮業)､『カップルズ』(95年)などのキャリー･ン(吳家麗)､『プロジェクトＢＢ』(2006年)などのクー･ファン(谷峯)ほか。レイモンド･ファン(馮世雄)監督､87年作。

－物語－
美港社で働く若手社員チャン(張國強)は､４人の部長に情事の場として部屋の鍵を貸出し出世の機会をねらっていた。彼は受付のチャオ(羅美薇)に惹かれ口説こうとするが､いつも今一歩のところでかわされる。ある日､チャンはレイ社長(湯鎮業)からも部屋の鍵を貸出すよう告げられ､喜んで合鍵作りを承諾した。遂に出世が決まった日､部屋に置き忘れられた割れた手鏡にチャオが気付いたことで､チャンは彼女が社長の不倫相手と知りショックを受ける。しかし､チャオも社長との不毛な不倫に悩んでおり､とうとうチャンの部屋で睡眠薬自殺を図った。チャンと隣人マオ先生(谷峯)の看護で､チャオは回復し彼と結ばれたのだが…。

コメント(1)

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[1] mixiユーザー 11月23日 16:50

邦題を聴いて｢そんな香港映画のビデオ､あった？｣という入会者の方は少なくないと思います。それ位日本でリリースされた数多くの香港映画のなかでも完全に埋もれてしまっている1本です。この映画の場合､所謂色物キワモノの類ではなく､当時の主流だった"香港ニューウェーブ"に組み込まれてるがゆえに､余計顧みられる機会を失っている気も致します。実際香港ではリマスターされたソフトも未だに発売されておりません。
何しろキャストが日本では全く無名で､しかも当時の新進俳優メインなので地味なんです。『チャンピオン鷹』(83年)でユン･ピョウ(元彪)の相方を演じていたチャン･コッキョン(張國強)とアイドル出身で現ジャッキー･チュン(張學友)夫人のメイ･ロー(羅美薇)主演と言われて､身を乗り出してくるファンが果たしてどれだけいるのでしょうか…。
映画自体は決してワルい出来ではありません。ビリー･ワイルダー監督の傑作『アパートの鍵貸します』(60年､画像左)を翻案。原点のようなシャレたやり取りなどは望むべくもないですが､ポップで可愛らしい香港映画流のラブコメディに仕上がっております。主役としての華もなく芝居も一本調子なチャン･コッキョンは如何ともしがたいですが､心ならずの不倫に悩みつつも新しい恋に目覚めていくメイ･ローがとにかく魅力的です。加えてキャリー･ン(吳家麗)やクー･ファン(谷峯)といった脇役たちの存在感と演技も印象に残ります。
制作はＤ＆Ｂフィルムズ[徳寶電影公司](画像中がロゴ)。日本では『レディ･ハード香港大捜査線』(85年､画像右)と始めとする"皇家師姐"シリーズなどハードなバイオレンス描写が過剰なアクション映画のイメージが強いですが､実は未公開作のなかには､日本のトレンディドラマやハリウッドの新旧ヒット作に影響を受け､尚且つ香港のローカリズムに根差したウェルメイドなコメディーや恋愛モノを量産しており､本作もそうした流れのひとつといえます。
そして本作の主題歌ですが､マライア･キャリーの代表曲｢ウィズアウト･ユー｣を香港きっての女流ソウル･シンガー､マリア･コルデロ(馮莉亞)がカヴァーしたヴァージョンが起用されています。マリア･コルデロ劇中本人役？で出演もし､本家マライアに負けず劣らずの熱唱で唸らせます。ただ､作品自体の現状がこんな扱いなので残念ながら音源もネット上には挙がっていません。
いずれにしろ､個人的に埋もれさせてしまうにはあまりに惜しい作品と断言できますし､機会があれば是非ご覧いただきたい１本です。

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