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映画を診る「シネマ特診外来」コミュのi医師必見の映画 『命』

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柳 美里のベスト・セラーの映画化。

東京キッド・ブラザーズの東 由多加と10年間愛人関係だった柳は,別れたあと妻子ある男性との間に不義の子を身ごもる。しかし結局破局し、そのままだと堕胎も考えただろうが、東が食道がんで肝転移、肺転移して余命幾ばくもないことから出産を決意する。

東も自分の生まれ変わりとも感じたのであろう、その子を自分の子以上に愛して、闘病していく。

映画はそれだけでスキャンダラスな内容だが、実に壮絶で潔いひとの終焉を描ききっており胸に迫る。

「助けてくれとは言わない。2年生かしてくれ!」と国立がんセンターの医師に申し出る東。

一挙手一投足、会話のすみずみにいたるまで克明に記録したのであろう。医師と患者の共同戦線たる治療は内容的に嘘がない。

主治医を演じる平田 満が目を瞠る存在感を示す。治療の方法を巡って戦わされる会話には、息を詰める。

日本の医師は国民皆保険である健康保険制度の下で医療を行っている。

東が抗がん剤が効かなかったと知り、アメリカで使われている別の抗がん剤への変更と免疫療法、放射線療法の併用を強く迫るシーンは、健康保険診療に苦慮させられている医師にはつらい。

統計的に効果の程が不明、結果は変わらないにしても命を縮めることになるのでは・・・、患者からの申し出であっても簡単に諾と言えぬ医師の葛藤が一般の人に分るはずがない。

健康保険としても認められずに減点されてしまうことだろう。

「10人のうち2人に効いた、100人のうち何人が助かった・・・。そんなこと関係ないんだよ。統計なんか聞いちゃいねえ」と激しく動揺する東の姿、医師ならばこころ揺り動かされる患者の叫びである。

 ボクが患者として同じ状況となっても東のようなパッションは到底湧いてこないと思う。

東が言う「がんの本をいろいろ読んだ。がんを気にするな、がんと共生しろ。みんな精神論だ。俺は生きるためにすべてのことをやってみる。どんな治療を受け、どんな結果だったのか。このひと(柳)がみんな書いてくれる。ひとつぐらい良い事をして死にますよ」なんという壮絶な選択であろう。

 山口 瞳が最後の5年間日記形式で日常生活を記録していった『平成老人年金日記』などの著作は糖尿病などの持病を抱えた老人がいかに病気と付き合ったか、金額はいくらだったか、などを記録した書物であった。

また作家・江国滋ががん告知から死ぬ日までの闘病生活を克明に記録した『癌め』は医師が病室で患者に説明したこと、喋ったことがそのまま書かれている画期的な書で、医師として読むと、患者に対して医師としてついた嘘が見て取れる。

こういう患者からの記録として『命』はまたひとつ長く読み継がれるであろうパワーを湛えている。

映画では柳と東は実名で登場。柳の愛児に対して誠実に事実を伝えようとしており、際物めいた胡散臭さは微塵もない。

監督は田中麗奈『はつ恋』の篠原哲雄。

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