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映画を診る「シネマ特診外来」コミュの男という少年性「ウォルター少年と夏の休日」

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【原題はセコハンのライオンたち 想い起こす父親の温かさ】

この映画のお手柄は、「よくぞまあこのシナリオを書いたよなぁ」という一点に尽きる。

身持ちのよくない母親から、母方の祖母の兄弟にあたるロバート・デュバルとマイケル・ケイン兄弟の許もとに預けられたハーレイ・ジョエル・オスメント少年が体験するテキサスでのひと夏。

このジイさん兄弟がとにかくスゴい。

彼らが大金を持っているという噂うわさを聞きつけて、夥おびただしい数のセールス・マンがやってくるがライフルを撃って追い返す。同じく財産目当てに世話をしようとする親戚一家にも油断をみせない。

およそ“能動的”の塊みたいなジイさんたちで、世の中の多くの老人が備える“受け身”には無縁。というのも、体は衰えても心は少年のままという人間なのである。

ハーレイ少年も少しずつ彼らの生活に溶け込んでいき、彼らもまた愛情薄く育った少年を不憫(ふびん)に思ったのか、いつしか閉ざしていた心の北窓を開くのである。

ケインがポツリポツリと語る兄弟の若き日の冒険と恋、そして失意。回想シーンは話を聞いた少年の脳裏に浮かぶ光景を映像化したものだから、彼らに対する敬愛の情が深い分、若い時分の彼らはとにかくカッコいい。

文法重視の英語教育を受けたボクのヒヤリング能力はお寒いもの。映画のなかで彼ら兄弟が得体の知れないきつい酒を飲まされて、気付いたときには北アフリカに着いていたと言いう。字幕では「ラチされた」と出るが、ボクの耳には「シャンハイされた」と聞こえた。

スラングの「シャンハイされる」なら、その昔チャイナ・タウンなどでアヘンなどを一服盛られ意識不明のまま身ぐるみを剥(は)がされる事件が多発したことからきた表現だ。

そのころは麻薬であるアヘン・チンキも鎮痛作用などの薬効を期待されて、いくらでも金持ちの常備薬として野放しだった時代でもある。

夜鳴泣きする赤ん坊にも使用されたというから恐ろしい。主成分はモルヒネだから依存性の問題も無視できない。

この冒険譚の真偽は別としても、頭はしっかりしているのに肉体は老いを感じる残酷を身をもって味わう日々の哀切。

恐らく芸のないこと満点の邦題に較べ、原題の「セコハンのライオンたち」がいかに優れたタイトルであるかは観客だけが知りえる特権であるからここでは説明しない。

人がいかに死んでいくか・・・、―それを突き詰めていくことはどう生きたかを問うことである。

七十一歳のケインと七十三歳のデュバル。

ハーレイ少年ならずとも、この映画はすべての少年だった者に父親が握り返してくれた手の温かさを思い起こさせる。

(内科医) (毎週月曜日掲載)【赤字は添削部、灰字は削除部】

2004.7.25掲載

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