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映画を診る「シネマ特診外来」コミュの東宝映画「世界の中心で、愛をさけぶ」

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【 痛み共有する愛 奇跡的なまでの透明感 】

三百万部を突破した片山恭一の原作小説を行定勲監督が映画化した『世界の中心で、愛をさけぶ』(東宝系で公開中)は大人の鑑賞に堪えうること予想以上の作品である。

大沢たかおは同郷の柴咲コウとの結婚を控えている。
柴咲がメモを残して突然故郷に帰ってしまったために、彼も急ぎ帰郷する。
実は彼は高校時代に付き合っていた同級生の女の子との追憶から抜け出せずにいた。

予期せぬ帰郷は彼がずっと避け続けていた彼女の追憶との対峙(たいじ)を余儀なくさせるものとなる。

高校時代を精緻(せいち)に描き尽くしたことにより、この映画は生きた。

ボクのようなポンコツ中年でも、学生生活の楽しさ、輝き、一途さ、もはや思い出すこともない青春の日々に思いをはせた。

舞台を一九八六年に設定したこだわりが、画面からにじみ出てくる。

彼らの一九六九年生まれ・十七歳の日常描写の巧みなこと。甘美なノスタルジーは抑えこまれている。

彼女は白血病のために十七歳で逝く。

“雨の音”“逆光のなかに浮かび上がる彼女の輪郭”“走る姿”など、健康な人にとっては何でもないようなことが二人にとってどれほどに輝かしいか。

あたかも健康や青空や清流のごとく、日常を日常として意識することなく通過し得る無自覚の尊さが観客へ迫ってくる。

治療が進みついにクリーン・ルームでの加療となるが、そのガラス越しに重ね合わせた掌(てのひら)が胸をうつ。

抗がん剤治療で頭髪が抜け落ちた彼女の痛みを痛みとして共有する愛。

これほどの結びつきなら、彼が彼女を忘れられなくなったのも無理もない。

 彼らが写真館の山崎努に頼まれて初恋のひとのお骨を盗み出すシーン。

彼らが骨壷(こつつぼ)から取り出したのは、七つの骨からなる頚椎(けいつい)の最上部にある第一頚椎(環椎)である。脊椎(せきつい)骨でありながら椎体と棘(とげ※)突起を欠くために薄い。

環状を呈する唯一の骨である。余談だが、骨上げの際、葬儀屋さんが「ホトケさまですよ」と最後に骨壷に入れるのは“のどぼとけ”ではない。喉仏は軟骨だから、焼くと粉々になってしまう。第二頚椎(軸椎)を間違えて伝えたものだ。軸椎は椎体の上部から棘突起が上方に突出し椎体の下方は裾ひろがりとなって据わりがよく、まるで仏像のようなフォルムをしているためだろう。 

墓荒しは不埒(ふらち)なことだが、愛から出発しているという理由で突っ走ってしまうことも青春の脱線というべきか。

この十七歳時代を演じた森山未来・長澤まさみの奇跡的なまでの透明感が、この映画を若者の中で長く語り継がれるエバー・グリーンへと昇華させた。

(2004年5月31日掲載)

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