ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

生活保護者の集いコミュのDV被害のシングルマザーと子が語る「社会はなぜ助けてくれないのか」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
https://diamond.jp/articles/-/193416

みわよしこ

野田市の女児虐待死事件は氷山の一角
自らもDVに苦しめられる母親たち

 1月、千葉県野田市で小学4年生の女児が死亡した。女児は日常的に父親から暴力を受けていた。女児は小学3年生だったとき、学校のアンケートで、父親から自分と母親が受けている暴力について訴えた。しかし女児が記した内容は、教育委員会から父親へと漏らされ、最悪の結果に至った。2月4日には、父親の暴行を制止しなかった母親も「共謀」者として逮捕された。1歳になる女児の妹は、家族3人を失った。

 貧困問題の取材をしていると、高い頻度で夫のDVから必死で逃れたシングルマザーと出会う。子どもを連れて逃げることが辛うじて可能なケースもあるが、母親1人が逃げるだけで精一杯というケースも少なくない。なんとか生き延び、生活保護制度も利用しながら子どもを守ってきた3人の母親たちに、自らの経験と思いを聞いた。

 まず、3人が共通して指摘したのは「子ども自身の声を聴く」ことの重要性だ。


 マユさん(仮名・30代)は、夫に激しい暴力を振るわれながら、娘を妊娠し出産した。結婚前の夫は、優しそうな好人物だった。しかし夫は、マユさんの妊娠をきっかけに別人のようになった。血縁者や友人たちは、夫の暴力を恐れて去った。

 娘が生まれると、夫は乳児である娘への性的関心を口にし始め、娘が3歳になるとオーラルセックスをさせたという。マユさんは限界を感じて、娘とともに逃げた。娘は現在中学生となっており、紆余曲折の末、社会的養護のもとで育っているのだが、言いたいけれども言えないことがあるようだ。マユさんは、娘の生活環境を案じ続けている。

「子どもが虐待について誰かに訴えるためには、『決定的に見捨てられてしまう』という不安を乗り越える必要があります。結果として、セーフティネットを喪失することになるかもしれません」(マユさん)

虐待する親から子どもを引き離すことが、直接子どもの安全と幸福につながるとは限らない。

「今回の千葉県の事件のように、SOSを出した子どもの秘密を漏らし、父親に共有するようでは……。秘密保持の欠落から、子どもはさらに窮地に追いやられます」(マユさん)

 子どもは、家庭の内部告発がしたいわけではなく、ただ自分の安全と安心を求めているだけだ。

「まずは、子どもが話す言葉を信じて聞いてくれる大人がいて、秘密を漏らさないこと……でしょうか。保護以前に、虐待から一時避難的に離れられる環境も必要だと思います。学校の保健室のような、なんでも話せる環境。それから、ふらっと立ち寄れる学童保育や児童館。家庭の状況が差し迫っている場合には、子どもシェルターのショートステイも」(マユさん)

 見る目や聴く耳を持つ大人たちが、子どもたちのメッセージを受け止めても、具体的にできることがないと、子どもは「結局、社会は自分を見捨てるもの」と“学習”してしまうかもしれない。

母親の「セーフティネット」に
なれない残念すぎる生活保護
 ともあれ、夫からのDV被害を受けている母親が、自分自身と子どもを守るためには、一時的にしても夫から離れるしかない。新しい傷が加わらない安全な環境で、まず積み重なった心身の傷を癒やす必要がある。

 しかし、母親には経済力がない。長年のDV被害によって心身を蝕まれた母親には、すぐに働いて子どもを養うことは困難だ。かつての職業キャリアも収入も人間関係も、DVの結果として失われているだろう。すると、生活保護しかない。

 アルコール依存症の夫がいたユリコさん(仮名・50代)は、離婚後、ボロボロになった心身を治療しながら、3人の子どもたちを育ててきた。生活保護しかなかった時期もある。

「福祉事務所は、早急に就労自立することを促します。その指示に従わなければ、『生活保護が打ち切りになるのでは?』と焦ってしまい、かえってトラウマ障害に苦しみ、結局は子どもたちにまで辛い思いをさせることが、よくありました。トラウマ障害は、15年以上が経過した今もあります」(ユリコさん)

 傷つき病んでいる人々に対しては、まずは治療、そして回復を支援するのも、福祉事務所の仕事であるはずだ。生活保護を脱却した後、介護系専門職として働いてきたユリコさんは、このように語る。

「見守り、待つことが大切なはずです。それから、基本的人権の尊重です。私自身、生活保護で暮らしていたとき、引け目を感じながらの生活でした。でも、『引け目を感じるなんて、間違っている』と言えることが、自立であるはずです」(ユリコさん)

生活保護に助けを求めまた傷つく
自立ではなく不健康の助長に
 DV被害女性たちはそれぞれ、歩んできた人生も、傷つきの内容も深さも、異なっているはずだ。人間は、「お湯をかけて3分」のカップ麺ではない。「だいたい2年くらい、最長5年くらいで生活保護から脱却を」というわけにはいかない。

「すべての世帯、すべての方が、それぞれ状況もプロセスも異なっています。だから、個別対応してほしいです」(ユリコさん)

 個別対応は、対人援助とケースワークの基本でもあるはずだ。

 DV被害者や被虐待児童に接することの多い援助職の和久井みちるさん(50代)には、夫のDV被害から逃げ、生活保護のもとで療養生活を送った経験がある。和久井さんによれば、現在DV被害者に対しては比較的スムーズに生活保護が開始されるという。しかし、安心するわけにはいかない。一般市民と行政との間には、圧倒的な力の差がある。

「DV被害女性が生活保護を申請しようとして福祉事務所のカウンターにいる」という場面では、なおさらだ。和久井さん自身が生活保護を申請したときも、男性ケースワーカーの声が大きいことに強い威圧感を覚えたそうだ。

「DV被害女性は、大声や威圧的な態度に敏感に反応してしまいます。たとえば就労指導を受けたとき、『現状ではまだ就労は無理だ』と思っていても『言う通りにしないと怖い……』と反応し、無理に就職活動をして、不調の日々がダラダラと長引きしかねません」(和久井さん)

 結果として「自立の助長」ではなく「不健康の助長」になってしまう最大の原因は、DV被害に関する理解の不足だろう。

広告

inRead invented by Teads
「生活保護に限らず、警察も児童相談所も学校も社会全体も、暴力とその被害者の実情について、もっと理解を深めてほしいと思います。1人のDV被害者としての願いです」(和久井さん)

追い詰められた母子を救えるか
子どもの利益のための「親権」とは
 それでも、母親が生活保護で安全な生活を送り始め、精神科でDV後遺症の治療を受け始めると、「生活保護」と「精神疾患」が新しい足かせとなる。親権をめぐる両親の争いでは、父親が子どもに暴力を振るい続けていても、定職と定収入があれば、「生活保護」「精神疾患」という2つのレッテルが貼られた母親よりも圧倒的に有利だ。

 現在の生活保護は、追い詰められた母親と子どもたちのための「最後のセーフティネット」としての役割を十分に果たせていない。そして問題は、生活保護制度の外にもある。

 貧困・虐待といった状況に置かれた多くの子どもたちと関わる徳丸ゆき子さん(認定NPO法人CPAO (シーパオ) 理事長 ・ 大阪子どもの貧困アクショングループ 代表)は、「親権」に踏み込む必要性を指摘する。

「いわゆる児童虐待をしてしまう親が、親権を濫用しているとしか思えない事例は、過去にも数知れずありました。そのような事例では、親権停止が子どもを守ることにつながるのは当然ですが、さらに親を加害者にしないことにもつながると考えています」(徳丸さん)

 2011年に民法が改正され、親権は「子の利益のため」と明記された。しかし、親権停止件数は年間100件に達していない。万件単位のドイツやイギリスとはケタが違う。

「ですが、諸外国と同じように親権停止するだけで解決する問題でもありません。児童虐待の件数増加に見合うだけの児童福祉司の増員と、児童相談所の専門性の向上が必要です。さらに、関係機関や民間との役割分担も必要だと考え、大阪の地元で実践に尽力しているところです」(徳丸さん)

広告

inRead invented by Teads
グレーゾーンでもがく
子ども自身の声を聴く重要性

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
「保護の対象から権利の主体へ」という子ども観の転換も必要だ。子どもは社会的に弱い存在だが、もしそこに「かわいそうな子ども」がいるのなら、「かわいそう」な状況をつくっている大人や社会の責任だ。状況を変えるためには、まず当事者である子ども自身の声を聴くことが欠かせない。

「目黒や野田市の事件では、子どもたちは勇気を持って状況を大人に伝えていました。最もしんどい状況、親から引き離すべきかどうかのグレーゾーンにいる子どもたちの声は、ほぼ聞かれていません」(徳丸さん)

 とはいえ、子どもが真実を語れるとは限らない。理由は、虐待の激化に対する怖れから大人への不信感まで、様々だ。時には、意図的な嘘もある。振り回された大人は、困惑し、傷つき、子どもに対する不信感を持つかもしれない。

「でも、子どもの言葉を言葉通りに受け取れば、重く受け止めたことになるとは限りません。関わる人たちが子どもを中心に、子どもとともに、その子にとっての『最善の利益』を問い続けながら対応していくことが、必要なのではないでしょうか」(徳丸さん)

(フリーランスライター みわよしこ)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

生活保護者の集い 更新情報

生活保護者の集いのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。