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生活保護者の集いコミュの矛盾に思える生活保護基準の引き下げはどうやって決まるのか?

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http://diamond.jp/articles/-/158119

2018.2.2 みわよしこ

子どもを応援しながら脚を引っ張る?
生活保護基準見直しの不思議なプロセス
 最初に、朗報を紹介したい。

 本連載の1月19日公開記事「生活保護減額の福島市に違法判決、原告母子が明かす悲壮な思い」において、生活保護世帯の高校生が努力によって獲得した給付型奨学金を収入認定(召し上げ)した福島市の対応について、福島地裁が訴訟の判決で「違法」と断じたことを紹介した。控訴期限は1月30日であったが、福島市は控訴せず、確定判決となった。

 なお今後、福島市は判決に従って、原告の母子に対し、精神的苦痛に対する賠償金10万円を支払うはずだ。しかし判決において「訴訟費用の90%は原告の負担」とされており、賠償金はほぼ訴訟費用に充当されるものと考えられる。1月19日の記事では、この賠償金を収入認定されるものとしてレポートしたが、正確には「収入認定はされないが、訴訟費用を差し引くと母子の手元にほとんど残らない」である。

 まずは、学生生活を翻弄された高校生とその母親の今後の平穏と多幸を祈りたい。さらに、高校生の「自分が経験したような出来事が、誰にも二度と起こらないように」「すべての子どもに平等な教育の機会を」という希望が、日本のあらゆる地域で叶うことを願いたい。しかし一方で、現在開催中の国会では気がかりな事態が進行中だ。

 今回の国会での生活保護問題の焦点は、政府予算案に盛り込まれた生活保護基準の見直しと、生活保護法の再改正案だ。今回の生活保護基準「見直し」は、ほぼ「引き下げ」であり、引き下げ幅が特に大きいのは子どものいる世帯だ。5年ごとの「見直し」は、前回は2013年であったが、そのときも子どものいる世帯を重点ターゲットにしたかのような引き下げが行われており、引き下げ幅は最大10%であった。もしも本年、予算案に盛り込まれた引き下げが実現したら、日本の「子どもの貧困」は解消せず、逆に悪化するだろう。

「引き下げを止めるべき」、あるいは「引き下げるべき」と考える前に、まず生活保護基準の決まり方を見つめ直そう。「急がば回れ」だ。

 生活保護基準部会の委員たちは、「子どものいる世帯に対しては、引き下げが適切である」と取れる発言はしていない。2017年12月に公開された報告書のどこにも、そのような文言はない。それだけではなく、生活保護世帯を含む低所得世帯に対する「相対的剥奪」、すなわち、その社会の「当たり前」が得られないことの影響が問題にされている。

社保審・生活保護基準部会は
「お飾り」に過ぎない?
 生活保護基準部会の委員たちは、「子どものいる世帯に対しては、引き下げが適切である」と取れる発言はしていない。報告書のどこにも、そのような文言はない。それだけではなく、生活保護世帯を含む低所得世帯に対する「相対的剥奪」、その社会の「当たり前」が得られないことの影響が問題にされている。

 特に子どもに対しては、幼少期というタイミングを逃さず与えられるべき育ち・学びの機会が奪われる悪影響の大きさは計り知れない。このことは、前回の記事で紹介した通りだ。しかし、厚労大臣の責任で決定される生活保護基準には、引き下げが盛り込まれている。

 専門家委員たちによる審議は、あくまで「参考意見」。強制力は持っていない。都合よく「つまみ食い」されてしまう可能性、趣旨と異なる政策の根拠にされてしまう可能性に対しては、何の歯止めもない。

 本年1月22日から開催された通常国会では、生活保護基準引き下げを含む政府予算案の審議が始まったばかりだ。この予算案は昨年末、2017年12月22日に閣議決定されている。今後は、衆議院予算委員会→衆議院本会議→参議院予算委員会→参議院本会議の順で審議される。

 ただし生活保護に関連する議論は、予算委員会と本会議だけではなく、厚労委員会・文部科学委員会・総務委員会・国交委員会・内閣委員会など、他の委員会でも行われる可能性がある。生活保護制度の実施に責任を負うのは厚労省であるが、子どもの育ちと学びについては文科省も関係するし、子どもの貧困問題は内閣府の重点取り組み課題であるはずだ。

 健康な居住環境に責任を持っているのは、国交省だ。また実際の生活保護の実施は各地方自治体の福祉事務所が行うため、国と地方の関係という点で、総務省も深く関係している。

 生活保護基準は、「健康で文化的な生活」の最低限度、言い換えれば「日本の暮らし」の基本そのものだ。「すべての人々に基本的な暮らしを保障する」という国の責任は、日本と日本の人々のすべてに関係している。もしも「某国からミサイルが」「日本が戦争に参加」といったことが現実になれば、外務委員会・安保委員会も関係することになるだろう。貧困状態にある人々に対する国の態度に注目していれば、国全体が見えてくる。

そして現在の参議院・衆議院は、いずれも自民党だけで過半数。生活保護基準引き下げが「多数決」によって可決されてしまう可能性は、極めて高い。では、国会で何を議論しても無意味なのだろうか。そんなことはない。

 結果は変わらないとしても、根拠を明らかにさせること、あるいは根拠がないことを明らかにさせることには、重要な意味がある。また、意図を明確にさせることにも重要な意味がある。国会での質疑と答弁は、生活保護制度の在り方の実際を決定する通知・通達・実施要領類に影響を与える可能性を持っているからだ。

 また、福祉削減論の先鋒に立つ政治家といえども、「生活保護受給者への医療は無意味だから止めてしまえ」「生活保護世帯の子どもの将来なんか知ったことか」などとは言えない。もし、そのような意図の有無を質されれば、人道・人権を尊重する姿勢を示すだろう。たとえ「舌先三寸」でも、国会という公式の場での答弁は言質となり得る。また、問題のある政策に対する歯止めともなり得る。

生活保護基準引き下げは
安倍首相の方針と矛盾するはず
 現在のところ、国会で行われた生活保護関連の論戦は、開会直後に行われた安倍首相の施政方針演説(1月22日)、および施政方針演説に対する各会派の代表質問(1月24日・25日)のみだ。

 安倍首相は、「格差の固定化は、決してあってはならない」とし、「貧困の連鎖を断ち切」るため「生活保護世帯の子どもたちへの支援を拡充」すると述べた。支援の内容とは、生活習慣の改善や放課後の補習などであるという。

 また、生活保護世帯からの大学進学に対する何とも半端な「0.1歩前進」程度の支援についても言及した。しかしその一方で、「公平性の観点から給付額を見直す」と、保護基準の引き下げを正当化した。

 これに対して、立憲民主党の枝野幸男代表は「子どものいる世帯では4割以上が、ひとり親世帯に絞っても4割近くが減額になり、全体では3分の2を超える世帯で減額に」と、子どものいる生活保護世帯を狙い撃ちしているかのような引き下げを問題にする質問を行った。

希望の党の玉木雄一郎代表は、日本では所得再分配が機能していないというOECDの調査結果を引用しつつ、「生活保護の母子加算や児童養育加算を削減する一方、海外には多額のお金を配ったり、最新のミサイル導入に何千億もの莫大なお金を」「子どもの貧困対策への予算があまりにも少ない」と指摘し、「母子家庭の命綱を削るような予算」と厳しく批判した。

 日本共産党・志位和夫委員長は、生活保護基準の最大5%の削減方針を「重大」とした。また、安倍首相が述べた「公平性の観点」については、「アベノミクスが失敗したことを、自ら認めることになるではありませんか」、子どものいる生活保護世帯に対する引き下げについては「生活保護世帯の子どもたちへの支援を拡充しますと述べましたが、やろうとしていることはまったく逆ではありませんか」と追及した。

 いずれの質問に対しても、意味ある回答はなされていない。

最大の敵は「無関心」
これから始まる生活保護論戦

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 衆議院での本格的な議論が始まるのは、これからだ。現在、4件の質問が予定されている。内容は、尾辻かな子氏(立憲民主党)と池田真紀氏(立憲民主党)による引き下げに関する質問、山井和則氏(希望の党)による子どものいる世帯への深刻な影響および一般低所得世帯への影響に関する質問などだ。

 答弁の内容や状況によっては、さらに増えるかもしれない。また、衆議院で予算案が可決された後には、参議院での議論がある。子どもたちに対する取り返しのつかない事態へと踏み切る前に熟議を尽くすことは、非効率であっても無駄ではないはずだ。

 これから国会で行われる質疑・答弁・採決は、日本の有権者たちが選挙で行った選択の結果だ。有権者1人1人には、現在の議員や勢力に対して、好悪様々な感情があるだろう。しかし今、国会議員を「チェンジ」することはできない。

 必要なのは、「どうせ結果は変わらない」と無関心になることではなく、個々の成り行きへの関心を失わないでいることではないだろうか。有権者には、有権者としての責任があるはずだ。

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