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生活保護者の集いコミュのガバナンス・国を動かす:第1部・政と官/7派遣村元村長、思わぬ壁

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湯浅誠氏(40)は、動きの鈍い官僚たちにいらだっていた。

 「居酒屋で『本日のおすすめ』を売りたければ、お客さんに直接声をかけますよね。学生アルバイトだって分かるのに、なぜ、やらないんですか」

 08年末、東京・日比谷公園に出現した「年越し派遣村」の元村長。貧困問題のアドバイザー役を菅直人副総理に頼まれ、内閣府参与として政府に入った。「政治任用」の人事だ。昨年10月15日に政府が開いた緊急雇用対策本部の準備会合では、さっそく生活困窮者への支援策をA4判にまとめて提出した。

 派遣村の経験から湯浅氏がこだわったのは、ハローワークと自治体、社会福祉協議会に分かれた就労支援や生活保護の申請窓口を一本化する「ワンストップ・サービス」の提供だ。これを年末年始に「全国の大都市圏、政令市、中核市で行う」と記した。厚生労働省の山井(やまのい)和則政務官も了承し、政治主導で支援策が実現すると考えていた。

 ところが、10月20日に見せられた緊急雇用対策の原案に驚かされる。全国展開するはずのワンストップ・サービスが「東京、大阪、愛知で試行する」と3都府県限定に変わっていたからだ。湯浅氏は慌てて地名の後に「等」を付け加えて3日後の発表にこぎつけた。

 支援の規模をしぼろうとする動きの背景には何があったのか。

 当初は官僚による抵抗と考えていた。しかし、やがて根深い問題に気付かされる。それは、不況下で増加する一方の生活保護費をめぐる、国と地方のいびつな駆け引きだった。

 生活保護費は国が4分の3、自治体が4分の1を負担する。小泉政権の「三位一体改革」で国は2分の1への引き下げを図ったが、地方の猛反発で見送った。それでも、昨年10月の生活保護受給世帯は過去最多の128万世帯(前年比14万増)に達し、地方財政を圧迫し続けている。

 湯浅構想に、多くの自治体が尻込みした。困窮者が集まる場所で、生活保護の申請まで受け付けたら負担がさらに増えてしまう。負担を抑えるには、窓口を設けなければいいという逆立ちした論理だった。「どうしてもやるなら協力できない」と突き上げられた厚労省も「国が自治体に命令できる時代ではない」と積極的に動こうとはしなかった。

 ワンストップ・サービスは昨年12月、全国204カ所で実施された。ただ、生活保護申請を含む窓口一本化は実現しなかった。「政治主導」のスローガンだけでは打ち砕けない厚い壁を思い知った。

元日の昼過ぎ。鳩山由紀夫首相は、東京都が緊急雇用対策として渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターに開設した「公設派遣村」を視察し、貧困問題に取り組む姿勢をアピールした。

 青少年センターは、文部科学省所管の独立行政法人が運営する施設。厚生労働省が協力を打診したところ、文科省は難色を示し、交渉は政治家同士の話し合いに持ち込まれた。ところが、両省の政務官による協議でも結論は出なかった。

 事態の打開に動いたのは、湯浅誠内閣府参与だ。菅直人副総理や連合の笹森清元会長らを通じて川端達夫文科相に働きかけ、ようやく前向きな返事をもらった。役割分担のはっきりしない「政」と「官」のすき間を、埋める必要があった。

 「私が舞台を設定するから、思うようにやってくれ」。菅氏が湯浅氏に参与への就任を打診したのは昨年10月4日。「自分の人生は7割が選挙。残りの3割で政策を考えてきた。現場で10割やってきた君にかなうわけがない」。政府に協力すべきかどうか悩んでいた湯浅氏を、菅氏はそう言って口説いた。

 政府での肩書は当初の「国家戦略室政策参与」からなぜか「内閣府参与」に変わった。「雇用対策は国家戦略室の仕事ではない」と説明されたが、民主党内に湯浅氏の起用を快く思わない議員がいるといううわさを後で聞かされた。

 「貧困問題という視聴率の高い分野に、政治家が湯浅氏を引っ張ってきた」。厚労省内にも冷ややかな声がある。社会援護局の幹部は湯浅氏の信念に共感しつつ、不満を漏らした。「カネがない中で人や組織を動かすのに我々が日々苦労していることを、湯浅さんは分かっていない」

 官僚との距離を縮められないまま年末が近づき、湯浅氏は生活費貸付制度や雇用保険の改善を提案した。だが、各課の担当者から返ってくるのは「財務省が認めてくれない」「実現は難しい」という返事ばかり。湯浅氏の目には「縦割りの法律や制度の枠の中でできない理由を探している」ように映った。

 ワンストップ・サービスや公設派遣村が実現したのは、貧困問題に理解のある菅氏や山井和則厚労政務官らが政権にいたからだ。ただ、官僚機構を動かして政策の枠組みを変えるまでにはいたっていない。

 「個人プレー頼みの粗削りで不安定な政治主導がどこへ向かうのか、まだ政治家にも官僚にも見えていない」。参与の仕事を続けるべきかどうか、湯浅氏はまだ決めきれないでいる。

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