生活保護者の集いコミュの【社説】生活保護制度　確かな「安全網」の構築を

https　生活に困窮した人の「最後のセーフティーネット」は名ばかりで、機能していないのではないか。

　2013～15年に国が生活保護費を引き下げたのは生活保護法に違反するとして、福岡県内の受給者39人が国と関係自治体を相手取り、減額措置の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が先月、福岡高裁であった。

　判決は37人に対する減額を取り消す原告の逆転勝訴だった。受給者の消費実態を反映していない数値に基づき引き下げ幅を決めたとして「不合理で違法」と断じた。

　判決によると「受給者は食費や光熱水費も抑えた生活を余儀なくされた」という。法に従って事務を行っている関係自治体は上告した。

　生活保護制度は憲法25条の生存権に基づく。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めている。病気や失業などで生活が行き詰まることは誰にでもあり得る。

　食費や光熱費を補助する生活扶助、家賃を賄う住宅扶助などがある。国は世帯の人数や居住地域などにより「最低生活費」の基準を決めており、収入が満たない場合に不足分が支給される。

　12年に政権復帰した自民党は、この年の衆院選公約に生活保護費の1割カットを掲げていた。国は翌年から3年にわたり生活扶助の基準額を平均6・5％引き下げ、約670億円を削減した。

　同種の訴訟は全国29都道府県で起こされ、一審では29件中18件で減額措置が取り消された。高裁判決は5件目で、原告勝訴は23年の名古屋高裁に続く2件目だった。

　行政訴訟で原告勝訴がこれほど積み重なるのは極めて異例という。政府は重く受け止めねばならない。

　原則5年ごとに見直される基準額は減額基調が続く。23年度からの減額はいったん決まったものの、物価高騰に配慮して見送られた。

　25年度予算案では24年度まで2年間の予定だった1人当たり月千円の特例加算を継続し、さらに500円引き上げる。ただ全保護世帯が対象ではなく、物価高騰を考えると不十分との声が根強い。

　生活保護の受給世帯は165万前後と横ばいだ。日弁連によると、受給資格がある世帯の2割ほどしか利用していない。6～9割に上る欧州との差は歴然としている。

　背景には「甘えている」など偏見への恐れがある。不正受給も指摘されるが、額は全体の1％にも満たない。

　家族が支援できないか、自治体による扶養照会の制度も申請のハードルを高めている。受給者が大幅に減り、行き過ぎた自立支援が指摘された自治体もある。

　生活保護は命に関わる問題だ。必要な人がためらわずに必要な分を受給できる安全網でなくてはならない。法改正も含め、国には不断の検証と対策が求められる。

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