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小説書き組合コミュの初めて小説書いてみました。

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 楓
       

もうすぐ楓が色づき始める季節がやってくる。あの時から1年以上もたったことを、俺は楓が色づくことでしか気づくことができない。
俺と祐の出会いは祐が中学3年生の夏だった。俺は塾の講師として、祐は生徒として同じ教室にいた。祐の本名は、山本祐。俺の名前は織田昭。
祐は勉強の出来が良い方ではなく、いつも居残りをしていて、俺がその監督につくことも少なくはなかった。祐が俺に好意を持っているのに気づいたのは、塾の周りの木々も色づき始めた9月の終わりだった。同僚の先生からも、他の生徒からも「山本さんから好かれていますね。」と日常茶飯事のように言われていたし、それになにより祐の態度はあからさまだった。実際、祐をからかうのは面白かった。俺とは絶対に目を合わせようとしないし、俺が授業中に答えを指名すると、決まって頬を赤く染めて下を向き「分かりません」と答えていた。授業が終わって祐の苦手な数学を教えているときも、問題に集中せずいつも俺の手ばかり見ていた。
祐と付き合う気はさらさらなかったが、優に好かれているのに悪い気はしなかった。人に好かれるのは誰にとっても嬉しいことだと思う。それに俺は、今期で塾講師を辞め、公務員として働くことに決まっていた。だから、「中学生に好かれるのも彼女が最後なんだろうな。」と思いながら毎日過ごしていた。
ある日、同僚の大原先生から「織田先生は卒業後に山本さんから告白されたらどうするんですか。手、出すんですか。」と聞かれた。俺はもちろん「そんなことするわけないじゃないですか。」と答えた。当たり前だ。俺には付き合っている彼女もいるし、卒業後といっても高校生。手なんて出すはずがない。犯罪じゃないか。「そうですよね。すいません。いや、実はですね、高木先生を好きな原さんいるじゃないですか。高木先生に『高木先生は原さんから卒業後に告白されたらどうするんですか。』って聞いたら『正直分かりません』って答えられたんで…。ありえないですよね。」「…ああ。確かにありえない。」とその時の俺はそう思っていた。
 それからしばらくして、祐にアドレスを聞かれた。いつものように頬を赤くして「先生、アドレス教えて?」とつぶやいた。そのころには祐は塾で一番仲のいい生徒になっていた。「卒業したらね。」と言うと祐は嬉しそうに笑っていた。

色づいていた葉も落ちて冬が近づいてきた。


 いつものように、祐は居残りをしていた。俺が祐に数学を教えていると、祐の友達の小森美貴が「先生!年賀状書きたいけ住所教えて。」と言ってきた。祐はびっくりしている。俺はそれに気づかないふりをして美貴に住所を教えた。しかし、年末のある日、祐から「先生、年賀状書いたけ、ちゃんと返事書いてね。」と言われた。「あれ?小森やなかったん?」と言うと祐はうつむいて「いいやん。とにかくよろしく。」と言って逃げていった。どうやら、美貴が気をきかせて住所を聞いたらしい。俺は困惑しながらも、祐が自分に年賀状を書いてくれたことを嬉しく思った。

外には雪が降り始めていた。


結局俺は、正月に友達とスキーに行っていたので祐に返事を書くことはできなかった。
 冬休みも終わって年明け最初の授業、俺は祐のクラスの担当だった。しかし、一つ空席がある。祐だ。俺は罪悪感に襲われた。「俺の授業だから出ないんだろうか。」そう思うと俺は授業に身が入らなかった。30分程遅れて祐は教室に入ってきた。祐は俺の顔を一瞬見て目をそらして「すいません。起きれませんでした。」と言い机に座った。
休み時間、すぐに祐のところに行き年賀状の返事が書けなかったことを謝った。祐は笑顔で「いいよ。いいよ。」と言ってくれた。そして、俺から謝られたことで友達からからかわれている祐を背にし、俺は教室を後にした。講師室に帰ると教室長から、冬季明けの授業はAクラスの担当になったということを伝えられた。その時、俺の頭に祐との約束が浮かんだ。年末にたまたま車までの帰り道が一緒になった祐に「3学期もちゃんと俺が授業受け持つから、合格しろよ。」と約束していたのだ。俺は教室長に了解の意を伝え、自分の席に戻った。祐はBクラスだったので、祐に授業をすることはもうない。祐の悲しむであろう顔と、約束した日の祐の笑顔が頭から離れなかった。
その日のうちに、授業を持てなくなったことを祐に謝ったが祐はまた笑顔で「いいよ。いいよ。」と言った。

寒さはどんどん厳しくなっていた。
 

2月13日。
授業が終わり、いつものように車まで歩いていると祐が追いかけてきた。俺が「何?」と聞くと、うつむきながら赤い袋を渡してきた。俺は意味が分からずに「プレゼント?」と聞きなおした。祐は顔を上げずに「明日、バレンタイン。明日は会えんけ。」と答えた。俺は祐を家まで送って行くことにした。その日、俺は祐に携帯の番号も教えた。

外はあいかわらず雪が降り続いていたが、車の中は温かかった。


 一週間ほどして祐が高校に合格したことを聞いた。夜も遅かったが、祐に電話をかけた。祐は受話器を通しても分かるほど声がはずんでいた。それから、合格祝いに祐と小森を遊びに連れて行く約束をして電話を切った。祐と二人で遊びに行く、という約束は出来なかった。それでも祐は、嬉しそうだった。それから、よく電話をするようになったが、祐と塾で話すことはなくなっていた。
 祐たちを遊びに連れて行ったときも、祐は終始笑顔だった。祐が俺のかわいい教え子だということは、祐が卒業しても変わらなかった。
祐が高校に入学した後も電話は続いていた。祐が高校に入学して少しした頃、祐から告白された。もちろん断ったが、勉強をゴールデンウィークに教えてあげる約束をした。約束をしたはいいが、俺は公務員になったばかりで、祐は高校生。彼女もいるから人目につくわけにはいかない。人目につかない場所を探したが、思いつかなかったので、祐をホテルに連れて行った。しかし、俺に祐を抱く気は全くなかった。かわいい教え子といっても正直タイプじゃないし、女性として見ることはできなかったのだ。
祐は相変わらず、数学が苦手だった。「休憩する。」と言って祐はベッドに横になった。俺も疲れていたので一緒になって横になっていたのだが、いきなり祐に抱きつかれて「一回だけでいいから。」と言ってきた。俺はいろいろ考えた末、祐を抱こうとした。祐にキスをしたとき。祐の唇が震えているのが分かった。祐はキスさえもまだしたことがなかった。
俺はやはり祐を抱けなかった。

まだ、春の風がここちよい暖かな日だった。

 それから一年間、俺は祐に会わなかった。しかし、祐が高校二年生の夏、俺たちは一線を越えてしまった。何が俺をそうさせたのかは分からない。だが、それからは毎週のように祐に会い、祐を抱いた。俺は彼女と婚約したが、祐と会うのをやめようとは思わなかった。祐から何回も別れ話をされた。でも、俺は祐が本気で俺と別れる気はないことを知っていたから、その度に了承した。そしてやはり、何ヶ月か後には俺たちは自然に体を重ねていたのだ。
いくつかの季節がめぐり、祐も大学生になった。祐は県外の大学に進学した。俺は、祐の進学と同時期に結婚したので、祐と連絡をあまり取れなくなり、会える回数も格段に減った。だからゴールデンウィークに祐が帰省したとき、今まで会えなかった分を埋めるように祐と抱きあった。祐と初めてキスをしたときと同じように、春の陽射しは暖かかった。

それから一ヵ月後、祐からいきなり電話がかかってきた。「先生、大事な話があるんやけど、今いい?」「どうせ、俺を驚かせようと思って妊娠したとか言い出すんだろ。」と思いながら、「あ〜。今ゲームしようけねぇ。」と言った。祐は声を変えることなく、「ならそのままでいいけ、聞いて。…今日、病院行ってきたんよ。そしたら、妊娠六週目やって。」
俺は目の前が真っ暗になった。祐の声が震えているのが分かったからだ。

 次の日、祐が帰ってきた。昨日の晩、俺は一睡も出来なかった。祐と再会し、とりあえず祐をビジネスホテルに連れて行った。祐を実家に帰すわけには行かない。祐を実家に帰したら、全てが終わってしまうからだ。祐はずっと泣いていた。俺は祐を抱きしめたが、祐のことを考える余裕はなかった。嫁のこと、仕事のこと、実家のことを考えるので手一杯だったからだ。
俺は思わず、涙をこぼしてしまった。祐はそれを見て、泣きながら俺を精一杯抱きしめてくれた。そして、「産みたい。」と言った。俺は何も言わなかった。
しばらくして、祐の涙は止まった。そこで俺は、祐が泣いている間に考えていたことを口にした。俺は祐に「俺のこと好き?」と聞いた。祐は下を向いたまま黙った。そして「先生と同じだよ。」と言った。「意味が分からん。」俺は、自分の声がいらだっているのを感じた。「先生は私のこと愛してないやろ?」「あぁ。愛してないね。」俺は冷たく言い放った。「祐は俺のことを愛してなかったのか。」そう考えるだけでいらだちが募った。祐は俺のことをずっと好きだったと思っていたのだ。「君は俺の子やけ産みたいんやないんやね。結局、誰の子でも良かったんやろ。」そう続けた。その瞬間、祐の顔は曇った。泣くのを必死で我慢しているようだった。そして、「好きだよ。でも先生は私のこと好きやないやん。先生は結婚しとんやけ、好きとか言えんやん。ホントは四年間、ずっと好きやったのに…。」と続けた。俺は祐を抱きしめたながら、ただひたすら謝った。そして、そのまま祐を抱いた。
 こんなことになっているというのに、俺が祐を抱きたいという気持ちは止まらなかった。祐も俺を拒まなかった。祐の気持ちは祐の体温を通して俺に伝わってきた。祐は中学生だった頃から変わらず俺のことを愛してくれていた。

 まだ夏は来ない。


 祐が帰って来て、二週間がたった。俺は祐にもう泣き言しか言えなかった。祐が情にもろいのを知っていたからだ。俺はずるい大人で、ずるい男だった。祐が帰ってきてから二週間、祐をビジネスホテルに滞在させて、ひたすら俺の希望を聞くことを願っていた。俺の希望は「誰にも言わずに堕胎すること。」ただ、それだけだった。しかし、祐が抱える問題としては重すぎたに違いない。
祐は毎日、「産みたい。」と言い続けた。しかし、俺は絶対それを許可しなかった。「産みたいんやったら一人で産んでくれ。俺は君とは結婚しないし、養育費も払わない。」「今回のことが公になったら、俺は離婚。俺の前の職場で嫁が働きようけ、友達にも知られてしまう。仕事も辞めないけん。親にも勘当されるやろうな。そんなんなったら、恥ずかしくて生きていけん。自殺するしかない。」そう常々言っていた。その度に祐は「死なないで。」と言って俺を抱きしめた。
ある日、祐に「死にたいのは私の方やし。」と言われた。そこで俺は、つい口にしてしまった。「死にたいんなら死んでもいいよ。俺は止めないから。でも、死ぬんやったら俺の見てないとこでね。さすがに俺の見よう前で死のうとしたら、止めるよ。死ぬ、死なんは君の勝手やけさ。」俺は祐の顔色が変わったのに気づいたが、自分の口から出る言葉を止めることが出来なかった。祐は放心状態になり、涙さえ流さなかった。そこでやっと、俺は自分の言ったことに後悔した。いつものように祐に「俺のこと好き?」と聞いても、祐はうなずかった。祐が帰ってきてから二週間、あの日以来、毎日「好き。」と言ってくれていたのに。俺は、どうしたらいいか分からず、ただ「俺のこと好き?お願いやけ好きっち言って。」と言い続けた。しかし、祐は一度もうなずかなかった。
次の日、いつものように祐の元に向かう前に電話をかけた。しかし、無情にもコール音が鳴り響くだけで、祐が電話に出ることはなかった。「寝ているのか。」と思い、祐のいるビジネスホテルへ向かった。部屋に入って、祐の姿を探すが見当たらない。風呂場からシャワーの流れる音だけが聞こえる。しばらく待っていたが祐が出てくる気配はなかった。そこで、風呂場を覗いた俺は一瞬目を疑った。
そこには、手首から真っ赤な血を流し、バスタブにもたれかかっている祐の姿があった。
俺は急いで、祐に駆け寄った。まだ、かすかだが息はある。急いで病院に運べば、助かるだろう。俺は救急車を呼ぶために携帯電話を取り出し、ボタンを押そうとした。だが、一瞬手を止め、ポケットに携帯電話を直した。そして、煙草に火をつけた。

 気がつけば、季節は春から夏へと変化していた。

煙草が吸い終わりかけたその時、どこからか音楽が流れているのに気付いた。俺は音の鳴る方を探った。その音は祐の鞄から流れている。
スピッツの楓が流れ続けていた。


          楓(スピッツ)

忘れはしないよ 時が流れても
いたずらなやりとりや
心のトゲさえも 君が笑えばもう
小さく丸くなっていたこと

かわるがわるのぞいた穴から
何を見てたかなぁ?
一人きりじゃ叶えられない
夢もあったけれど

さよなら 君の声を 抱いて歩いていく
ああ 僕のままで どこまで届くだろう

探していたのさ 君と会う日まで
今じゃ懐かしい言葉
ガラスの向こうには 水玉の雲が
散らかっていた あの日まで

風が吹いて飛ばされそうな
軽いタマシイで
他人と同じような幸せを
信じていたのに

これから 傷ついたり 誰か 傷つけても
ああ 僕のままで どこまで届くだろう

瞬きするほど長い季節が来て
呼び合う名前がこだまし始める
聴こえる?




祐と一緒に車の中で聞いた曲だった。
俺はそのとき、自分の中にある祐の存在の大きさに気付いた。俺は祐に駆け寄り抱き寄せたが、遅かった。もう、祐の息はなかった。俺は涙を流すのを我慢することが出来ず、祐のまだ温かい唇にキスをした。俺は二つの命をこの世から消してしまった。祐と子どもの二つの命を…。俺が殺したのだ。

俺は、祐をベッドに寝かせた。眠っているようにベッドに横たわる祐はまだ幼い少女だった。俺が祐を無理やり大人にしてしまったのだ。そんな祐を見ながら、俺は祐の荷物を整理した。携帯、財布、MDプレーヤー、煙草。そしてエコーの写真。俺と祐の子どもの写真。その裏には
「楓
 父親 織田昭
母親 山本祐
出産予定日 1月26日」
と記されてあった。俺はその写真をしばらく見つめ、財布の中に閉まった。


ふと、祐の煙草に目がいった。俺のまねをして吸い始めた「Marlboro LAIGHT MENTHOL」。あれだけ「止めろ」って言ったのに…。
ふと、ライターに書かれた手書きの文字が目に入った。そのライターには、祐の字で一言「幸せになって下さい。」と書かれていた。どれくらいだろう。俺はそのライターを手にしたまま立ち尽くし、自分のライターを取り出した。そして、そのライターを祐のポケットにしまい、祐のライターを自分のポケットにしまった。
交換できなかった指輪の代わりに…。


さよなら。君の声を抱いて歩いていく。

俺は、もう冷たくなりかけている祐の唇にもう一度キスをした。そしてもう、それ以上は振り返らず、ビジネスホテルを後にした。
ホテルを出た後、祐のライターで煙草に火をつけようとした。しかし、祐のライターに火が灯ることはなかった。祐の命と同時にライターの火もつかなくなっていたのだ。俺は自分のポケットを探り、もう一つ持っていた自分のライターで煙草に火をつけた。同じ煙草のはずなのに、さっき吸ったときよりも少し苦く感じた。
俺は煙草の火を消した。
隣に祐はいない。祐の笑顔を見ることも出来ない。
頬を赤く染めた祐を見ることもない。「あぁ、頬を赤く染めた祐はまるで楓のようだった。」今になってそう思う。あの日々に戻ることはもう出来ない。

楓が色付く気配もない。


楓が色付くのは、この夏を越えてからだ。





初めて書いたので、いろいろアドバイスくれたら幸いです。

コメント(3)

 はじめまして。読ませてもらいました。

 しかしちょっと主人公に共感できない(笑) むしろそれが狙いだとしたら、素晴らしく成功しています。しかしもしそれが狙いでなかったなら、もう少し心理描写が欲しかったかもしれません。

 できればそこのところを加筆した作品を読ませてもらいたいぐらいですが、どうでしょう。

 あと、この作品であれば、ベッドシーンも描写して欲しかった気がします。卑猥な意味でなく、そのとき相手をどういうふうに扱っていたかということが、この作品の場合、重要な人間描写になったのではないかと思うので。

 独断と偏見による個人的趣味満載の感想で恐縮ですが、よろしくです。また新作を読ませてもらいます^^
私も友人に言われた事なのですが、最初のうちはセリフ無しで書いてみることをお勧めします。色々勉強になりますよ。
言葉自体、文章や表現に特に問題ないと思います。ネタ的には斬新、とは言えないけれど、初めて書いたのなら十分上出来、と思っていいんじゃないでしょうか(^^)

とりあえずは、書き方を少し見直してみましょう。いわゆる「原稿用紙の使い方」というやつです(><)それだけでずいぶん印象は変わるかと。

あと、これは自分からの質問なんですが、作中にスピッツの歌詞をそのまま引用したのはどうしてですか?

例えば、名作文学の短い詩や文章の一部を引用するのはよくあることと思うんですが、この作品の場合、全体の文章量に比べて引用の部分が多すぎるので、ちょっと違和感を覚えました……。
急に違う人(スピッツ)の作品を、しかもしばらく読んでいることになるからだと思います。

これが「楓」にインスピされた作品であったとしたら、それでも自分なりの表現で書くべきだと思います。というか、それが読みたいと思いました。

個人的な好みも含めての感想ですけど、十分いいもの書けていると思います。次回作にも期待です☆

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