ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

こころとサイエンスコミュの頭のよい子を育てる秘訣は? (長文注意 )

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
頭のよい子を育てる秘訣は? (長文注意 )
The Secret to Raising Smart Kids

「あなたは頭がいいのよ」と子どもをほめるのは考えものだ。30年以上にわたる研究の結果、知能や才能ではなく、努力を重視することが学校や人生での成功のカギとなることがわかった。
キャロル・S・ドゥウェック

<学校の成績は自分の知能だけで決まると信じている子どもは、勉強が難しくなってくると挫折することが多い>

聡明な少年ジョナサンは小学校をまったく問題なく楽々と終えた。すいすい課題をこなし、いつも成績はAだった。勉強で苦労しているクラスメートがいるのがジョナサンには不思議でならなかったし、両親からは、おまえには特別な才能があると言われていた。

ところが、中学生になるとジョナサンは突然学校への関心を失い、宿題もテストの勉強もしなくなった。当然、成績は急降下。両親は「おまえはとても賢いのだから」と励まし、自信を取り戻させようとした。しかし、そのようなやり方では、ジョナサンに勉強する意欲をもたせることはできなかった。ジョナサンは学校の勉強は退屈で、意味がないと主張した。(ジョナサンは数人の子どもの特徴を合わせた架空の少年)

<才能をほめるのは逆効果>

私たちの社会では才能がもてはやされ、多くの人が、高度な知能や能力、そしてそうした能力に対する自信をもっていることが成功に秘訣だと考えている。ところが実際には、30年以上に渡る学術調査で、知能や才能を強調しすぎると、人は失敗に際してもろくなり、挑戦を恐れ、短所を改善したがらなくなることがわかった。

その結果、ジョナサンのような子どもができる。低学年のうちは簡単に好成績がとれたため、努力せずによい成績をとることが優秀な人間あるいは天才の定義なのだという危険な考えをもつようになる。

そういう子どもは知能は生まれつきのものだと固く信じ、がんばって勉強することは、賢いこと(あるいは賢くみえること)より重要でないと思うようになる。こんなあふうに思い込んでしまうと、困難や失敗、さらには努力を要することさえもが自分に対する脅威だと感じるようになる。
本来そういったものは、自己を改善するためのよい機会となるのだが。
そして、勉強がもはや、やさしいと感じられなくなると、彼らは自信と意欲を失う。

ジョナサンの親がしたように、子どもの天賦の才能を賞賛すると、こうした考え方が強まる。こうした考え方によって、子どもだけでなく、若い運動選手や社員の潜在的可能性が生かされなくなってしまうだろう。

また結婚生活においても同じようなことがいえる。一方、私たちの研究からは、知能や才能よりも努力に重点を置くことを奨励する「成長型思考」を教えると、学校や人生において、すぐれた成果を上げる助けになることが示されている。

<挫折というチャンス>

私たちのやる気の基礎となっているものは何なのか? 挫折のあと、人はどうやってそれに耐え抜くのか? 私が最初にそういったことに興味を抱いて研究を始めたのは、エール大学の大学院生として心理学を学んでいた1960年代のことだった。

ペンシルベニア大学の心理学者マーチン・セリグマン、スティーブン・マイヤー、そしてリチャード・ソロモンはほとんどの動物は何度も失敗をすると、状況は絶望的で自分の手には負えないと思うようになることを実験で証明した。

また、動物たちがそのような経験のあと、たとえ自分で状況を変えることが可能な場合でも、消極的になりがちであることもわかった。彼らはこの状態を「学習された無力感」と名付けた。

人間も無力を思い知ることがあるが、挫折に対して全員が同じ反応をするわけではない。困難に遭遇するとあきらめてしまう生徒がいる一方、能力は同程度なのにがんばって学び続ける生徒もいる。それはなぜなのか?

私はまもなくひとつの答にたどりついた。失敗の原因をその人がどう考えるかによって、その違いが生まれるのだ。
とくに、成績不振の原因を能力不足と考えると、努力不足と考える場合よりも、モチベーションが下がる。
1972年に、私は学習意欲をなくした小中学生を対象に実験研究を行なった。ひとつのグループの絵師とには、算数の問題が解けないのはあなたたちの能力が足りないからではなく、努力が足りないせいだと教えた。すると子どもたちは問題が難しくなってもあきらめずにやり続けるようになった。さらに、彼らは難しい問題に直面しても、その多くを解くようになった。

< Fast Facts > 成長の苦しみ

1、多くの人が、成功のカギは優れた知能あるいは才能にあると考えている。しかし、30年以上に渡る研究から、知能や才能を偏重して、そうした能力は生まれながらに固定されているという考えをもつと、人は失敗に弱くなり、挑戦を恐れるようになって、学ぶ意欲をなくすことがわかってきた。

2、「成長型思考」を教えて、知能や才能よりも努力に重点を置くように促すと、学校や人生で優れた結果を出せる。

3、親や教師が子どもに成長型思考をもたせる方法には、子どもの知能ではなく努力や粘り強さをほめる、勤勉と向学心を強調する成功談を聞かせる、脳は一種の学習機械だと教える、などがある。

同じく学習意欲を失った子どもたちのもうひとつのグループでは、やさしい問題が解けたときにごほうびを与えたのだが、難しい算数の問題を解く能力は伸びなかった。こうした初期の実験結果から、努力に焦点を合わせれば、やる気のなさを克服し、成功を生み出す助けになることが明らかになった。

それに続く研究では、最も粘り強い生徒は、自分自身の失敗についてくよくよ考えることはまりなく、間違いを解決すべき問題としてとらえることがわかった。

私は1970年代にイリノイ大学で、当時自分の教室の大学院生だったキャロル・ディーナーとともに、60人の小学5年生を対象とした研究を行なった。

子どもたちに非常に難しいパターン認識問題を説かせ、解きながら考えを声に出して言ってもらった。何人かの生徒は間違えると言い訳がましいことを口にした。「覚えるのは苦手なんだ」と自分の能力を否定するようなことをいい、問題解決のほうはますますうまくいかなくなっていった。

一方、他の子どもたちは、誤りを修正することと自分の能力を磨くことに気持ちを集中させた。ある子どもは自分にこうアドバイスした。「ここでちょっとスピードを落として、こうれがどういうことか考えたほうがいい」。二人の生徒には特に目をひかれた。一人の子は行き詰まると、椅子を引き寄せて両手をもみ合わせて舌打ちし、「チャレンジが好きなんだ!」と言った。もう一人の子も難問にぶつかると、実験者を見上げて「(この実験が)自分の勉強になるといいなと思ってたんだ!」と満足げに言った。
予想どおり、このような姿勢の子どもたちは、研究対象となった集団の中で群を抜いて優れていた。

<固定型思考と成長型思考>

その数年後、私は学習のタイプを「あきらめ型」と「習得志向型」という二つの大まかなタイプに分け、この違いがどこから生まれるのかについて一般的な仮説を立てた。この二つのタイプの生徒たちは、自らの失敗の原因についての説明が異なるだけでなく、知能についても異なる「考え方」を持つことに私は気づいた。

あきらめ型の生徒は、知能は固定したものだと信じている。個人の知能は決まっていて、それは変わらないというのだ。これを「固定型思考」と呼ぶことにする。
誤りを犯すと彼らは自信を失う。失敗は能力不足のせいであり、その能力は変えられないと思うからだ。そういう子どもたちは挑戦をさける。挑戦すればミスを犯す可能性が高くなり、頭が悪そうに見えるからだ。

ジョナサンと同じく、そういう子どもたちは、一生懸命にがんばることは自分がバカだと証明しているようなものだと信じているため、努力を避けようとする。
ところが、習得志向型の子どもは、知能は鍛えうるもので、教育や勤勉によって伸ばすことができると考えている。彼らは何よりも学びたがっている。知的能力を伸ばせると信じていれば、当然そうしたいと思うだろう。間違いは能力不足のせいではなく、努力不足の結果だから、もっとがんばれば直すことができる。

難題は自分を脅かすものではなく、活力を与えてくれるものだ。難題は学ぶ機会を与えてくれるのだから。私たちは、成長に関してそのような考え方をもっている生徒は、やがて学業でよい成績を収めるようになり、ほかの生徒よりも秀でる可能性が高いだろうと予測した。

この予想が的中したことを私たちは2007年前半に発表した論文で報告した。コロンビア大学の心理学者リサ・ブラックウェルとスタンフォード大学のカリ・H・トゥルツェスニエフスキーと私は、生徒の考え方が数学の成績にどのような影響を与えるのかを調べるため、中学生になったばかりの373人の生徒を2年間に渡り調査した。

中学に進むと勉強はとたんに難しくなり、成績の評価も厳しくなる。中学1年の最初に、「知能は生まれつき備わっているもので、自分では変えることができない」といった文章に対する賛否を答えてもらって、生徒の考え方を評価した。次に学習の他の面に関して彼らがどう考えているかを評価し、彼らの成績の推移を見守った。

私たちが予想したとおり、成長できるという考え方をもっている生徒は、学業の重要な目標は良い成績をとることよりも学ぶことだと感じていた。さらに、彼らは努力して勉強することは大切だと考えており、何かを一生懸命にやれば、もっと熟達できると信じていた。

偉業を成し遂げるには、天才でされ努力を積み重ねる必要があることを、彼らは理解していた。試験で悪い成績をとるなど挫折に直面すると、成長できると考える生徒は「もっと勉強しようと思う」あるいは「その課題をマスターするために別のやり方を試してみる」と言った。しかし、固定型思考の生徒は、学ぶことにはほとんど注意を向けず、賢く見えるかどうかを気にしていた。彼らは努力することに対していい感情をもっておらず、何かに懸命に取り組まなければならないのは、能力が低いしるしだと信じていた。

才能や知能を備えている人は、努力せずともうまくやっていけると考えていた。固定型思考の生徒は、成績比新を自身の能力不足のせいにした。そして、「これからは勉強量を減らす」「その教科は二度と選択しない」、「今後のテストではカンニングしようかとも考えている」と言った。

このようなかけ離れた態度は、成績に劇的な影響を及ぼした。中学生になったばかりのときには、成長型の生徒の数学の学力テストの成績は、固定型思考の生徒の成績と同じぐらいだった。しかし、内容が難しくなると、成長型思考の生徒は粘り強さを見せた。

その結果、そうした生徒たちの数学の成績は前期の終わりまでには、固定型思考の生徒よりもよくなった。そして2つのグループの差は、私たちが追跡調査した2年の間にさらに大きくなっていった。(図)

コロンビア大学の心理学者ヘイディ・グラントとともに行った別の研究でも、考え方と成績の間に同じような関係があることがわかった。私たちは2003年、コロンビア大学の医学部進学課程の1年生128人を対象に調査を行なった。

彼らは難易度の高い一般化学コースを選択していた。どの学生も成績を心配していたが、最上位の成績をとった学生たちは、化学で自分が秀でていることを示すことよりも、学ぶことを最優先に考えていた。
このような学生の場合は、学習方法や努力や粘り強さに重点を置いたことが効を奏した。

<努力をほめる>

1990年代半ばに私たちが行なった調査によると、85%の親は、子どもが何かを上手にやったときにその子の能力や知能をほめることが重要だと考えていた。そうすれば、子どもたちに自分は頭がいんだと自覚させることができるはずだ。

しかし、私たちの研究では、子どもの知能をほめると、子どもは傷つきやすく、弁解がましくなることがわかった。だから、「あなたは絵が上手ねえ」などのありふれたほめ言葉も、才能は生まれつきのものだとほのめかしており、よい結果を生まない。

しかし上手に言葉を選べば、称賛は非常に価値がある。子どもが何かを達成するために使ったプロセス自体をほめてやると、子どもは成功につながる行動が大切なのだと考えるようになり、モチベーションや自信が培われる。プロセスをほめるには、努力ややり方や集中力、難題に直面したときの粘り強さ、進んでチャレンジする積極性などをほめるとよい。

<欠点に正面から立ち向かう>

また、知能は固定していると信じ込んでいると、ミスを認めたがらなくなる。学校や職場や人間関係においても、自分の欠点と正面から向き合って、それを直していこうとはしなくなる。1999年に私は3人の香港の研究者とともに、香港大学の1年生168人を対象とした研究を行なった。

香港大学では指示や授業がすべて英語で行なわれる。調査の結果、成長型思考の学生が英語力試験で悪い点数を取った場合、得点が低かった固定型思考の学生に比べて、英語補習コースを取る傾向がはるかに高いことがわかった。

知能は伸ばせないと考えている学生はおそらく自分の欠点を認めたがらないために、それを直す機会を避けてしまったのだろう。

固定型思考は、職場でもコミュニケーションや成長の妨げとなる。管理者や従業員が固定型思考を持っていると、建設的な批判やアドバイスが伝えられることはなく、伝えられたとしても無視される結果になりやすい。サザン・メソジスト大学の心理学者ピーター・ヘスリンとドン・ヴァンデウォール、トロント大学のゲーリー・レイサムによる研究で、固定型思考の管理者は成長型思考の管理者に比べ、従業員からのフィードバックを求めたり歓迎したりする傾向に乏しいことが示された。

おそらく成長型思考の管理者は、自分たちを成長段階にあると考えており、向上するにはフィードバックが必要だと理解しているのだろう。しかし固定型思考のボスは、批判を自らの根本的な能力に向けられたものだと考えがちだ。
固定型思考の上司は、自分以外の人間も変わらないものと思い込んでいるため、あまり部下を指導しようとしない、しかし、ヘスリンらが管理者たちに成長型思考の価値と原理を教えたところ、管理者たちは進んで部下を指導し、以前よりも有益なアドバイスをするようになった。
考え方ひとつで、個人的な人間関係の質やその継続機関にも影響が現れる。その人が困難に対処する意欲があるかないかによって違いが生まれるのだ。

固定型思考の人は、成長型思考の人よりも、人間関係で生じた問題に向き合って解決しようとする意欲が低い。このことは、カナダのオンタリオ州にあるウィルフリッド・ローリエ大学の心理学者ララ・カムラスと私が2006年に行なった共同研究で示されている。

人間の人格特性が多かれ少なかれ変わらないものだと考えるなら、関係修復はほぼ絶望的に思われる。しかし、人は変われるし成長できると信じている人は、人間関係の問題も正面から立ち向かえばきっと解決できると考える傾向が強い。

<適切なほめ言葉とは?>

ではどうやったら成長型思考を子どもに伝えることができるだろうか。懸命に努力した結果生まれた素晴らしい業績についての話を聞かせるというものひとつの方法だ。例えば生まれつきの数学の天才の話をすると生徒は固定型思考をもつようになるが、数学に夢中になって驚くべき才能を開花させた偉大な数学者について語れば、成長型思考が育まれるという結果が、私たちの研究で示されている。

また、ほめることで成長型思考を植え付けることもできる(ほめることの効果の図)
ほとんどとは言えないまでも多くの親たちは、子どもの聡明さや才能をほめて育てるべきだと考えているが、私たちの研究結果から、これが実は間違いであることが示されている。

1998年、私はコロンビア大学の心理学者クラウディア・M・ミューラーとの共同研究で、数百人の小学5年生に、言葉を使わない知能指数テストをさせた。最初の10問はどの子もわりあい簡単に解くことができたので、私たちは子どもたちをほめた。半分の生徒に対しては、その子の知能を賞賛した。「まあ、、、ほんとうに素晴らしい点数だわ。あなたはとても頭がいいのね」一方、あとの半分の生徒には、彼らの努力をほめた。「まあ、、、本当の素晴らしい点数だわ。すごくがんばったわね」

知能をほめた場合には、努力をたたえた場合よりも固定型思考をもつようになることが多かった。例えば、知能をほめられた子どもは、努力を賞賛された子どもよりも、難しい課題を避けて簡単な問題をやりたがる傾向が強かった。

(がんばったことをほめられた子どもの大部分は、いろいろなことを学べる難問に挑戦したがった)。
子どもたちの希望にかかわらず、とにかく全員に難問を課すと、知能をほめられた子はくじけて、自分の能力を疑うようになった。そして、その後もっとやさしい問題を与えたときも、彼らの点数は以前に同程度の問題に取り組んだときよりも低くなった。

一方、努力をほめられた生徒は、難問に直面しても自信を失わず、その後に課せられたやさしい問題では、以前よりも成績がグンとよくなった。
親や教師は、努力をほめて成長型思考を育むとともに「心は学習機械のようなものだ」とはっきり教えてやることができる。ブラックウェルとトゥルツェスニエフスキーと私は最近、数学の成績が下降している中学1年生91人を対象とした8回連続のワークショップを企画した。48人の生徒には勉強のやり方だけを教え、他の生徒たちには勉強のやり方を教えるだけでなく、成長型思考とその考え方をどう勉強に生かすかを学ぶ授業も行なった。


ほめ方の例を上げる。
■上手に絵が描けたましたね。人の顔を細かく丁寧に描いたとことがとてもいいですね。
■社会科のテストのために本当によく勉強しましたね。教材を何度も読んで、まとめをつくり、自分でテストまでしたのよね。それがとても役に立ったのね。

■あなたは答が出るまで、あの算数の問題にいろいろな難しいやり方を試して解こうとがんばった。そこが素晴らしい。
■あの英語の課題はとても大変だったと思う。でもあなたは最後まで粘り、ずっと机に向かって、集中力を切らさなかった。そこが素晴らしいと思うよ。

■科学の授業で、あの難しいプロジェクトに手を挙げたのには感心しました。いろいろとやることがありそうですね。まずは装置について調べて、設計をし、部品を作って、それを組み立てる。そうするときっとたくさんのことを学べると思うよ。

また、学ぶプロセスの喜びを子どもの教えるために親や教師は、難題や努力、間違いに対して肯定的な考え方を述べるようにするとよい。そういう場面での対話の例。

■うん、これは難しいかもしれない。でもね、きっと楽しいと思うよ。
■あら、簡単すぎちゃったかな? それじゃもっとやりがいのあるものを試してみようか?そうすると、いろんなことが学べて楽しいよ。

■それじゃ、今日うまくできなかったことがあったら、話し合ってみようか。そうすることでまた成長できますよ。では、私から。
■間違うことはすばらしいことなんだよ。ここにすばらしい間違いがあります。さて、ここからどんなことが学べると思う?


成長型思考のクラスの生徒には、「頭脳は自分の力で伸ばせる」というタイトルの記事を読ませ、それについて討論させた。また、脳は筋肉に似ているところがあり、使えば使うほど鍛えられるし、学習によって脳内のニューロンはどんどん新しい接続をつくっていくと教えた。

そんなことを学ぶうちに、多くの生徒が自分は脳を発達させる役割を担っているのだと考え始めた。なげやりで、授業中退屈し、態度が悪かった生徒も、静かに座ってノートをとるようになった。ひとりのきわめつけの問題児Lは、討論の最中に顔を上げて発言した。「じゃあ、ぼくはバカでいる必要はないってこと?」

学期が進んでいくにつれ、勉強のやり方だけを学んだ生徒の数学の成績は下がり続けたが、成長型思考のトレーニングを受けた生徒は成績の下降がストップし、自身の以前のレベルに回復し始めた。ワークショップの授業に2通りのやり方があることを教師たちには知らせていなかったが、教師たちによれば、成長型思考のグループの生徒のうち27%に著しいやる気の変化が見られたという。

一方、そのような考え方を教えなかった生徒で変化が見られたのはわずか9%だった。
一人の教師は次のように書いている。
「あなたがたのワークショップによる効果がすでに表れている。L(前述の問題児)は、人より余計にがんばろうとく姿勢を見せたことがなく、宿題も提出が遅れがちだった。ところが、夜遅くなでがんばって課題を早めに仕上げ、提出するようになった。そうすれば私に一度見せてから、再提出のチャンスが得られるからだ。Cだった成績が、B+に上がった」

他の研究者も私たちと同様の結果を出している。当時コロンビア大学にいた心理学者キャサリン・グッド、およびニューヨーク大学のジョシュア・アロンソンとマイケル・インズリクトの2003年の報告によれば、成長型思考のワークショップを中学1年生に実施したところ、数学と英語の学力テストの点数があがったという。2002年のアロンソンとグッド(当時はテキサス大学オースティン校の大学院生)らの研究では、成長型思考を伸ばす訓練を大学生にしたところ、彼らは学業を前よりも楽しむようになり、勉学の価値をより強く認めるようになり、成績も向上した。

<天才は努力を惜しまない>

このような情報を子どもに教えると、子どもたちをうまくのせて勉強に励ませることができる。だが、それだけではない。たしかに人の知能や才能は千差万別だ。しかし、こうした研究の結果は、偉大な業績は、いや私たちが天賦の才と呼ぶものさえ、生まれつきの才能によって自動的にできあがるものではなく、長い年月にわたる情熱と専心のたまものであるという結論に収束している。

モーツァルトもエジソンも、ただ才能をもって生まれただけではなかった。彼らはその才能をたゆまぬ驚異的な努力によって伸ばしていったのだ。勤勉と訓練は、知能指数よりも学校の成績アップに貢献する。

この教訓は、ほとんどあらゆる努力に当てはまる。多くの若いスポーツ選手は、つらい練習よりも才能を重んじているせいで、いくら教えても伸びない。同様に、多くの人は、ほめたり励ましたりして、モチベーションを維持しないと、仕事でほとんど成果を上げられない。しかし、家庭や学校で成長型思考を伸ばしてやれば、目的を達成し、責任ある写真や市民になるための道具を子どもたちに与えることができるのだ。
(翻訳:古川奈々子)

著者:Carol S.Dweck
スタンフォード大学のルイス・アンド・ヴァージニア・イートン記念心理学教授。コロンビア大学とイリノイ大学、ハーバード大学の教授職ももち、米国芸術科学アカデミーのメンバー。最新の著作は、2006年にランダムハウスから刊行された『Mindset』

コメント(1)

イルフは小さい頃からあまり努力をほめられたことがないため、これを読んで、「自分で自分の努力をほめよう!」と思いました。

いわゆる「自分で自分をほめてあげたい」という有名なあのアスリートの言葉ですね。(^_^)

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

こころとサイエンス 更新情報

こころとサイエンスのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング