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詩、小説書く人〜♪コミュの無題です。下手くそですが、ご容赦下さい(^-^;

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「老けたわねえ、あんたも。熟女ってやつう?あ、まだ三十路にも達してないってか。あはは。」
昔から、私の姉はお喋りだった。
私は苦笑しつつ、姉の前にお客様用の紅茶を入れたカップを置く。
「かわいいカップじゃん」
姉は赤いルージュをひいた口を綻ばせ、わざとらしくラメ入りのマスカラを塗ったくった睫毛をしばたたかせた。
「結婚式の引き出物よ」
「ふーん」
白地の上にチッタ薔薇模様。ありきたりのデザインがまだ私達にとって新鮮だった頃は、一応家族四人で暮らしていた。

姉は、私が十五の時に家出をした。
中学に入った頃から、荒れ始めた姉は、父親と喧嘩をしたあげくキャリーケースを転がして出ていった。
もう、喧嘩の詳細は忘れてしまったが、朝もやの中に遠ざかっていくキャリーケースとアスファルトが触れ合う喧しい音が物悲しく聞こえたことは鮮明に覚えている。
父親は、姉の喧しさを常に蔑んでいた。
「愛は、冴のようにはなるなよ」
と、いつも私に言い聞かせていた。
「女の子は、手をだしちゃいかん」
「女の子は、もっとおしとやかに」
姉は、そんな父親にいつも反抗していた。
「冴!!」
「クソオヤジ!!」
という双方の怒鳴り合いは絶えず、母はいつも目の下に隈をつくっていた。
私は正直、父親が嫌いだった。
姉は、ぐずぐずする私を颯爽と追い越しながら、後で思い直したように私を待つ人だ。そんな自由で、優しい姉を罵倒する父親が憎かった。
しかし、
「愛はいい子だ。」
と言う父親の期待を、私は裏切ることが出来なかった。
私の人生は、父親の望み通りに進み、双六はあがりになった。父親のゴールは、無難な人との結婚だからだ。
一方、姉の行方はようとして知れなかった。
「放っておけばいい」
父親はそう言って、まるで姉が最初からいなかったかのように振る舞った。見兼ねて母が姉の捜索願いを出した程だった。
「冴は今どこにいるのかしら」
めっきり老け込んだ母は、白髪を振りながら、今でもぼそっと呟いている。

「それにしても…十年ぶりかしらね」
回想から覚めた私は、姉を見つめる。
きらきらした瞳、皮肉っぽくくいっ、と片端を吊り上げる唇は健在だった。
「そうねぇ」
姉も同じことを考えているのだろう。目を細めている。
「お父さん、お母さんには会わないの?」
「お母さんはともかく、あのクソオヤジはごめんだよ」
きゅっ、と唇を真一文字に結び、鋭い視線をする。
「まだ…怒ってるの?」
「あったりまえだよ。奴が何をやってたのか、私知ってたんだから」
「…え!?」
頑固な父。最近は、ぴんと伸びていた背中が丸まってきた父。父が何をしたと…?
「あいつはねぇ、高校生をお金で買ってたんだよ。」
「それって…援交?」
あの、父が?
「その面で私を説教するのが許せなかった…」
姉は、顔を伏せた。
知らなかった。父が、そんなことを…。

 どのくらい時が経っただろう。私はよろめく足で立ち上がり、姉の正面の窓へと移動した。
姉に背を向ける。もはや、まともに彼女を正視できる勇気がなかった。姉は、窓に映った双眸でひた、と私を見据えている。
「…あんたには、何もしないよ」
姉が、ボソッと呟いた。
「私は…知らずに…お父さんに育てられてたの…?」
「そんなに、落ち込まなくてもいいじゃん。今は、あんたはアイツのもとにはいないんだし」
私は、ある疑問を、姉に発した。

「世の中には、知らなくていいこともあるんだよ」
その途端、窓に映っていた姉の姿が…消えた。
私は、目を閉じた。
「お姉ちゃん…。」
姉はー家出した七ヶ月後、私の実家の隣の県のラブホテルの一室で見つかった。
姉は家を出た後、キャバクラに勤め、客とラブホテルに入り、絞殺されたのだ。犯人は、まだ捕まっていない。
お葬式は、ひっそりとしたものだった。母は、未だ現実を受け入れられていない。姉は、母にとっては行方不明のままなのだ。
父は、何も言わず動じなかったが、すっかり窶れてしまった。家は重苦しく、私は息が詰まりそうだった。
姉が家出しなければ。
少なくとも、私は幸福でいられた。

それでも、と思い返す。 私は、私は、先程カップを見ていた姉のキラキラした瞳だけを脳裏に焼き付けておきたい。

「さようなら、お姉ちゃん。」

コメント(3)

短編の小説って難しいですよね。
私も小説書いたりするのですが、必ず思いつくストーリーは
長編のものばかりで、投稿するのも大変ですよ。
短編書ける人は尊敬しちゃいます。
しかも、味噌カツ猫丼さんのは小説は
私には書きたくても書けない内容だし、内容は少し暗かったけど
よかったと思いますウッシッシ
独特の雰囲気があって、素敵ですね!
僕もこういう文章は書けないので、羨ましいです。

ただ、ちょっと勿体無いと思ったのが文章の形式ですね〜。
「」の中は『。』で終わらない。
文章の頭は1マス空ける。
『…』を使うときは『……』と、二個でワンセットにする、等など。

せっかく素敵な物語をお書きになっているので、形式を守るとなおよしかもです

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