魔女(まじょ、フランス語Sorcière、英語Witch(男女)、 Warlock(男))とは、中世から近世のヨーロッパ社会で、盛んに異端として迫害、弾劾された人たちのこと。実際には、村落共同体の呪術医、あるいはシャーマニズム的宗教者であることも多かった。この項では主にこの意味において詳説する。
1よりもっと広義に、魔術、呪術、妖術などを使う女性のことを指すこともある。西洋の童話などに頻繁に登場するが、たいていのイメージは、鉤鼻の老婆が黒い三角帽・黒マント姿で、大鍋でトカゲなどを煮ているというものが多い。このイメージは、1の魔女狩りの歴史の中で固まったと言われている。現代において、ジェラルド・ガードナーの『The Book of Shadows』(影の書)にはじまったウィッカを信奉する者のこと。ウィッカはある種の宗教の一つであるが、近代西洋儀式魔術を取り入れ、俗には魔女術といわれる。 2から転じて、魔法のように鮮やかな技で活躍する女性のことを比喩的に指すこともある。(東洋の魔女など) 日本における魔法少女の別称。 仏教において、女性に化けて人心を誘惑して魔道へと堕落させる下品(げほん)の魔。魔女(まにょ)。魔子・魔民・魔王などと共に列挙される。
★魔女狩り
中世から近世にかけて、ヨーロッパのキリスト教国の教会は、魔女狩り(フランス語Chasse aux sorcières)と称して、魔女の容疑者を魔女と断定して異端として迫害、弾劾し火刑により虐殺した。当時魔女は悪魔と交わり特別な力を授けられ、作物や家畜に害をなすと信じられていた。概ね女性であるが、特に女性と限られてはおらず「男性の魔女」というのもおり、どちらも英語では同じWitchという語で現され(のちに詐欺師、悪魔を意味するWarlockをあてはめられた)、魔法使い・魔術師(Wizard)とは異なるものである。魔女を初めて激しく告発した書物としては、15世紀中頃に出版された『魔女の槌』が知られている。 これは、当時の異端審問官によって著されたもので、魔女狩りの火付け役となった。実際に魔女と名指しされた人たちの多くは、孤高の化学者や「賢い女性たち」といわれる民間療法の担い手・正規の医者ではないが医者の代行を務めた、今で言う助産師のような人たちが多かったといわれるが、集団的な妄想の犠牲者やマイノリティ、単に性的な放逸に走っただけの者、恨み、妬みを買った人たちなども多く含まれていた。旧約聖書の出エジプト記の中で、律法を述べた22章17には、「メハシェファ(ヘブライ語で魔女の意味)を生かしておいてはならない」という事がしるされているが、ユダヤ教では魔女狩りは行われず、魔女狩りを行なうのはキリスト教のみである。
★語義
日本語の魔法使いという語は、英語でいうところのWizard、Witch、Sorcerer、Warlockなど様々な意味を含んでおり、厳密に定義することは難しい。一般的な訳語としては、Wizard=魔術師、Witch=魔女(しばしば女性に使われるものの、元来は性別を分けない。例:witchcraft=(一般に)魔術、Witch-king of Angmar=アングマールの魔王。ファンタジー小説の登場人物で男性)、Sorcerer(フランス語『魔女の鉄槌』では妖術師の意味sorcierが起源。この女性形Sorcièreは後に魔女を意味することになった。男性の魔女、魔法使い・魔術師はSorcier)=文化人類学でいう妖術師、Warlock=(男性)魔術師をあてるが、英語の意味するニュアンスと日本語の訳語の意味するニュアンスには、かなりのずれがある。魔法使いのうちでも、とくに賢明で思慮深く、魔法を正しいことのために使う者を「魔術師」(ウィザード)といい、「賢者」(ワイズマン)と同義であるとする作品もある。また日本語に翻訳した作品によっては訳者独自の訳語をたて、独立して自らの意思で魔法を使う者や導師的立場の者を「魔導師」、王侯などの命令で魔法を使う者や修行中の者を「魔導士」「魔道士」(団精二の訳語)というように表記を使い分けているものもある。