クラシックマジック研究コミュの帰天斎　正一（きてんさい　しょういち）　Shoichi　Kitensai

帰天斎　正一
①初代　
『落語家名前揃』によれば天保１４年（１８４３年）９月生まれ。
西洋手品の開祖と言われる。明治初年にヨーロッパを回り西洋手品を習得と言われるが実際には一度も海外に行ったことはない。
もともとは落語を勉強し、三代目林屋正蔵の弟子となり、正楽を名乗って高座に出ていた。しかし、噺家としては全くうだつが上がらず、噺の後で余興で演じた手品が好評でそのまま手品師になった。
１８７８年以降は、手品の親玉と称えられる。とりわけ口から火炎を吐く技術は抜群で民衆に西洋手品の科学性を認識させた。
１８８９年には宮中の御学問所で天覧を仰いだが、天一（１８５３～１９１２）の大型化を狙った奇術に太刀打ちできずいつの間にか姿を消した、とは倉田善弘氏の談。
著書に大正4年発行の「和洋奇術種明かし」があります。大正7年（1918年）には長野の新聞でのインタビューがあり、存命だったことがうかがえる。75歳までは生きていたという事である。

②二代目
初代の弟子で、大阪の河内屋という両替屋に生まれる。上京し、初代正一に弟子入りし、東京斎魚一を名乗る。本名、福岡正一。
この二代目が三代目柳川一蝶斎から「浮かれの蝶」を学ぶ。
明治２５～６年ころに大阪に戻り定住。
大阪で引退興行を明治25年3月に行っている。
帰天斎正一としての現役での活動時期は短かった、と言える。
その後は道修町では芸能社（余興屋）をやっていたといわれイベント業も行っていたらしい。
明治３９年には中国に渡航するなど、人気を博す。
明治４３年（１９１０）に亡くなる。享年は不詳。

③三代目
二代目の実子であるが、本名は、山中一三。山中家の養子になったからである。
１０歳ころから父より手ほどきを受け、小正一の名前で舞台に立ち、父亡き後に三代目を継ぐ。
上京し、寄席などで活躍していたが、関東大震災により東京が壊滅。その後は１２～３人で一座を組み日本全国を巡業し、稲荷取り寄せで人気を博し、大成功を収める。
昭和１５年（１９４０）、同郷の吉田菊五郎（三代目）のすすめで大阪に戻り、生野区猪飼野に居を定めた。
終戦後、進駐軍の招きを受けて手品を演じたが、リクエストは「浮かれの蝶」一本槍だったとのこと。
昭和４８年（１９７３）７月１６日、９３歳の高齢でこの世を去った。

コメント(38)

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[1] mixiユーザー 11月17日 14:43

四代目を継いだのが、三代目の息子である正楽。１９７６年の上方芸能４５号によれば、三代目があまりにも偉大過ぎたこと、四という字が忌み嫌われることから四代目を継いだとのこと。しかし正楽は先代の後見役しか行っておらず演じ手にはならなかった。また、数年後に亡くなる。

五代目を継いだのはアマチュアの生谷寿一郎。

六代目を継いだのは帰天斎正若。

[2] mixiユーザー 11月17日 19:22

三代目帰天斎の話によれば、養老派に蝶はない、その名の通り水芸の流派であるとのこと。

[3] mixiユーザー 11月21日 17:51

昭和５８年７月１６日（土）大阪屋ホールにて五世帰天斎正一独演会が開催されていた。後援が楽蝶会となっている。

[4] mixiユーザー 11月23日 13:13

堀ジョージは、前名を帰天斎正旭という名前だったとのこと。

[5] mixiユーザー 11月23日 15:03

三代目帰天斎は、寄席で活躍しているときは座って和妻を演じていた。
しかし、時代の流れとともにステージを大きくなり、立って演じる必要性が出てきた。
その後、座りで演じることはなくなった。

[6] mixiユーザー 11月25日 22:33

明治２７年の三遊社一覧というビラには１６０余人の寄席芸人の本名と住所が記載されている。

帰天斎正一に関しては、西洋奇術で大変に人気もあり、大看板になった人とのこと。
西洋手品といっても洋服を着ないでしじゅう和服だったとのこと。
三代目正蔵の門人で「初め正楽といい、自立して帰天斎となり、西洋手品に高評をとり、下谷数寄屋町に『いせ本』という芸妓屋を出す」と、文之助系図に書いてあるとのこと。

住所は数寄屋町７番地　本名は波済粂太郎。
この人が初代となる。

[7] mixiユーザー 11月25日 22:36

明治２７年の三遊社一覧というビラには１６０余人の寄席芸人の本名と住所が記載されている。

その中に東京斎魚一がいる。つまり初代の帰天斎と同じ寄席に出ていた。
北松山町１番地　福岡宗兵衛。
ということは二代目の本名は正一ではなかった、ということになる。

[8] mixiユーザー 11月25日 23:06

明治２７年の三遊社一覧というビラには１６０余人の寄席芸人の本名と住所が記載されている。

車坂町31番地　三遊亭右光（本名　松岡平吉）
同町同番地　林屋正楽（本名　松岡宗助）

この二人は親子であり、宗助つまり正楽が父親である。息子の右光は圓右の弟子だったが、のちに帰天斎小正一となる。　
父親のほうは元講釈師だったらしいが、初代の帰天斎に入門し林屋正楽となった。
名前から考えるとこの正楽は、息子の相方を務めていたのかもしれない。
小正一は、べらんめい口調で、燕尾服を着ながら口上を言うスタイルだったとのこと。
しかし、不幸にも大正12年9月1日の大震災で亡くなられたとのこと。
享年48歳。
父親の正楽は、明治42年5月29日に75歳で亡くなられている。

[9] mixiユーザー 11月26日 14:36

明治１６，７年頃に帰天斎正若という手品師が東京で活躍していた。
なんと女性であり、大変若く美人で評判だったとのこと。

[10] mixiユーザー 12月12日 13:14

「明治11年12月3日[東京さきがけ]　来る七日には芝公園内天光院へ設けられし海軍の水交会の開場式とかにて、会員は残らず参集いだされ、福沢諭吉先生の演説と松林伯円子の講談があり、余興として日吉吉左衛門の吾妻狂言と帰天斎正一の西洋手品を催ふされるといふ。」
p56　倉田善弘編『明治の演芸（二）』（昭和56年発行　国立劇場調査養成部芸能調査室）

[11] mixiユーザー 12月13日 18:54

「明治13年11月17日[新潟]　去る六日の紙上に一寸掲載せし永楽座の機械手品・帰天斎一学の一座は、其初日より大当たりにて、殆ど毎晩木戸を閉つ程の大入りなり。さてその芸等は種々雑多なれども、其中に、一本の徳利より西洋酒、日本酒の差別なく、来客の好みに応じて数品の酒を出しますと、弊社の某が見てきた上の直噺し。」
P227 倉田善弘編『明治の演芸（二）』（昭和56年発行　国立劇場調査養成部芸能調査室）

[12] mixiユーザー 12月13日 20:09

横槍入れるようで申し訳ありません。初めてコメントいたします。

記事を読んでいて、京都の伏見稲荷の奥社への山道に、「奇術　正天一」と刻まれた石柱があるのを思い出しました。その銘が帰天斎一門を指すものかどうかは分かりませんが、こういう表記をする事もあったのでしょうか？

[13] mixiユーザー 12月14日 01:10

>>[12]
コメントありがとうございます。
その伏見稲荷の正天一は帰天斎ではなく、松旭斎天一のことだと思います。
羨ましいです。
私自身もそこに行ってみたいと思っています。

徳島県奇術同好会の方の写真があります。
http://wwwd.pikara.ne.jp/magic21/page012.html

「明治45年4月17日記述、写真の鳥居
表には、左側、二代目、天一、小天、天嬢
右側、奇術総長、正　天一、田中石材店、彫刻記述」

これではないでしょうか？

[14] mixiユーザー 12月14日 11:06

>>[013] 早速ありがとうございます！正しく、お示しの通りの写真です！しかし、調べられている方、しっかりいらっしゃるものですね。私自身、謎が解けてすっきりしました。ありがとうございます。

また勉強させて下さい。

[15] mixiユーザー 12月14日 18:08

>>[14]
どうもありがとうございます。
でもじつは勘違いしても仕方がないのです。松旭斎天一は、帰天斎正一に憧れて、もしくはあやかって似たような名前になったのです。
一説によれば、帰天斎門下もしくは帰天斎の許可を得て似たような名前になったといわれています。
いずれにせよ、もし帰天斎がいなかったら松旭斎はなかったのです。

[16] mixiユーザー 12月17日 17:29

西洋て津ま新種　前編
帰天齋正一／北庭筑波／チレメチスト
1882/6/25 横浜各國翻訳所

という本があります．

[17] mixiユーザー 12月18日 01:07

>>[16]
重要な文献そうですね。明治１４年ですよね。このチレメチストが謎の人物です。
一説には最初に西洋マジックをうたった人のようです。
北庭筑波とは全く知らない名前です。
どんな内容の本でしょうか？

[18] mixiユーザー 12月18日 01:14

ちなみにチレメチストとは日本人で、名前を麓（ふもと）誕三郎といいます。
松山さんの本によれば、父が医者でそうした西洋の文献などに詳しかったとのことです。
また松山さんの本によれば、『西洋手づまの種』前編（明治15年）となっています。
北庭筑波（1842～1887）は明治初期の写真家の大立者とのことです。
松山さんの推測によれば、この本は版元がかってに有名な三氏の名前を借りて権威づけしたとのことです。

[19] mixiユーザー 12月29日 12:58

>>[18] そのような気がします．

[23] mixiユーザー 12月30日 17:16

>>[20] 帰天斎に水芸があったのですか？　それはやはり養老の流れでしょうか？

[25] mixiユーザー 01月04日 07:09

四世家元帰天斎正一の貴重な文章が存在します。
『上方芸能45号』1976年（昭和51年）P105
この雑誌は大変貴重なもので北見翼氏よりお借りしました。
四代目だけではなく、山本慶一「太神楽」P99、ゼンジー中村「現代奇術随考」P110、こののち五代目となる生谷寿一郎の「関西アマ奇術界の現況」P115があります。

[26] mixiユーザー 01月28日 10:28

五代目となる生谷さんは、「なまたに」ではなく、「いくたに」とのこと。

[27] mixiユーザー 06月03日 23:01

初代帰天斎正一は少なくとも大正7年までは存命だったようです。『文芸倶楽部』大正7年1月号の記事中に「我が興行界に西洋手品の元祖とも謂ふべき帰天斎正一、近頃信州長野に引篭って〈中略〉算木筮竹の練磨術に占易を業として、ビーリビリの呪文も姿も自然変りし白髯の老翁〈中略〉善光寺畔に安て往生する気なるべし」と出ているからです。

[28] mixiユーザー 06月21日 17:07

手品が好きだった方から、
画像の本をいただきました。

明治44年帰天斎正一と、その一門の演出なるものを発表。

奇術師お伽丸柳一
奇術師帰天斎小正一
奇術師マジックゴル
補演帰天斎正一翁
編者神田紫芳

となっております。

[29] mixiユーザー 07月07日 16:07

>>[28] これは大変貴重な資料です。帰天斎は演出し、出演もしていたのですね。ぜひこの資料を拝見したいです。

[30] mixiユーザー 07月07日 18:17

二代目は大阪で引退興行を明治25年3月に行っています。帰天斎正一としての実際の活動時期は短かった、とのこと。

[31] mixiユーザー 07月20日 15:01

サンド・フレーム（砂額）はモア・マジックに記載されています。

[32] mixiユーザー 07月24日 05:27

明治19年（1886年）三月一日より、京都北の芝居にて、帰天斎正一の娘の西洋手品。（「中外電報」3・19）

　「来る三月一日より四条北の芝居に於て曾て米国に渡航して西洋手品一番より三百五十番までを伝授し来りし帰天斎天一の娘が右西洋手品を興行すると云へり」（『近代歌舞伎年表・京都篇』より孫引）

[33] mixiユーザー 08月10日 05:29

奇術家競演

手品大会

？番　五十八種

【世界の手品に就て】
昔時から手品と云ふものは、技芸の中でも非常に趣味（おもしろみ）があるが、種があつて演じているとは思ひながらも、識らず識らず引き入られて仕舞ふ様な面白いもので真に離れた、技芸であるから、自然に感興も深く起こさしむるのが、手品の極意である、去れど昔しの手品師としては柳川一蝶斎と云ふ名人があつた、手品も世の中の進歩に従って、西洋奇術が行われて来たが、日本は日本の特色が純然そなはって居る、唯西洋は日本手品より奇抜な特色がある、今日は西洋手品も非常に進歩して、寄席なぞでは手狭いから演芸館で演る様になったのは、世の中で進歩したのである、これ等は大物と云って、機械を要するがそれは中々種を明かした處で素人には出来ない、本書の主眼は少年方が勉強の間お慰に練習する事を得る、お伽手品を選んで、判分り易く書いたのですしかし手品種明かしの書もいろいろありますが皆な在来からありましたもので、いざ実験の場合は、書にかいて面白い手品は、実験して面白くないものだ、手のかかる道具や危険な薬を使用のはお伽手品ではない、本書に編めた手品は、なるべく手数のかかるものは取り捨ててあります、元来手品は、手先を早く使用ふのが、最も肝要で、能く練習して置かないと、折角面白い手品も、面白くない、本書を編するに際し、我が奇術界の驍将、帰天斎正一翁は手品の極意を説かれ新帰朝者マジックゴル氏は能く実地を説き、お伽丸柳一氏帰天斎小正一氏共に、編者をして充分に実験をして、研究せしめられたのは、実に感謝の外はない、特に本書の誇りとするは奇術家諸氏に就いて実地研究したる編者の苦心、読者諸君よ聊（いささ）かお諒察を乞ふのである、

櫻花爛漫たる墨水の畔に於而
紫ほう述る

目次
【一】　パンの中から時計を現はす・・・・・・・・・・一
【二】　三国国旗の継ぎ分け・・・・・・・・・・・・・九
【三】　五色の吹き流し・・・・・・・・・・・・・・一八
【四】　空中飛行の水・・・・・・・・・・・・・・・二一
【五】　百発扇面銅貨・・・・・・・・・・・・・・・二六
【六】　空徳利へ水の通ひ分け・・・・・・・・・・・三〇
【七】　染め分けハンカチーフ・・・・・・・・・・・三五
【八】　活動煙管踊・・・・・・・・・・・・・・・・四一
【九】　国旗の当て物・・・・・・・・・・・・・・・四六
（なぜか十はない）
【一一】　『ステッキ』の早抜け・・・・・・・・・・五二
【一二】　達磨の抜き取り・・・・・・・・・・・・・五七
【一三】　玉子とハンケチの交換・・・・・・・・・・六二
【一四】　国旗日の丸抜き・・・・・・・・・・・・・六六
【一五】　果物より銀貨を現はす・・・・・・・・・・七〇
【一六】　黒水変じて白水となる・・・・・・・・・・七六
【一七】　引き裂き骨片牌・・・・・・・・・・・・・八〇
【一八】　あづき変じて金魚となる・・・・・・・・・八四
【一九】　絵葉書の絵抜き・・・・・・・・・・・・・八九
【二〇】　米と水の遣い分け・・・・・・・・・・・・九三
【二一】　白紙ビスケツと変化す・・・・・・・・・・九六
【二二】　袖玉子・・・・・・・・・・・・・・・・一〇〇

～【五八】

[34] mixiユーザー 08月10日 22:13

>>[33] お手数おかけしてすみません。どうもありがとうございます。大変参考になります。
ちなみにこの本の中にはイラストはあったのでしょうか？

[35] mixiユーザー 08月12日 20:56

イラストもありますよ。
あと、マリックの通信教育コースの資料などもありますので何かあればお伝えしますね

[36] mixiユーザー 08月13日 13:21

>>[35] ますます内容が気になります。この時代にアダチ竜光氏が、東京でマジックのネタを仕入れてレパートリーを増やしています。パン時計もそうだ、との話です。もしかするとこの帰天斎のパン時計の可能性があるのです。その他の演目も過去とその後とのつながりが気になります。この後の関東大震災によって帰天斎小正一が亡くなられます。もちろん初代はそれ以前に亡くなられていると思います。この本によって帰天斎の本来の演目が分かるかもしれません。よろしくお願いいたします。

[37] mixiユーザー 08月17日 14:01

生年：天保14.9 （1843）
没年：没年不詳
明治期の奇術師。本名波済粂太郎。初め3代目林家正蔵門の噺家で林家正楽。のち奇術師として独立,帰天斎正一を名乗った。本人の口上では明治初年パリへ渡り西洋奇術を習得して明治7(1874)年に帰国したという。9年ごろから寄席へ出て,当時としては珍しいハンカチ焼き捨て,洋術首切りなどの西洋奇術で人気をとり,22年には宮中御学問所において天覧の栄を賜った。晩年が不明だが,明治30年代には大阪の2代目に名前を譲って引退したものと思われ,大正6,7(1917,18)年ごろは長野善光寺のほとりで易占をしていたともいう。<参考文献>山本慶一「西洋手品の開祖・帰天斎正一」(『奇術研究』51号)
（山本進）

http://kotobank.jp/word/%E5%B8%B0%E5%A4%A9%E6%96%8E%E6%AD%A3%E4%B8%80

[38] mixiユーザー 06月04日 16:23

「三代目帰天斎正一さんの「浮連の蝶」口上のさわり。
「一枚の白紙をもって、蝶を作りました。この蝶を扇の羽風をもちました、生きたる蝶のごとく扱うのでございます。ご承知のごとく扇面の風は非常に弱うございます。外の風に負ける時は、この芸は絶対に出来ません。ひょっとするとひょっとするかも知れません。其の辺は、おうようのご鑑賞を願っておきます。」

近藤幸三著『奇術　その魅力　その世界』P22

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