ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

文芸の里コミュの旅立ち 二部 鶴夫の教会探し

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加




岩見鶴夫が九州へ旅立ったのはいいが、ほとんどとんぼ返りと言ってよい帰還をした。帰還などと勇ましい言葉遣いができるのも、鶴子からのメモに励まされてのことだった。大人げも男らしさもない九州滞在だった。その日の夜帰宅していたのだから、滞在とも言えないかも知れない。 
 彼は翌日、インターネットをあさって教会探しをした。鶴子からはメールなり電話なり、何らかの連絡が待たれたが、彼女の当面した意気込みからは、とてもそれは望めそうもなかった。彼女がアメリカ滞在を予定している六ヶ月のうち、三ヶ月は待たなければならないだろう。最悪の場合は、六ヶ月は音信不通になるかもしれない。鶴夫の性格としてそれまでの間、暢気に待つなんてできなかった。恐らく一ヶ月だって無理だろう。
 鶴子がそれほどまでキリスト教へのめりこんでいったのなら、鶴夫としても、キリスト教に無関心ではいられなくなった。鶴子の心を掴むためにも、同じ宗教の門を叩かないではいられなかった。
 ネットで調べていくと、さまざまな宗派があるようだった。鶴子の手紙文から、また彼が知り得た彼女の人柄から憶測してみると、穏健派よりは霊的に燃える宗派の方が似合っている気がしてきた。それは彼が九州で探ろうとしたヤマタイコクの卑弥呼とも共通する何かがあるように思われてきた。冷静な頭の信仰よりは、霊的に燃えた信仰である。鶴夫はそんな接点を据えて、インターネットを探って行った。
 霊に燃えた信仰。それは霊的な活動を重んじる教会ということになる。鶴夫はそんな映像を探したが、簡単には見つからなかった。
 霊的に燃える、その霊とは、何であるのか。彼が探って行ってぼんやり見えてきたのは、神の霊、つまり聖霊の働きを重んじる教会ということになりそうだった。
 鶴夫は次に、その神の霊を尊んだ教会の礼拝風景を探った。手を挙げ、全身を持って、神に祈り求める教会の姿を探った。すると、意外に近いところに、あったのである。神の霊前でうっとりとし、祈り求めている画像の教会が。これは信徒のひたすらな祈りにかかっているな。そう睨んで、篤い祈りの教会を三つほど探し出し、住所と地理と教会の電話番号をひかえた。鶴夫が所属する大学の俳句研究セミナーとは、だいぶ趣が違っていると見た。その辺りから、ぐっと鶴子に距離を離されたと思った。もう鶴子と一緒に空を飛んでいるイメージは、浮かんできそうになかった。
つづきます。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

文芸の里 更新情報

文芸の里のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング