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文芸の里コミュの✩クリスマス 扉重くて 人を待つ 〈掌編〉

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✩クリスマス 扉重くて 人を待つ

 クリスマスイブに、昼間から出かけたのが、いけなかったのだろう。
 小学生の少女は、四五日前に街角でビラを渡され、この日を愉しみにしてきたのだった。しかし来てみると、教会はひっそりかんとして、扉は閉まったまま。少女はほかにすることもなかったから、扉の前に坐って辛抱強く待った。
 やがて一人の女性が現れて少女を見ると、目を輝かせて喜んで迎え、扉を開けて招き入れた。少女にも準備を手伝ってもらって、花を活けたり、豆電球を点滅させたり、まめまめしく働いた。少女は言われるままに、その手助けをした
 係の女性は遅れてやって来た教会員に、少女を紹介し、そんな中で少女は教会の雰囲気にとけこんでいった。少女は普段の自分の生活のことなど忘れていた。少女は鍵っ子で兄弟姉妹もなかったが、とけこめなかった周囲を思いめぐらし、この喜んで自分を迎えてくれた年上の女性たちを規範にして、学校という厳めしい殻も破っていけそうな気がしてきた。そのしるしに、少女は訊かれた自分の名前と住所と電話番号を、はきはきと応えて教えたのであった。その後で少女は、こんな声を聴いたのである。
「私すっかり忘れていたわ。クリスマスソングかけるのを。あの子がイブの主人公だったのよね」
 少女を最初に迎えた係の女性は、そうはしゃいで言い、クリスマスソングをかけた。外国の女性歌手の歌う O Holy Night が大きく流れてきた。その歌声に合わせて、神様に祈る声が聞こえてきた。少女を迎え入れ、クリスマスソングをかけた女性だった。
「クリスマスイブの今夜、一人の少女、先坂美里さんをつかわして下さり、ありがとうございます。先坂美里さんがこれから、兄弟姉妹として、共にあなたを讃美し、仕えていくことができますように守り、導いてください……」
 少女は女性の祈りの中に、自分の名前が出て来たこと、そしてイブが終れば、こことはまったく関係がなくなると思っていたのに、兄弟姉妹として繋がっていけるようにとあったことが、何よりうれしかった。そのため女性の祈りも、最後までは頭に入ってこなかった。
 少女はクリスマスイブの間中、女性について歩いて、女性が奉仕で動き回る間も、眼を放さないようにしていた。
 少女にその日のことが強い反省となって迫ってきたのは、クリスマスも終わって三日ほどしてからだった。女性のことを自分の母親でもあるかのように追い回していて、神様のことをひとつも考えていなかったと気づいて、
「神様ごめんなさい」
 と謝った。それがとにもかくにも、少女が生まれて初めてした祈りだった、

了


☆

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