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文芸の里コミュの掌編、短詩、俳句、その他、雑駁

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                  J.S.BACH Johannes Passions.wmv




   ☆


掌編、短詩、俳句、その他、雑駁


◇本の少女

蛍を見て帰る夜道に、
ぼくを迎えたのは、
物語から抜け出してきた少女だった。
私「月ライオン」の中のマリン、高校三年生よ、
と少女は言った。
ぼくは「月ライオン」を読んでいなかったから、
ワオワオ とライオンの吼え声だけしてみせた。
何それ、兎? と少女は言った。
ラーオンだよ、とぼくは、出鱈目を言った。
レーオンなら知ってる、と少女は言って、
俺はレーオンだぞー と彼女は凄んで見せた。
怖くもかゆくもない、とぼくは言った。
痛くも痒くもないって言うのよ。
と少女は言った。
ようやく噛み合って来たので、
ぼくは嬉しくなった。
そろそろ帰って寝るとするか、
とぼくは言った。
私も、と少女は言った。
君はあそこだろう、と月を指さした。
バカ、と少女は額に青筋を立てて怒り、
あれは天体の月でしょう。
私がいるのは物語の「月ライオン」
そう言って、山の方へ向かって歩き出した。
そもそも「月ライオン」なんて物語があったかなあ
と訝しくなってきた。
少女が山に向かって発声したらしく
俺はレーオンだぞー と山彦が返ってきた。



◇処世

水澄ましの軽さもて
すいすいと世を渡れば
こともなし


◇蚊柱

空中に
渦巻きが
できている
ぼおーっと
蚊の柱が立っていた


◇蟻地獄

まっすぐ続いてきた
蟻の行列が
途中で迂回している
蟻が遠回りして行く
直径の真ん中辺りに
活火山のような
蟻地獄がある
まっすぐ進めば
すぐ学校通りにでられるのに
一つの悪魔のために
こんなに時間と労力を
無駄にしていかなければならない
それでも悪魔に引き寄せられて
いのちを落とす人間を見れば
蟻は賢い



◇動物

動物は
善と悪
いのちを
人間に教える
教材


◇植物

植物は
生きる姿
営みを
人間に教える
教材


◇自然

自然とは
開くように
閉じるものである
別れがあり
悲しみがある


◇神の国

開き
達したまま
いつまでも
つづくもの
別れがなく
悲しみがない


◇蜘蛛

糸を張れば
張るほど
身が
細まっていく


◇蟻

もう焦がす
ところなんか
ないよと
蟻は走る
白昼から
夜の闇へ


◇大夏木

椋鳥の大群が
押し寄せ
大仰ないのちを抱えて
耐えている
大夏木


◇夏木立

鳥ばかり
騒がしくして
町の木立


◇夏木

木から木へ
鳥が
線描して
移っていく
木立


◇真夏

重心が
くっきり
刻印された
緑陰


◇草原

風の中に
寝転んで
思い切り
草いきれを
吸う
一緒に蜜蜂を吸い込んで
体の小爆発
涙が出て
太陽に煌めく


◇鈴蘭

何に挿して欲しいの
牛乳瓶
マグカップ
盃?

鈴蘭に
好む器を
問ふ
少女



◇極限に立つ人何と蛇遣ひ


蛇でなく蛇遣いでよかったよ。
蛇ならお終いだったが、蛇を操れる稟質を具えた者だった。
神は危ない綱渡りをするものだ。
他に救いの道はなかったのだ。召しどころか、羊に数えられることもなかった。
地獄行きは必至だったのだ。
神がさんざん警告してきたにもかかわらず、
邪な霊と平気で交わっていられることで、不信はピークになっていた。

さてこれからどうなるのか。
召しは外されないが、潔癖さは問われるだろう。
神は自分が認めない悪と癒着している者を、キリストと会わせることはない。
己の本性を自覚し、神の忠告を聴いて動かなければならない。


◇苺

苺を食めば
そのつぶつぶに
奥の味がする

ジョリ ジョリ

噛むことで
頭の中を
爽快にしてくれるやうな


◇ぼうたん

ぼうたんは
風の強い日は
風に向いて咲いている
早く散りたいのだろうか
頭が重くて疲れたのか
色々あったからな


◇青梅

青梅には
産毛が生えて
風と光に靡いている
手にすると
損ねてしまうから
目に収めるだけとする



◇旅先で得た浜茄子の実をもちて
少女はそつと吾に差し出す


◇向日葵の綽名持つ人よく笑ひ
猫も処置無しと立ち退いていく


   ☆

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