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文芸の里コミュの詩・蒼林檎

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  Chopin, Nocturne in E-flat Major, opus 9 no.2, Piano Solo (animated





☆蒼林檎

蒼林檎を草原におくと
つき過ぎていて
しっくりいかない
そうかといって
畳におくと
離れすぎてしまう
どこかに相応しい場所はないかと
とみこうみするうちに

あった 
木椅子の上
しかしこれも転げ落ちそうで
安定しない

そもそも木椅子の上に
蒼林檎が一個
おかれていれば
小鳥が喉を潤しに来るのは明らか
はたまた
退屈した猫のおもちゃにされて転がされるくらいで
選ぶところがない

蒼林檎を手にして
撫でたり温めたりしているうちに
しずかに納まっていく場所があった
心のうち
そうだ ここしかないのだ
心の奥深くしまいこみ
密閉してしまう
いつか芽吹く
種のように
記憶の核として
封印してしまうのだ

そうするうちに
吾があの青春は
まだ終っていなかったのだ
そんな自覚が芽生えてきて
緩やかながら
胸のうちに
青春の欠落や挫折が
ずきずき疼きはじめ
波紋となって広がっていく

そんな不協和音を抱えたまま
隙間だらけの電車に乗って
がたがた揺られていった

あの夏の日
住みなれた街を遠く離れ
狂い凧みたいに飛ばされていった

車窓に広がる空はどこまでも蒼く透明に澄んでいた
その空に心にしまった蒼林檎が二重に映って飛んでいた
心のうちと外を共有して蒼林檎は電車の速度に合わせ
浮かんで走っていた

今も蒼林檎の片割れが
空の蒼さに溶けそうになって飛んでいる

◇蒼林檎わが青春に架くる橋

   ☆

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