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文芸の里コミュの白鷺

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            Debussy, Preludes, Pierre-Laurent Aimard, piano


☆白鷺


白鷺は立っていた
銀色の魚を求めて
その魚を捕まえれば
別世界へ飛んでいけるのだ
他の鳥たちは口を揃え
こう言って嘲るのだ
カジカや泥鰌を抜かせば
どれも銀色をしていると
だからおまえが狙っているのも
普通の魚にちがいないのだ
そう言って嘲るのだ
フツウ、フツウと
口々に馬鹿にして言うのだ

しかし と白鷺は思うのである
奴らが言う魚は銀色のメッキと同じで
陸に揚げてしばらくすれば
萎れて輝きなど消えてしまう
その証拠に
それらの魚を食べた鳥たちは
いつも潮垂れて不平ばかり洩らしている

この白鷺の探している銀色の魚は
そんなへなちょこ野郎のことではない
食べれば勇気百倍
元気百倍となって
このさもしい今を脱出していける
資源を蓄えた魚のことだ

食べた結果
内に溶け込んだ魚のほうが優っていて
あのとつとつとした陸の歩みのペンギンが
がぜん俊敏な魚になって
海中を泳ぎだすようなことになっても
いっこうに構わない
それもまた次元を超えた生き方になる

白鷺は待っていた
とにかくここから抜け出させてくれる
銀の魚が現われてくれるのを
待っていた

黒々とした淀みの奥を
項垂れて覗き込みながら
待っていた

暗い水の底から銀色の魚が
浮上してきて
あら こんにちは
と挨拶してくれるのを
待っていた

食べたりしなくても
声を聴くだけでよかったのだ
食べればこの世からいなくなってしまうので
そんな可哀想なことはしたくなかった
銀色の魚を見て声を聴ければ
白鷺は大きく変えられて
厭世観や鬱屈した思いから開放され
やがて天国へ旅立てるのだ
そんな命の資源を秘めた
銀色の魚の現われてくるのを
待っていた
首を長くして待っていた
銀の魚がヒョッコリ顔を出し
あら こんにちわ
と言ってくれるのを
待っていた

待つことにかけては
白鷺ほど様になっている鳥はいない
細くて長い脚は
水流の抵抗を小さくするのに最適だし
首を長くして待つなどと言わなくても
もともと長い首が具えられていた
顔を洗ってさっぱりしたいときには
立ったまま長い首を川底の小石に
擦って往復させればよかった
そのときは鋭い嘴が
潜水艦のように進んで来るので
小魚たちはびっくりして
道を空けなければならなかった
白鷺が待っているのは
そんな雑魚たちではなく
銀色の魚だった


  ☆

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