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文芸の里コミュの姉妹

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       .アランフェス協奏曲 Concierto de Aranjuez - Kaori Muraji .


 ☆姉妹
   〜屋根に鳥 動く気配のクリスマス〜

 地方都市の郊外に立つ二階建ての一軒家。家の前にはずっと先まで更地が広がっている。バブル経済の発展と凋落を、一身に受けて立つ家ということもできる。ここまでは伸びてきたが、先が続かなくなった。目の前の更地がそれを物語っている。
 冬の日は短く、まだ五時を廻ったばかりだというのに、薄暗くなっている。家には女子高校に通う姉と、小学生の妹がいる。
 父はここから電車で一時間半の、都心にある会社のサラリーマン。母は近くのスーパーでパートで働いている。家のローン返済のためだ。
 姉はご飯炊きくらいはするが、たいていは母がスーパーから食材を仕入れてきて、それで食事の支度をする。
 四人家族。もっとも長い時間、一人で過ごさなければならないのが妹ということになる。
 姉は来年大学受験を控えているし、妹の相手になってはいられないのだ。
 屋根でごそごそ、何かが動く気配がする。テレビのアンテナが倒れて風に煽られている感じでもないし、それを直すために人が上っているとも思えない。もしかして、どこかの猫が上ったのか。でも、この寒空に、何の目的で? 
 妹はゲームにのめりこんでいて、屋根の物音に気づいていない。家族が近くにいれば、独りで遊ぶこともできるのだ。
 姉は屋根の物音が気になって、勉強どころではなくなった。ふと閃くものがあって、鳥、鳥が来ているんだわ、と囁き、その自分の答えに納得していた。鳥なら、屋根に来ていて不思議はない。鳥の目には遅すぎる時間であるが、それはさほど気にしなくてよい。うっかりしているうちに、夜が訪れてしまったのだろう。釣瓶落としの秋の日なんて、学校で習ったばかりだもの。今はもう、冬だけれど。
 ここまできて、彼女は、うっかりしていたのは鳥ではなく、自分のほうだったと気づいた。
「大変だ。今夜はイブだったのよ!」
 彼女は声を張り上げて、立ち上がった。姉の声に、妹はゲームを投げ出して寄って来た。つづけて姉は叫んだ。
「こうしちゃいられない。すぐ飾り付けなきゃ」
 彼女は少し前、友だちと下校の途中デパートに寄って、細々としたクリスマスグッズを買い揃え、そのうち飾り付けるつもりでしまいこんであった。
 それを学習机の引出しから引っ張り出しながら、グッズの異変に目がいった。袋を留めたセロテープが剥がれ、中の小物も一つ一つ包んだ様子が変わっている。
「さては、あんた開けて見たわね。私の留守に」
 妹は涼しげに顔を横に振った。母親が小物のすべてを点検するはずはないから、妹に決まっている。首の振り方に既に嘘がばれている。
「知っていたんなら、どうしてお姉ちゃんに、今日がイブだって教えなかったのよ」
 姉は妹の頭に拳を置いてぐりぐりっとした。妹は早く飾り付けにとりかかりたくて、怒られても喜色を浮かべて堪えている。

 二人はすぐツリーの飾り付けに取り掛かった。まず組み立て式のツリーを伸ばし、ネジ釘で留めたり、貼ったり、結んだりしていった。妹は仕様を知っているかのように、先へ先へと手順を進めていく。
 そんな妹を見ていると、姉は妹を連れてクリスマスグッズを買いに行くべきだったと、反省も湧いてきた。そうすれば鳥にイブを示される前に、
「お姉ちゃん、明日はクリスマスイブよ。だから今日、ツリーのお飾りしようね。わたし簡単にできるよ」
 なんて言って、妹が教えてくれただろう。
 そうか、ちょっと見ただけにしては、中が荒らされていると思ったら、やっぱり下調べがしてあったんだ。
                    了

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