ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

攻殻機動隊の世界に長門がいるコミュの五日目1

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
568 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 11:45:01.34 ID:DTsTjcypO

タチコマ達が噴水の逆戻しのように宙にあるS&Yと朝倉に収束する
このままでは一秒半後にはS&Yに直撃し――タチコマは自爆する
朝倉「自らの為に自爆させるか――」
抱きしめながら彼女は言う
――タチコマ達の口……ランチャーに詰められたグレネードはS&Yが創りだした不可視球体にふれた時点で自爆するようにプログラムしてある
つまりS&Yの手で壊す可能性も孕ませてある
朝倉の目が狂気に見開かれる
朝倉「自らの手で破壊するか――!?」

あと一秒

S&Y「えげつな……!」
雪と融合したS&Yは当然それを悟っている
絶望の要因は悟っている――

迫るタチコマ
強く抱きしめる朝倉
うめくS&Y

朝倉「もう一度壊れなさい――少佐ぁッ!!」


あと半秒



569 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 11:55:36.99 ID:DTsTjcypO


それは音もなく広がった


S&Yの体を中心にして別の情報空間が産み出される
朝倉「(勝った――)」
それを不可視空間と見てとった朝倉は、S&Yのふくよかな胸に顔を埋めながら笑った
S&Yは自らを救うために――ただ自分が生きたいという欲求の為に、タチコマを破壊する
朝倉「(認識しなさい――)」
己が悪であること
朝倉「(否定しなさい――)」
己が悪であること
朝倉「(絶望しなさい――――ッ!)」
己が、悪であること


広がる情報空間
タチコマに触れる





572 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 12:21:13.56 ID:DTsTjcypO


情報空間
タチコマに――触れた
だが
タチコマA「――お?」
タチコマ達の動きが止まる
手足をばたつかせ、体を揺らし、「なぜー!?」と叫ぶが
――――爆発、しない
朝倉「――――どうしてッ!?」
そして朝倉は気がつく
侵されている
身を焦がすような焦燥感に襲われ
朝倉「(私の――世界がッ!?)」
侵食される、極彩空間
侵すのは――
Y「――あなたはとても優秀」

世界を包む『純白』
何もない、『空白の空間』
Y「だから時間がかかった」


全ての時が、止まった。





603 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 15:50:50.04 ID:DTsTjcypO


タチコマたちは宙に浮いたまま止まり、手足をじたばたさせているが、まるで壁に固定されたようにその場から移動することはできない
そしてそれは
朝倉「ぅ――!?」
朝倉にも適用されるルールだ
一方周囲すべての動きを封じたS&Yは、朝倉の腕をつかむとするりと抜けて、空白の空間を歩き始める
S「古来、『知る』ということは『占る』と書き、それは知りえることが自らのコントロール下に置くという意味と同意義だったことを意味する」
ス――とS&Yが手をあげると、朝倉は十字に貼り付けられたように両手両足を引き伸ばされる
朝倉「ぁうっ」
Y「少佐の記憶から『空白の世界』のデータを収集した。それを基に敵性・朝倉涼子の構築したデータを改変した」
朝倉はぎり、とS&Yを睨み
朝倉「――私の世界を奪ったってこと?」
S「空にしただけだ――」
少佐は朝倉から目をそらす
歩き出し、『彼ら』の元に向かう
S「対等に――いつもと同じように、話をするためにな……」
しゃがみこみ、その頭をなでる
タチコマ「少佐ぁ! うごかないんですけどぉ?」
彼は手足をばたばたさせて、だいぶん困りきった声で答えた
少佐は黙って頭をなでてやる



605 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 16:04:27.61 ID:DTsTjcypO


S「タチコマ」
何もない――音もない静寂の空間で、少佐はタチコマに話しかけた
タチコマ「なぁに少佐?」
きょとんとして彼は返す
少佐はしばらく沈黙し
タチコマ「どうしたの少佐?」
S「……たしかに」
口を、開いた
S「お前はシナリオ通りに動くAIでしかなかったのかもしれない。お前達にはゴーストが宿り、私たちを守るため身を挺して自爆したというのは幻想で、私たちが信じたいだけの――都合のいい『嘘』なのかもしれない」
タチコマD「そうだよ!」
背後で別のタチコマが元気よく答える
タチコマ「僕たちはシナリオに忠実だっただけさ!」
Sはうつむく
僅かに口を開き
――そして何も語らずに閉じ
立ち上がる
S「そうだな」
顔を上げた

S「本当は、死にたくなんてなかったはずよね」




609 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 16:21:19.87 ID:DTsTjcypO


S「――特権者であった私がいうのはおこがましいかもしれない。だが、聞いて欲しい」
自分を囲むタチコマ達に手をかざす
タチコマA「おお!?」
彼らの体が開放され、一斉にボテ、とS&Yによって形成された『床』に落ちた

タチコマたちはうれしそうに飛び跳ね
タチコマE「やったぁ! 動いたぞ!」
タチコマD「おぉぉぉぉ! 自分で機体をコントロールできるぅ」
タチコマC「初めての経験だったなぁ……」
タチコマF「皆ぁ、情報を共有化しようよ!」
騒がしく歓談し始める
少佐の傍らのタチコマが、黙ってその様子を見ていた少佐の手を引き
タチコマ「少佐ぁ……どうもありがとう」
と機体を上下させた
少佐は彼を見つめていたが、しばらくすると視線をそらし、そして顔を上げると大声をあげた
S「ここは何もない世界――我々が対等でいられる場所だ!ここにはストーリーも、特権も、制約もない。お前達は思うままに考え、行動し、結果を出すことができる。だからもしこれから話すことに不満があったのなら、その時は容赦はしなくていい」


S「私を殺してくれ」





612 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 16:43:03.19 ID:DTsTjcypO

タチコマたちが黙った
皆、表情のないまま少佐を見、わずかな音すら立てなくなる
S「確かにシナリオ通りだったかもしれない」
少佐は静かに――同じ言葉から話し始めた

S「あの世界に存在している間、私たちは創られた存在そのもので、規定どおりの行動しかできていなかった――そうかもしれない。それは誰にも、否定できない。あの世界にいた誰にとっても、それは否定できない」
少佐は身振りも手振りも加えず、ただ佇んで話している
タチコマ達はそれを見つめている
S「だが完璧な現実が無いのと同様に、完璧なシナリオもまた、存在しないはずだ。我々の話す言葉はすべて、帰結へ向けてのためだけだったか――私たちはただ、ストーリーを構成するためだけに向かい合い、話し、笑い、怒り――悲しんだのか」
少佐の声以外、何の音もしない
雑念の消え去った世界には、少佐の言葉しか響かない
S「私は違う」
凛と響く



613 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 16:44:14.62 ID:DTsTjcypO
S「あの事件で失ったもの。そのことで私が思い、感じた感情は、決してストーリーに沿ってはいない。
例え『泣け』と言われても、私は泣かなかった。私の感情は、泣いても誰かに伝えても意味のないものだった。
あの時私自身の感じた感情は、私だけが、今でも、保持し続けている。それを事細かに誰かに伝えたことも、口に出したこともない」
まっすぐに正面を見つめる
静かに、装飾のない言葉で、訊ねる

S「お前たちも今、口にしない感情を保持しているんじゃないか」


615 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 16:58:14.79 ID:DTsTjcypO

静寂が世界を支配した
重くもなく、軽くもない。ただ、静寂、それだけ――
その間にその空間には何があったのか
『何もない空白の世界』にいた彼らはそこで自由に考え、思い、行動できた
そこで少佐とタチコマたちがしていたことは、見つめ合うことだけだった

S「私のシナリオではこれからお前たちを、私の手によって分解することになっている」

そう言ったときも、彼らがしていたのは見つめ合うことだけだった
S「だがシナリオには許される。描かない、予定外の帰結も全部、許される。そうであるはずだ。私たちが今、悲しんでいるのを表さないのと同様に、ストーリーに沿わない行動もまた、許される」
少佐は歩き始める。一機のタチコマの元に寄ると、しゃがんだ
タチコマA「……」
コードを取り出すと首裏のプラグに差込み、その逆の先端をタチコマに差し出した
タチコマはおずおずと、その先端に手をかざす
コードの先を、受け止める





617 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 17:02:06.76 ID:DTsTjcypO


タチコマ「少佐……」
ぽつりとだけ
静寂を壊さぬように、小さく、弱い声で
少佐「なんだ」
タチコマの頭を撫でながら、少佐が応える




618 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 17:03:49.49 ID:DTsTjcypO




タチコマ「ごめんね」




620 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 17:10:20.19 ID:DTsTjcypO



タチコマの体が輝き始める
周囲のタチコマ達も一斉に、純白の中に輝く光の粒子となって、輝き始める
そしてキラキラと、その身を崩壊させていく
消えていってしまう――

手のひらの下で消えていくタチコマ
もうそれ以上、何も言わないタチコマ
少佐は首を振り

「いいんだ――――」

うつむいた




659 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 21:27:18.18 ID:DTsTjcypO


少佐は立ち上がった
一度空を見上げ
少佐「…………」
S&Y「……さぁて」
振りかえる
朝倉「――」
朝倉へと向けて
S&Yは手を振る。朝倉の両手両足を拘束していた『透明の枷』が外れ、彼女は『床』に崩れ落ちる
朝倉「かっは……」
彼女は何度もせき込みながら喉を押さえる
S&Y「悪いな、黙っていて貰った――」
朝倉「……ッ」
朝倉は口の端から垂れた唾液をしなやかな手の甲で乱暴に拭いとりながら、S&Yを睨んだ
S&Y「そんなに睨むなよ」
少佐は自分の頭を指し
S&Y「お前の苦しみは感じてる――情報統合思念体を介してな」


684 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 22:46:23.04 ID:DTsTjcypO

朝倉の顔から血の気が引いた

S&Y「――言ったはずだ」
腰に手を当て
S「私には今、膨大なネットが接続されているとな――雪は私に、新たな可能性を提示した。情報統合思念体という、可能性を」
Y「情報統合思念体はあなたに疑念を持っている」
冷たく見下ろすY
その言葉に、朝倉はぶるぶると震え始める
S&Y「……『私はその答えを知っている』」
S「そして情報統合思念体は、その疑念に答えろと要求してきた」
Y「私はその命令に逆らえない」
S「私は逆らえる」
朝倉が両肩を抱えた
ぎ――と強く、爪を立てて、強く
――強く
S&Y「――さぁ朝倉涼子、タチコマのように、お前もみずから決断を下す時だ。
ありとあらゆる可能性を探せ、自分がなぜそこにあるか、自分が何をしようとしているのか、未来をどう『生きる』のか」
Y「あなたが『その計画』を諦めるなら」
S「私は疑念に答えない」
朝倉が深く、うつ向く
深く、深く――
震える身体に爪という杭を打ち込み

S&Y『どうする』


顔を、はね上げた




694 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 23:04:40.38 ID:DTsTjcypO

朝倉の背後に爆発音と共に火柱が上がった
さらには右に
左に――S&Yと朝倉の周囲に火柱がどんどんに爆発と共に生まれ、限界のない純白の空へとまがまがしい龍の如く舞い上がる
朝倉「――終わらせない」
空を見上げる朝倉の表情は、無表情
朝倉「まだ――まだ始まったばかりなのよ」
純白の空が崩壊する
まるでガラスが砕けるように、純白がかん高い粉砕音と共に剥がれ落ちる




698 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 23:16:37.55 ID:DTsTjcypO
空の割れ目からのぞく、闇色の照明――
闇の中、巻上がる火柱のグロテスクな赤が際立つ
生まれ続ける火柱は、遂にS&Yと朝倉を中心として、狭い四角の空間を取り囲む。
作り出したのだ

闇の照明に照らされた、業火の闘技場

舞散る火花がS&Yの顔を照らす
表情を変えず――内心の感情を表に出さずS&Yは朝倉を見つめている
S&Y「(甘く見すぎたか――)」
朝倉は立ち上がる
S&Yを、まっすぐに見つめる
朝倉「私は――確立する」



699 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/26(火) 23:24:36.51 ID:DTsTjcypO

朝倉「例えどんな世界を犠牲にしてでも」
ゆっくりと、腕を振り下ろす
朝倉「例えどんな命を犠牲にしてでも」
その手に収束する、闇色の照明に映える光の粒子
朝倉「例え全てが消失してでも―――ッ!」
握られる
極彩が渦巻く
狂気色のナイフ
『朝倉』そのもの

朝倉「確立するのよッ!
      この――私をッ!!」


715 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 00:30:28.60 ID:BGIxmp09O
朝倉の叫びと共に至る所から爆発音がし、火の手があがる
僅かに開いたこの闘技場を残して空間全体に火の手が上がっているのだ

朝倉「この世界を破壊するッ!!」
朝倉の膝が曲がる 腰が深く落とされ、腰だめにナイフを構え
S&Y「――それでいいのか」
少佐が手のひらを彼女に向ける
朝倉は怒鳴った
朝倉「残り時間は一分を切ったわ――さぁ早くしないと」
彼女の姿がぶれる
その時響きわたる爆発音
空間が激しく揺れる
朝倉「世界と心中よッ!!」
飛翔



720 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 00:44:33.57 ID:BGIxmp09O
宙で彼女は唱える
朝倉「フルターミネータモード」

加速

瞬時にS&Yの目前にまで迫る
10メートル以上の間に姿を僅かも確認できなかった
S&Y「ッ――」
――速い
これまでとは桁違いの速さ
S&Y「ふッ!」
遅れをとって不可視フィールドを展開
ナイフが肉体に到達する前にギリギリに展開する



朝倉「無駄よ」
無表情な朝倉が突き出したナイフは不可視フィールドを『にゅるん』とまるで何もないように突き抜ける
S&Y「何ッ!?」
鼻先にまで迫る
頭をのけぞらせ
しかしナイフの尖端が鼻先に突き刺さり
S&Yの目が見開かれる
S「(させるかぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!)」
S&Yの両手が、朝倉の手首を挟み込む
不安定ながらも、押し返す



724 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 00:56:25.05 ID:BGIxmp09O

止まる


ナイフはS&Yの鼻先をかすめ取ったに過ぎなかった
だが時間は止まらない
S&Yと朝倉の距離――ゼロ距離
上体をのけぞらせた不安定なS&Yと突き出したナイフを体の方へと引き戻す朝倉
朝倉「ふしっ」
小さな呼気と共に無表情な朝倉の体が傾き、しなやかで白い足がS&Yへ向けて放たれる
S&Yの足を打つ
S&Y「あっ」
小さな声を残して、S&Yの体は足を蹴り上げられ、見事反転、受け身も取れずに地面に叩きつけられる
朝倉「死んで」
朝倉のナイフが振り下ろされる
S&Yは声もあげられないまま、迫ってくる本能的な恐怖から転がって逃れた

朝倉のナイフが床をうがつ
世界にヒビが入る


極彩色の火柱が上がった


728 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 01:22:56.17 ID:BGIxmp09O

S&Yはすぐさま立ち上がり、床を蹴って朝倉から距離をとる
呼吸を荒くし、肩で息をしながら
S「今のは――」
Y「(あのナイフは朝倉涼子そのもの)」
S&Yの視線が朝倉へ向く
世界に亀裂を入れたナイフを抜き取ろうと、彼女は身体をテコにしてそれを引っ張っている
――無表情だ
Y「(特定世界の質量は別の世界の質量に対して特定の意図を持ってして接触できない。『攻殻機動隊』の少佐が創り出した自動分解プログラム――不可視フィールドは『別世界』の朝倉涼子――『極彩ナイフ』に接触することもできなかった)」
朝倉がナイフを抜き取った
ゆらん――と反動を力無く受け止める
目に光が宿っていない
Y「(朝倉涼子は――肉体を捨てている)」
S「(だとしたら)」
ゆらゆらと揺れる朝倉の視線がS&Yを捉える
S&Yも身構える
S「(『別世界』の朝倉涼子そのものである『極彩ナイフ』は私には効かない――?)」
Y「(そう、効かない)」
肉体のみの空っぽな朝倉が動く
瞬時にナイフを逆手に構えS&Yの口が動く
Y「あなたは」
朝倉が飛翔


朝倉「死になさい――長門ユキッ……!!」







730 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 01:35:43.92 ID:BGIxmp09O
飛びかかって来るのが見えない
もはやただの肉体『だけ』になった朝倉の体は限界を遥かに越えて稼動している
S&Yはとにもかくにもバックステップ
瞬間、S&Yの僅か手前に着地した朝倉は極彩ナイフをS&Yの左目へ向けて突き出す
S&Yはギリギリかわす
極彩ナイフは引き戻され、さらにもう一度右目に向けて突き出される
今度はよく見ていたS&Yが避けると同時に彼女の腕をとる
S&Y「はあッ!」
一本背負い
朝倉はあの時と同じように宙を舞い
朝倉「ねぇ諦めてよ」
あの時とは違い、少佐の背中で一回転して床に平然と足を置く
驚愕するS&Y
朝倉のナイフを持っていない手が――人差し指が光の速度で突き出される
S&Yの――Yの体に突き刺さる
Y「――ッ」
冷徹な表情が苦悶に歪む


733 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 01:53:45.94 ID:BGIxmp09O



Y「――ッ!」
Yの手が突き込まれた朝倉の指の本――腕を掴む
S&Y「ッぁあああ!」
肩に刺さったそれを引き抜き、吹き出す血に構わず捻り上げる
朝倉「ッ!」
朝倉は舌打ちと共にナイフを突き出そうとし、
だがS&Yが速い
関節が限界まで捻り上げられた朝倉の肘に身体全体でジャンプして膝蹴りを叩き込む
朝倉の肘が外れる
朝倉「ちぃッ!」
朝倉が後方に引く――その引き方も尋常ではない。バックステップが異様に力強く遠くまで跳ぶし、そのエネルギーを全く無駄にすることなく、続くバクテンの連続でスカートを翻しながら遥か後方まで飛びすさっていく
朝倉「長門さんが死んだら少佐、あなたはこの世界から逃げ出す術がない」
極彩ナイフを『自分の』関節が折れた腕へ向ける
突き刺す
血が吹き出す
グ、グ、とそのまま横へ肉と骨を切り
ぼとり、と腕が落ちる
朝倉「私は――勝つ」
『身軽になった』朝倉が再び、跳ぶ――





739 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 02:21:29.85 ID:BGIxmp09O
飛翔してくる朝倉を見ながら
S「(……さぁて)」
脳内アドレナリンが異常に放出され、時間が急激に緩やかに感じられる
まるで連続写真を一枚一枚見ているように――迫っ来る恐怖も、彼女の手に握られた極彩ナイフも、威圧は全く変わらないが
ゆっくりと上体を朝倉へと向けて構え
S「(残り時間は)」
Y「(八秒)」
なりふり構わず獣のように全身をのけぞらせて、極彩ナイフを叩きつけようと宙を舞い迫っている朝倉
S「(……次でケリをつける気ね)」
Yは沈黙する。あのナイフが突き刺さって死ぬのは彼女であり、その上とりのこれたSは世界の終焉に脅えながら死を――消滅をたっぷり味わう事になる
S「(――さぁ決断の時が来たわ)」






741 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 02:38:44.50 ID:BGIxmp09O


あと10メートル
残り7.4秒


全く無表情の朝倉の端正な顔
それに比べ、極彩ナイフの刃はギロキロと狂気に渦巻いている
S「(どこを狙っている――)」
Y「(……)」


あと8メートル
残り6.8秒


深く後ろへとのけぞらした腕――まさしく一気に叩き落とす形
S「(首―心臓―顔面―)」
Y「(―頸椎―動脈―肺)」



744 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 02:48:43.03 ID:BGIxmp09O

あと4メートル
残り5.9秒


さらに、勢いを増す朝倉の体
切断面から血しぶきが舞う

S「(―――右目だッ!)」
脳内でそう巻くし立てた少佐は、すぐさま体を対右目攻撃体勢へと構え始める。
だが返事がない
S「(――ユキ!)」
半身からの返事が返ってこない
S「(演算したッ、間違いはない! 奴は右目を)」
その瞬間
S&Yの口が開く
はっと驚いたような

Y「――足」

――Yの口調


あと2メートル
残り4.2秒




745 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 02:58:45.31 ID:BGIxmp09O

もはや目前
行動を起こして間に合うか、間に合わないか――

S「(足だと!?)」
Yの言葉に言葉にならない怒声を上げる
S「(正気か!? 今この間際になって足を狙う、だと!?)」

あと1.6メートル
残り三秒

朝倉の全身が振り下ろされる
ナイフが向かってくる

身に迫る危険
恐怖
終末の瞬間
間に合わない――
S「(雪ッ!!――)」


Y「ささやいた……」





746 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 03:01:18.04 ID:BGIxmp09O


Sの表情がハッと驚愕に染まり


Y「そうしろと囁いたの
      ――私の、ゴーストが!」


Yは、笑った




748 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 03:11:25.08 ID:BGIxmp09O
朝倉「死ねぇぇぇぇ――――!!」

朝倉のナイフが振り下ろされ

――――ない

フェイク

ザッと朝倉の足が床を噛み、『S&Yの目前に着地した』
S&Yは息を飲み同時に
ギリギリまでしゃがみ込んで手を差し出す
朝倉はしゃがみながら獰猛に光輝く極彩のナイフを振り下ろす――右上から左下に袈裟がけに
足を切り落とそうと


S&Yはその手首を掴んだ




750 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 03:18:06.54 ID:BGIxmp09O
朝倉は息を詰まらせる
朝倉「ッ!?」
完全に読まれていた事に対する驚愕
そして自分の力を利用され、引っ張られる――


そこからのS&Yの動きはもはやオートマチックに近かった
朝倉の力を受け流し、同時に自分が回転して『朝倉を巻き込む』
そして彼女の体勢が崩れ、巻き込む勢いがついた所で握った手首を返し
捻り
力強く



――極彩のナイフを、朝倉の体に突き立てた






754 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 03:41:32.82 ID:BGIxmp09O

朝倉の体がビクンと跳ねる

差し込んだのは背中から調度心臓の位置
朝倉「うぁ……」
恐怖に染め上げられた声色
朝倉の体が極彩色に内部から光り始める――ランプを体に埋め込んだように
朝倉「あ、が……」
ふらつき、
片方だけの腕が助けを求め
S&Yの体にしがみつき
S&Y「…………」
S&Yは避けずに受け止め
それを、黙って見ていた

突如、彼女体は天へ引っ張られるように伸び、強ばった



755 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 03:44:02.61 ID:BGIxmp09O



朝倉「――――――ぅぁぁぁぁあああああああああ!!」






756 :セミプロ ◆MNGyu73AVw :2007/06/27(水) 03:47:15.28 ID:BGIxmp09O



闇に伸びる極彩の火柱――



コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

攻殻機動隊の世界に長門がいる 更新情報

攻殻機動隊の世界に長門がいるのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。