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働く女の休憩室@東京コミュの創作してストレス解消

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働きながら、急に創作意欲がわくときないですか?

お話や詩や川柳を書いて、日頃の鬱憤晴らしや思いつきやアイデアの素を書きためてみては?と思いました。
基本的になんでも有りな、個人的趣味のトピックです。

コメント(9)

と、いうことで創作話をすこしずつ書いてみます。
よかったらご覧ください。
****************************************

「はたらくものたち」


「一生懸命やってるのにどうして認められないかなぁ。」

口に出して言ってみたら、我ながら結構情けないセリフだと思った。
しかも意外と声が響いた。自分が思ったよりも酔っているようだ。

「なんでだろうねぇ。」
と、なだめるように、私の隣で良美が言った。

良美と私は、少し前までは同僚だった。

2ヶ月前に転職したばかりで何かと忙しい彼女を、無理に誘って飲みに連れ出し、しかも仕事の愚痴を聞かせている、というわけだ。

「指示通りに完璧にやったのに、それだけじゃ駄目って、どういうこと?」、「仕事させるときだけ上手いこと言って、がんばっても結局は他の人と同じ扱いじゃない!これじゃあ詐欺だよ。」

と、大声でまくしたてた後、周りが急に静かになった。
慌てて声をひそめる。

「・・良美もそう思うでしょ。」

「相変わらず同じようなことで愚痴ってるねー。」

よしよし、みたいに優しく言われると、なんだか悔しくなってくる。そんな風に言われたいと思ってるわけじゃないのに。

「祥子はさ、偉いよね。ずっと人一倍がんばってきたもんね。私には出来ないことだなぁ。」

そう言われて、私はちょっと拍子抜けした気分になり、少し間をおいて話題を変えた。

「もう入社して6年目だもんね。」
「・・・そういえば、今度入ってきた新入社員、ちょっと小栗くんに似てるって人気あるんだよね。」

「マジで?かっこいいの?今度会わせてよ!」

良美がまんまと食いついてきたけど、ダメー、という顔してちょっと意地悪してみた。

しかし私ってひどい友達だ…、まぁ、私もまだ、相沢くんとはそこまで仲良くないしね。

小栗くんに似てるかどうかは疑問だけど、相沢くんは頭もいいし、優しいし、もてるタイプだと思う。

今はスーツが似合わないけど、これからどんどん良くなってきそうな気もする。

入社したばかりだけど、田崎課長に期待されてるって感じがする。

そんな課長の態度を見てると思うんだよね。

なんで私は認められないのだろう。

ひねくれたわけじゃなく、やきもちでもなく、素朴な疑問。
でもそんな疑問に答えてくれる人は周りにいない。

課長にきいても、結局は「しょうがない、次がんばれ。」で終わっちゃうしさ。
じゃあ、どうしろっていうんだろう。がんばれって何だ?

なんかつまんないの。
今までこんなことでつまずいたことなかったのにな・・。

これが、燃え尽き症候群ってやつ・・・?

「おーい、寝てるの?祥子。飲みすぎた?」

「はいはい、起きてるよぉ。良美はさ、今の仕事どうなの。前より楽しい?」
「今の仕事、楽しい?」

「そうだねー、私は好きなことやってるから、前の仕事よりは合ってるかも。私には営業は無理だったよ。今は、やりたかったお花の仕事ができて楽しいよ。」

良美は、優しいけど、かなりお人よしだ。

半年前も、昔の友達に言われて、肌がつやつやになるというサプリメントをたくさん買わされてしまったけど、友達のことは悪く言わなかった。

「良美はそんなのいらないんじゃない?欲しいって言ってないのに勧めて買わせるのおかしい!」って、私の方が怒ってしまってたけど、良美は友達が困ってるみたいだったから、って言ってたなぁ。

花屋さんの仕事は、そんな良美のイメージに合ってると思う。

「そう、良かったね。仕事が楽しいっていいよね・・・。」

私も面白いと思える仕事を探したほうがいいのかな、と思ってしまう。
それってなんだ?

もう、考えると暗くなるから、止めよう。

私たちはお店を出た。
良美は、送っていこうかって言ったけど、そのときは酔いも醒めてきたので、だいじょうぶだよと言って店の前で別れた。

駅に向かって歩いていると、道端に咲いている桜がキレイだった。

かすかに甘い、春の匂いがする。

まだ時間も早かったので、駅ひとつ前で降りて、歩いて帰ることにした。

雲が切れて、月が見えた。

歩いていると、またふわっと春の香りがしてきた。毎年、春になるとこの香りがするなぁ、と思う。

「昔、入社したときの歓迎会の帰りとかもこの匂いがしたなぁ、懐かしい。あの頃は楽しかったな。」

小さく独り言を言って、月を眺めながらゆっくり歩いていた。

そうしたら急に、視界が広くなったような気がした。
酔いはすっかり醒めて、気持ちも晴れてきた。

あの角を曲がると、もう自分の家だ、と思ったとき、道の向こうに小さな明かりが見えた。

「あれ、ここにこんなお店あったっけ?」

それは、少し細いドアの、小さなバーのようなお店だった。

シンプルな茶色のドアの前にステキな涙型の赤いライトがあった。
入り口の雰囲気が、なんとなく暖かい感じなのが気になって、店の前に行ってみた。

「お店の名前・・・、ray、か。バーかな?いつ出来たんだろ。」

中の様子は外からは見えない。でも、ライトがついているし、営業はしているみたいだ。

ライトの灯りを見ていたら、ふつふつと好奇心が沸いてきて、どうしても中の様子を見たくなった。

「ちょっとだけ、寄ってみよう。」

思い切ってこのドアを開けてみることにした。
思い切ってドアノブを回した。

するとまた、桜の花の香りがした。

少し重いドアを押すと、目の前は真っ暗。

キン、と耳鳴りがして、かすかに聞こえた若そうな女の人の声。

「いらっしゃいませ。」

その声に促されて、倒れこむように、私はドアの中に進んだ。

暗い室内で、涙型のライトが赤くゆらめいて、私を奥へと誘っていく。

何か変な感じ。
一体なにが起こってるんだろう?

頭の隅で不思議に思いながらも、足は止まらない。

ライトの明かりについていくと、急に波のような音が聞こえて、床が青く光り始めて、目の前の赤いライトが消えた。

「いらっしゃいませ。」、と今度は男の人の声がした。
気がつくと、お店の中だった。
カウンターだけのバー。

さっき、いらっしゃいませと言ったのは、いつの間にか私の隣に立っていたお店の人だったらしい。

低い、いい声だ。

慌てて会釈して、周りを見回す。
青いライトがついた、静かな水槽みたいな感じのお店だった。
なんだか懐かしい、そう思っていた。

「いらっしゃいませ。」

お店の人がもう一度言った。

「うちの店は初めてのお客様ですね。お好きな席にどうぞ。」
店の中を見回しながら、入り口に近い席に座った。
席に座ると、カウンターの中にいた人が温かいおしぼりを手渡してくれた。

少し落ち着いて周りを見回す。
水族館のなかにいるような雰囲気。青い光。カウンターの中に並んだお酒。奥に座ってる人の前に置かれた赤いカクテル。

時間がゆっくりと流れてるような気がした。

手の中のおしぼりは温かいのに、なんだか現実ではないようだ。
「ご注文は?」

カウンターの中にいた男の人が言った。

おしぼりから目を離して、その人を見た。

「えっと、じゃあ、ジン・バックをください。」

「かしこまりました。」

そのバーテンさんは、にこっと笑ってカクテルを作り始めた。

その背中を眺めながら、私がいまここにいることを不思議に思っていた。

(なんか突然入ってみたくなってしまったけど、ひとりでバーに入ったことなんかなかったのに、どうしちゃったんだろう。

明日も仕事だし、一杯飲んだらすぐに帰ろう。

それにしても、なんだか小さいお店だわね。)

そうしていると、ガタンと音がして、カウンターの奥にいたスーツを着たお客さんが立ち上がった。

座っていた席から、私の席の後ろを通って、店の出口に向かう。

男の人の香水の臭いがした。

「ごちそうさま。」

「ありがとうございました。おやすみなさい。」

と、お店の人と話しているのを何気なく見ていたら、あることに気がついた。
(あれ?あのひと・・。)

ドアを開けて出て行こうとしているお客さんの横顔が目に入った。

(子供みたい。)

スーツもやたら大きいのを着てるのか、だぶだぶだった。

(そういえば、声も高かったような。)

薄暗いし、気のせいかな?と思いながらも、あの香水の香りとあの横顔が全く合わない気がして、違和感を感じていた。

「どうぞ。」

私の前にジン・バックが置かれた。バーテンさんは愛想よく微笑んでいる。

まだ若そうな、きれいな男の人だった。

「ありがとう。」

さっきのお客さんが気になりつつも、一気に半分くらい飲んだ。

喉がかわいていたので、カクテルはからだにしみ込んでいった。


店に流れている不思議に落ち着く音楽を聞きながら、ゆっくりお酒を飲む。

そして、目の前のちょっとステキなバーテンさんを眺めながら、仕事とかいろんなことで疲れた頭を休めていた。

だんだん、カラカラになった脳がしっとりしてくるような感覚になる。

(あー、癒される・・・。)

こういうお店を偶然みつけてしまったことはいいことだわ、と思っていると、ふと、さっき店を出て行ったお客さんのことを思い出した。

(目の錯覚だったのかなぁ、なんだか子供みたいな姿だったんだけど。)

カクテルを飲み干すと、バーテンさんが声をかけてきた。

「次、なにか作りましょうか?」

「あ、えーと。じゃあ、キューバリバーください。」

はい、と笑顔を見せるバーテンさんに、思わず聞いてしまった。

「あの、さっきここを出て行ったお客さん、ちょっと子供みたいな方ではなかったですか?」

「・・・え?」

グラスを下げようとしたバーテンさんの手が一瞬止まった。

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