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アートギャラリー翡翠コミュのガレ 「貝の付いた壷」  高さ12.5cm 1900年頃

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ガレ「貝の付いた壷」
高さ12.5cm 1900年頃

 発展途上にあった海洋生物学に関わる報告書は、ガレの強い興味を引き、彼がこの種の学問領域に装飾モチーフを探し求めたことは次の記述からも確認できます。

 「真に科学はあらゆる角度から装飾家に新しい世界を提供します。海洋学も、またナンシーにその熱心な研究者がおりますが、千夜一夜物語の魔人のように海の王者として地上の人々をその腕に抱き、青い宮殿へといざなってくれるのです。深海に潜る勇敢な海洋学者たちが、大洋の神秘をわれわれにもたらしてくれるのです。
かれらの収穫物は研究室を装飾美術の工房、あるいはモチーフの美術館にと変化させます。研究者は海の七宝螺鈿ともいえる珍しい物体の形態を写生し出版して芸術家に供してくれるのです。
やがて透明なクラゲはガラスの杯に微妙な色合いのニュアンスや斬新で美しい形状を与えてくれるでしょう」。


 ガレが自作のデザインに用いた海洋生物には、魚はもとより、タコ、イカ、タツノオトシゴ、クラゲ、ヒトデ、ウミユリ、ウミウシ、ヒドラ、イソギンチャクなど、およそ従来の西洋美術では重視されることがなかった腔腸動物さえ含まれています。さらに海岸の岩場に群生するフジツボやさまざまな貝、漂着海藻、そして海洋浮遊物の瓶、海底から引き上げられた古代の壷や底深く眠っていた古典彫刻の断片など、海にまつわる様々な文物が創作の対象として渉猟されているのを見ることができます。


 貝殻やヒトデが付着した様子を表現しているこの花瓶も、おそらくは海底に沈没していた古代の難破船から引き上げられた遺物をヒントにしたものでしょう。このようなデザイン手法は、ガレが若いときに盛んに行った歴史主義的な創作方法(一種の本歌取り)を継承したものといえ、実験的試みが後発のアール・ヌーヴォー様式と違和感無く混交した現象を物語る作例としても貴重です。

  ガレは高名な演説原稿『象徴的装飾』の中で、最も賞賛していた詩人のひとり、ボードレールの『人間と海』という詩から、海底に蔵される財宝を知り尽くすことが不可能であるように、人間の心の奥底も容易に窺い知れないという趣旨の一節を引用しています。

 生命の源であり、時には恐るべき凶暴性を発揮して人間を飲み込む海との象徴的連関の中で、ガレが究めようとしたのは、人間の心の奥底であり、ほかならぬ人間の魂そのものであったといえるでしょう。

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