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2007年度入学金沢大学法学部コミュの法理学2005年度

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2005 年度法理学定期試験
7 月27 日実施/ 出題: 足立英彦
解答・解説(70 点満点)
1. 自然法論的法概念について次の問に答えなさい。(12 点)
(a)「強い自然法論」「弱い自然法論」についてそれぞれ説明しなさい。(各3 点)
解答: 「強い自然法論とは、道徳規範や正義の原則から実定法の内容をすべて導き出す
ことができると考える立場。弱い自然法論とは、道徳規範や正義の原則から実定法の内
容をすべて導き出すことはできないが、道徳規範や正義の原則が許容する一定の範囲を
超える著しく反道徳的、不正義な悪法を「法」と呼ぶことはできない、と考える立場。」
解説: 「弱い自然法論」は、道徳・正義・自然法等に「著しく」反する実定法のみ、そ
の「法」としての性質を否定するので、「著しく」を意味する表現がない解答は1 点減
点した。
(b)自然法論に対する二つの批判をそれぞれ説明しなさい。(各3 点)
解答: 「価値相対主義の立場からの批判と、「無関係テーゼ」を唱える立場からの批判が
ある。まず、価値相対主義によれば、道徳や正義についての価値判断は各個人の主観の
表現にすぎず、それを学問的に論証することはできない。そのため、客観的に有効な道
徳規範や正義の原則は存在せず、それらから実定法の内容を導き出すこともできない、
とする。これに対して「無関係テーゼ」は、価値判断の客観的論証可能性を価値相対主
義者のように否定するこはせず、仮に価値判断が客観的に有効であり、ある法律が反道
徳的で不正義であることを学問的に論証することができるとしても、そのことが当該法
律の「法」としての性質を失わせるわけではない、と主張する。」
解説: 価値相対主義と「無関係テーゼ」に言及していないが、「存在と当為の二元論」に
言及している解答は1 点加点した。
2.「a はb に対してG という行為をすることが許されている」(PabG) という命題が真である
場合、次の問に答えよ。(14 点)
(a)b はどのような法的位置にあるか。(2 点)
解答:「b はa に対して、(a が)G という行為をしないよう求める権利を有さない
(¬Rba¬G)。」
解説: 「a はb に対してG という行為をすることを許されている」(PabG) は、「a は
b に対してG という行為をしないことを命じられていない(義務づけられていない)」
(¬Oab¬G) と同じことなので、b の法的位置は、解答のように¬Rba¬G である。例え
ば、一市民をa、国家をb とし、市民a は国家b に対して、車の運転をすることが許さ
れている(PabG) 場合、国家b は一般市民a に対して、車の運転をしないよう求める権
利を有していない(¬Rba¬G)、ということになる。なお、この問いに正しく答えたの

は3 名だけであったので、配点を低くした。
(b)「a はb に対してG という行為をしないことを命じられている」(Oab¬G)、という命題
が同時に真であることはあるか。(6 点)
解答:「ない」
解説: PabG すなわち¬Oab¬G はOab¬G と矛盾対当関係にあるので、両者が同時に
真であったり、両者が同時に偽であったりすることはない。例えば、車の運転をするこ
とが許されていることと、車の運転をしないことが命じられていること(車の運転をす
ることが禁止されていること)は、同時に真であったり、同時に偽であったりすること
はない。
(c)「a はb に対してG という行為をすることを命じられていない」(¬OabG)、という命題
が同時に真であることはあるか。(6 点)
解答: 「ある」
解説: PabG すなわち¬Oab¬G は¬OabG (Pab¬G)と小反対の関係にあり、両者は
同時に真でありうる(ただし、同時に偽であることはない)。
3. ハンス・ケルゼンの法理論について、次の問に答えよ。(12 点)
(a)ケルゼンは、ある法秩序に属する法規範の効力を究極的に根拠づける「何か」を仮説と
して想定せざるをえないと考えた。その「何か」を彼は何と呼んだか?(6 点)
解答: 「根本規範」
解説: 「根本」という単語が解答に含まれている場合、5 点加点。
(b)なぜケルゼンは、そのような「何か」を仮説として想定せざるを得なかったのか。彼が
批判の対象とした二つの考え方をふまえて説明せよ。(6 点)
解答: 「ケルゼンが目指したのは、経験主義的な一元論と自然法論という二つの方向か
ら純粋な法律学を確立することであった。彼が依拠する「存在と当為の二元論」によれ
ば、自然科学的方法を用いて明らかにされる事実(sein) と、法規範によって表される当
為(sollen) は区別されなければならない。したがって、例えば法社会学や政策学、経済
学等の手法で事実を明らかにし、それによって法規範の内容を導き出し、その効力を基
礎づけようとする経験主義的一元論は否定されなければならない。また、彼が依拠する
「価値相対主義」によれば、道徳や正義についての価値判断は各個人の主観の表現にす
ぎず、それを学問的に論証することはできない。そのため、客観的に有効な道徳規範や
正義の原則は存在せず、それらから法規範の内容を導き出し、その効力を基礎づけるこ
ともできない。このように、ケルゼンの純粋法学によれば、事実からも、価値判断から
も、各法規範の内容・効力を導き出すことはできないのである。そのためケルゼンは、
法規範の内容については、いかなる任意の内容でも可能であるとし、また、法規範の効
力については、それぞれの法規範の上位にある法規範が定める手続きに従って定立され
ていれば、当該法規範は効力を有すると考えた。しかしながら、このように法規範の階
層を一段ずつ上っていくと、最後に必ず、それより上位の法規範が存在しない最高位の

法規範に行き着き、この最高位の法規範の効力を基礎づけることはできないことにな
る。このため、ケルゼンは、法秩序を統一的に認識するための超越論的前提であり、最
高位の法規範の効力を基礎づけるところの「根本規範」を前提とせざるを得ない、と主
張した。」
解説: 批判の対象である経験主義的一元論と自然法論に言及していればよい(それぞれ
3 点)。それらに言及していなくても、法秩序の階層構造に触れていれば1 点加点した。
4. 民法146 条は「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」と定めている。この
条文の文言解釈「時効の利益の放棄が時効完成前に行われたならば、その放棄は無効とな
る。」が正しいとして、次の問に答えよ。(17 点)
(a)ある学者が、時効完成前のみならず、時効完成後の放棄についても無効とすべきだ、と
主張しているとする。その場合、彼が行う超法律的法形成は何と呼ばれるか。(5 点)
解答: 「類推」
解説: 「類推解釈」でも可。ただし講義では、言葉の意味の限界を超える推論は「解釈」
とは呼ばないことにする、と述べた。
(b)これに対して通説・判例は、時効完成後の放棄は有効であるとする。その場合、通説・
判例が行う超法律的法形成は何と呼ばれるか。(6 点)
解答: 「反対推論」
解説: 同様に、「反対解釈」でも可。
(c)通説・判例が妥当とみなす超法律的法形成にもとづく推論過程を論理式を用いて説明せ
よ。その際、自分が用いる命題記号を定義し(論理記号¬ Ù Ú ® «を定義する必要は
ない)、また、論理的な推論に基づかない命題(=前提とされる命題)がどれであり、論
理的な推論に基づく命題がどれであるかについても明示せよ。(6 点)
解答: 「「時効の利益の放棄が時効完成前に行われた」をA、「時効の利益の放棄は無効
である」をB、「時効の利益の放棄が時効完成後に行われた」を¬A、「時効の利益の放
棄は有効である」を¬B とする。まず民法146 条A ® B をA « B に読み替える。こ
れは非論理的推論である。つぎに、A « B は定義により(A ® B) Ù (B ® A) である
ので、論理的推論に基づき、B ®A 、したがって¬A® ¬B が導ける。」
解説: 命題の定義、A ® B をA « B に読み替えることが非論理的推論であることの
指摘、A « B から¬A ® ¬B を導くことが論理的な推論であることの指摘に対して、
それぞれ2 点配点した。
5. 配分的正義の適用対象とその要請について説明し、さらに、その具体的な適用例を挙げよ。
(15 点)
解答: 「配分的正義は、利益や負担を与えるものと与えられる者との関係を対象とし、後者
の何らかの「価値」に応じて利益や負担を比例的に配分することを前者に求める。適用例と
しては、負担能力に応じた課税、貧困の程度に応じた社会保障、責任に応じた量刑などが挙

げられる。」
解説: それぞれ5 点配点。配分的正義の要請として「等しき者には等しく、等しからざるも
のに者には等しからざるものを配分すること」というモットーを挙げた解答も正解とした。
参考情報
学年履修登録数定期試験受験者数定期試験平均点総合平均点
2 102 99 47.0 69.3
3 67 58 42.8 66.7
4 45 31 41.5 62.4
計214 188 44.8 67.3
学年S(100-90) A(89-80) B(79-70) C(69-55) 不可(54-0)
2 13 16 24 28 18
3 4 12 8 18 16
4 3 4 5 9 10
計20 32 37 55 44
ˆ 60 点以上は188 名中126 名、割合では67% であった。若干厳しい結果となったのため、本
年度に限り、55 点以上を合格(55〜69 点を"C"の評価)とする。合格者は18 名増の144
名(2 年81 名、3 年42 名、4 年21 名)、合格率77% である。
ˆ 4 年生の成績評価は、100-80 点を優、79-70 を良、69-55 を可とする。
ˆ 小テストを受けて定期試験を受けなかった者は「放棄」したとみなす。
以上(2005 年8 月9 日)

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