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2007年度入学金沢大学法学部コミュの法理学2006年度

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2006 年度法理学定期試験
7 月26 日実施/出題: 足立英彦
解答・解説
1. 以下のそれぞれについて、簡潔に説明しなさい。(計10 点)
(a)規範と規範文の関係(2 点)
解答: 規範は規範文の意味である。
(b)規範と規範文を区別しなければならない理由(3 点)
解答: 同一の規範を様々な規範文で表現することができるから。
解説: 同一の規範を様々な言語や記号で表すことができるから、などでも可。
(c)記述文と規範文の関係(2 点)
解答: 記述文に義務様相を加えると規範文となる。
(d)包摂とは何か。(3 点)
解答: 一般規範の構成要件に特定の事実関係を帰属させることによって個別規範を生成
させること。
解説: 「一般規範」「事実関係」「個別規範」への言及にそれぞれ1 点配点した。「法的三
段論法のこと」と述べるだけでは説明になっていないので加点していない。
2. 次のそれぞれ二つの規範命題は両立しうるか(=両方同時に真でありうるか)。ただし、O=
命令、F=禁止、P=許可、V=記述命題とする。(計8 点、各2 点)
(a)OVとFV
解答: 両立しえない。
解説: OVとFVは「反対」の関係にあり、一方が真の場合、他方は必ず偽。従って、
両者が同時に真であることは不可能。例: 喫煙が命じられ、かつ禁じられている状況は
ありえない。
(b)F¬VとPV
解答: 両立しうる。
解説: F¬V(=OV)とPVは「大小」の関係にあり、前者が真の場合、後者も真。例:
JR の喫煙車(煙草を吸うことが許されている車両)で、怖い先輩から「この煙草を吸っ
てみろ!」と命じられた場合(事の是非はともかく、JR の規定と先輩の命令は同時に有
効でありうる)。
(c)P¬VとOV
解答: 両立しえない。
解説: P¬V(=¬OV)とOVは「矛盾」の関係にあるので、一方が真の場合、他方は
必ず偽。
(d)PVとP¬V

解答: 両立しうる。
解説: PVとP¬Vは小反対の関係にあるので、一方が真の場合、他方は真または偽。
したがって、両者は真でありうる。(「自由」の定義が「作為と不作為の許可」であった
ことを思い出すこと)
3.「a はb に対してG を求める権利を有する」という命題をRabG で表す。このことをヒント
にして、権利を分類する方法について説明せよ。権利の具体例に触れる必要はない。(9 点)
解答: 権利(R) は、その主体(a) が特定の人か不特定の人々か、名宛人、すなわち義務の
主体(b) が特定の人か不特定の人々か、さらに権利の対象(G) が作為か不作為かで分類でき
るので、計8 種類の権利に分類することができる。(各3 点)
解説: 三つ目の分類として「積極的・消極的権利」とのみ記した解答は1 点。
4. 次の命題の真偽を述べよ。(計9 点、各3 点)
(a)¬RabG « Oba¬G
解答: 偽
解説: 全体で一つの命題となっていることに注意。「大小」関係(順序に従えば「「小大」
関係」)。
(b)¬Oba¬G « Pba¬G
解答: 偽。「小反対」の関係。
(c)PbaG « ¬Rab¬G
解答: 真。等値(法的相関関係)。
5. 権限に関して次の問に答えよ。(10 点)
(a)「権限」と「授権規範」の定義を述べよ。(4 点)
解答: 権限とは、一般的法規範や個別的法規範の制定・変更を通して、他人の法的位置
を創出したり変更したりする能力のことである。授権規範とは、特定の人に対して権限
を与える規範のことである。
解説: 「権限は法律行為をする能力のことである」という趣旨の記述には1 点与えた。
(b)「行為」と「権限の行使」の違いを説明せよ。(4 点)
解答: 「行為」は観察可能な自然的行いであり、肉体的能力のみを前提とするが、「権限
の行使」は制度的行為の一種であり、肉体的能力のみならず授権規範をも前提とする。
(c)「a はb に対して、b の法的位置を変更する権限を有する」という命題が真である場合、
b はどのような法的位置にあるか。(2 点)
解答: b はa に対して、自らの法的位置の変更に服する責務を負っている、という法的
位置にある。
解説: 「権限に服している」「服従」とのみ記入してある解答には1 点だけ与えた。

6.「法規範の競合」について、その三つの類型(「排他的・重畳的・択一的規範競合」)と、それ
ぞれの類型における法適用のあり方を説明せよ。排他的競合と重畳的競合については、その
具体例にも触れること。(11 点)
解答: 排他的規範競合とは、一方の法規範の構成要件が他方のそれと一部一致し、かつ、一
方の法規範の構成要件が他方のそれより特殊である場合の規範競合である。この場合、「特
別法は一般法を破る」の原則に従い、より特殊な構成要件を定める法規範が適用され、より
一般的な構成要件を定める法規範は適用されない。例としては、過失致死罪を定める刑法
210 条と、業務上過失致死罪を定める同211 条1 項の競合関係があり、この場合はより特殊
な構成要件を定める後者のみが適用される。(4 点)
重畳的規範競合とは、一方の法規範の構成要件が他方のそれと完全にまたは一部一致し、か
つ、一方の法規範の構成要件が他方のそれより特殊とはいえず、かつ、双方の法規範の効果
が同時に両立しうる場合の規範競合である。この場合、二つの法規範が同時に適用される。
例としては、医療過誤事件における、業務上過失致死罪を定める刑法211 条1 項と、債務不
履行責任を定める民法415 条または不法行為責任を定める民法709 条との競合関係があり、
この場合は双方の法規範が同時に適用される(請求権が競合すると考えれば三つの規範すべ
てが適用される)。(4 点)
択一的競合とは一方の法規範の構成要件が他方のそれと完全にまたは一部一致し、かつ、一
方の法規範の構成要件が他方のそれより特殊とはいえず、かつ双方の法規範の効果が同時に
両立しえない場合の規範競合である。この場合、二つの法規範を同時に適用することはでき
ないので、一方の法規範を無効とみなすか、二つの法規範の構成要件が重ならないような解
釈を採用することによって規範競合を回避しなければならない。(3 点)
7. 旧民法709 条は「故意又は過失によって他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損
害を賠償する責任を負う。」(原文は片仮名・文語体)と定めていた。これについて次の問に
答えよ。(13 点)
(a)ある学者が、「加害者が被害者の法律上の権利を侵害していないならば、(加害者の行為
と被害者の損害発生との間に因果関係が存在しても、)加害者は被害者の損害を賠償す
る責任を負わない」と主張していたとする。この場合、彼が行っていた発展的法形成は
何と呼ばれるか。(4 点)
解答: 反対推論
(b)これに対して同条改正前の通説・判例は、「(加害者が被害者の法的権利を侵害した場合
のみならず、)加害者が被害者の『法律上保護される利益』を侵害した場合も、加害者
は被害者の損害を賠償する責任を負う」と主張していた。この場合、通説・判例が行っ
ていた発展的法形成は何と呼ばれるか。(4 点)
解答: 類推
解説: 「超法律的法形成」と記入した答案が見られたが、超法律的法形成には類推のみ

ならず(a) の反対推論も含まれるので、問の解答としては不適当。
(c)通説・判例が形成した法規範(上記(b) の「 」内。ただし( )内を除く。)を、その
法規範に至る推論過程を論理式を用いて表現しつつ論証(正当化)せよ。なお、「・・・
は他人の権利を侵害した。」という述語をT、「・・・はT と似た行為を行った。」とい
う述語をT' とする。他に記号を用いる場合は別途定義すること。但し、命題論理、述
語論理で用いる基本的な記号を定義する必要はない。(5 点)
解答: 「・・・は法律上保護される利益を侵害した」という述語をS、「・・・は損害を
賠償する責任を負う」という述語をOR とすると、通説・判例が形成した法規範(x)(Sx
® ORx) は以下の推論過程を経て論証される。
1 (x)(Tx ® ORx)  法律
2 (x)(T'x ® ORx)  追加された前提(1)
3 (x)((Tx Ú T'x)® ORx)  1, 2 より演繹
4 (x)(Sx ® T'x)  追加された前提(2)
5 (x)(Sx ® ORx)  3, 4 より演繹
追加された二つの前提はさらなる論証(外的正当化)が必要である。追加された前提
(1) は、等しきものは等しく扱うことを求める平等原則によって正当化される。追加さ
れた前提(2) は、言語的論証を除くすべての論証方法(歴史的、体系的、目的論的論証)
を用いて正当化する必要がある。両者の正当化が可能であれば、通説・判例が形成した
法規範は、法律と追加された前提(1)(2) から論理的に正しい推論によって導き出すこ
とができる(内的正当化)。
解説: 上記推論過程の3 行目は省略可。
参考情報(8 月2 日現在)
履修登録数定期試験受験者数放棄定期試験平均点総合平均点
173 158 15 46.4 67.8
S(100-90) A(89-80) B(79-70) C(69-60) 不可(59-0)
17 29 35 39 38
ˆ 総合で60 点以上は158 名中120 名、割合では76% であった。
ˆ 100 点1 名、97 点1 名、96 点1 名、95 点3 名。
ˆ 小テストを受けて定期試験を受けなかった者は「放棄」したとみなす。
以上

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