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2007年度入学金沢大学法学部コミュの法理学2007年度

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      金沢大学法学部
定  期  試  験  解 答 ・ 解 説 (70 点満点)
授業科目名
法理学2007 年度 : 前期
定期試験期間内
担当教官名
足立英彦
試験日・時間
  7  月 30  日( 月 )
16:30   〜 18:00
1. 規範に関する次の問いに答えなさい。(計15 点)
(a)規範とは何であるか。法理学の講義を聞いたことがない人でも理解できるよう、平易な
表現を用いて説明しなさい。(5 点)
解答規範とは規範文の意味内容であり、規範文とは、事実を表現する記述文と、命令・
禁止・許可などを表現する義務様相から構成される文である。
解説「規範とは規範文の意味内容である」という趣旨のみ書かれている場合は4 点、記
述文と義務様相についてのみ書かれている場合は3 点を与えた。
(b)「個別規範」「一般規範」とは何か、それぞれ説明しなさい。(各5 点、計10 点)
解答個別規範とは、ある特定の、具体的に名指しされた人に宛てられた規範であり、一
般規範とは、具体的に名指しされていない不特定の人に宛てられた規範である。
2. ケルゼンの「純粋法学」に関する次の問いに答えなさい。(各6 点、計18 点)
(a)ケルゼンによれば、自然(存在)の世界と当為の世界はそれぞれ全く異なる方法によっ
て認識される。それぞれの認識方法について説明しなさい。
解答ケルゼンによれば、自然(存在)の世界は2つの事実を因果関係によって結合す
ることによって認識され、当為の世界は2つの事実を帰属関係によって結合することに
よって認識される。
(b)ケルゼンによれば、「各人に彼のものを」または「等しき者を等しく扱え」という形式
的平等の原則は「空虚」である。ここでいう「空虚」とはどういう意味であるか、説明
しなさい。
解答形式的平等の原則は、一般的規範に反する不平等な取り扱いの禁止を要求すると
いう点で、規範を適用する立場の者にとっては意味のある原則であり、空虚とはいえな
い。しかしながら、この原則は、人々が有するどのような性質を基準として「等しき者」
であるか否かを判断すべきなのかを語らないため、どのような規範であっても、それが
一般的規範である限り、この原則を満たす。したがってこの原則は、規範を制定する者
にとっては、何ら指針となりえない空虚な原則であるといえよう。
解説規範を制定する者にとっては空虚である、という趣旨が書けていれば正解とした。
形式的平等の原則によっては誰が等しい者なのか判断することができないから、という
趣旨の解答には4 点与えた。
(c)ある法秩序に属する最上位の法規範(とくに憲法)を制定する権限を特定の機関や人に

授ける規範のことをケルゼンは何と呼んだか?
解答根本規範
解説「授権規範」という答えにも3 点与えた。
3. 論理的に正しい推論に関する次の問いに答えなさい。(計15 点)
(a)論理的に正しい推論とは何か、説明しなさい。(5 点)
解答前提がすべて真になるが、結論が偽になるような場合の存在しない推論。
解説「論理的に正しい推論とは、その推論におけるすべての前提の連言を前件、結論を
後件とする条件法の命題がトートロジーとなる推論である。」という趣旨の解答でも可。
「論理的に正しい推論とは演繹のことである」と書いた答案も散見されたが、これでは
説明になっていないので不可。
(b)A  B ` ¬B  ¬A という推論が論理的に正しい推論であることを真理表を用いつつ
説明しなさい。(10 点)
解答
A B A ® B ¬B ¬A ¬B  ¬A
T T T F F T
T F F T F F
F T T F T T
F F T T T T
前提A ® B が真であり、結論¬B  ¬A が偽である場合は存在しないので、問いの
推論は論理的に正しいといえる。
解説真理表に8 点、説明に2 点与えた。真理表上の軽微な誤りは各1 点減。(A ®
B) (¬B  ¬A) がトートロージー(常に真)であることを説明してもよい。なお、A
® B と¬B  ¬A は「同値」の関係にあるので、両命題の真理表は全く同じ(TFTT)
となる。しかしながら、前提から結論が論理的に推論されることを証明するためには、
前提が真で結論が偽となる場合のないことを示せば十分であることに注意。そのため、
真理表が同じであることを理由としてあげた答案は1 点減点した。
4. 裁判官の法形成に関する次の問いに答えなさい。(計22 点)
(a)次の文章の空白を埋めなさい。
「裁判官による法形成は、まず、法律の文言の可能な意味内容の範囲内で行われる
( 1 )と、その範囲外で行われる( 2 )とに分けられ
る。2 はさらに、法律の文言の可能な意味内容と両立する一般的法規範を形成するこ
とを意味する( 3 )と、法律の文言の可能な意味内容と両立しない
法規範を形成することを意味する( 4 )に分けられる。3 の代表例は
( 5 )と( 6 )である。(各2 点、計12 点)

解答1. 解釈 2. 発展的法形成 3. 超法律的法形成 4. 反法律的法形成 5. 類推推論
 6. 反対推論
解説「類推解釈」「反対解釈」という書き方も正解とした。ただし講義では、「解釈」と
は法律の文言の可能な意味内容の範囲内でその意味内容を確定・正当化することであ
り、また、類推推論や反対推論は、法律の文言の可能な意味内容の範囲を超えたところ
で行う発展的法形成であるので、「類推解釈」「反対解釈」という表現はやめるべき、と
説明した。
(b)1999 年に旧民法120 条*が改正されるまで、学説の多数は「保佐人は取消権限を有す
る」という法規範を支持していた。この法規範と、旧民法120 条の解釈との関係につい
て説明しなさい。その際、旧民法120 条の解釈の正当化方法についても、記号を用いつ
つ説明すること。(説明で用いる記号は必ず定義すること。ただし、命題論理学・述語
論理学で用いる基本的な記号を定義する必要はない。)(10 点)
* 旧民法120 条「取消シ得ヘキ行為ハ無能力者若クハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタル者、
其代理人又ハ承継人ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得。」漢字カナ交じり文読解の参考のため、
現在の条文も挙げておく。民法120 条1 項「行為能力の制限によって取り消すことがで
きる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる
者に限り、取り消すことができる。」2 項「詐欺又は強迫によって取り消すことができる
行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すこ
とができる。」
解答「〜は無能力者もしくは瑕疵ある意思表示を為したる者、その代理人又ハ承継人
である」という述語をT、「〜は保佐人である」という述語をH、「〜は取り消し得べ
き行為を取り消す」という述語をR、「〜権限を有する」をK で表す。まず、学説の多
数が支持した法規範は(x)(Hx  KRx) という命題で表せる。次に、旧民法120 条は
(x)(Tx « KRx) という命題で表せるが、この命題から論理的な推論により、(x)(¬Tx
 ¬KRx) という命題を導くことができる*1。さらに、保佐人はT に含まれていない
ので、(x)(Hx  ¬Tx) という命題も正しい。そして、(x)(¬Tx  ¬KRx) と(x)(Hx
 ¬Tx) という2つの前提より、(x)(Hx  ¬KRx) という命題を論理的な推論によっ
て導き出すことができるので、(x)(Hx  ¬KRx) は民法120 条の解釈として正当であ
るといえる。学説が支持する法規範と民法120 条の解釈は、法律要件が同じだが法律
効果が互いに矛盾する関係にあるので、両者は択一的規範競合の関係にある。したがっ
て、学説の主張は、民法の条文の可能な意味内容と両立しない法規範を形成しようとす
*1 A « B よりB  A、また、B  A より¬A  ¬ B を論理的に推論(演繹)できるため。後者の推論は問3 で
扱った。

る反法律的法形成の主張といえる。
解説非常に多くの答案で、問題が尋ねている「旧民法120 条の解釈」ではなくて学説
が支持する法規範を正当化しようとしていた。また、その多くが、旧民法120 条から類
推推論によって学説が支持する法規範を正当化しようとしていたが、旧民法120 条には
「に限り」という文言が入っているので、そのような正当化は不可能である。というの
は、「A ならば、またその場合に限りB である」という命題は条件法A  B ではなく、
A « B という双条件法(同値)の命題であり、したがってこの命題から、たとえA と
類似していてもA とは異なる(¬A)要件を前件とし、B を後件とする条件法命題を論
理的に推論することはできないからである。
 残念ながら、正解者が非常に少なかったので、全受験者に一律5 点を与えた。
参考情報(8 月15 日現在)
履修登録数定期試験受験者数放棄定期試験平均点総合平均点
163 151 12 43.6 点63.1 点
S(100-90 点) A(89-80 点) B(79-70 点) C(69-57 点) 不可(56-0 点)
8(5%) 29(19%) 44(29%) 28(19%) 42(28%)
ˆ 総合で60 点以上は151 名中106 名、割合では70%(小数点以下四捨五入)であった。この
ままでは若干厳しい結果となるため、57 点を取った3 名もC とし(58, 59 点は無し)、合格
者数109 名(72%)とした。
ˆ 総合で99 点1 名、93 点1 名、92 点1 名、91 点2 名。定期試験のみでは、満点の70 点2
名、69 点1 名。
ˆ 小テストを受けて定期試験を受けなかった者は「放棄」したとみなす。
以上

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