[dir]小説・文学・作家コミュの恋愛

恋愛

父は５人の女と相思相愛の恋愛をした事がある。

父はハンサムで上品、男らしくて、正義感が強く、勉強では学年トップ、サッカー部のキャプテン、クラスのリーダーだった。

しかし、遠慮せずに、相手の欠点を厳しく批判する側面を持ち、それを恐れて、父を敬遠している女子も多かった。

父のような男性に、惚れる女は、「自分は世界一の美人」だという自負を持つ女だけだ。

ブスの女は、恐れ多くて、また、父に傷つけられる事を恐れて、父に近づかなかった。

父は絶世の美人にしか、もてない男だった。

最初の恋愛は、父が高校２年生の時、高校１年の女と恋をした。

２回目の恋愛は、東大３年生の時、父を人生の師と仰ぐ、東大１年生の女との恋愛だった。

父も、その女も全学連の活動家で、公安警察の走狗集団から「必ず、殺す」との「殲滅宣言」を受けていた。

３回目は、音楽大学の女との恋であった。

しかし、本格的な恋愛は、４回目の寿子（私の母）、５回目の恭子との情熱的で純粋な恋愛だった。

２８才の東大の大学院生だった父は、北海道の炭鉱調査に出かけた。

上野発・青森行きの急行「八甲田」の中で、父と寿子は出会い、５分で相思相愛の恋愛に落ちた。

寿子は、看護学校を卒業し、国立の助産学校に通っていた。

二人は結婚を誓い合った。

寿子の父親は中学卒の営林署の労働者だった。

寿子には、名古屋大学の学生の彼氏が居たが、父は分かれさせた。

父は、北海道に行く時は、札幌のキリスト教会に宿泊していた。

その教会の幼稚園の教師「恭子」と出会い、５分で相思相愛の恋愛に落ちた。

恭子は、内閣総理大臣の側近である、自民党の国会議員の長女であった。

恭子はキリスト教徒だったため、牧師に憧れ、牧師と結婚しようとしていた。

しかし、その牧師は「マザコン」で、恭子の父親に会いに行くに当たっては、「お母さんと一緒でないと嫌だ」と言った。

そこで、恭子は、その牧師に幻滅し悩んでいた。

父は、恭子と、その牧師を、強引に分かれさせた。

父は寿子と恭子の二人を同時に愛した。

父は両者を平等に扱った。キスの回数も同じにした。

恭子と札幌で会う時は、必ず、寿子に「恭子と会ってくる」と言って、出かけた。

恭子にも、東京に婚約者が居る事を言っていた。

札幌の１０月は、もう冬。

広大な北海道大学の中での、月光の下で、恭子との濃厚な接吻は甘美なものだった。

周囲の人間は、皆、中学卒の労働者の娘の寿子を捨てて、国会議員の娘＝恭子との結婚を勧めた。

そうすれば、簡単に、有名大学に就職できるからだ。

父は、東大教授の無能、無知、腐敗、堕落を、研究会の席で暴露した。

特に、東京大学総長・大河内一男の直系の後継者である兵藤は、父に怨恨を持ち、全国の大学に、父を就職させるなとの通達を出した。

父は報復に、自分の本に、兵藤が犯した犯罪について詳しく書いた。

兵藤は、国会議員の富塚三夫（社会党）と共に、出版社に圧力をかけ、父の本を絶版にさせた。

父は、印刷・製本会社で、兵藤の悪行を、さらにリアルに書いた本を作り、

日本、全世界の、父の本を永久保存する図書館に、寄贈した。

こうして、兵藤の悪行に関する記録は永久に残る事になった。

父は、さらに、兵藤と結託していたハーバード大学教授＝アンドリュー・ゴードンの無能を暴露した。

父は全世界的な有名人になった。

日米両国の学問の最高権威と戦闘的に闘ったのである。

こうした状況にあった父が、大学に就職し、教授になるためには、国会議員の娘であり恭子と結婚し、内閣総理大臣の推薦で就職するしかなかった。

しかし、父は寿子との結婚の約束を守った。

父に捨てられた恭子は、韓国人留学生と結婚し、ソウルに去った。

中国の哲学者は「男が貧しい時に嫁に来た女を離縁してはならない」と書いている。

寿子は、父が、学術振興会特別研究員として、年収が４８０万円、あった時に、結婚し、収入が途絶えた時、離婚して去ったのである。

最低・最悪の女である。

父は、日本での就職をあきらめ、トルコ語を四カ月でマスターし、知人がいるイランで、トルコ語とペルシア語を完璧なものにし、ソ連崩壊後の中央アジアに永住し、中央アジアの研究するために、成田空港を飛び立った。

妊娠した妻を日本に残し、イランへ行く前日のセックスほど、感動的な性交はなかった。

まだ、寿子は、本性を見せていなかったから。