2012年、私満島ひかりはCMで中島みゆきの「ファイト」を歌った。
風が吹いている歌だと感じた。ギリギリ持ちこたえている人の背中を
ふわっと風を吹かせて立ち上がらせる。
中島みゆきはどうしてこんな歌が作れるんだろう。ずっとそう思ってきた。
そして今年彼女はデビュー以来初めて自分の歌の創作ノートを明かした。
無名の人々に「光を当てる」なんてできない。光を放っているのはその人々
自身だったから。
「倒木」が「東北」として受け入れられるのも、それはそれで否定するまでもない
と考えている。
「SONGS」中島みゆき。21世紀Best Collection。
初めて発表されるセルフライナーノートと初公開のライブ映像で歌姫、
中島みゆきのメッセージを探る。
お元気ですか。中島みゆきです。たまにはベスト〜と真っ向から名乗ってみるのも
どうかしら・・という話がまとまりまして。で、どれを？と考えても、自分では一応
どの曲もそれなりに良いわと思っていますので選べなくって何を基準に絞ったかとい
うと私がライナーノーツを書きやすそうな曲という基準で・・ええ実はそんな訳で決
まりました。えへへへ こんな感じです。
2000年に放送が始まった「プロジェクトX 挑戦者たち」
名も無き企業戦士に光を当てたこの番組に書き下ろした曲は「地上の星」
中島みゆきの21世紀はこの歌で始まった。
2002年の大晦日紅白に初出場。彼女が向かったのは富山県の黒部ダム。
黒部川第四発電所。昭和30年電力供給のため秘境の地底で戦った男たちに敬意
を表しここで歌うことを決めた。これは初公開の映像。総勢100人のスタッフ
とともに挑んだ紅白の舞台裏だ。
（ライナーノーツ）
「無名の人々に光を当ててください」というのがＮＨＫからの唯一の注文でした。
分厚い企画書には懸命に生きた無名の人々の記録。目を凝らして気付いたのは
この人々に「光を当てる」なんて出来ないということでした。
光を放っているのはまさにこの人々自身だったからです。
心から敬意をこめて「地上の星」と名付けづけました。
（映像：2002年紅白歌合戦 メイキング映像）
（スタッフ）５秒前 4 3 2 ・・
（紅組司会：有働アナウンサー＞黒部川第四発電所地下200メートル 今の気温が
氷点下2度。その場所では今この時間も電力の安定供給のために働いてる人たち
がいます。そしてその場所にこの方がいらっしゃいます。
中島みゆきさん「地上の星」
地上の星 みゆきさんは翌年ドラマ主題歌「銀の龍の背に乗って」を発表。
「医者という仕事は何という孤独で心細いものであろうか」と痛々しく思える
ことがあるのです。たった1人で命に直面する重責の孤独。せめてもの援護し
てくれるようにと命の水の化身であるところの龍に頼み事をしたかったのです。
銀の龍の背に乗って （映像：「宙船」TOKIO）
（ライナーノーツ）
お話をいただいた時には期待が盛り上がってしまいまして、とうてい自分では歌えな
さそうな勢いの「がっつり系」に仕上がってしまいました。私は自分のコンサートで
歌おうとして早口部分で挫折しました。
宙船 2011年東日本大震災が起きた。日本中が立ちすくんだ災害の翌年、中島みゆき
の歌が反響呼ぶ。
「倒木の敗者復活戦」私たちには「倒木」が「東北」に聞こえた。
（ライナーノーツ）
あまりにも悲惨だった東日本大震災は私の作品においても発表を控えたり、表現を
変更せざるを得ない事態がいくつか起きた。そんな中で逆にこの曲の「倒木の」が
「東北の」と聞きとれるとして受け入れていただく結果になったのも大震災の影響の
一つであったと思われるが、それはそれで否定するまでもないと考えている。
倒木の敗者復活戦 2014年の夜会で発表された「India Goose」
変わらずこの国を覆う閉塞感。中島みゆきは渡り鳥の羽ばたきに光を見出した。
（ライナーノーツ）
ヒマラヤの高峰には吹き下ろす風に向かってひたすら飛び続けるうちに運が良けれ
ば煽られて、つまり「すっとばされて」ようやく峰を越えて行ける小さな渡り鳥た
ちが羽ばたき続けているそうな。てんでサマにならないそんな飛び方だって美しい
渡り鳥だと思います。
India Goose （ライナーノーツ）
言いたい放題、とんでもなく図太い人間と見えるタイプです。でも実際はとんでも
なくアガリ症です。即座に言い返すなんて事が出来たら人生ずいぶん違っていたで
しょう。言えなかったからでも言えば良かったから。後になって書く。言えなかっ
たのが自分のせいだということを、書く。結局ええカッコしいだから言えなかった
のだということを、書く。
Ｗｈｙ ＆ Ｎｏ 2014年秋朝ドラ「マッサン」の主題歌「麦の唄」が大反響巻き起こす。
実に12年ぶりに紅白に出場した。
あれから2年、中島みゆきは今月21世紀の軌跡を封じ込めたアルバムを発表する。
彼女はタイトルを「前途」と名付けた。
みゆきさん、この言葉にあなたは何を託したのですか
「前途洋々」とか「前途多難」とかいう風に使われますが、地球環境やら世界経済やら
民族問題やらを考えると人類はなかなかの前途多難とも見えますし、とは言えそれらの
問題には打つ手が何もないわけではないと考えると人類はなかなかの前途様々とも見え
るではございませんか。
どちらにしても過ぎた時へ戻れないことだけは皆に平等なんですよね。
あの〜余談ですけど〜私は何をやってもトロイたちでして、あれもしようこれもしよう
と思いながら毎日間に合わなかった用事が残るんです。これが日を追うごとにうず高く
積もっていきまして先へ進めば進むほどなぜか忙しくなっていく。つまり、私の人生は
言ってみれば「前途多忙」と言うことになっておるわけでございます。
おつきあいいただきましてありがとうございました。
ではまたいつかどこかで。中島みゆきでした
最後は「麦の唄」初めて公開される最新のライブ映像です。
麦の唄 |
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