ＳＯＮＧＳコミュの第327回(2/28)　大竹しのぶ

　　　　語り:小田切アナウンサー＞大竹しのぶ。その類まれなる演技力で女優として
　　　　デビューから40年たった今も輝き続けています。
　　　　その栄枯の陰には苦悩に満ちた半生がありました。
　　　　18歳、清純派としてデビュー。しかし30歳で愛する夫と死別。悲しみのどん底で
　　　　しのぶさんを救ったのは歌でした。
苦しみとか悲しみを乗り越えてましたね。力をもらいましたね。

　　　　50代を迎え大好きな歌を通して自分の人生を見つめ直したい。
　　　　去年12月、しのぶさんは11人の男性アーティストとのデュエットによるカバー
　　　　アルバムを発表しました。
芝居はやっぱりその役柄とか背景とか2時間とか3時間とかかけてわかってもらうこと
だけど、音楽はほんとうにそれこそ1分でも感動させることができるので、やっぱり
音楽の力はすごいと思います。

　　　　今夜しのぶさんの波瀾万丈の人生に迫るのは有働由美子アナウンサー。
　　　「SONGS」大竹しのぶ。愛と苦悩に満ちた女優人生を歌を通して見つめます。

　　有働さん＞およそ40年位前になりますけど、これも(♪みかん)歌ってらっしゃいまし
　　たよね。
はい、18歳の時
　　当時は女優さんとして人気が出てきたからさぁそれじゃ歌も・・みたいな？
なんか決まりのコースみたいな。ちょっと人に名前が知られて、「ああじゃ歌いましょう。
しのぶちゃん」みたいな感じで「わぁやりたいです」みたいな。

　　　　1975年。大竹しのぶさんは映画「青春の門」でデビュー。
　　　　連続テレビ小説「水色の時」でヒロインに抜擢され、清純派女優として脚光を浴び
　　　　ます。そして歌手でビュー。そのあどけない歌声が人気を集めます。
♪みかん
　　　　しかし24歳の時、彼女の大胆な行動が世間を驚かせます。17歳年上のテレビディレ
　　　　クターとの交際が発覚。清純派から一転激しいバッシングを受けます。
　　　　しかし、82年、しのぶさんは周囲の反対を押し切って結婚。子供にも恵まれました。

私が25の時に結婚した時に相手が3回目だったっていうこととか、すごくいろんな噂がある人
で、それまで私わりとこの「みかん」の感じで清純派みたいな感じで生きてきたから、でも
そんな事したら、仕事も全部なくなるし人気も全部無くなるしみたいな・・まぁそんないわ
ゆる一般的なことを言われても、何一つ怖いものはなかったですね。
　　それは若さゆえですか？
結婚とか自分の中で揺るぎないものに関しては若さゆえっていうのとはちょっと違うと思い
ます。
　　清純派女優でもうしばらく絶対いったほうがいろいろイメージも仕事もいいと。だから
　　ちょっと隠してコソコソ・・っていうのもあれですけど、それはやめとくか、次あるから
　　みたいな…
そんなのなかったですね。次あるからみたいなとか、今がいいのが一番いいじゃないですか。
次があるからなんて思ったら、もうその時点でその今は嘘じゃないですか。
　　ああそうですね。次の方がって
そんなひどい事ないじゃないですか。そんな失礼なこと。相手に対しても。「次があるかも
しれないな」なんて思ったら、そしたらそこにいる自分に対しても嘘じゃないですか。
うまく言えないけど・・。
　　うそばかりついてきた。だからここにいるのかな？

　　　　結婚から５年後、夫晴治さんががんで亡くなります。47歳の若さでした。
　　　　当時しのぶさんは30歳。息子の二千翔くんはまだ2歳でした。
　　　　最愛の人を亡くした悲しみ。これからどう生きていけばよいのか。
　　　　そんな時、支えになってくれたのがドラマの共演で知り合った明石家さんまさん
　　　　でした。眠れない夜　しのぶさんは毎晩のように電話をしました。彼の明るさに
　　　　惹かれていきます。
　　　　88年結婚。翌年には長女いまるちゃんが誕生しました。
一緒におつきあいするっていうことが結婚することだったんですね。当時の彼にとって
すごい人気もあって。私はもちろん子供もいたし普通に付き合うっていうよりもいきなり
結婚するっていう形で、結婚してから付き合い始めた部分もあるかもしれないですね。

　　　　波乱に満ちた30代。しのぶさんは女優としても大きな転機を迎えます。
　　　　映画「死んでもいい」。人妻でありながら若い男性の溺れる難しい役に体当たりで
　　　　挑みました。

　　二人の男性の間で揺れ動く？
はい。
　　よくおやりになったなと思うんですけど。30前半ってことは・・
34くらいかな？
　　ちょうどさんまさんと・・
離婚するちょっと前？そうですね、離婚原因の一つかもしれない(笑
　　ええっ…
すっごい低予算に映画だったから。ほんとに朝まで撮影してたんですよ。一日だから20時間
以上撮影してて、そうするとすごい心配して、さんまさんが。ほんとにそれが毎日のように
あって・・「死んでもいい」ってタイトルになったんだけど、死にたくないっていうふうに
みんなスタッフで言ってて、そのくらいすごいハードだったんですけど

　　　　浮気現場を目撃した夫がやり場のない怒りを妻にぶつける場面。
　　　　この場面で流れたのが、ちあきなおみさんが歌う「黄昏のビギン」でした。
　　　　感情がぶつかり合うシーンで流れた美しいラブソングがしのぶさんの心に響きまし
　　　　た。今回「黄昏のビギン」をデュエットするのは山崎まさよしさん。昔から大ファ
　　　　ンの山崎さんにしのぶさん自らオファーしました。
　　　
　　　　清純派から実力派女優へ。そして私生活では大切な人との出会いや別れを経験した
　　　　しのぶさん。大きな転機迎えた30代の思い出の歌です。

黄昏のビギン

　　　　映画「鉄道員」(ぽっぽや)高倉健さん遠じる鉄道員の妻を演じ、しのぶさんは
　　　　日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞します。
　　　　40代、映画や舞台を中心に活躍し日本を代表する女優へと成長を遂げます。

　　　　そして、去年新たな挑戦として取り組んだのが、男性アーティストのとのカバー
　　　　アルバムの制作です。これまで出会った11曲を自ら選曲しました。
　　　　中でも強い思い入れがあるのは、「死んだ男の残したものは」。
　　　　しのぶさんが中学生の頃に出会った反戦歌です。共演したのは長年この歌を歌い
　　　　続けてきた長谷川きよしさん。2歳で失明した長谷川さんは卓越したギターテクニッ
　　　　クと歌唱力で独特の存在感を放つアーティストです。

　　「死んだ男の残したものは」ってこの選曲もちょっとびっくりしたんですけど・・。
　　しかも女性で歌おうと思ったと。これは大竹さんどうしてこの曲を？
すごい詩だなぁと思って、でそれを今歌いたいなぁっていうのがあって、メッセージ性が
とても強い歌なんですけど、何も残ってないけど「輝かく今日とまた来る明日がある」って
いうところに、すごい苦しし悲しいけどでも必ず明日は来るっていうところに、ちょっと
だけ希望を持って歌いたいなと思いましたね。私は。

　　それこそ大竹さんも大切な方々がお亡くなりになる事も多くなってるじゃないですか。
　　何かそういう・・歌とは全然関係ないんですけれども・・残してくれてるとか。
　　今おっしゃった生きる希望みたいなものというのを逆に残してもらってるとかって感じ
　　られることありますか？
亡くなった友達とか家族とかいろんな人との別れっていうのは経験はしてきてるけれども、
今生きて今触れ合っている人も含めてやっぱり人と触れ合ったり人からの言葉とかが、今の
私の中に全部細胞レベルで入ってるんだなっていうのは感じます。・・だからそれがふっと
何かの時に思い出したりとか、それはもしかしたら、それこそ演じた役からももらってる
ものもあると思うんですよね。いろんな人からいろんなものをもらいながら、今の自分が
いるんだろうなっていうのは思います。

死んだ男の残したものは
　　
　　　　「愛の讃歌」フランスのシャンソン歌手・エディット・ピアフが不慮に事故で失っ
　　　　た恋人に捧げたラブソング。無償の愛を歌った名曲です。
　　　　今から28年前、しのぶさんも最愛の夫を亡くしました。深い悲しみの中で何度も聴
　　　　いたのがこの曲です。

私は30の時に夫と死別をしていて、その時に「愛の賛歌」で愛はずっと永遠なんだっていう
いつかまた会えるっていうその詩ですごくこう力をもらいましたね。すごく悲しいけども、
その言葉を言うことによって、それを信じることができるっていう。シャワーを浴びながら
歌ったり、車で運転しなが歌ったとかしながら、苦しみとか悲しみを乗り越えてましたね。
それが「愛の賛歌」だった。

　　　　そして夫の死から24年。しのぶさんは舞台でピアフの生涯を演じる事になりました。
　　　　ついに「愛の讃歌」を歌う時が来たのです。
　　　　舞台「ピアフ」は女優大竹しのぶの最高傑作として称賛を浴びます。
シャワーを浴びながら歌った「愛の讃歌」というのはその時の「愛の讃歌」で、やっぱり
ピアフと出会ったっていうことでもっと大きなものになりましたね。個人の「愛の賛歌」
ではなく、ピアフの場合は全部あげるっていう自分の持ってるもの愛も全てみんなあげるっ
て感じなんで適当には歌えないっていうか、ほんとに心を込めて全身全霊で歌う歌なんだな
っていうのは歌うたびに思いますね。

　　　　女優大竹しのぶ。その半生は歌と共にありました。
　　　　愛に生き愛を演じる彼女が人生を懸けて歌い続ける曲です。

愛の讃歌