BDAGの分類における?-C-αのεκκλησια του θεου(神の教会)という用語は、先に述べたように旧約聖書におけるlh'qからきているという説もあるが、LXXとヘブル語聖書間で必ずlh'q=εκκλησιαというわけでもないので、簡単には断定できない。しかし、εκκλησια του θεου(神の教会)という言い回しは、エルサレムにおける初期信仰者達が自らを名乗る際にもういた用語であり、それは彼らの終末論的自己理解と全く一致していたからのようであり、神から召される終末のイスラエルを中心とした観点に立つ表現である。
3. 新約聖書における意味 パウロ書簡におけるεκκλησιαの用い方は前述したεκκλησια του θεουという用い方と、教会とキリストの体を結びつけた用い方の2種類がある。そこでその二つを分けて解説する。 (ア) パウロ書簡? {εκκληεσια του θεου} パウロは既にエルサレムにおいて用いられたεκκληεσια του θεουという言葉を用い、また、その意味合いを発展させて各書簡で用いている。エルサレムにおいて終末における救済共同体という自己理解がメインであったが、パウロは通常一定の地域における受洗者の具体的な群れを想定している。彼の理解ではエルサレムのみに集まる終末の救済を待ち望む群れに留まらず、世界中の至る地域での救いの共同体として用いられる。「教会はその場所的な限定にもかかわらず、信仰的服従の具体的な遂行において待った期意味での神の教会である。 」また、この教会はもはやシナゴーグ(会堂)に集まる教会のみを指すに留まらず、家の教会と呼ばれる家庭においてもたれた信仰の交わりにも及んでいる。その意味でパウロは各書簡の文脈においてはそれぞれの地域、場所の教会を指してεκκληεσιαを用いているが、その理解はむしろ空間を越えたεκκλησιαを持っている。(?コリント1:2)TDNT では、旧約の契約の概念を引き継ぎつつもキリストがもたらした新しい契約によって神に呼び集められた群れという意味合いも持つことが示されていた。 また、パウロの教会理解にとって各地域の礼拝のための集会という理解も大きい、?コリント14章ではコリントの教会における霊的個人主義への傾斜に対してパウロは礼拝がもつ共同体的性格を強調している。
参考文献 ・ マタイの福音書註解 中 中澤啓介 いのちのことば社 ・ 新聖書辞典 いのちのことば社 ・ 新キリスト教辞典、いのちのことば社 ・ 新約聖書釈義辞典 教文館 ・ Hardsaing of the bible [PETER THE ROCK?] ・ Kittel, G., Friedrich, G., & Bromiley, G. W. 1995, c1985. Theological dictionary of the New Testament. W.B. Eerdmans: Grand Rapids, Mich ・ Arndt, W., Danker, F. W., & Bauer, W. 2000. A Greek-English lexicon of the New Testament and other early Christian literature. (3rd ed.) . University of Chicago Press: Chicago ・ Greek-English Lexicon of the New Testament Based on Semantic Domains