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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの鳥人戦隊ジェットマン? 夢幻の島 第三章 3

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        3

大地とこずえは、木の茂った山の中を、鷹男と同じように父の背中を見ながら歩いた。
その間、兄妹は無口だったが、雷太はごく自然に饒舌だった。
「この島がどこにあるかよくはわからないけど、たぶん赤道に近いところだろうね。生い茂ってる植物の種類からそのことがわかるよ。もっとも、細かく見ると違うようにも感じられるけど、でもだいたいは似たようなところがある。とすれば食べられる植物の類も似たようなものだと思うんだ。ぼくも実際には見たことがなくて本やなにかの知識だけになるけど、でもたぶん、毒があるかどうかくらいは見分けられると思う。二人も勝手になにか取ったり食べたりしたらダメだよ?」
「は、はい!」
「う、うん、わかった」
朗らかに言いながら振り返るメガネをかけた父に、
こずえと大地は、これも鷹男と同じようにややぎこちなく答えた。
雷太は竜と違って存命だけに、鷹男ほど緊張することもないのだが、
それでもやはり、やや違う父親は二人にとっても新鮮であったのだ。
「なあ、でも父ちゃんってさ、あんまし変わってなくねえか?」
「うん、そうかも… 若い時からこんな感じだったんだね」
大地は妹に小声でささやき、こずえも兄に同じようにささやき返す。
当然目の前の雷太は彼らが知っている雷太よりずっと若いのだが、それでも見た目も雰囲気も、
そこまで若返ったようには感じられない。
それは現在の雷太が年齢に比して若いということなのだろうが、
どうもそれだけとも違う気が二人にはしていた。
「なんちゅうか……この頃に完成されてたんだな、父ちゃん」
「そうだね。そうかも」
「ということはあれか、父ちゃん、あんまし成長してないってことか? なんか誉めらんねえなあ、それは」
小声での会話で父をおとしめる大地。当然本気ではないが、
しかしここはやはり大地の年齢の限界がある。
この年、大地は二十二歳であるはずだが、この年齢で完成されていることがすでに非凡なのである。
いや、実は完成などされていない。彼もこの時期、様々に悩み、苦しんでいるのだ。
だがそれを表に出さない強さが雷太にはあった。
彼は外貌において完成を表し、年月をかけて内実を養ってきたのである。
その結果を息子と娘は見ているに過ぎない。
雷太はあるいはジェットマンの中で最も器量の大きな男であった。


そして彼のひそかな成長には、妻の支えも大きな助けになっていた。
雷太の妻で兄妹の母であるサツキは、控えめでありながら強い芯を持っており、
夫と深いところで通じていた。
それゆえに雷太が心から懊悩していることに真情から同調し、それを癒すことができた。
雷太は自分だけでは乗り越えられないことを妻によって救われ、そしてそのことを自覚してもいた。
それゆえに彼は妻を慈しみ、サツキもそんな夫に愛されることに強い自信と深い幸福を覚えている。
そして雷太を真に完成させたのは、他ならぬ大地とこずえであった。
二人が生まれたとき、雷太はこの世にこれほどの幸福があるのかと心身のすべてで感じた。
彼の少年期はコンプレックスとの戦いであり、成年期はその克服であった。
それらの苦しみを知っているがゆえに、この幸福感は信じられないほどのものであった。
「この世にはこんなに幸せなことがあるのか…」
生まれたばかりの大地を抱き、こずえを抱き、二人を生んでくれた妻を見ながら、
大地はそのことを強く実感した。
その日から彼は絶望を忘れ、希望のみを心と体に収めて生き始め、それは死ぬまで変わらなかった。


そのような父の内実を感得するのに、大地とこずえはまだ若すぎた。
そしてそんな父に力を与えたのが自分たちと知るにも、まだなにもかもが足りなかった。
それを知るのは、彼らが自分たちの子を持つ時だろう。
が、それは早くともあと十年は先であり、目の前の父には「変わってないなあ」という感想しか持てなかった。
「お、このあたりに自然薯がありそうだな。少し掘ってみようか」
ある場所で立ち止まり、近くの木や土壌を見ていた雷太は、
喜々としてしゃがみこむと、その場を掘り始めた。
果物類ではなく、まずそちら側へ目や意識が行くあたりは雷太らしいと言えるが、
それは大地も同じだった。
今のこの胃袋の状態では、できるだけガッツリ食える物の方がありがたい。
「どうせなら肉も食いたい… 動物とかいたら獲ってもいいすか?」
雷太が掘り始めるのと一緒に大地も手伝い始め、手際よく掘りながらそんなことも言ってくる。
牛や豚とは言わない。
食いでを考えればそのあたりがありがたいが、現実的にはウサギや鹿がいればいい方だろう。
熊やイノシシが出てきてくれても助かる。今なら素手で倒して丸ごと一頭たいらげる自信もある。
おれの胃袋なめんなよ。
掘りながらそんな馬鹿なことを考えていた大地に、雷太は感心したように声をかけてくる。
「そうだね、でもあんまり動物を狩るのは得意じゃなくてね… にしても君、大地くんだっけ。掘るのうまいねえ。うまいというか慣れているのかな」
「え、そっすか? まあ父ちゃんに仕込まれたからなあ」
声をかけられて我に返った大地は、当の本人にそう答える。
空腹のあまり脳に血が回っておらず、目の前にいる雷太が父親という感覚が少し鈍っているのだ。
「そうなんだ、お父さんもこういうのが好きなんだね。そういえば君たちは兄妹なんだよね? 名字はなんていうんだい?」
「あ、ええとですね、大い…」
「お兄ちゃん!」
脳に血が巡っていない状態の大地は、訊かれるままに本名を名乗りそうになり、近くで違う場所を掘っていたこずえを大いにあわてさせ、それを聞いた大地はさらに我に返り、軽いパニックに入ると、そのまままたこずえをあわてさせる名前を口走った。
「え、ああ、ええと成瀬です、成瀬」
「おに……!」
こずえが同じようにあわてた理由は、大地の答えた名字が彼らの母であるサツキの旧姓だったからである。
サツキは雷太の幼なじみで、当然目の前にいる雷太も知っているのだ。
もしかしたらなにかいぶかしさを覚えられてしまうかもしれない。
「そうなんだ、成瀬っていうんだ。ぼくの知り合いにもいるよ、成瀬っていう名前。偶然だねえ」
が、雷太は特になにも感じなかったようだ。
軽くそう応じ、笑いながら掘り続け、大地とこずえをホッとさせる。
「そ、そうなんすか、それは偶然すね」
「う、うん、すごい偶然」
実は偶然ではないと知っている二人は、少し微妙に笑いながら応じた。


といえ、こずえは少し気になった。この頃の父にとって母は知人程度の存在でしかないのだろうか。
だとすると二人は将来どういう経緯で結婚することになるのだろう。
それともここはやはりパラレルワールドや仮想空間で、現実と違う世界なんだろうか。
あるいは現実の過去だとしても、未来が変わってくるのだろうか。
最後のことに関しては、こずえも畏れに近いものを覚えるが、今気にしても仕方がないし、
実はその分野について、自分はは今一つ理解が届いていないことを彼女は自覚していた。
それだけに最も気になるのは、自身、恋の真っ最中であるだけに、最初のことについてである。
だからつい我慢できず、尋ねてしまった。
「あの……その成瀬さんってお知り合い、どんな方なんですか?」
「ん? 近所に住んでる一家だよ。子供の頃からお世話になってる」
が、雷太の答えはこうであった。
考えてみれば、大石家と成瀬家は、雷太とサツキ個人だけのつきあいではないのだ。
今両家は姻戚にあり、自分はどちらの家にも属す人間だというのに、
こずえは今は雷太とサツキのことだけしか考えていなかったので、そのことをコロっと忘れていた。
恋は盲目という言葉の小さな一例である。
「そ、そうです…か… えっと…その…」
忘れていた大きな事実で簡単に答えられ、こずえはしどろもどろになる。やはり母とのことを聞きたいのだ。
だがすぐにはいい糸口が見つけられない。と、ここで意外な方向から助け船がやってきた。
「その成瀬さんのところには、雷太さんの友達とかいないんすか? 同年代の」
埋まっている作物を傷つけないように丁寧に掘っていた大地が、手元から目線を動かさず自然に尋ねた。
妹の意を察したのである。
大地はもともと妹の鷹男への想いを知らずに過ごしてきたのだが、最近ようやく薄々ながら感じてきたのである。
彼もまた、淡いながら一人の少女へ想いを覚え始めていたことが影響したのであろう。
そのことは大地自身以外、誰も知らない。


それだけにこずえは、兄が自分に気を使ってくれたとは気づけなかった。
彼女にとって兄は、いまだに「色気より食い気」の人であり――それは必ずしもはずれていなかったこともあり――彼の微妙な変化までは察し得なかったのである。
それでも彼女は兄に心中で礼を言った。
「ん? うん、一人いるよ。女の子だけどね」
「そうなんですか。かわいいですか?」
「え? うーんそうだなあ、かわいいんじゃないかな、うん」
虚を突かれたように雷太は顔を上げ、困惑した笑みとともに少々言いにくそうに答えた。
彼にとってサツキは兄妹に近い間柄で、その類の質問に答えるのは気恥ずかしいところがあるのだ。
それは大地も同じで、実際の容姿がどうであれ、
母親を「かわいい」などというのは、くすぐったさが全身を這い回る。
それでも尋ねたのは妹のためである。こずえにも兄同様その感覚はあるが、
両親のラブロマンスに対する興味がそれを薄れさせていた。
「そうなんですか。それじゃ雷太さんはその人のこと好……」
「あー、あった! ほらありましたよ雷太さん!」
と、急に大地が大声を挙げ、こずえの質問をさえぎる。
「え? あ、ほんとだ、こりゃあ立派だなあ」
大地がずるすると引きずり出した自然薯は五十センチを越えており、雷太も感心させた。
それを雷太に渡し、彼がていねいに土を払っている隙に、大地が妹に小声でささやく。
「あんまり根ほり葉ほり訊くなよ。おれたちの正体がバレたらやばいだろ」
「あ……」
兄に注意されて、こずえもようやく思い出す。
自分たちが雷太の子供だと知られれば、いろいろとまずい事態になりかねないということを。
この時この場でもだが、あるいは雷太とサツキが結ばれないという未来のきっかけにもなりかねない。
タイムパラドックスやバタフライエフェクトについて昨夜話し合ったばかりなのである。
「ごめんね、お兄ちゃん」
「気をつけろよ、まったく」
小声で謝るこずえに、同じく小声で嘆息する大地だったが、
サツキのことを訊くきっかけを作ったり、
ついさっき本名を名乗りそうになったことをすっかり棚に上げている兄に、妹は苦笑するばかりだった。
なんだかんだでよく似た兄妹であるのだった。



作品一覧
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65631933&comm_id=2123162


公式でもサツキの名字ははっきりしないし、
具体的にどんな幼なじみなのかもそこまではっきりしてなかったので、
勝手にこんな感じにしてしまいました(照)。

コメント(4)

>>[1]
いつも感想ありがとうございます!
大地の恋愛模様もちょっと書いてみたい気はあるんですが、
基本が悲恋になってしまうんでかわいそうかなあと…

凱もらしいといえばらしい死を迎えたわけだし、
他の四人もやっぱりね、それなりにらしい生き方と死に方をしてほしいという気はします。
できれば天寿で。竜についてこんな風にしてるんでアレなんですけど(苦笑い)。
>>[3]
感想ありがとうございます!
いつでも全然OKです、いただけるだけでとてもありがたいのですわーい(嬉しい顔)

こういう二世モノは、どれだけ前作の親と似ていながら子供本人の個性が出せるかが大事なところだから、
そう言ってもらえると安心します。
コンドル親子はもうちょっと先で(笑)。

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