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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの鳥人戦隊ジェットマン? 夢幻の島 第一章 1

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     1

「ふん、これが新しい次元獣か」
都内の高級ホテル。スウィートルーム。その一室でトランザは、
ソファに座り、ブランデーグラスを片手に、不機嫌そうに尋ねた。
特に機嫌を損ねることがあったわけではない。彼は常に不機嫌そうなのだ。
他人が不幸でない限り。
そのことを知っている武林宗徳(たけばやし むねのり)は気を悪くした風もなく、
うやうやしく一礼してから応じる。
スーツ姿の彼の左腕は空袖で、隻腕であることが見て取れる。
それを叩き切ったのはトランザであるが、武林にそれを恨む様子はまったくなく、
頭を下げるその姿は、心からの忠実な臣下そのものだった。
「はい、さようでございます、トランザさま。次元獣シギルと申します」
武林の隣りに立つ巨体は、彼にならってトランザに一礼するが、
どこか滑稽な様子を隠すことはできなかった。
シギルは二メートルほどの巨体ではあるが、
体つきはカブトガニのように硬く、丸く、戦闘に向いているようには見えず、
トランザの不機嫌さに拍車をかける。


「で、このシギルはなにができるのだ。芸の一つもできれば生かしておいてやらんこともないぞ。おれが飽きるまではな」
次元獣は本来、トランザが基本形態を考え、それを武林の配下にある科学者グループが製作する。
だが最近は彼らもバイラムの技術を理解しはじめ、
オリジナルの次元獣を作るようにもなってきていたのだ。
このシギルはその中の一体で、
トランザにとっては技術的には「孫」にあたる次元獣かもしれない。
だがこの祖父は孫に対して冷淡だった。
自分が直接関与していない次元獣など、
出来損ないだと決めてかかっているのだ。
だが武林はそんなことはまったく意に介さず、シギルについての説明を始める。
「は、たしかにこの次元獣は格闘などの戦闘には向いていないかもしれません。ですが精神攻撃について特化しております」
ここで普通の上司であれば「精神攻撃とはなんだ」と尋ねるところだが、
トランザは不機嫌そうな、興味のなさそうな様子を崩さず無言だった。
そして武林の方も、
そんな上司――主君の作り出す嫌な空気を物ともせず説明を続ける。
「相手の脳に直接攻撃を仕掛け、精神力の弱い者であれば、そのまま廃人に追い込むこともできます。そうではない者に対しても、まったくの無効ということはありえません。脳が侵され、それに連動して身体の機能も不全に陥り、強い酩酊状態に似た症状を作り出すことも可能です。また意図的に幻覚を見せたり、恒常的に鬱状態に陥れることも不可能ではありません。有効範囲は日本全土を覆うほどで、それらの攻撃をジェットマンに仕掛ければ、彼らとてひとたまりもありますまい」
「つまり連中を二日酔いにしようというのか。なるほど、連中は未成年で酒など飲まぬだろうからな。人道と社会倫理に基づいた立派な作戦だ」
と、トランザは、
シギルの能力と武林と作戦と科学者グループと人間界のルールとをまとめて嘲笑し、
二日酔いなどまったく無縁の内臓に生のブランデーを一息に流し込んだ。


そのトランザを見て、武林はブランデーの瓶を手に取ると、
うやうやしく差し出し、主君のグラスへ注ぐ。
「トランザさまには児戯に等しい作戦、それに次元獣と承知しております。ですが我ら人類には今はこれが精一杯にございます。どうぞご寛容をもってお見守りくださり、作戦の許可をいただけませんでしょうか」
ブランデーをなみなみと注いで瓶をテーブルに置くと、
武林は深々と頭を下げた。
そこにはトランザの揶揄に対する怒りや不機嫌さなど微塵もなく、
態度も表情も、口にした言葉を心から発していると誰の目にも明らかである。
「構わん。勝手にやれ。子供同士のじゃれあいに口を挟むほど、おれは無粋ではないからな」
そんな武林に嘲笑を崩さず、トランザはグラスを口につけながらぞんざいに許可した。
理由は言葉通りではあるが、もう一つ、他者を嘲笑できて気分がよくなったのだ。
「ありがとう存じます。ではさっそく実施させていただきますので、これにて失礼いたします、トランザさま」
機嫌がよくなったトランザに、武林はうやうやしくもう一礼すると、
シギルをうながし、部屋を出て行こうとする。
が、その二人をトランザが止めた。
「待て、ついでだ。ここでやっていけ」
「は、こちらででございますか?」
トランザの命令に虚を突かれ、武林は軽く目を見開く。
「いまお前はシギルの精神攻撃の有効範囲は日本全土を覆うと言っただろう。ならばここからでも問題あるまい。それともあれは虚言か?」
「いえ、そのような。ですが精神攻撃のみでジェットマンを打倒できるかはわかりませぬし、同時に直接攻撃をおこなう方が確実に…」
「いいからやれ。そのシギルの一芸がおれの気に入るかどうか、試してみろ。気に入れば正式な次元獣として認めてやってもいいぞ」
ブランデーグラスを回し、嘲笑を表情ににじませながら、
トランザは気まぐれの命令を有無を言わさず重ねる。
それを受けて武林もきちんと主君に向きなおって一礼すると、シギルに命令した。
「承知いたしました、ではこちらで。トランザさまのご命令だ。やれ、シギル」
それを受けたシギルは、うめきのような声で応じると、
スカイキャンプがある方角へ向けて力を込めた。
その念は、五人の少年少女を見えない波動となって襲うために宙を飛ぶ。
そして次の瞬間、シギルは突然身体を硬直させると、
勢いよく床に倒れこみ、痙攣しはじめた。


「……こいつは力を使う時、いちいち固まって倒れるのか?」
その様子を見ていたトランザは、あきれ顔で武林を見やる。
「は、いや、そのようなことは…」
だがシギルのこの奇態は武林にも意外だったようで、
ややあわてながら膝をつき、シギルを診る。
彼は本格的な科学者ではないが、知能も高く、知識も豊富なため、
ある程度のことならわかるのだ。
「これは…攻撃を仕掛けた先で、なにかトラブルがあったようです」
「攻撃を仕掛けた先? ジェットマンにか?」
武林の「診断結果」にトランザも意外そうな表情を見せる。
「はい。どうやらジェットマンたちの方でなにかこちらの意図しないことをしていたようです。その影響がシギルにもフィードバックされ、このような事態になったのかと」
「ふむ……」
それを聞いたトランザは少し何かを考える仕草を見せ、
そんな主君に武林は恥じ入りながら立ち上がり、頭を下げる。
「申し訳ございません、トランザさま。このような醜態をお見せいたしまして。これはすぐに科学者共に回収させますゆえ…」
これは予期しがたいアクシデントと言うべきで、
武林に責任を負わせるのは気の毒というものだが、
彼の中ではそのような考えは浮かばない。
主君へ捧げるものは、いかなる時でも最上の結果のみと自らに戒めているのだ。
その武林にとってはシギルのこの様子も、失態以外の何物でもない。


が、トランザはめずらしく彼をとがめず、尋ねてきた。
「待て、ではこの状態ながら、シギルはジェットマンの精神に干渉してはいるのだな?」
「はい、それは確実でございます。ですがこの様子ではどのような影響が彼らに現れているかわかりませんし、こちらのコントロールもままならず、攻撃としては不完全なものと言わざるをえません」
「そうか。いや構わん。このままにしておけ」
だがそれらを聞いたトランザは、ニヤリと笑うと、
シギルをこのまま放っておくように命じた。
「は? しかしそれでは…」
「構わんと言っている。こちらにとっても連中にとっても、何が起こるかわからん方がおもしろいではないか。ああ、ただし早急にシギルが何を見ているかわかるようにはせよ。そうでなければ楽しもうにも楽しめんからな」
ニヤリとした笑みのまま、トランザはまたグラスの中のブランデーをあおる。
シギルがなにを見ているか、実はトランザならば自力で見ることができた。
地球人製とはいえ、シギルは次元獣であり、
すべての次元獣はトランザの制御下にあるのだから。
だがトランザとしては、もともと下等な次元獣の、
さらに下等な地球人製の次元獣に少しでも関わるなど願い下げなのだ。
「は、了解いたしました。ではすぐに」
そんなトランザであるから、
このまま放置しておけばシギルにどんな悪影響が出るかわからず、
それが最悪彼の死に至るとしても、まったく意に介さないであろう。
そしてシギルの意識に科学力で物理的に介入するなど、
その死をさらに早めることは確実であるが、
そのことにも気を配るはずもない。
それがわかるだけに武林は何も言わず、
一礼して科学者グループを呼ぶために一時退室した。


                                 つづく

作品一覧
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65631933&comm_id=2123162



そんなわけで忘れられてるかもですが、久しぶりに新作です(照)。
「変則ダブルデート」と「マッカラン」の間くらいの時期のお話になります。
本編といえば本編だし、外伝といえば外伝という内容かなあ。
でも一応本編の続きということで。
本編ほどではないけどそこそこ長い話にはなりそうなので、
不定期でアップになるとは思いますが、気長におつきあいくださるとうれしいですわーい(嬉しい顔)

コメント(8)

待ってました!

いきなりトランザ側からスタートとは…
先が読めませんね!
>純さん
いつもありがとうございます!
感想いただけると非常に励みになります。
そしていろいろ想像してもらえるのはいい作品だと思っているので、
そちらもとてもありがたいです。
何をしているかは次のお話で(笑)。

長い付き合いになるかと思いますが、よろしくお願いします(照)。
>恭大侠さん
ありがとうございます!
トランザは書いてて楽しいので(やりたい放題だから(笑))、
もっと出したいんですけど、やっぱし悪役だからなかなかなーと(笑)。
次も楽しんでもらえるように努力します。
>サユリンさん
本当にいつもありがとうございます!
動き出してしまいました。最後まで書けるか不安もあるんですが(汗)。

武林はこれまた書いてて楽しいです。突き抜けてるところがあるので。
そしてそういうところで恐ろしさも感じてもらえればとも思っているので、
とてもありがたいです。

最初から、ぜひお願いします(笑)。
でもほんと、長いんでお時間があるときにでも(照)。

またよろしくお願いします。
クリスマスプレゼントをいただいた気分です。
今出先なので帰ったらゆっくり読ませてもらいます!
>陽菜さん
こちらこそ、いつも本当にありがとうございます。
まだ出だしなので、そこまでしっかり読んでもらうとなると、
ちょっと照れくさかったりもしますが、でもうれしいです(照)。

今回もお付き合いいただけますよう、よろしくお願いしますね。

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