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今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第十章 鳥人、はばたく 2

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戦いは拮抗していた。
ジェットマン四人は互いの齟齬にイラつきながらもワームと互角に戦っている。
が、そのことに彼らは違和感を覚えはじめた。
「手を抜かれている……?」
ワームの動きやパワーに不自然なところがあるわけではない。
たしかに自分たちと戦うために全力を尽くしている。
だがなにか勘のようなものがそう感じさせるのだ。
その勘は正しかった。
「イエローオウルの娘はまだ来んか」
「は、いまだそのような気配はございません」
ワームを通して戦況を見ていたトランザは武林に尋ね、武林は控えめに即答する。
「ふむ……」
豪奢な椅子に座り、脚を組んで肘掛けに右ひじをついて、拳に顎を乗せながら、
トランザはかすかに不快な表情になる。
彼は「この際は」とばかりにジェットマン五人の戦力をすべて測っておきたかったのだ。
そのためにワームがやられたとしても惜しくはない。
次からの次元獣にそのデータを活かせばいいだけの話である。
たとえ五人そろわずとも、この四人を倒しておけばそれで済むのだが、今後のこともある。
五人そろった彼らの全力を知っておけば、
また別のジェットマンがあらわれたとしても対処がしやすい。
彼ら以外にジェットマンの後継者がいるとは考えにくいが、念には念を、である。
それ以外の人類の戦力に興味はない。たとえ核兵器であっても無力化する自信がある。
だが、どんな事情があるかは知らないが、どうやら五人目はあらわれないようだ。
そのため画竜点睛を欠いた気分がトランザに不快さを与えたのである。
「まあよい、来ないのであれば仕方なかろう。そろそろ終わらせてやれ」
不快さを吐き捨てるようにトランザは武林に命じ、
武林は「は」と短く返答をしてそれを実行した。


その時、四人にはなにが起こったのかわからなかった。ワームが消えたのだ。
そして次の瞬間、禅が弾き飛ばされた。
「がっ!」
岸壁に叩きつけられた禅が苦鳴を吐き出す。
その勢いは、さきほど鷹男が叩きつけられたそれとは比較にならない。
禅ほどの男が一瞬めまいを起こすほどの豪打だった。
「禅!」
「禅!」
「馬鹿野郎、よそ見すんな!」
叩きつけられた禅に驚いてそちらを振り向く沙羅と大地。
その二人を地に片膝をついて落ちた当の禅がつまった息を吐き出すように怒鳴る。
「くっ!」
三人の中で唯一、禅に怒鳴られる前からワームの動きを追っていた鷹男だけが反応する。
沙羅を狙って打ち出されるように突き出された脚をブリンガーソードで払う。
が、そこから攻撃に移れない。
「速……っ!」
最初は戸惑ったが目で追えないほどではない。しかしそれだけで相当に苦労する。
まして動きそのもので追いすがるなど不可能に近い。
「どうなってんの!? いくらなんでも…」
沙羅も愕然と首を振って怪物の動きを追うが、それしかできない。
さらに禅を弾き飛ばした力から見て、パワーも自分たちを遥かに凌駕することがわかる。
なぜかワームはまだこちらの周囲を激しく動いているだけだが、
いつ攻撃に移ってくるかわからない。
焦燥がジェットマン四人を急速に襲いはじめた。


「MAX(マキシマム)モード、正常に作動いたしました」
肘を突いてふんぞり返り、戦況を見ていたトランザに武林は報告した。
マキシマムモードと名づけたそれは、
次元獣のパワーやスピードを瞬時に限界以上に発揮させる装置のことである。
その力は圧倒的で、作動させたが最後、戦っている相手はひとたまりもない。
だがこのような行為は、
人体に対し常識や人道を無視したドーピングをおこなうようなものである。
当然、使う方も相応の代償を支払うことになる。
「ですがこれでワームは終わりです。1時間もすれば全身が崩壊して死に至ります」
「そうか、心が痛むな。だが、人であろうが物であろうが限界を越えたら壊れるものだ。致し方なかろう」
トランザは薄く冷笑する。
トランザの残忍さは、その事実をワームに知らせていないことだった。
彼は今、その自分の力に狂喜していることだろう。
その表情が事実を知った後、どのように変わるか。
「よい酒の肴になりそうだな」
と薄笑いのままトランザはつぶやく。
部下である次元獣の恐怖と絶望さえ自身の悦びにするトランザであった。
と、その自分の言葉で思い出したように、トランザは手を武林に差し出す。
心得た武林はブランデーをグラスに注いでから、うやうやしく主君に渡し、そして応じた。
「ジェットマンはやはりワームの動きについてこられないようです。MAXモードの有効性は確認されました」
「よし、ではもうよかろう。殺せ」
自分たちの周囲を激しく動くワームに、精神的に右往左往しているジェットマンたちを見て、
薄笑いに凄絶なものを加えると、トランザはブランデーを一息に飲み干した。


「来る……!」
四人が同時にそう感じた。
その感覚の通りにワームは動き、そして誰も彼の攻撃に反応できなかった。
「がっ!」「くっ!」「ぐッ!」「きゃあっ!」と四人四様の声を挙げ、ワームに弾き飛ばされる。
禅は体当たりで、鷹男と大地と沙羅はそれぞれ脚の一本で。
壁にたたきつけられる者もいれば、擦過音をさせながら地面を滑る者もいる。
だがその中の誰一人として闘志は失っていない。
全員がすぐに態勢を立て直すと、地を蹴り、次のワームの攻撃を避ける。
それでも力の差は圧倒的だった。
ワームはその巨体を、見ている者に違和感を与えるほどのハイスピードで動かし、
伸縮自在の脚を縦横無尽に振るってくる。
鷹男たちはそれらに翻弄されるのみである。
致命傷を受けないのはさすがだが、それも時間の問題にしか見えない。
と、突然ワームが動きを止める。
そのことを鷹男たちがいぶかしむ余裕もなく、ワームは全身からランチャーを発射した。
「うわっ!」
鷹男の学校での戦いを越える火力で、四人は腕を交差して爆風をガードしながらジャンプする。
そのまま後方転回で高さ15mほどの崖上に並び立った。
「バードブラスター!」
禅の指示に他の三人も腰の銃を抜く。
鳥の形を模したその銃の威力は段違いに上がっているが、
デザインは前ジェットマンのものと変わっていない。
「撃て!」
禅の合図とともに、下方へ銃口を向けた四人は
こちらへ向けてジャンプしてくるワームへ一斉にプラズマ弾を放った。
スピードやパワーが上がっても装甲が厚くなるわけではない。
バードブラスターの直撃はワームに相応のダメージを与える。
だがいまのワームは痛覚もほとんど働いていない状態だった。
それもまたMAXモードの影響である。
高熱のプラズマ弾に乱打され、身体中から火花を散らしながら上昇の速度を落とすワーム。
しかし彼は脚を二本飛ばして崖に打ち込み、
それを支点にして振り子のように崖上へ飛翔してきた。
「うわ……っ!」
四人はその動きに驚き、一瞬動きを止めてしまう。
それを狙い、ワームは脚一本で四人をまとめて空中でなぎ払って地面に叩きつけた。
「ぐぅ……っ!」
鈍いうめき声を漏らしながら四人は固まって地面を跳ね、滑り、
そしてその衝撃に変身が解けてしまった。
「か……っ!」
高い音で息を吐き出し、苦鳴を漏らしながら禅は片膝立ちになると、
自分だけではなく横にいた鷹男と大地の変身も解けているのを見て吐き捨てた。
「欠点が直ってないじゃないか!」
前ジェットマンの時も、時として敵の攻撃に変身が解けてしまうことがあったのだ。
そのためにピンチに陥ることもあり、この点についての改善もなされているはずだったが、
やはり実戦では想定以上のことが起こってしまう。
そのことを充分に知っているはずの禅だったが、
当事者ともなればつい悪態も出てしまうというものだった。

が、そんな余裕すらもなかった。
ワームの攻撃はまったく収まっていないのだ。
片膝をついた禅はまだ隣りでうずくまってうめいている鷹男と大地を怒鳴りつける。
「来るぞ! 立て!」
が、ワームの狙いは男三人ではなかった。
怪物は彼らの前を目にも止まらぬ速さで通過すると、
体重が軽かったせいか他の三人より遠くへふっ飛び、崖っぷち近くまで飛ばされた、
同じく変身が解けた沙羅へ突進してゆく。
「沙羅!」
鷹男が叫ぶが、当然助けには間に合わない。
沙羅も自分の方へ向かってくる巨獣に声をあげる間もなく、
両腕を交差させ、身体に力を入れて防御の態勢になるしかないが、どれほど効果があるものか。
一撃で殴り飛ばされ、崖下へ転落程度で済めばよいかもしれない。
それを覚悟して歯を食いしばる沙羅。
その瞬間、四人は戦いに集中していて、
ワームはおのれの力に酔っていいて気がついていなかったが、
さきほどから聞こえていたジェット機の爆音が急速に近づいてきたかと思ったら
上空を低空で通過していった。
「なんだ?」
ジェットマシン、ジェットスワンの影の下、四人もワームも動きを止めて上を見上げる。
と、鳥の形を模したその戦闘機が通り過ぎた空から、一つの小柄な人影が降りてきた。
パラシュートもつけておらず、ほとんど自然落下だが、その人物は恐れる色も無い。
急速にせまってくる人影に虚を突かれたのか、ワームもなんの反応もできない。
と、ワームの直前まで落下してきた人影は、
くるっと後方宙返りをすると、思い切りその巨体を蹴り上げた。
「えい!」
虚を突かれたのもあるが、その蹴りは小柄な身体からは考えられないほど強力で、
無警戒で受けてしまったワームはもんどりうって崖下へ落ちて行ってしまった。
「こずえ!」
ワームが崖下へ激突する音の中、沙羅は目を見開いて驚き、
自分を助けてくれた少女へ駆け寄った。
こずえは片膝をついて荒い息を漏らしており、
それだけで彼女がまだ本調子ではないことがわかる。
だが走って自分に近づいてきた沙羅に、こずえは息を整えて笑顔で尋ねた。
「大丈夫? 沙羅ちゃん」
その笑顔も疲れていて、目の下には薄く隈もできている。
そのこずえを見て沙羅は泣きたくなった。
「大丈夫よ、こずえのおかげ。ほんとにありがと。あんたこそ大丈夫なの?」
「こずえちゃん!」
「こずえ!」
そこへ男三人も走り寄って来、おのおのの個性にあわせて彼女を心配そうに見おろす。
その三人にも笑みを見せ、特に鷹男には気丈に微笑んで見せると、こずえは立ち上がった。
「全然大丈夫だよ。わたしだってジェットマンなんだから」
そう言って自分の手首をかざしてみせるこずえ。
そこには香から受け継いだクロスチェンジャーがはめられている。
事実、こずえは「あれ?」と思うほど自分の体が急速に回復しているのを感じていた。
そしてこの時、他の四人も似たような感覚を覚えている。
五人がそろった途端、自分が「はまるべき場所にはまった」と感じ、
なにかが心身の奥深くからあふれてくるのを抑えられずにいたのだ。

その感覚のまま五人は崖縁に並んで下にいるワームを見下ろす。
やや打ちどころが悪かったのか、まだ立ち上がらずにもがいているが、
すぐに復活するだろう。
それを強い視線で見ながら、彼らの闘志は急速に高まった。
彼らの並びは、真ん中に鷹男、その左右に沙羅とこずえ、さらにその外側に大地と禅。
彼ら自身も意識せず、ごく自然にその並びになった。
それはバードニックウェーブの効力が最も発揮される並びで、彼らの本能がそうさせたのだ。
そしてその本能は、並び方だけという意味でなく、
鷹男が中心となることをごく自然と感じさせていた。
ジェットマンの真のリーダーはレッドホークなのだ。

「いくぞ!」
「おう!」
あふれる闘志のまま、鷹男の声に四人は応じる。
そして右手を突き出し、引き寄せると変身スイッチを押した。

「クロス、チェンジャー!」

太く叫ぶ声とともに、五人の身体は光に包まれ、姿を変える。
向かって左から、
ブラックコンドル、ブルースワロー、レッドホーク、ホワイトスワン、イエローオウル。
それぞれの色のヘルメットとメタリックスーツに包まれた五人は、
さらに心身が賦活するのを感じ、
その思いのまま一人一人が自分の新しい名を叫んだ。

「レッド、ホーク!」
赤い血脈、燃え上がる炎のように。

「ブラック、コンドル!」
黒き牙爪、卑しきを切り裂く。

「イエロー、オウル!」
黄道を歩む者、太陽のごとし。

「ホワイト、スワン!」
白き舞踊、邪を染める。

「ブルー、スワロー!」
蒼き疾風、涼やかに走る。

そして五人は声をそろえ、
「鳥人戦隊!」

父母から受け継いだ名を力強く叫んだ。

「ジェットマン!」

若鳥が、羽を広げた。





「ああ……!」
モニターで香と並んでそれを見ていた綾は、背筋に走る震えに思わず声をあげた。
まだ全員少年少女で、前ジェットマンに比べれば全体的に小さい。
特にイエローオウルは年齢に比しても背は低く、
前ジェットマンとほぼ同じ体格なのはブラックコンドルくらいだろう。
だが同じだった。いつも綾が見ていた「ジェットマン」がそこにいた。
若く、脆く、そして強かった彼女のジェットマンが帰ってきた。
香は綾のように外から自分たちを見たことはない。
だが今の彼らの気持ちは文字通り我がことのように実感できた。
五人がそろい、心を一つにした時、なにも恐れるものはなかった。
だからモニターの中の五人が両腕と、その腕から小さな翼・ジェットウイングを広げ、
そろって崖下のワームへ向かって跳ぶ姿を見ながら二人は確信した。
「勝った」と。


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コメント(9)

 5人の名乗り&ポーズ、ついにキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
 と心の中で叫んでしまいました。

 これぞ戦隊exclamation ×2これぞジェットマンです指でOK
 全員揃っての「クロスチェンジャーexclamation ×2」は、まさに悪に立ち向かう鳥人の証ですね。

 OPが頭に流れたのはいうまでもありません。わーい(嬉しい顔)
>masaさん
いやー、たぶん一緒にアップした3も読んでくださったようで(照)。
最初は一気に読んでもらった方がいいかな、と一緒にアップしたんですけど、
順番に読んでもらいにくそうと思って、一時削除しました(照)。
土曜あたりにでももう一度アップしようと思っています。
希望者があったら、それ以前にメッセージかなにかで送ろうか、とか、
たまに余裕がある状況になると考えてしまいます(笑)。

>桂 眞枝さん
やっぱカゲはいいですよね〜(笑)。
そしてジェットマンの主題歌は全戦隊の中でも屈指の名曲だと思ってます。

ようやく五人で変身できました(笑)。
次はようやく五人で戦います(笑)。
>紗羽さん
感想どうもありがとうございます!
こういうのいただけるのが一番モチベーションが上がるもので(笑)。

映像があるわけじゃないので、ちゃんと「名乗りのシーン」になってるか不安だったんですが、
どうやらなんとかそれらしく書けてたようで安心しています。
やっぱり「いくぞ!」「おう!」はキーワードかな(笑)。

残りわずかになってきましたが、最後まできっちり書こうと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
>涼さん
いつも感想ありがとうございます。
全員で変身、全員で名乗りっていうのはどうしても入れたかったんですよねー(笑)。

トランザがどういう思いかも、一応次に書いてます。
すぐに発表します(笑)。
>chamiさん
ありがとうございます!
読んでくれた人が鳥肌立つっていうのは最高の賛辞の一つです!

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