ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いコミュの小説 鳥人戦隊ジェットマン? 第三章 巣箱にて 3

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加



「君たちのバードニックウェーブは」
「『君たち』も気持ち悪い」
遠く離れて育った四人の兄妹たちをテーブルに座らせると、
禅は教師然として話しはじめたが、生徒の一人が容赦なく腰を折った。
「あのな沙羅……」
「きちんと説明しようっていうんだから、そういうあたりも気にかけてほしいわね。気色悪さが先立つと、なかなか頭に入らないんだから」
「わかったよ。お前さんたちのバードニックウェーブはだな…」
苦笑ともつかないような吐息を小さく吐き出すと、禅は口調をあらためた。
「すべてを親御さんから受け継いでるわけじゃない。受け継いでるのは強化された細胞と運動神経、それに反射神経や動体視力、そういったものだけなんだ」
「じゃ、本家のバードニックウェーブってのは他になにがあるんだ?」
相変わらず椅子にあぐらをかいて座っている大地が質問した。
「強化ポリマースーツさ」
「なにそれ?」
「バードニックウェーブを浴びた人間に身体には、薄い皮膜の状態でさっき沙羅が着てたようなスーツが覆われる。こいつは普段、透明なままで見えないが、いま沙羅が着けているのと同じデザインだったブレスレット」
と、ここで沙羅の腕に六つの視線が集まり、沙羅はその腕を掲げてみせた。
その左右の手首には二種類のブレスレットが着いている。
「そこから特殊なコードシグナルが発信されると、そいつが可視化するわけだ」
鷹男はさっきの「空色のスーツ」姿の沙羅を思い出し、「それにしても…」と禅を見た。
自分たちとほどんど年の変わらないこの少年は、このスカイフォースではどんな立場なのか。
さっき鷹男はそのことを尋ねたが
「おいおい教えるよ。いまはお前らの教師。だからきちんと尊敬して、礼儀を守って、敬語を使い、へりくだって接するように」
と、笑って言ったものである。
疑問は残るが綾の秘蔵っ子であるというのなら、悪人でも卑人でもないだろう。
とりあえずはそれだけで充分だった。

「それじゃさっき沙羅が着てたやつはなんです?」
鷹男の質問に禅は直接答えずに、モニターのスイッチを入れた。
そこに鳥人戦隊のスーツとヘルメットが映る。
「モデルはブルースワローだ。こいつはデザインも能力も本物そっくりに作られているが別物だ。スカイフォース技術班の傑作さ。材質そのものは本家のバードニウム・ポリマー繊維とは違う物質だから強度は多少落ちるが、バードニックウェーブを浴びたり、それを継承した人間の運動能力を最大限に引き出す役目は充分に果たせる代物なんだ」
そう言って禅は画面を設計図に切りかえた。
そんな物を見せられても理解できる者はここには一人もいないが、
とにかくなんとなくすごい、という程度のことはわかった顔はしている。
「でもさ禅、これぜんぜん役に立たなかったわよ? おかげで乙女の柔肌にこんなアザまで作っちゃってさ」
そう言いながら沙羅は前髪をかきあげた。
額に約5センチほどの内出血の痕が残っている。
それを見てこずえは心底から気の毒そうな、心配そうな顔をし、
そのこずえの表情を見て鷹男は「妹」の性格が変わっていないのを知って嬉しく感じた。
「ああ、まあ沙羅のレベルをさっぴくとしても、あの旧スーツじゃ今度の次元獣には対抗しきれないな。――ああいや、そういう意味で言ったんじゃないから気にするな、沙羅」
「沙羅のレベル」のあたりで本人がすっと目を細めたのに気づいた禅は、
一応フォローを入れた。
が、ここで禅が言った「レベル」は、沙羅の戦闘力の話ではない。
「え? それじゃ鳥人戦隊じゃ今度のバイラムには勝てないんですか?」
「そうだ鷹男。さっきも言ったとおり、あのスーツは前の鳥人戦隊が着ていたスーツに限りなく近い能力がある。にもかかわらず、あの次元獣はそいつを歯牙にもかけなかった。つまりそれがどういうことか、わかるだろ?」
「でもよ、鳥人戦隊の力ってやつは5人そろって初めて本当の力を発揮するんだって、父ちゃん言ってたぜ」
「よく知ってるな大地。でもな、それにしても前の鳥人戦隊は1対1でもあそこまでひけはとらなかったさ。レベルそのものが違うんだ」
全員が数秒間、無言だった。
その沈黙の中で鷹男はようやくわかった。
つまり自分は新しい鳥人戦隊のメンバーに選ばれたのだ、と。
どうやら禅たちはそのことを鷹男に話すのを忘れているらしい。
というより、あまりに当然のことだと思ってるので、
話すまでもないと考えているようだ。
「おれにだって、一応断る権利だってあるだろうになあ」
と、内心苦笑する鷹男だったが、断る気などさらさらなかった。
とにかく連中に対抗できる力を自分が持っているのなら、
むしろそれは鷹男にとってありがたいことなのだ。
とはいえ、その力がなんの焼くにも立たないというのでは、どうしようもない。


ふと鷹男は別のことにも気がついた。
「ねえ禅さん」
「禅でいいよ。なんだ?」
「なんでみんなおれより先に集まることができたんです? みんなおれみたいに襲われたんですか」
「いや、そうじゃない」
「そう、そうじゃないのよ」
沙羅が割って入った。
「まあ、あたしの勘のよさが功を奏したってところかな。狙われてるって感じたのよ」
「狙われてる?」
「そう。というより監視されてるって言ったほうが正しいかな。悪意のある視線っていうか、そういうのを感じて」
あれか、と鷹男も思い当たった。
おかげで鷹男は平穏な高校生活とおさらばしなくてはならなくなりそうだったのだが、
いまこの状況になってしまえば、球技大会での大暴れもたいした話ではない。
「じゃ、大地たちも?」
「いや、おれたちは感じなかった。ただお迎えがあってさ」
あまり繊細さとは縁の無い大地は即答したが、
ちょっと困ったような表情で黙っているこずえを見て
「ああ、こずえちゃんは感じてたんだな」と、鷹男は苦笑した。
だが、兄をおもって口を閉じているこずえの顔を立てて、鷹男も黙っていることにした。
その鷹男の表情からなにかを感じたのか、こずえは小さく微笑んで、兄のあとを受けた。
「昨日小田切のおばさんがうちに来てね、バイラムのことをお父さんとお母さんとわたしたちに話してくれたの」
「バイラムか。雷太おじさんたち、びっくりしたろうな」
同じ理由で綾が、今日は自分の母を訪ねていることを、鷹男はまだ知らない。
「うん、ものすごくびっくりしてた」
こずえは両親の沈痛な面持ちを思い出して、暗い表情になった。
大地とこずえを戦死として迎えに来た綾を、
雷太とサツキはどんな思いで迎えただろう。鷹男は察した。
だが送り出さないわけにはいかなかった。
雷太おじさんは経験しているのだから。バイラムの恐怖を。
それを止められるのがバードニックウェーブを浴びた、
もしくは受け継いだ人間しかいないということを。

「でも雷太おじさん言わなかった? 自分が戦うって」
「うん言った。でも小田切のおばさんがダメだって」
「なんで?」
「年齢の問題さ」
禅が解説した。
「もう前の鳥人戦隊は全員ピークを過ぎている。これ以上は成長どころか能力の維持すらも難しいだろうな。実戦部隊としてはあまり役には立たないんだよ。それに……」
事実ではあるが結構きついことを言っていた禅が、突然気まずそうに黙った。
「それに、なんです?」
鷹男にうながされて、禅は仕方なさそうに言った。
「本家の鳥人戦隊には欠員ができてしまったからな」
「あ……」
その通りだった。本来鳥人戦隊は5人。
そのうち二人はすでにこの世にはなく、しかも一人は鷹男の父親だった。
そのことをおもんぱかって、禅はさっき一瞬口を閉ざしたのだ。
高校生とは思えないような雰囲気を持つ禅も、
実際はやさしいデリケートな心を持っているんだな、
と鷹男はなんとなくおかしさを含んだ親しみを彼に感じた。
「まあそんなわけでな、今日長官はお前さんの家に行ってるよ。お前さんを鳥人戦隊にもらい受ける許可をもらいにな。ところがそれより先に敵が手を打ってきたわけだ」
それを阻止できなかったことを詫びるように禅は言った。
それに鷹男が気にしないように言おうとしたとき、基地内無線の電話が鳴った。
「禅さん、回収終わりました」
「お疲れさん、持って来てくれ」
スピーカーから流れた声に禅は気軽に応じた。どうやら禅はスカイフォースの中でも士官クラスらしい。
「禅さん、なにを回収したんです?」
「ん? 沙羅の忘れ物さ」
こずえの屈託のない問いに、禅は笑って答えた。

一分後、若い、といってもこの部屋にいる中では
最年長の職員がワゴンに載せた回収物を持ってきた。
そこには泥の中から拾ってきた半壊状態の空色のヘルメットと、
折れたブリンガーソード、そしてバードブラスターが置いてあった。
「お疲れさん」
もう一度禅が言うと、職員は敬礼とともに部屋を出て行った。
「スーツはさっき点検整備を終えて沙羅のブレスレットに収納されている。こいつらも本来はそうなんだけどな」
「ふえー、こんな硬いモンがパッキリ折れちまったのかよ」
大地はブリンガーソードを取りあげて、しげしげと眺めた。
柄の部分を含めて40センチほどの長さに縮んでしまったその剣の先端は、
ものの見事に欠けていた。
「刃には触れるなよ。気がつかないうちに切れちまうぞ」
禅の事実に基づく脅しに、大地は刃に伸ばしていた指をあわてて引っこめた。
「これが敵の戦力だ。まずそれを認識してくれ」
禅がいままでになく真剣な表情で言い、それを聞いた全員も気を引き締めた。
「前のバイラムとの戦いのときも、このヘルメットが破損したことはあった。だがそれも敵の指揮官クラスの猛攻を受けたときだけだった。あんな雑兵の攻撃でここまでのダメージを受けたことはない」
「それが今度はその雑兵にすら、これだけの力があるってことですか」
大地からブリンガーソードを受け取って、鷹男はそれとヘルメットを交互に見た。
さっきまでこれらを破壊した相手と戦ってきた鷹男には、
その恐ろしさが実感としてわかる。
だが、そのために身体が必要以上にすくむということはなかった。
「そうだ。沙羅にはこの一週間、スカイフォースの戦闘訓練を受けてもらった。だからかなり荒削りではあるが、まるっきり素人というわけじゃない。それにくわえて沙羅は常人じゃない。尋常な強さじゃないんだ、沙羅の実力は。それが強化スーツを着ていてさえ、あんなだった」
「つまりどうなるんだ? おれたちにはまるで勝ち目はないってことなのか、禅?」
初対面でありながら、物怖じもせず年上の少年を呼び捨てにする大地だが、
その声には失望と無念さがこもっている。
勢い込んでやってきたのに、
いきなりここまで否定的な事実を並べられては意気も下がってしまう。
そんな大地を向いて、禅は言った。
「いや、そんなことはない。いちおう手はあるんだが……」
禅はそこまで言ってから、少し視線をさまよわせた。
どこか言いよどむ禅に鷹男たちはなにか漠然とした不安を覚えたが、大地にそれはない。
「なんだ、あるのか。どんな手なんだ?」
あっさり言われて大地は拍子抜けしたが、対抗策があるのなら、ありがたい。
「どんなって、それはまあ……」
禅は視線をさまよわせたまま言うが、それがこずえのところまで来ると自然に止まった。
「こずえちゃんがどうかしたんですか? 禅さん」
「ん、いや……」
じっと見られて少し驚いたような、
それでいて不安を含んだ恥ずかしそうな表情でうつむくこずえに代わって尋ねた鷹男に、
禅が答えにくそうにしていた時、またも内線電話がコールした。
それに救われたという表情はまったく見せなかった禅は、スピーカーのスイッチを入れた。
「どうした?」
「なにか変なんです。強引に強力な電波が侵入してきたような――いや、電波とも少し違うようですが、とにかく――あわっ!」
泡を食っていたスカイフォース隊員の声が突然途切れ、
変わりにブラックアウトしていた司令室の壁面モニターがすべてオンにされた。
それを見て鷹男が叫ぶ。
「あっ、あいつ!」
モニターに映った人物は、白いスーツを着た、甘い美貌を誇る、
あの川原で怪物を指揮していた男だった。




第一章 雨の日の出来事
1 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21399818&comm_id=2123162
2 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21503773&comm_id=2123162
3 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21642075&comm_id=2123162

第二章 亡霊対雛鳥
1 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21734736&comm_id=2123162
2 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21961610&comm_id=2123162

第三章 巣箱にて
1 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=22460860&comm_id=2123162
2 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=28603863&comm_id=2123162

コメント(7)

一応コミュニティ内でリンクなんて貼ってみましたが、大丈夫かな(汗)。

そういえば前回鷹男が「秘蔵っ子」と「隠し子」を聞き間違えましたが、
あの辺の無理な聞き間違えが母親似であるかもしれないと(笑)。
upありがとうございます!さっそく今回も楽しませていただきました。

新たなバイラムに対抗する為の作戦とはなんなのか?そして、"あの男"とはいったいだれなのか?まだまだ楽しみはつきないようです。
感想いただけるとものごっつうれしいので、本当にどうもありがとうございます(笑)。

>びとーさん
どうもありがとうございます!
いろいろ考えて、はいなくて(笑)、
パッと思いついたものをそのまま書いております(照)。
ご期待に添えればと思っております。

>桂眞枝さん
ありがとうございます。
まだまだワクワクさせられればいいな、とドキドキしています(笑)。
拝見させていただきました。 m(_ _)m

これは……いよいよ、次回 新しいバイラムの首領が明らかになるのでしょうか!?

次回アップを楽しみにさせていただきます。
 続きを読むごとに面白いですね。より強化されたジェットマンや小田切長官も早く「見たい」ですね。うれしい顔

 初代・バイラムには首領の座を賭けて、ジェットマンと戦っていましたが、この展開からすると、今回は首領がいるのかも?とも思えてきました。^^

 それにしても「手はある」と言いながら素直に答えない禅。彼は何となくブラック的存在かも・・・?ウッシッシ
>えとり太郎さん
いつもどうもありがとうございます。
展開をここで先に書いちゃうのもアレなんで抑えておきますが(笑)、
ご期待に添えるよう精進させていただきます。

>masaさん
どうもありがとうございます。
首領というと、あえてジューザさまを出してみたい気すらしてしまいますが(笑)、
さすがに死んだ人(?)を出すのはやめておきます(笑)。
それなりに伏線張ってるつもりなんですが、きちんと回収消化できるかハラハラしております、自分で(苦笑い)。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

今、鳥人戦隊ジェットマンが熱い 更新情報

今、鳥人戦隊ジェットマンが熱いのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング