治療共同体コミュの治療共同体の定義

イタリアには治療共同体が多く、HPや本も沢山あります。

今回は↓のページを日本語に訳してみました。
http://www.comunita.it/etnosmodica/definizione.htm

治療共同体の定義

　治療共同体とは集団をその主要な介入手段とし、その中に開かれたシステムとして築かれる、複雑な治療環境のことである。治療共同体システムは治療的であるのと同じくらい教育的な機能を果たし、医学とは異なる疾病概念モデルと、同様に異質ないわゆる「探求の文化」を備え、以下に述べるような四つの原則（民主、「コミュナリズム」（共同体主義）、自由放任、現実との直面化）をもっている。治療共同体はさらに「エンパワーメント」「リビングラーニング」といった自主管理特有の原点ともいえる諸概念に基づいた技法を利用し、例えばコミュニティ・ミーティングやスタッフによる情緒グループのような特別に介入可能な性質を備えた組織として機能する。こうした複雑な定義も、個人の成熟という、治療共同体の主要目的に触れなければ完全とは言えない。この「個人の成熟」とは、新たな精神状態を強化し、未成熟な心的防衛メカニズムの不適切な（時間や場所を選ばずに利用され自身や他人を苦しめる）利用に由来するパーソナリティ特徴の置き換えていくことと理解したい。
　開かれたシステムはそこで、集団を介入手段とし、介入特性、目的、モデル、技法、機能、原則、特殊文化を活用する。「治療環境」と呼んでしまうと、組織がこのように構造化されて初めて「治療環境」を真に有効に変化させる手段へと変えていくことが分かりにくくなる。
　このように定義される共同体（コミュニティ）の目的がパーソナリティの成熟を促す変化にある以上、その効果は精神療法的なものであると断言できる。こうしたタイプの組織は、ここに取り上げられたような全ての性質を備えているならば、事実上マクスウェル・ジョーンズ型の、もともとそう言われていた、精神療法的な共同体である。
　こうしたタイプの治療共同体では、居住式であれ半居住式であれ、自主管理の実践が行われていて、個人精神療法的な関係ではなく、集団療法的な関係が適用される。つまり、全体が活動の構造化に応じて、「医師」の役割を環境全体に割り当てることになる。
　このタイプの治療共同体に関して、ごく最近はジェフ・ロバーツ（1997）の簡単な定義が引用される：「社交や集団のプロセスが治療目的のために最大限利用されるべく、ある部門やデイセンターによってデザインされた、環境や社交プログラム。治療共同体では共同体そのものが主要な治療手段となる。」
　これまでの説明から、イタリアのCTR（リハビリテーション治療共同体）という、慢性疾患の患者の生活の質を変えるような一般治療共同体から、むしろパーソナリティの未熟さや適応障害の矯正を目指す共同体までを、治療共同体という用語だけで意味するのは望ましくないといえる。後者の共同体はどこから見ても精神療法専門の砦で、スタッフの特別養成により機能している。こうした共同体を区別して考えることは非常に重要で、というのもほとんど大多数のイタリアの共同体が、PROGRES研究（2000）によるとほぼ全て、保護管理的に機能しているからだ。

原則
　人類学者・社会学者であるＲ．Ｎ．ラポポートが1960年イギリスのヘンダーソン治療共同体で行った研究からは、共同体のリハビリテーションに対する取り組みを明確化する四つの特徴が現れた。治療共同体での治療介入的な文化の全てが発展していく上での諸原則はこの特徴から構成される。部門であれ施設であれ、治療共同体を定義付ける弁別的諸特性を今日代表する基準は正に次のような諸原則に関わっている。

・民主：討論や他職種間での決定を通して各人が責任を引き受けること。言い換えれば、開かれたコミュニケーションのもと、決定を引き受ける中で権限と責任を取り換えること：「患者は他の患者の治療決定に役立たなければならないだろう、自らもその責任を引き受ける限りにおいて」（1960）。

・寛容（自由放任）：逸脱行動に対する各人の柔軟性と受容性。共同体の施設は、つまりは患者が過去に心理的な成熟過程が障害されるようなコンテクストで身に付けた（不適切な）感情や行動を生き直すための場として見なされる。メンバーには、かつてうまく行かなかった内的対象世界の登場人物を、共同体という劇場によみがえらせることが可能になっていなくてはならない。それゆえ全メンバーが、「一般の」規範では逸脱と見なされるような不安を引き起こす態度や行動を、広く許容するよう組織化さている必要がある。そうした態度や行動に対する他者からのいろいろな反応に全員の諸問題が現れる。

・コミュナリズム（共同体主義）：スタッフとメンバーによる全ての場所や集団任務の割り振りや、グループ内／間の諸関係に向けられた各患者のリハビリテーション・プログラムのことを指す。個人はそこで集団の視点から評価され、患者が病院でのように「誰かにする」ことよりはむしろ「誰かとする」ことが治療的に強調される。スタッフはそのためメンバーと一緒に物事をすることになる。メンバーと料理をしたり、昼食を取ったり、掃除をしたり、買い物をしたり・・・。

・現実との直面化：個々人の行動を他者から見えるままに、継続的なフィードバックをするため、いつも直接的に「胸襟を開いて」話す。現実の認知をゆがめようとしたり、否認したり、他者との接触困難からあきらめたりしようとするのに抗う程度に。病の経験にはつきものの絶えざる落胆傾向に逆らって、未来に対しあらゆるポジティブな方向に向かって。