最大のヒット曲は“君住む街で〜 On The Street Where You Live”(コロンビア)でミリオン・セラーを記録、その後も“過ぎし日の恋〜 An Affair To Remember”(同)、“ジジ〜 Gigi“(同)などでスマッシュ・ヒットを放ちます。1955年までのマーキュリー時代にもミリオン・セラーがありました(”アゲイン〜 Again“と”ユー・アー・ブレイキング・マイ・ハート〜 You’re Breaking My Heart“)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ <コロンビア時代> That Towering Feeling ! (モノラル)
コロンビアの第一作目は有名なスタンダードばかり12曲で構成され、評論家がコロンビアでは一番の出来と言う様です。ジャズメンを従えたバラッドと軽いスウィングを楽しめます。彼の Smoke Gets In Your Eyes はヴォーカル・ベスト版にもよく顔を出します。
冒頭の You Steeped Out Of A Dream は軽いスウィングで、アービー・グリーン(トロンボーン)やバック・クレイトン(トランペット)などのジャズメンの粋な演奏が雰囲気を盛り上げます。ヴィックに編曲を多数提供してきたトゥッティ・カマラタが編曲にあたりました。小さなコンボをバックにしたり、ストリングズで彩を添えたりして変化を付け、例えば Out Of Nowhere はゆったりした出だしから、途中ジョージ・シアリング風の軽いスウィングに変わります。この歌はコロンビアLP第3作目でも歌われました。
Time On My Hands や The Touch Of Your Lips、Let’s Fall In Love などは軽くスウィングし、The Song Is You や最後の Cheek to Cheek は見事にスウィングしています。Wait Till You See Her や I’m Glad There Is You などは囁くような素晴らしい甘い声が聴かれます。モノラル録音しかなく、写真は日本版です。
“君住む街で”の大ヒット直後の録音で、その冒頭に出てくる一節(Oh, that towering feeling)をタイトルにしたLPですから、さぞかし天にも昇る気分だった事でしょう。
第2作目はイタリアン・ソング(=カンツォーネ)集で、甘く切なく美しいバラッドを揃えました。“Tell Me You’re Mine”、I Have One Heart、“Arrivederci, Roma”、“’O Sole Mio”、“Serenade In The Night”、“Luna Rossa”、“Anema E Core”等の佳曲の他、かつてマーキュリー時代にシングルでミリオン・セラーを飛ばした“You’re Breaking My Heart”他全12曲を歌っています。勿論その頃の録音とは段違いに良くなっています。
編曲はグレン・オッサー(Glenn Osser)で流麗なストリングズ自体のハーモニーが大変綺麗です。いずれも詩情豊かに声を張って熱唱しており、結婚したばかりのピア・アンジェリの事で常に頭が一杯だった事でしょう。最後を飾った“Tell Me That You Love Me”などは白眉と言えましょう。このLP(1957年)から後はステレオ録音になります。
コロンビアの第3作目も綺麗なスロー・バラッド集で、古いロマンティックな歌から映画音楽、外国の歌まで、と多彩です。フランク・ドゥヴォル(Frank De Vol)の肌理細かい編曲で、切ないほどに甘く優しいものもあれば、“As Time Goes By”などの様に少々ジャジーな味付けの歌もありました。
第1作目ではややジャジーに歌った“Out Of Nowhere”はここではリズムが少々エキゾティックです。よく知られた名曲“We Kiss In A Shadow“、“I Kiss Your Hand Madame”、“How Deep Is The Ocean”、“Prelude To A Kiss”、“Day By Day”、“Cuddle Up A Little Closer”など静かに感情を込めて丁寧に歌い、“You And The Night And The Music”では本LP中最も声を張り上げ熱く歌いました。
“A Toujours”は外国の歌であまり知られていない綺麗なワルツ調の歌で、冒頭の“Closer Than A Kiss”は本LPのために書かれ、そのオーケストラの出だしが素晴らしい編曲です。最後の“Close As Pages In A Book”(シグモンド・ロンバーグ作曲)は今では滅多に聴かれない古い歌ですが、転調が大変綺麗で涙が溢れそうな程に美しい名歌で、ヴィックの素敵な声によくマッチしています。まさに名唱です。1958年の録音。
ゴードン・ジェンキンズは大好きです。シナトラのは一度は全て聴いています(”Where Are You ?”が一番好きです)。ナット・コールでは好きなのが”Where Did Everyone Go ?”です。深みがあって選曲も素晴らしいです。パット・ブーンの”The Touch Of Your Lips”は一度聴いてみたいものです。
リドルも大変優れたアレンジャーで私も好きです。コスタではイーディ・ゴーメの”Eydie In Love”で好きになりました。
リズミカルで速いテンポの“Alone Together”で始まり、続く“My Romance”、“But Beautiful”、“The Things We Did Last Summer”、“I’ll Be Around”、“A Fellow Needs A Girl”などは遅めで緩やかに歌いますがところところでその美声を張っています。“Ain’t Misbehavin’”、“The End Of A Love Affair“、”Am I Blue“、”Me And My Shadow“、”I Like The Likes Of You“は軽快なアップテンポでこなしました。
ストリングズは一切なくビッグ・バンドを従え、冒頭の“Falling In Love With Love”からぐいぐい飛ばし“It’s All Right With Me”、“Cry Me A River”、“I Cried For You”、“Speak Low”、“Toot, Toot, Tootsie !”など全12曲、一気に駆け抜けた様なアルバム構成です。ややおとなしいのは“Swingin’ Down The Lane”、“Girl Of My Dreams”、“Deep Purple”あたりでしょうか。
“Solitude”、“Everytime We Say Goodbye”、“Imagination“などのブルー・バラッドもありますが“In The Blue Of Evening”などは大変素敵で甘いメロディです。“Last Night When We Were Young”、“Serenade In Blue”、“It Had To Be You”、“I Got It Bad”、“What Is There To Say”など、どれを聴いてもうっとりさせられる秀作でしょう。
中でも”Spring Will Be A Little late This Year“は少しブルーな仕上げですが、他の歌手、例えばエラ・フィッツジェラルド(アルバム”Hello Love”)のそれと聴き比べても決して劣りません。その編曲が実に素晴らしくヴァイオリン・ソロの美しさと途中のきめの細かい和音が聴く者を魅了します。ところがCD盤では不可解にもこの最も優れた編曲が大胆にカットされ聴く事が出来ません。1961年初頭の最も綺麗な録音ですが、発売はキャピトル移籍後の1963年に延期されました。
このLPは次回のキャピトルを経てRCAの最初にご紹介予定のアルバムです。声の伸び、艶、張りなど次第によさを増していきましたね。RCAでは Stay With Me が最も良い出来ではなかったか、と思っています。仰るとおり、最後の A Time For Love は色んな歌手が採り上げていますが、ヴィックのも素晴らしい演奏と歌唱です。
“On The Street Where You Live”、“An Affair To Remember”、“Gigi”(以上、Percy Faith編曲)、“Maria”、“The Second Time Around”、“The Pleasure Of Her Company”(以上、Johnny Williams編曲)、“Separate Tables”(Frank De Vol編曲)、“Almost Like Being In Love”(Tootie Camarata編曲)、“If Ever I Would Leave You”(Axel Stordahl編曲)などのシングル・ヒット曲が選ばれていました。他アルバムからの選曲で“We Kiss In A Shadow”(Frank De Vol編曲)が含まれます。本LPはステレオ盤ですが録音当時モノラルの歌も含まれています。
<コロンビア時代>
1Vic Damone Sings / Closer Than A Kiss (英国CBSレーベル、Diamond Memoriesシリーズ CBS-22183)
LP2枚組のコンピレーションで1967年に出されました。一枚はアルバム“Closer Than A Kiss”から1曲“Out Of Nowhere“を抜いた11曲で、もう一枚は他のアルバムから選んだ“Out Of Nowhere”(“That Towering Feeling”から)、“I Cried For You”、“I Got It Bad”他があり、シングルから“The Night has A Thousand Eyes”なども含め全10曲になっています。
2Sings The Great Songs(英国CBS、カメオ・レーベル、32261)
コロンビア時代のシングル・ヒットにアルバムからの選曲で全16曲。最後の3曲は Young & Lively から選ばれました。1983年発売当時ヴィックのLPは新しい歌ばかりを録音しており、コロンビア盤もキャピトル盤も既に廃盤となっていたので求めた人も多かった事でしょう。
ハミングで始まるタイトル曲他、Change Partners、Stella By Starlight、Soft Lights And Sweet Music、When Lights Are Lowなど柔らかいながらもスウィング感を損なうことなく巧くこなし、ややジャジーなClose Your Eyes、Let’s Face The Music And Dance、In The Still Of The Nightなども美声を充分活かし、遅めのAfter The Lights Go Down Low、Deep Night、There! I’ve Said It Againでもジャジーなバックに綺麗に乗り、美しいけれどやや難しく滅多に聴かれないOne Loveも実に巧みにこなしました。
3作目はスウィング形式に戻ります。ビリー・メイとジャック・マーシャルが編曲を担当しヴィックが声高らかに歌いまくる楽しいアルバムです。Laura、Nina Never Knew、Rubyなどのロマンティックなスロー・バラッドあり、Cherokee、The Most Beautiful Girl In The World、I Want A Little Girl、The Lively Onesなどのストレート速球の歌ありで緩急自在、それらを見事に歌いきりました。Diane、Dearly Beloved、Little Girlなどもビッグ・バンドを従え気分良さそうに歌っています。冒頭のCharmaineではエレキギターが少し顔を出し驚かせました。スウィングでは控えめながらもきめ細やかなストリングズが配されています。ジャケットではヴィックと美女2人がアメリカ車に乗って楽しそうです。1962年頃の録音。写真2は1985年にイギリスEMIから出された再発物です。
<キャピトル時代>
My Baby Loves To Swing(ST-1811)
4作目もスウィング集でジャック・マーシャルが担当しています。冒頭はLinger A Whileの第一曲目と似た様な出だしですが、こちらはスウィングとスロー・バラッドに加えチャチャチャ調、ジャズ・ワルツ調、ボサ・ノヴァ調などと曲によってリズムに変化を持たせたヴァラエティに富んだアルバムです。明るくスウィンギーな曲が多くヴィック自身が楽しんだ様な作りになりました。I’m Nobody’s Baby、Everybody Loves My Baby、You Must Have Been A Beautiful Baby、Alright Okay, You Win、My Melancholy Baby、Let’s Sit This One Out、My Baby Loves To Swing、My Baby Just Cares For Me、Is You Is, Or Is You Ain’t、Baby, Baby All The Time、Make Me This A Slow Goodbyeの全12曲。1963年頃の録音です。
これはニュー・ヨークの有名なクラブ、ベイズン・ストリート・イーストでのライヴ盤でリラックスした雰囲気の下で声を張って歌っています。所々にライヴらしくアドリブが入りました。ジョー・パーネロの編曲指揮でスタンダードを中心に歌いましたが、あまり録音が良くないのでこのアルバムが一番だとのお薦めは出来かねます。ただショーにふさわしい作りを垣間見る事が出来、バラッドに始まっても末尾に近付くに連れ盛り上がり、結局スウィング調で終わるものが多く見られます。You And The Night And The Music、When Your Lover Has Gone、What Kind Of Fool Am I?、At Long Last Love、Fascinating Rhythm、Adios、I Left My heart In San Francisco、On The Street Where You Liveなど全12曲。録音は1963年頃。
<キャピトル時代>
On The Street Where You Live(ST-2133)
キャピトル最後のLPでスタジオに戻っての録音です。タイトルは彼の最大のヒット曲で、しかも最初に持って来ました。やはり持ち歌として巧く歌いましたが、編曲が変わると歌も変わり彼自身も歌いまわしに少し変化を付けています。ピート・キングの編曲であまり派手な色付けはありませんが、スローな歌ではさすがに伸びやかな美しい喉を存分に披露しました。I Am In LoveやI Could Write A Bookなどのスタンダードの他、ミュージカルや比較的新しい歌Tonight、Till There Was You、The Sound Of Musicも取り入れています。Mariaはコロンビア時代にシングル・ヒットさせた歌です。中にはジャジーな演奏もありますが全体にポピュラー色が強く一般受けを狙ったもので、ジャズが好きな人には少々物足りない事でしょう。1963〜4年頃の録音で、前作とはレコード通し番号の間が随分と広がりました。
昨年、アメリカでヴィック・ダモンの自伝がでました。
Singing Was The Easy Partというタイトルです。
除隊後に初めて雇ったピアニストがバート・バカラックだったり、二代目がジョン・ウィリアムスだったという話もでてきます。
大変読みやすいので、ファンの方は是非チャレンジしてみてください。