Brokenbeatsのシーンを引率する集団、Bugz in the atticは西ロンドンでハウスからドラムンベースまで全てをプロデュースをしてきたOrin Walters(Afonaught)によって結成された。 若手メンバーで24歳(当時、今は28歳)のPaul"Seiji"Dolby(またの名をOpaque、Homecookin')の最新作を聴いているみると『混合』という言葉が浮かんでくる。 彼が西ロンドンの自宅から電話越しに言う、 「西ロンドン系の音はとにかくフュージョン(融合)なんだ。別に俺達は一つの型にこだわってる訳じゃない。心配なのはみんながブロークンビートってタグが付いてる音楽を聴いて『そっか、これがブロークンビートって音なんだ』ってシーンを判断しちゃう事なんだ。俺達は同じ音楽を作ってる訳じゃないし、たとえ、同じ西ロンドンのプロデューサーでもみんな様々な違うスタイルがあってやってる事が違うんだ。俺はエレクトリックで、DOMUはテクニカルでドラムンベースみたいにハードだったり、Restless Soul(Phil Asher)みたいにソウルフルだったりするしさ。ホント、幅広く色んなスタイルがあるんだよ。」
ブロークンビートのムーブメントはIG CultureとDegoが始めたスタイルが中心になっている。DegoはSeijiがドラムンベースを作り始めた時のレーベル『Rainforced』のオーナーで、彼のもう一つのレーベル『2000Black』から最近リリースしたコンピレーション『Good Good Compilation』はこの手の音を紹介するに最適だったのではないだろうか。奇しくもちょうどこの頃、アメリカ・デトロイト出身のテクノプロデューサー・Carl Craigの有するレーベル『Planet E』から彼自身のフリージャズとテクノが融合したプロジェクト『Innerzone Orchestra』の輸入版が発売され、ブロークンビートスタイルがアメリカとリンクした。 広いシーンで考えると、西ロンドンのプロデューサー達のやっている事は、ドイツのTruby Trio, Jazzanova, Beanfield, Fauna Flashなどの他の『Compost』レーベルのアーティスト達や、日本のKyoto Jazz Massive、イタリアのVolcovらが始めたエレクトリックなジャズフュージョンとまったく違うわけではない。 「ブロークンビートってのは広い意味でのFuture Jazzの一種だよね。でもアシッドジャズと誤解しちゃいかんよ」と語るのは『XLR8R』というエレクトリックミュージック雑誌の編集人、Tomas Palermo。彼は地元(この記事でアメリカで書かれてます)でレーベル『Ubiquity Records』のJonah SharpやAndrew Jervisらと共にクラブ・Emotoでブロークンビートを毎月プレイしている。 サンフランシスコ生まれの『Ubiquity Records』はFuture Jazzを何年も支持しているレーベルで、Beatless (Alex AttiasとPaul Martin)等の西ロンドンのアーティストから、P'TaahとWamdue ProjectをやっているChris Brannアメリカ人も参加。 Chris Brannのアルバム『De'Compressed』はOpaque moniker名義のSeijiとNubian Mindsのブロークンビートリミックスも収録し、Sun RaやRahsaan Roland Kirk等の往年の前衛ジャズにも迫るスタイルで、ビートをひねってカットアップし、その音は昔のアシッドジャズのようなダンスフロアに優しい音ではなく、ほとんどの音はシンプルなファンクやジャズのフレーズをヒップホップのブレイクスのテンポに落とし込んである。
西ロンドンシーンの強力な『核』は共感するアーティストの密なネットワークとそれを支えるレーベル、『people』・Bugz in the atticの『Bitasweet』・IG Cultureの『Main Squeeze』・『Laws of Motion』、そしてクラブナイトでもある『CO-OP』で発展してきた。 「Bugz in the atticはみんなとやりとりしてるよ」こう語るのは111Minna Stでブロークンビートとフューチャージャズのイベントを毎月主催する『Ubiquity』のJervisだ。 「みんながお互いの生活を支え合ってるよ、確かにそういった輪の中でやりとりしてるのは効果あるよね」 様々なバックグラウンドを限りなく融合して行って《まぁ、トランスやメインストリームのゴミハウスは別として》それでいて、どのスタイルにも留まっていない。 Jervisが加える「つまんなくなったり、飽和したりして死んでいく代わりにメインのプロデューサー達は更に幅広いスタイルに発展させつづけてるよ。AfronaughtのアルバムはIG Cultureのアルバムとは違うサウンドだし、BeatlessのアルバムはtNeon Phusionのアルバムとはまったく違ったサウンドなんだ」