★つま恋紀行2006-vol.02★
＜takuro-2nd.stage／16:00〜17:30＞
まだ、ステージに照明は灯っていない。少しずつ西に傾き始めた陽射しの中、ファーストステージの“パジャマ”とは打って変わって、ブラックのドレスシャツにジーンズでシックにキメた拓郎登場。明らかにキース・リチャーズを意識した感じ。そう言えば、拓郎はそれがアコギでもエレキでも、やや低めのギターポジションや弾き方、大振り気味のストロークやステップの足運びまでもが、キースにそっくりなのだ。
--------------------
11）とんとご無沙汰／
「ロング・タイム・ノー・シー」から。アルバムタイトルを邦訳すればこの曲名となる。作詞は「淋しき街」と同じく阿木燿子。少々くどいが、ねえねえ、ほんとにやっちゃってない？と拓郎に確認したくなるほど、これも拓郎そのものといった佇まいの佳作。2番までしかない曲の短さも異例。後期拓郎では「君のスピードで」や「裏窓」とも肩を並べる名曲であると言えよう。
余談ではあるが、拓郎のアーティスト活動に於ける前期・中期・後期は“髪型”で考えれば分かりやすい。肩まで伸ばしたストレート時代が前期、ザンギリ頭時代が社長期、爆発したカーリーヘアー時代が中期、オデコ丸出しの短髪時代が後期、デアル。ご参考までに。ならねーか。
--------------------
12）全部抱きしめて／
番組絡みでKinki-Kidsが歌ってヒットした、今のところ、拓郎としては最も新しい商業的成功曲。 賛（＜）否両論渦巻くアルバム「ハワイアン・ラプソディ」には、これのトロピカル・バージョンが入ってたような気がするが、カラオケではキンキバージョンのが断然ノレる。ヒットメーカー康珍化のイイ歌詞、字余りソング的拓郎節炸裂のイイ曲。会場もドッと盛り上がるが、これは拓郎のほんのお遊び曲なのだ。そこんとこよろしく。
----------
演奏の途中、拓郎がスクリーンの中でニヤッと笑ったので、「？」と思うと間もなく、ステージに向かって左の方向から色とりどりの巨大な空気玉がいくつも観客の上を転がって来た。空気玉は皆に突っつかれ、ボヨヨ〜ンと弾み、途中で破裂したりして、その内みんなどこかへ消えて行った。どこ行ったんだろ。それにしても、これって拓郎の僕等へのサービス？
ところで、本日ライブはNHK衛生放送によって、最初から最後までリアルタイムでお茶の間に中継されているが、さーすが親方日の丸の局だけに、国技である相撲番組だけは外せないらしく、この後約1時間程の、テレビ中継されない時間帯に突入するらしい。
「まあ、これからしばらくはテレビに流れないんで、特別ここだけの色んな歌もやるし、色んな人も出てくるかも知んないよ」みたいな拓郎のMC。「懐かしいのやってみようか」
--------------------
13）野の仏／
アルバム「ライブ'73」から。岡本おさみ作詞の癒し系ソング。岡本氏と南こうせつが、田舎の池の畔で二人並んで釣り糸を垂れている場面が、いかにも牧歌的に歌われている。歌の中の南こうせつは始終笑顔を絶やさず、魚のアタリも気にしない、まるで太公望的な、悟り切った人間であるかのように描かれているが、歌い終わった拓郎は開口一番、「あのねー、はっきり言って南こうせつはこんなイイ感じの人ではないです。岡本さん、この唄あんまり良くないですよ」と、会場のどこかにいるらしい作詞者の岡本おさみに呼びかける。会場、どっと沸く。
--------------------
14）唇をかみしめて／
ご存じ、奥田民夫もリメイクした名曲中の名曲。元々は武田鉄矢の映画のテーマ曲として作られ、今回その姿を見ることは出来なかったが、拓郎と同郷で、中期のツアーには必須だったギタリスト、青山徹とのユニット“広島二人組”のクレジットで、アナログシングル片面仕様として発売された。丁度そのジャケットのように斜めからの陽射しが、金色にこの会場を照らしている。オリジナルよりも曲間にゆとりを持たせたアレンジが意表を突いて、心地よい。この曲を聴く度に拓郎の威に打たれるのは僕だけではあるまい。本当に、心底シビレル。拓郎はまだ本気でシャウトせず、抑え気味の歌唱ではあるが充分だ。青山徹が作った張り裂けるようなテーマソロが、時を隔てて僕の胸を衝く。テンション↑↑↑。で、チビチビ飲もうと思っていたビールを一気にあおってしまう。ハニーは隣で無邪気に腰を振っている。
---------
拓郎のMC。「一番楽しいのは、島村英二と飲み屋でチビチビやりながらそこにいない人の悪口を言ってる時だね」「でも、そうやってる内に友だちどんどん減っちゃうんだよ」「え？あの3人？…友だちじゃない！」
--------------------
15）友あり／
アルバム「デタント」から。ノスタルジックな曲調を持つミディアムナンバー。サビを聴いてようやく「ああ、これあったよなあ」という程度の、あまり印象にない曲である。「デタント」は拓郎が、中期のトレードマークであった爆発カーリーをばっさり切ってギバちゃんぽく短い前髪をちょっとだけ立てたヘアースタイルにサングラス、今で言う“ちょいワル親父”風ビジュアルでファンの度肝を抜いた、僕の分類によれば後期の始まりを告げる、ダンディズム漂う気力の充溢したアルバム。CD盤にはボーナストラックとして、これまた僕が勝手に90年代の「どうしてこんなに悲しいんだろう」として位置づける「裏窓」まで入っている（ちなみに80年代の「どうして〜」は、もちろん「街へ…」だ）。その中にあって、やや野暮ったい雰囲気のこのナンバーが霞むのはしかたないだろう。
---------
拓郎のMC。「考えてみれば、僕もキミたちもとてつもない数の誕生日迎えちゃったよね」「じゃ、誕生日の曲をやろう」
--------------------
16）いくつになってもハッピーバースディ／
僕的には未知のアルバム「こんにちわ」からのセレクト。この曲も初めて聴いた。タイトルだけは何となく知っていたが、食指がまったく動かなかったというのが正直なところ。今思い出そうとしても、メロディーも歌詞も何も覚えていない。忌野清志郎で言えば「パパの歌」を耳にした時のような脱力感があった気はするのだが…。今度アルバムを借りてチャンと聴いてみよう、と今は思ってはいるんだけどね。
----------
えーと「シンシア」を歌いたいんだけどこの人が欠かせない、との短い紹介の後、いきなりムッシュかまやつの登場。いきなりの大御所出現に客席は騒然とする。
去年の11月、大阪のとあるクラブでハニーと観たムッシュのライブは、それはそれはイカシていた。年若いハニーにも、そのカッコヨサは充分伝わったようだった。GS時代からの活動実績や音楽性も十二分に評価され、絶妙なバランス感覚で時代々々を渡り歩き、若い世代からも絶大なシンパシーを集めるムッシュの立ち位置は業界内でもベストポジションと言うに相応しい。
トレードマークのニット帽と、その左右からプードルの耳のように垂れ下がった金髪のロンゲ。ニヤッと笑う細い目としゃくれたアゴ、キレイな歯並び。ストーンズのベロマークがパッチワークされたヨレヨレのハーフコート。この曲は往年のアイドル南沙織ことシンシアに贈られたもので、一度テレビでこの曲を3人一緒に歌ったことがあるからだろう、拓郎が「南沙織にもここにいて欲しかったね」というと、ムッシュはすかさず「呼べば？」だって。「僕この人、大好きなんですよ」と拓郎。「僕もあなた好きよ」とムッシュ。何とサバケた、何とカッコイイ2人であることか。島村英二が繰り出す気持ちいいワルツのリズムに乗って、拓郎はハーモニカを吹き鳴らし、ムッシュはサイドギターを弾いて…るんだか、ないんだか、どうだか。
--------------------
17）シンシア／
アルバム「今はまだ人生を語らず」から。拓郎の楽曲の中では毒気のない作品と言えるだろう。ならではの過度な抑揚や重たいメロディーもないし、歌詞もさらりとスタイリッシュである。シングルカットもされ、そのジャケデザインもアメリカンコミックを思わせるポップなものであった。おそらく売る気満々だったのだろう。もちろん僕はこの曲が大好きではあるが、シングルB面で同じくムッシュとコラボしている岡本おさみ作詞のレアな旅の唄で、「落陽」との兄弟曲の如き佇まいの「竜飛崎」の方により惹かれる。ひょっとしたら「竜飛崎」も…という期待は外れたが、2人による次の曲のコラボには狂喜した。テンション↑↑↑。
--------------------
18）我が良き友よ／
拓郎が我が良き友に贈った渾身の名曲。結局ムッシュ最大のヒットとなる。ムッシュは自身のエッセイの中で一見、自分とは縁遠そうなこの演歌風ロッカバラッドが、かまやつひろしその人の佇まいや声質に似合うことをするどく見抜き、半ば強引にレコーディングさせた拓郎のプロデュース力には驚かされた、と記している。しかし、おかげでこの曲のヒット以降、エコール・ド・パリを目指す洒落男・ムッシュに、下駄や手ぬぐいといったバンカラなイメージが定着しまうこととなり、本人がそこからの脱出に数十年の時を要することになるのである。
しかしながら、ムッシュ本人としては、ライブで客からリクエストされても滅多に応じないと言われるこの曲を、作詞・作曲者の拓郎と、シンガーのムッシュという夢の大御所コラボで、野外で聴けるとは思いも拠らなかった。最高である。5番まである長いこの歌をムッシュと交代で歌い、時折2人でニカッと歯を見せて笑い合い、ムッシュが歌っている時にはその傍らで、本当にうれしくてしょうがないといった風情でギターを弾きまくる拓郎を見ていると、ちょっと感極まりジワッと来てしまう。テンション↑↑↑↑↑↑。ハニーも、お気に入りのムッシュの登場にニコニコである。
----------
歌い終わるとムッシュ、風のように退場。笑顔で見送るうれしそうな拓郎。おもむろにフォークギターを抱え直してマイクの前に立ち、弾き語りスタイルで歌い始める。大きな歓声。
--------------------
19）ファイト／
中島みゆきのアルバム「寒水魚」（だっけ？）から。特異な作品ながら広く知られ、槇原敬之や福山雅治、アマム＆マキなどのリメイクでも有名な、僕が言うところの中島みゆきによる“拓郎擬態曲”。印象的な歌詞である “戦うキミの歌を、戦わないヤツが笑うだろう”は、中島みゆきから、吉田拓郎への愛に満ちたオマージュに違いない。もともと中島みゆきが大の拓郎ファンだったことはよく知られているが、だって、最初に聴いた時からこれは明らかな拓郎節だったしねー。まあ、拓郎本人もまさに自分が作ったかのようなこの歌がお気に召したのか、90年代には自分のライブでカバーし、ライブビデオに収録までした。とは言っても、僕が想像していたほど、拓郎本人はこの歌が上手く歌えていない。どこかギコチないのだ。あれ？おかしいな。ぜったいみゆきより拓郎のがハマル、と確信していたのだが、やっぱ、飛び跳ねるようなリズムから始まり、抑揚に富んだ声質で、感情過多に歌い込まれるみゆきバージョンのが全然イイようだ。
さて、この曲は今回のライブでは、拓郎ひとりの弾き語りによって淡々と歌い始められ、途中から重厚感溢れるバッキングが加わり、ラストのリフレインにのせたコーラス軍団の盛り上がりはとどまるところを知らず、件の青山徹を追体験するかのようなリードギターのフレーズが鳴り響き、拓郎はキースばりのポーズを決め、指揮の瀬尾一三は踊り狂い、壮大なエンディングを迎える。
----------
そのままメンバーはソデへと引っ込み、チラホラと照明も灯り始める中、セカンドステージ終了。全9曲。
------------------------------
その後、40分という長めの休憩の後、バックバンド抜き・3人だけのオリジナルメンバーでかぐや姫が登場。涼しい風の吹く落日の風景の中、アンプラグドな演奏をしっとりと聴かせるのであるが、これも詳細は割愛。僕とハニーは、またしても水分排出と水分補給＆“煙”分補給のため、トイレやフードエリア、喫煙コーナーを渡り歩くのであった。
で、そろそろ拓郎のラストステージが始まるので席に戻ろうと歩いていると、でっかいビデオカメラを担いだスタッフが近付いてきて「すいませーん、NHKですが、今回のイベントの“若い世代の代表（！！）”として、向こうでお話伺わせていただきたいんですが。DVDにも写りますし…」「えっ…とー、僕ら、秘密の関係なんで、ゴメンナサイ」「…あ、そーですか、ハイ、分かりました」…てなことがあった。まあ、足をむき出したハニーと一緒だとこーゆーこともあらあな。でも、ちょいイイ気分でブロックに戻り、拓郎最後の登場を待つ。
（ウッディー／つま恋紀行2006-vol.03に続く）
next（to vol.3）
↓↓↓
http://
＜takuro-2nd.stage／16:00〜17:30＞
まだ、ステージに照明は灯っていない。少しずつ西に傾き始めた陽射しの中、ファーストステージの“パジャマ”とは打って変わって、ブラックのドレスシャツにジーンズでシックにキメた拓郎登場。明らかにキース・リチャーズを意識した感じ。そう言えば、拓郎はそれがアコギでもエレキでも、やや低めのギターポジションや弾き方、大振り気味のストロークやステップの足運びまでもが、キースにそっくりなのだ。
--------------------
11）とんとご無沙汰／
「ロング・タイム・ノー・シー」から。アルバムタイトルを邦訳すればこの曲名となる。作詞は「淋しき街」と同じく阿木燿子。少々くどいが、ねえねえ、ほんとにやっちゃってない？と拓郎に確認したくなるほど、これも拓郎そのものといった佇まいの佳作。2番までしかない曲の短さも異例。後期拓郎では「君のスピードで」や「裏窓」とも肩を並べる名曲であると言えよう。
余談ではあるが、拓郎のアーティスト活動に於ける前期・中期・後期は“髪型”で考えれば分かりやすい。肩まで伸ばしたストレート時代が前期、ザンギリ頭時代が社長期、爆発したカーリーヘアー時代が中期、オデコ丸出しの短髪時代が後期、デアル。ご参考までに。ならねーか。
--------------------
12）全部抱きしめて／
番組絡みでKinki-Kidsが歌ってヒットした、今のところ、拓郎としては最も新しい商業的成功曲。 賛（＜）否両論渦巻くアルバム「ハワイアン・ラプソディ」には、これのトロピカル・バージョンが入ってたような気がするが、カラオケではキンキバージョンのが断然ノレる。ヒットメーカー康珍化のイイ歌詞、字余りソング的拓郎節炸裂のイイ曲。会場もドッと盛り上がるが、これは拓郎のほんのお遊び曲なのだ。そこんとこよろしく。
----------
演奏の途中、拓郎がスクリーンの中でニヤッと笑ったので、「？」と思うと間もなく、ステージに向かって左の方向から色とりどりの巨大な空気玉がいくつも観客の上を転がって来た。空気玉は皆に突っつかれ、ボヨヨ〜ンと弾み、途中で破裂したりして、その内みんなどこかへ消えて行った。どこ行ったんだろ。それにしても、これって拓郎の僕等へのサービス？
ところで、本日ライブはNHK衛生放送によって、最初から最後までリアルタイムでお茶の間に中継されているが、さーすが親方日の丸の局だけに、国技である相撲番組だけは外せないらしく、この後約1時間程の、テレビ中継されない時間帯に突入するらしい。
「まあ、これからしばらくはテレビに流れないんで、特別ここだけの色んな歌もやるし、色んな人も出てくるかも知んないよ」みたいな拓郎のMC。「懐かしいのやってみようか」
--------------------
13）野の仏／
アルバム「ライブ'73」から。岡本おさみ作詞の癒し系ソング。岡本氏と南こうせつが、田舎の池の畔で二人並んで釣り糸を垂れている場面が、いかにも牧歌的に歌われている。歌の中の南こうせつは始終笑顔を絶やさず、魚のアタリも気にしない、まるで太公望的な、悟り切った人間であるかのように描かれているが、歌い終わった拓郎は開口一番、「あのねー、はっきり言って南こうせつはこんなイイ感じの人ではないです。岡本さん、この唄あんまり良くないですよ」と、会場のどこかにいるらしい作詞者の岡本おさみに呼びかける。会場、どっと沸く。
--------------------
14）唇をかみしめて／
ご存じ、奥田民夫もリメイクした名曲中の名曲。元々は武田鉄矢の映画のテーマ曲として作られ、今回その姿を見ることは出来なかったが、拓郎と同郷で、中期のツアーには必須だったギタリスト、青山徹とのユニット“広島二人組”のクレジットで、アナログシングル片面仕様として発売された。丁度そのジャケットのように斜めからの陽射しが、金色にこの会場を照らしている。オリジナルよりも曲間にゆとりを持たせたアレンジが意表を突いて、心地よい。この曲を聴く度に拓郎の威に打たれるのは僕だけではあるまい。本当に、心底シビレル。拓郎はまだ本気でシャウトせず、抑え気味の歌唱ではあるが充分だ。青山徹が作った張り裂けるようなテーマソロが、時を隔てて僕の胸を衝く。テンション↑↑↑。で、チビチビ飲もうと思っていたビールを一気にあおってしまう。ハニーは隣で無邪気に腰を振っている。
---------
拓郎のMC。「一番楽しいのは、島村英二と飲み屋でチビチビやりながらそこにいない人の悪口を言ってる時だね」「でも、そうやってる内に友だちどんどん減っちゃうんだよ」「え？あの3人？…友だちじゃない！」
--------------------
15）友あり／
アルバム「デタント」から。ノスタルジックな曲調を持つミディアムナンバー。サビを聴いてようやく「ああ、これあったよなあ」という程度の、あまり印象にない曲である。「デタント」は拓郎が、中期のトレードマークであった爆発カーリーをばっさり切ってギバちゃんぽく短い前髪をちょっとだけ立てたヘアースタイルにサングラス、今で言う“ちょいワル親父”風ビジュアルでファンの度肝を抜いた、僕の分類によれば後期の始まりを告げる、ダンディズム漂う気力の充溢したアルバム。CD盤にはボーナストラックとして、これまた僕が勝手に90年代の「どうしてこんなに悲しいんだろう」として位置づける「裏窓」まで入っている（ちなみに80年代の「どうして〜」は、もちろん「街へ…」だ）。その中にあって、やや野暮ったい雰囲気のこのナンバーが霞むのはしかたないだろう。
---------
拓郎のMC。「考えてみれば、僕もキミたちもとてつもない数の誕生日迎えちゃったよね」「じゃ、誕生日の曲をやろう」
--------------------
16）いくつになってもハッピーバースディ／
僕的には未知のアルバム「こんにちわ」からのセレクト。この曲も初めて聴いた。タイトルだけは何となく知っていたが、食指がまったく動かなかったというのが正直なところ。今思い出そうとしても、メロディーも歌詞も何も覚えていない。忌野清志郎で言えば「パパの歌」を耳にした時のような脱力感があった気はするのだが…。今度アルバムを借りてチャンと聴いてみよう、と今は思ってはいるんだけどね。
----------
えーと「シンシア」を歌いたいんだけどこの人が欠かせない、との短い紹介の後、いきなりムッシュかまやつの登場。いきなりの大御所出現に客席は騒然とする。
去年の11月、大阪のとあるクラブでハニーと観たムッシュのライブは、それはそれはイカシていた。年若いハニーにも、そのカッコヨサは充分伝わったようだった。GS時代からの活動実績や音楽性も十二分に評価され、絶妙なバランス感覚で時代々々を渡り歩き、若い世代からも絶大なシンパシーを集めるムッシュの立ち位置は業界内でもベストポジションと言うに相応しい。
トレードマークのニット帽と、その左右からプードルの耳のように垂れ下がった金髪のロンゲ。ニヤッと笑う細い目としゃくれたアゴ、キレイな歯並び。ストーンズのベロマークがパッチワークされたヨレヨレのハーフコート。この曲は往年のアイドル南沙織ことシンシアに贈られたもので、一度テレビでこの曲を3人一緒に歌ったことがあるからだろう、拓郎が「南沙織にもここにいて欲しかったね」というと、ムッシュはすかさず「呼べば？」だって。「僕この人、大好きなんですよ」と拓郎。「僕もあなた好きよ」とムッシュ。何とサバケた、何とカッコイイ2人であることか。島村英二が繰り出す気持ちいいワルツのリズムに乗って、拓郎はハーモニカを吹き鳴らし、ムッシュはサイドギターを弾いて…るんだか、ないんだか、どうだか。
--------------------
17）シンシア／
アルバム「今はまだ人生を語らず」から。拓郎の楽曲の中では毒気のない作品と言えるだろう。ならではの過度な抑揚や重たいメロディーもないし、歌詞もさらりとスタイリッシュである。シングルカットもされ、そのジャケデザインもアメリカンコミックを思わせるポップなものであった。おそらく売る気満々だったのだろう。もちろん僕はこの曲が大好きではあるが、シングルB面で同じくムッシュとコラボしている岡本おさみ作詞のレアな旅の唄で、「落陽」との兄弟曲の如き佇まいの「竜飛崎」の方により惹かれる。ひょっとしたら「竜飛崎」も…という期待は外れたが、2人による次の曲のコラボには狂喜した。テンション↑↑↑。
--------------------
18）我が良き友よ／
拓郎が我が良き友に贈った渾身の名曲。結局ムッシュ最大のヒットとなる。ムッシュは自身のエッセイの中で一見、自分とは縁遠そうなこの演歌風ロッカバラッドが、かまやつひろしその人の佇まいや声質に似合うことをするどく見抜き、半ば強引にレコーディングさせた拓郎のプロデュース力には驚かされた、と記している。しかし、おかげでこの曲のヒット以降、エコール・ド・パリを目指す洒落男・ムッシュに、下駄や手ぬぐいといったバンカラなイメージが定着しまうこととなり、本人がそこからの脱出に数十年の時を要することになるのである。
しかしながら、ムッシュ本人としては、ライブで客からリクエストされても滅多に応じないと言われるこの曲を、作詞・作曲者の拓郎と、シンガーのムッシュという夢の大御所コラボで、野外で聴けるとは思いも拠らなかった。最高である。5番まである長いこの歌をムッシュと交代で歌い、時折2人でニカッと歯を見せて笑い合い、ムッシュが歌っている時にはその傍らで、本当にうれしくてしょうがないといった風情でギターを弾きまくる拓郎を見ていると、ちょっと感極まりジワッと来てしまう。テンション↑↑↑↑↑↑。ハニーも、お気に入りのムッシュの登場にニコニコである。
----------
歌い終わるとムッシュ、風のように退場。笑顔で見送るうれしそうな拓郎。おもむろにフォークギターを抱え直してマイクの前に立ち、弾き語りスタイルで歌い始める。大きな歓声。
--------------------
19）ファイト／
中島みゆきのアルバム「寒水魚」（だっけ？）から。特異な作品ながら広く知られ、槇原敬之や福山雅治、アマム＆マキなどのリメイクでも有名な、僕が言うところの中島みゆきによる“拓郎擬態曲”。印象的な歌詞である “戦うキミの歌を、戦わないヤツが笑うだろう”は、中島みゆきから、吉田拓郎への愛に満ちたオマージュに違いない。もともと中島みゆきが大の拓郎ファンだったことはよく知られているが、だって、最初に聴いた時からこれは明らかな拓郎節だったしねー。まあ、拓郎本人もまさに自分が作ったかのようなこの歌がお気に召したのか、90年代には自分のライブでカバーし、ライブビデオに収録までした。とは言っても、僕が想像していたほど、拓郎本人はこの歌が上手く歌えていない。どこかギコチないのだ。あれ？おかしいな。ぜったいみゆきより拓郎のがハマル、と確信していたのだが、やっぱ、飛び跳ねるようなリズムから始まり、抑揚に富んだ声質で、感情過多に歌い込まれるみゆきバージョンのが全然イイようだ。
さて、この曲は今回のライブでは、拓郎ひとりの弾き語りによって淡々と歌い始められ、途中から重厚感溢れるバッキングが加わり、ラストのリフレインにのせたコーラス軍団の盛り上がりはとどまるところを知らず、件の青山徹を追体験するかのようなリードギターのフレーズが鳴り響き、拓郎はキースばりのポーズを決め、指揮の瀬尾一三は踊り狂い、壮大なエンディングを迎える。
----------
そのままメンバーはソデへと引っ込み、チラホラと照明も灯り始める中、セカンドステージ終了。全9曲。
------------------------------
その後、40分という長めの休憩の後、バックバンド抜き・3人だけのオリジナルメンバーでかぐや姫が登場。涼しい風の吹く落日の風景の中、アンプラグドな演奏をしっとりと聴かせるのであるが、これも詳細は割愛。僕とハニーは、またしても水分排出と水分補給＆“煙”分補給のため、トイレやフードエリア、喫煙コーナーを渡り歩くのであった。
で、そろそろ拓郎のラストステージが始まるので席に戻ろうと歩いていると、でっかいビデオカメラを担いだスタッフが近付いてきて「すいませーん、NHKですが、今回のイベントの“若い世代の代表（！！）”として、向こうでお話伺わせていただきたいんですが。DVDにも写りますし…」「えっ…とー、僕ら、秘密の関係なんで、ゴメンナサイ」「…あ、そーですか、ハイ、分かりました」…てなことがあった。まあ、足をむき出したハニーと一緒だとこーゆーこともあらあな。でも、ちょいイイ気分でブロックに戻り、拓郎最後の登場を待つ。
（ウッディー／つま恋紀行2006-vol.03に続く）
next（to vol.3）
↓↓↓
http://
|
|
|
|
|
|
|
|
コア・拓郎！ 更新情報
-
最新のアンケート
-
まだ何もありません
-
