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湯本高校野球部を追うコミュの意識改革

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 22日のことだ。湯本は千葉県柏市にある沼南高校に遠征した。沼南は去年の夏、千葉県大会の決勝で千葉経大付属に1−2で惜敗した県立高校。強風が吹き荒れるあいにくの天候だったが2試合を行い、0−5、3−6と二連敗を喫した。守備陣がボロボロで、好投の投手陣を見殺しにした。清水は「帰って練習をする」と言い、午後3時すぎには帰路についた。
 この日遠征したのは選手20人と女子マネージャー二人、そして監督である清水の計二十三人。残りの生徒たちは、相原と部長の高山とともに学校に残って練習をしていた。「帰って練習する」と聞いた相原は、居残りの選手たちにグラウンド整備を命じ、一列に並んでバスの到着を待った。
 午後五時半すぎ、遠征した選手たちが学校に着くと、グラウンドは鏡のように整備されていた。そして居残り組は遠征組に駆け寄り、「ごくろうさまでした」と心を込めて出迎えた。

 須賀川桐陽に2連勝したあと、湯本は学法福島、郡山商、光南、そして沼南に六連敗を喰らった。負けても淡々としていて、選手たちから悔しさが伝わってこない。相原にはそれが不満だった。「こいつらには意地とかプライドはないのか」と思った。
光南戦で二連敗したあとだった。相原は全員を集め「円陣を組め」と言った。情けない円陣だった。中心にいる相原は静かに1人ひとりの顔を見渡して、「みんなの顔が見えるように、すき間がないようにきれいな円をつくれ。甲子園に行くチームはすっと円陣が組めなきゃだめなんだ」と言った。そして、練習や試合を見て感じたことを言った。
「いいか、グラウンドは闘う場なんだ。一歩グラウンドに入ったら真剣に、しかも本気にならなければならない。全然声が出てないじゃないか。それじゃ、決勝に勝ち進んでも、ブラスバンドや応援の声にかき消されて、仲間への指示が届かないぞ。去年準決勝で郡山商に1−5で負けて流した涙はなんだったんだ。あれはポーズだったのか。男が涙を流すということはどういうことなのか、よく考えてみろ。負けて悔しかった?自分がふがいなかった?そう言うんだったら、これまでどれだけ必死に練習した?バットを振った?走り込んだ? 泣くんなら決勝で勝って、甲子園行きを決めてから泣け」

 相原は清水に「レギュラー組を安閑とさせてはいけない」と言った。ポジションを競わせ、練習試合では控え組にも機会を与えて、サバイバルレースを展開させる。そして結果が出ないものは落としていく。そうしながら厳しさを植え付け、本番に強い闘争心のある選手を増やしていく。それぞれが自覚を持って妥協せずに練習に取り組めなかったら、より高いレベルの野球はできない。そう思った。

 26日の東日本国際大昌平高校グラウンド。湯本は、甲子園常連の仙台育英との練習試合で9−1と快勝した。相手エースが投げなかったとはいえ、こちらもエース抜き。思いもかけなかった育英戦の勝利は、日々の練習で選手たちに気合いを入れ、鼓舞し続けたことに対する、ささやかなご褒美といえた。相原の地道な意識改革のための指導が、少しずつ実を結び始めた。

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