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小説を書いてみよう!コミュのどりーむ・くえすと

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8章からなる恋愛小説です。
主人公はタレント北野彩夏こと和気彩子。序章を読めばなんとなくわかると思います。
主人公の男性遍歴というか、なんと言うか・・・。シリーズモノの短編みたいなものとして昨年末に発表済みです。

ちょっと設定に無理のあるものが多々出てきますが、フィクションということでお許しください。また、実物の企業名も出てまいりますが、気にしないでくださいね^^;(怒られそうですが^^;)

書き方は日記調です。
これこそ趣味によって好き嫌いがあるものと思います。
その点ご了承ください。

コメント(18)

(1)序章 タレント北野彩夏

 私の芸名は北野彩夏。本名は源彩子って言う超古風な名前。私が言うのもなんだけど、元カリスマモデルで、今は超有名タレント。現在21歳。東大在学中。

 私は一度、事務所に作られたイメージに悩んでカリスマモデルって立場を捨ててある男性に飛び込んだ。彼の名前は和気泰明。当時私は20歳で、彼は26歳で駆け出しの代議士さんだった。

 カリスマモデルといわれる前から、お姉ちゃんの旦那様(当時官房長官公設秘書)の紹介で当時、彼が代議士秘書をしている時に知り合ったの。彼と付き合うようになってから有名になってしまって、カリスマモデルといわれる人たちと肩を並べるようなモデルになったの。

 でもそれと反比例してさらに事務所に作られた自分になっていく。それが耐えられなくなって、衆議院総選挙運動中の彼の事務所に泣きながら飛び込んだ。彼も与党選挙対策本部に女性関係はご法度といわれ、独身でクリーンなイメージでの選挙運動をしていたの。それなのに彼は選挙事務所の前で一目をわきまえずに私を抱きしめてくれた。周りのスタッフや党から派遣された選対スタッフは超驚いて、選挙運動がどうなるか心配だったらしいけれど、何とかギリギリ当選してくれた。

 彼が代議士になって彼に言われたの・・・。

「何で、作られた芸風で仕事せなあかんねん?辛いんやったら辞めたらええやん。彩子らしい北野彩夏でもいいんとちゃうの?それで世間に認められんかったら辞めたらいい。この俺が・・・彩子の面倒・・・見たるから・・・。」

ああ、いろいろな人と付き合ったことあるけど、こうして私のことを一番理解してくれた人って初めて・・・。そしてプロポーズまで・・・。私はとても嬉しかったの・・・。もちろんだいぶん先のことだろうけど、承諾したの。

 こそこそ彼と付き合って、そして彼のいうように徐々にだけど、華やかな芸風から、自分らしい清楚な芸風に変えていった。そしてモデルからタレントに転向。比例するように人気が出てしまって、CMに出ればその商品は大ヒット、番組に出ると視聴率はいい。ホント売れっ子になっちゃって、彼とすれ違いの毎日だった。

 ある日、私達の関係が彼の所属する与党の派閥内にばれちゃって、怒った彼の伯父さん(内閣官房副長官)がいきなり彼に某大手企業の令嬢と見合いをさせようとしたから、彼は焦って私に婚姻届と、婚約指輪をくれたの。私は悩んだんだけど、彼と別れるのが嫌だし、これからずっと寄り添っていこうと決意してたから、署名捺印して役所に提出したの。もちろん事務所や親に相当怒られたわ。でも何とかわかってくれて、スケジュールを消費次第引退することにしたの。

理由は学業優先として・・・。もちろんそれも一因があるし、私には夢があったの。それは女子アナ。今までの仕事はそれのステップだと思っていたから引退することに抵抗はなかった。彼は赤坂の議員宿舎から自宅の南麻布に、ますおさん状態でやってきた。まあ私の親のひとつの条件なんだけど・・・。いくら私が芸能界を引退したといっても、彼は代議士。そして彼と私のお付き合い自体、与党内やお母さん、そして親戚達、後援会の人達が反対しているから、入籍は公に秘密にしていた。

普通のお嬢さんだといいんだろうけれど、私はもう辞めたとはいえ、元タレント。そして一度だけど男性誌のちょっとエッチなグラビアをした事あるからってことも・・・。しょうがないわよね・・・クリーンなイメージが売りの代議士さんだから・・・。そして彼は未来の大臣クラスを約束されている政界のサラブレッド・・・。

彼はとても私の夢を応援してくれているの。私の夢はアナウンサー。もちろん履歴書を出さないといけないでしょ。自分に嘘つくのは嫌いだから、きちんと彼と結婚していることを書くことに決めたの。もちろん応募規定に独身に限るとは書いてないでしょ。だからだめもとで11社応募してみたの。

今は3年生なんだけど、年々人気のある職種は、いい人材を確保しておきたいのか、3年の秋くらいに就職試験が行われるの。だから私もそれに合わせて応募したの。すると半分の5社からの書類選考の返事・・・。2次試験に挑むわけ。キー局3社と関西ローカル2社。何とか関西1社の内々定。そして最終の取締役面接にキー局2社から返事が来たの。そして、面接後に2社とも内々定・・・。私の即戦力とキャリア(?)で是非来て欲しいと熱心さをアピールしてくれたF社と、普通の内々定の返事だけど、自宅から自転車で通えるA社。そして関西のA社。この3社いずれかに返事をしないといけない羽目に・・・。結局悩み悩んで私に来て欲しいと熱望していただいたF社にお世話になりますと返事をしたの。

彼はとても喜んでくれたの・・・。

ああこれでゆっくり学業に専念できるって思った途端、私はいまだ復活を願うファン達のおかげ(?)で、芸能界再デビューすることになっちゃった!!!!

わあ〜〜どうしよう!!と思う暇なくあれよあれよと決まるCM出演依頼、そしてキャンペーン参加依頼・・・。

またまた以前のような生活に戻ってしまいました・・・。

ああまたこそこそとした生活。

彼は私に気を使って、また議員宿舎に逆戻り・・・。せっかくの新婚生活がすれ違い別居生活よ・・・。

人気が再燃するにしたがって出るわ出るわ私の元彼たち・・・。中には元彼だったって自慢して売名行為する芸能人の馬鹿もいる。でもそういう人に限って元彼じゃなかったりするのよね・・・。

今回の再デビューのおかげか知らないけれど、元彼と偶然再会!って事が増えちゃって困っている。だってみんな私に同じことを言うのよ・・・。

『まだチャンスってあるよね・・・・。』

って・・・。

ないない・・・。

みんな私が結婚していることを知らないから勝手なことを言うのよね・・・。

馬鹿馬鹿しい・・・まあたいてい何とか理由をつけて諦めてもらうんだけどな・・・。

そして私にはすごい秘密があると巷ではささやかれている。嘘だと思うだろうけれど、今まで付き合った人みんな、自分の夢をかなえているのよね・・・。

だから夢を叶えたいという男が近づいてくる・・・。

無視無視!!!

きっと偶然だから・・・。
(2)初めての彼・白球の貴公子 上杉友哉

 ある日、私は某都内ホテルで行われるCMのイメージキャラ記者会見を終了後、ばったりある人と会った。それは初めて付き合った元彼、上杉友哉。彼は現在プロ野球選手。23歳。5年前、鳴り物入りで阪神に入団した彼。一時はすごく活躍して白球の貴公子とも言われた逸材だった。

今はというと、いい若手選手が増えてしまって、金銭トレードで西武に入団したと聞いた。その話で私が記者会見していたホテルに来ていたらしいの。

「彩ちゃんだよね・・・。久しぶり・・・。元気そうで嬉しいよ・・・。」
「友哉君・・・?」
「あ、これ俺の連絡先。話があるんだ・・・連絡くれるかな・・・。いつまでも待っているからね・・・。」

そういうと、私のコートのポケットにぐいっと携帯番号とメルアドが書かれた紙を入れて立ち去って行った・・・。

 上杉友哉と出会ったのはいつだったろう・・・。 そうそう・・・出会ったのは中1になってすぐのこと。 私はお父さんの赴任先イギリスから港町神戸に戻ってきたの。私はここで生まれたんだけど、お父さんの仕事の都合で国内だけではなく、韓国、インドネシアそしてイギリスと小学校時代を過ごしたの。そして神戸のちょっと有名な学園の中等部に編入したのよね。
 ある日私は学校の友人に連れられてあるグランドに行ったの。
「彩ちゃん、ごめんね付き合せちゃって・・・。お兄ちゃんがね、どうしても来て欲しいっていうから・・・。」
「ううん・・・いいよ。」
私はあまり野球には興味なかったんだけど・・・。試合が終わって、ある男の子が近づいてきたの。
「お兄ちゃん、お疲れ!!!」
その男の子はかぶっている帽子を脱ぎ、私に挨拶をするの。
「源彩子さんだよね・・・。」
「はい・・・。」
「僕は君と同じ学校の3年。上杉友哉って言います。今日はすみません・・・妹に頼んで呼んだのはこの僕なんだ・・・。」
このとき私は告白されたの。ずっと私を見ていたんだって・・・。親友のお兄ちゃんを振るなんて出来ないじゃない・・・。ま、いいかって感じで付き合うことに決めたの。
 彼はお父さんが元プロ野球選手。今はどこかの球団の職員をしていると聞いた。うちの学校には野球部がなかったから、地元のシニアリーグに在籍して活躍していた。家が近所だったから、毎朝一緒に登校して、帰り、彼は練習があるからって別行動。週末は彼の練習や試合を見に行ってた。付き合うっていっても友達の延長って感じで長々付き合った1年間。ついに別れる時がきたのよね・・・。
 彼はスポーツ推薦で高知の有名な高校へ進学する事が決まってね。卒業式の日に校舎の裏で初キス。
「彩ちゃん、遠距離恋愛になるけど、きっとこっちに帰ってくるから、待っていてくれる?」
「え?」
「必ず連絡するから。手紙も出すよ。だから待っていてくれる?」
私は何も言えなかったのよね・・・。
 彼は高知へ旅立ったの。はじめのうちは電話とかメールとか、手紙をやり取りしていたんだけど、彼が入学後すぐにレギュラーに選ばれてからやり取りがなくなってしまって自然消滅。3年連続甲子園に出場して、会う機会があったけれど、もうその時には別の彼がいたから会う気もしなかった・・・。あっちからも連絡なかったしね・・・。
 彼は高校ドラフトで阪神に鳴り物入りで入団。背も高くっていい顔していたから、高校時代からファンも多くて阪神入団後も白球の貴公子とかなんとか言われて騒がれてたわよ。私はなんとも思っていなかったから気にもしなかったけどね・・・。

 あれから何年も経ってこうして再会・・・。私は連絡先をもらったけれど、もちろん連絡を取らなかった。すると、私の公式ブログにメッセージが入ったのよね・・・。
『彩ちゃん、電話かかってくるのを待っていたんだよ。僕はずっと君とは別れていないと思っていたんだよ。別れの挨拶なんかしてないじゃないか・・・。君と会いたいんだ・・・。今まで大阪にいたからなかなか会えなかったけれど、僕は所沢にいるから、これからいつでも会えるよね・・・。未だに僕は君の事が好きなんだよ。決して君のことを忘れたことないんだから・・・。連絡待っているよ。  上杉友哉』
私はフリーメールを使って返事を出した。
『ごめんなさい。私には大切な人がいるから・・・。 彩子』
もちろんしつこくメールされるのが嫌だから速攻そのメールアドレスは解約。その数時間後、私の携帯に電話があったの。誰に聞いたんだろう。ちょうど私は旦那様の議員宿舎にこっそりいたのよね・・・。旦那様はちょうどいなかったのよ。 何度も何度もかかってくるからきちんと言ったの。
「もうかけないでくれる?迷惑なの・・・。私には心に決めた人がいるし、今その彼の家にいるから・・・。だからもうかけないで・・・。」
『でもさ。彩ちゃん・・・。』
私は電話を切ったの。もうそれっきりかかってくることはなかったけれど・・・。
 私がアナウンサーになってスポーツ担当になったらまた会う機会があるんだろうな・・・。ちょっと億劫だけど、今は大切な旦那様がいるから、しょうがないよね。
(3)4番目の彼、驚きの再会・二階堂正輝

 ある日、私は旦那様が暮らす議員宿舎にいた。別に用事はなかったんだけど、なんとなく会いたくなってタクシー飛ばしてやってきたの。ここの宿舎は地下駐車場ってモノがあるからいいよね・・・。いつもここへ来る時はタクシーを地下駐車場の出入り口まで入れてもらってそのままエレベーターで旦那様の住む10階まで誰にも会わずにいけるって訳。プライバシー守られているからいいわ。普通なら警備員に止められるかも知れないけど、旦那様が何とかしてくれているんだと思う。この10階は同じ与党代議士さんで、旦那様と仲のいい人ばかりだから、みんな私と旦那様の関係を知っているのよね。だから私は赤坂議員宿舎の中に入って10階までたどり着くと安心。
 合鍵を使って中に入るの。今日は旦那様がお休みだから、朝に来たのよ。旦那様を起こして一緒にブランチ。旦那様はおいしいおいしいって食べてくれる。これが私の唯一の安らぎかもしれない。
 すると昼過ぎにお客様。私は出る事が出来ないでしょ。だから旦那様が出たの。

「和気、例のものを・・・。」
「あ、ありがとう。まあ上がれよ。お茶でも飲んでけ。」
するとスーツ姿の荷物をいっぱいかかえた男の人が入ってきた。
「二階堂、今日はうちの嫁さん来てるんや。前言ったやろ、入籍したって・・・。」

その男は荷物を旦那様の執務室においてこっちに戻ってきた。ああ、なんかみたことある顔・・・。

「彩子、この人はね、俺の中学からの友人で、地元で秘書をしてくれているんや。今臨時国会で忙しいからな、手伝いに来てもらってるんやで。名前は二階堂正輝。これからいろいろ世話になる事があると思うからよう覚えとき。」

 やっぱりこの人って私が高校1年の夏から2年半付き合ってた人だわ・・・。もちろん彼は私の顔を見るなり驚いて固まっていた。

「始めまして奥様。二階堂と申します。和気からいろいろ惚気話を聞いていますよ。よろしく。」

彼は初対面のふりをして私に挨拶をしてきた。もちろん私も同じように初対面のふりをしてご挨拶。

 ああなんで最近立て続けに元彼に会ってしまうんだろう・・・。それもこの人、旦那様の私設秘書でしょ。旦那様が議員を辞めない限りそして彼が秘書を辞めない限り雇い主の妻として付き合わないといけないんだよね・・・。

 実はこの人、私のはじめての人なの。それまではキス以外をしていなかった。4番目の6歳年上の元彼氏。本気で付き合った人。
 出会いは高1の春。私は大阪にある予備校に通っていたの。そこでチューターって言う予備校生の相談にのったり雑用をしたりするバイトをしていた彼。そして私のクラス「東大、京大、阪大クラス」の担当だったの。いろいろ相談しているうちに仲良くなってしまって、夏休みの大阪でも有名な平成淀川花火大会。一緒にいく約束をしたの。私はとびっきりの浴衣を着て、うっすら化粧。待ち合わせの阪急十三駅で彼に会い、迷子にならないように手をつないで会場へ・・・。きれいな花火を眺めながら、時折彼と目が合ったりなんかして・・・。花火が終わった帰り道、彼が話があるって言うから横道にそれて話をしたの。

「え?二階堂さん、予備校辞めちゃうの?」
「ああ、4年なのにまだ就職決まってないし、大学院にでも行こうと思っているからね・・・。勉強しないと・・・。」
「やだよ・・・。さみしいな・・・。」

彼は私をぎゅっと抱きしめて、キスを・・・。

「源さん、いや彩ちゃん。この俺でよければ付き合ってくれないかな・・・。彩ちゃんの側にいたいんだ・・・。」

私は彼が大好きだったから、うなずいて付き合うことになったの。
 当時彼は大学近くで一人暮らし・・・。京都から通える距離だったけれど、朝起きるのが苦手らしくって一人暮らししていたらしいの。週末は彼の部屋に行って、勉強をみてくれていたの。そして付き合って初めてのクリスマスイブ・・・。デートのあと、彼の部屋でひとつのケーキをつついて食べていた。彼は私の唇についたケーキの生クリームをなめたのよ。そしてそのまま私をそっと押し倒して、キスを・・・・。

「二階堂さん???」
「彩ちゃん、どういうことかわかるよね・・・。もう付き合って4ヶ月だし・・・。」

私は黙ったまま、彼を初めて受け入れたの・・・。これが私の初体験。私はそのあと泣いてしまって、彼はそのままの姿で私を抱きしめて何度も謝ってくれたの。

「ごめんな・・・。半分無理やりみたいなものだったな・・・。」
「ううん・・・いい・・。だって6歳も年上の二階堂さんとつきあっているんだもん。こういうのは当たり前だよね・・・。」
「家まで送るよ・・・。次はいつ会える?」
「・・・。」

私はそれ以上何も言わなかったの。彼は車で神戸の実家まで送ってくれた・・・。
 なんだかんだ言って3年近く付き合って、彼が大学院卒業、私が高校卒業と同時に別れてしまったの。まあ理由は私が東大に合格して、遠距離恋愛になってしまったことと、彼は結局就職が決まらないで、京都の実家に戻ってしまったから。
 ホントいがみ合った別れじゃなかったのよね・・・。嫌な思い出のなかった唯一の元彼・・・。もし旦那様より先に再会していたら、この人と結婚していたかもしれない。それほど好きな人だったのよね・・・。

 旦那様は所用で家を出たの。私は彼と2人きりになった。

「彩ちゃん、元気だった?」
「うん・・・二階堂さんは?」
「元気だったよ。彩ちゃんが和気の奥さんだったなんて・・・。」
「私だって和気さんの私設秘書が二階堂さんだったなんて・・・。」
「不思議な縁だね・・・。俺のこと忘れたかなって思ったよ・・・。」
「忘れるわけないよ・・・。私の初めての人なんだもん。一番長く付き合った人なんだし・・・。」
「でももう俺のことなんとも思っていないんだろ?」
「そんなことないよ。私にとって二番目に大切な人だよ。」
「一番目は和気ってことか・・・。」
「うん・・・。」
「じゃあ俺、彩ちゃんをキャンセル待ちしていいかな?」

彼の言葉に一瞬ドキッとしたんだけど、今は旦那様が一番好き・・・。一番大事。

「もうキャンセルできないの。和気さんと彩子は・・・。だからキャンセル待ちは受け付けてないんだよ。」

私は苦笑して彼を見つめたの・・・。

「キャンセル待ち不可か・・・残念だな・・・。」

それ以上の話はしなかったの。もちろん私たちの仲が戻るわけないの。
でもいい思い出だった・・・ありがとう二階堂さん。
これからも私の旦那様をよろしくね。
(4)2番目の彼、白馬の王子様・竹下悠
 年明け早々、私は京都競馬場にいる。もちろん仕事よ。今年1年のJRAのイメージキャラの1人になったもんだから、今年初の京都金杯というレースの表彰式に出ることになっているの。表彰式はメインレースのあとだから、お昼に会場入りして、振袖に着替えて控え室に待っているのよね・・・。

 今日私が京都競馬場に来ていることを知っているファンが詰め掛けているらしいわ・・・。競馬はあまり興味はないんだけど、アナウンサーになったらこういう関係のお仕事もするかもしれないでしょ。これもひとつの勉強かな・・・・。

レース内容が書かれたものをペラペラめくる。そしてある名前に目が行くの。

『竹下 悠』

若手トップジョッキーで、22歳のイケメン。第二の武豊なんて言われ、女性ファンも多い。そして彼は私の2番目の元彼だったりする。

 彼と出会った(つきあった)のは中学2年の夏。悠君は同じ学校のひとつ年上で、関西で有名な乗馬クラブの次男。はじめの印象はああ小さな先輩・・・。私の身長は165センチだから、私よりも5センチ低い160センチ。乗馬部の部長さんで、いろいろな賞をもらっていた。それなのになぜか希望進路はJRAの競馬学校騎手課程。

悠君は毎日私を校門で待ち伏せて、しつこいくらい付き合おう付き合おうって言うから、しょうがなく付き合った感じの彼。顔がよくって、乗馬している姿はまるで王子様のようで、結構女の子たちには人気があったんだけど・・・。馬から下りるとホントに小さくてイメージが・・・。手をつないでデートしたくらいの関係・・・。でもなんだかんだ言って悠君が競馬学校に入学するまで一緒にいたかな・・・。遠距離恋愛が嫌で別れたんだけど・・・・。
 まったく知らなかったんだけど、旦那様である和気さんのお父さんって馬主さんやってるのね・・・。(すごいお金持ちなんだあ・・・関西で一番の医者一家だから?)

 今日のメインレースの一番人気。冠名は『ワケノ』。ゼッケンナンバー7番ワケノカミカゼ・・・。鞍上は竹下悠。パドックの映像に和気さんのお父さんがいて驚いちゃった・・・。すごくきれいな芦毛の馬。和気さんちの勝負服を着た悠君が入ってきて、ワケノカミカゼに騎乗する。



話によると悠君は旦那様のお父さんのお気に入りらしくって、ほとんどの持ち馬に乗せているらしい。去年の2歳の牝馬G?レースにも出走して見事無敗優勝。今年のクラシックレースの注目馬に挙がっているワケノヒメギミ。もちろん鞍上は悠君で、お父さんの馬。悠君のG?勝ち鞍数のほとんどはお父さんの馬らしいの。へ〜〜〜。

 レースが始まって、やっぱり断トツ人気のワケノカミカゼがレースを引っ張って敵無しって感じの6馬身差の圧勝・・・。そして私はそろそろ準備をする。そこで旦那様のお父さんと久しぶりに会った。お父さんはジャケットに馬主のリボンをつけてもらっていた。もちろんお互い声をかけることが出来ないので、目で挨拶。もちろん悠君は私の姿を見て何か言いたげな顔・・・。

表彰式が始まる。私は馬主、騎手、厩務員、調教師などの人に花束を渡す役目。放送で私の名前を呼ばれると、場内は大歓声ですごい数のフラッシュ。私は馬主の和気さんのお父さんから順番に花束を渡していった。お父さんは私に微笑んでくれた。もちろん私はお父さんのお気に入りだし・・・。(唯一ご家族の中で理解してくださっているの・・・。)そして騎手の悠君に渡す。

悠君は私に向かって何か言ったの。歓声で聞こえなかったけれど確かに口の動きからして・・・。

『この後会えるかな・・・。』

私は聞こえていないふりをして知らん振りしたけれど・・・。表彰式のあと、ワケノカミカゼと共にみんなで記念撮影・・・。このあとの最終レースに騎乗しない悠君まで入って、それも私の横に立つ。そして私の顔を見て満面の笑みで見つめるの・・・。

記念撮影が終わる。今日は旦那様と会うことになっている。ホントに嬉しい・・・。
「お疲れ様でした。」

 そういうと私は控え室で着替えて北野彩夏から和気彩子に戻る。旦那さまは二階堂さんの運転する車で京都競馬場の関係者駐車場で待ち合わせをしているの。旦那様はわざわざ地元で会合があったのにも関わらず、ここまで迎えに来てくれた。(運転しているのは二階堂さんだけど・・・。)もう出るよって電話していたからか、出口に横付けしてくれていて、二階堂さんが私のためにドアを開けてくれた。ドアの奥には旦那様の微笑んだ顔が見える。

「彩ちゃん!」

車に乗り込もうとする私を呼び止める声。もちろんドアを開けている二階堂さんや車の運転席後ろに座っている旦那様はその声の主のほうを見るの。声の主は竹下悠。急いで私を追ってきたのか、息を切らしながら、私の前に立つ。そして息を整えると、この私に言うの。

「彩ちゃん、こっちにいつまでいるの?明日にでも会える?もしだめなら、僕が関東遠征のときに会えるかな・・・。」

旦那様は身を乗り出して私の手を引き、車に乗せる。二階堂さんは車のドアを閉め、運転席に座る。

「二階堂、行ってくれ・・・。」
「はい・・・。」

車が静かに走り出す。悠君は唖然として旦那様の車を見つめていたの。旦那様は不機嫌な顔で何も言わないまま京都方面に向かう。

「どこに行くの?」
「父さん主催の祝勝会・・・。ま、馬関係の新年会も兼ねているけど・・・。」
「そう・・・。この格好でいいのかな・・・。」
「いいんじゃない?公式じゃないからね・・・。ま、母さんは来てないから安心して。」

旦那様は会場に着くまで何にもしゃべらなかった・・・。待ち合わせの時間までちょっと時間をつぶしたりなんかした。
会場は京都市内の某料亭・・・。お座敷に通されると、20人くらいのお客さん。さっき会った調教師さんや、厩務員、調教助手、そして・・・。私は悠君と目が合う。旦那様は私と悠君の目が合ったことに気がついたのか、私を引き寄せて肩を抱くの。

「おお、泰明、遅いぞ!さ、座りなさい。彩子さんも・・・。」

お父さんはもうすでにお酒が入っているのか、ご機嫌な様子。旦那様は立ち上がると、名刺を取り出し、一人一人に挨拶をしていく。そして最後に悠君のところへ・・・。

「はじめまして、私は衆議院議員の和気泰明です。いつも父の馬に乗ってくれて・・・大活躍らしいね・・・。」
「はじめまして、竹下悠です・・・。」
「私の妻とお友達みたいだね・・・。」
「え?」

旦那様は立ち上がって祐君の側を離れると、私の隣に座りなおす。和気さんのお父さんは私を紹介するの。

「この子はね、うちの次男の嫁なんですよ。まだ公にしていないから、ここだけの話ですよ。ま、今日ご覧のとおり、北野彩夏としてがんばっているんだけど。」

招待客はみんな驚いていたんだけど、悠君以外はみんな私たちを祝福してくれた。悠君は不機嫌そうな顔をして黙々と食べている。相変わらず、旦那様は悠君をにらみつけたりなんかして・・・。

帰りの車の中で、旦那様は私にこう言ったの。

「あの竹下悠って言う騎手、彩子の何?普通の友達じゃなさそうだけど・・・。」

私は旦那様の顔を見ながら、考え込んだ。

「あのね和気さん、あの人は私の中学の一年先輩で・・・・。あのその・・・。」
「付き合っていたってこと?西武の上杉みたいに?」
「うん、2番目の元彼・・・。今日久しぶりに会ったの・・・・。ほんとよ・・・。」
「そう・・・あと何人元彼が出てくるんや?」
「・・・。」

旦那様は上杉君のことも知ってたんだ・・・。私は黙り込んでしまった。ホントになんとも思っていないし・・・。あっちが勝手に想っているだけ・・・。ホントに辛い・・・。4人目の元彼二階堂さんが目の前にいるし、今の旦那様の和気さんがいるんだもん。

「和気、やめとけ。奥さんがかわいそうやろ。聞かれたくないこと聞くな。お前はそんな嫉妬深いやつやとは思わんかった。」
「別に嫉妬深いわけじゃない。気になるだけや。特に彩子の初めてのやつはどんなやつやったか・・・。」

私と二階堂さんは一瞬焦ってしまったの。私の初体験の相手はここにいる二階堂さんな訳で・・・。
ホント重苦しい車内だった・・・。
ああ誰か助けて・・・。
ホント去年から今年にかけて厄年かしら・・・。
それとも大殺界?
(5)新人賞総ナメ!お笑いタレント・徳島拓斗

 前日、2番目の元彼、JRA若手トップジョッキー竹下悠と7年ぶりの再会をして、旦那様はとても機嫌が悪い。ホント去年の12月から私は元彼に出会ってしまう。はじめは一人目の元彼、現在プロ野球選手の上杉さんから始まり4番目の彼だった現在旦那さまの私設秘書をしている二階堂さん。そして昨日の悠君・・・。このままだったら3人目、5人目、6人目まで出てきてしまう。和気さんは7人目の彼・・・そして旦那様・・・。

今日はMBSラジオで深夜番組の収録。私は大阪梅田にマネージャーと集合して、梅田茶屋町にあるMBSへ・・・。ああここって私が入社試験受けたところよね・・・。結局最終選考で落とされたけれど・・・。

まず収録前に打ち合わせ。MCのタレントさんと、台本見ながら流れを確認していく。実は初めてのラジオ出演なんだよね・・・。打ち合わせをしていると、あるゲストが遅れて入ってくる。

「すんません!前の営業が押してしまって・・・。」
「遅い!あれ?片割れは?」
「まだ移動中なんで、本番までには・・・。」

私は声のするほうを振り返ったの。なんとそこにいるのは3番目の元彼、徳島君。

「あ〜〜〜彩ちゃんやろ?覚えてる?俺のこと。高1の時つきあっとった徳島拓斗や。」

そう、私はこの男と付き合っていたというか・・・。強引に連れまわされてたというほうが近いかも・・・。

出会いは予備校通いの電車の中。初めて予備校に通う時に阪神電車の中で痴漢にあってこの徳島拓斗が助けてくれた。そして彼も同じ予備校。クラスは違ったけれど、その事が縁で付き合い始めたって言うか・・・。まあ強引って言うか・・・。

「助けてやったんやから付き合え!」とか言ってね・・・。

かっこよくて面白かったって言う印象しかない。夢は吉本に入るって言ってたな・・・。

付き合ったのは二階堂さんと付き合う直前までで、やはり強引さにつかれたって言うか、束縛がひどくって・・・逃げたって言うか・・・。あまり良い印象がないこの男は・・・。
打ち合わせが終わって、収録前の休憩。拓斗くんは私にコーヒーを買ってきてくれて、昔の話をする。

「ほんま、北野彩夏が売れ出した時はびっくりしたわあ・・・。あ、彩ちゃんって思って・・・。」
「そう・・・。」
「あの時はごめんな・・・。いろいろ迷惑かけて・・・。あの頃は若かったからな・・・。彩ちゃんがほかの男としゃべったりしてるのが許せんかったんや。独り占めしたかったって言うのかな・・・。ホンマ短い4ヶ月やったけど、たのしかったんやで・・・。」
風の噂で、拓斗くんは関西大学に受かってすぐに吉本の養成所に入ってデビューして、去年の漫才の新人部門を総ナメにした、「ブラックボックス」っていう漫才コンビの片割れ。イケメンとブサイク男が面白い漫才をするってことで人気があるんだって・・・。

「ホンマなん。新しい彼は代議士やって?もしガセやったら、この俺ともう一度付き合わんかな・・・。」

そういえば、年末に一部スポーツ誌に旦那様が私を家まで送ってくれた時、車に乗った私達を激写されてしまって、「北野彩夏の新恋人は代議士W氏」と書かれたのよね・・・。事務所が何とかして立ち消えになったんだけど・・・。

「ガセじゃないよ・・・。ホントなの・・・。」
「そうか・・・。幸せか?」
「うん・・・。」
「ところでどこの局に内定もらった?」
「Fだよ。」
「じゃ、また会えるかも知れんな。春から俺、東京進出で、F中心でレギュラー番組もらったから・・・。」
「そう・・・。」

拓斗くんは私の手を握り締めていうの。

「ホンマ友達からでいいんや。お願いやから、やり直してくれへんかな・・・。まだ彩ちゃんが大好きなんや・・・・。」
「友達ならいいけど、それ以上は絶対無理だから・・・。ごめんね・・・。」
「そうだよな・・・。今いい人いるんだもんな・・・。いいよ友達で。メルアド教えてよ・・・。」
「彼に怒られるから教えないよ。ブログのほうに遊びに来てよ・・・。」

私たちは何もなかったようにラジオ番組を収録した。そして手を振って別れる・・・。

7年も経つと人格変わったね・・・。結構芸人になるのに苦労したのかな・・・・。
これからも大活躍するのを見守っています。
(6)5人目の男、六本木ヒルズの住人・IT社長 高島巧

「ねえ、彩夏ちゃん、お願いがあるんだけど・・・。」

ってモデル友達の凛ちゃんに声をかけられた。

「何々???」

まあこの子のお願いって大体いつも同じ・・・。

「あのね、彼氏が新年パーティーをするんだけど、女の子の人数が足りないんだ。来てくれないかな。」

やっぱりね・・・。この子はいつも私にお願いするのは合コンかパーティーの人数合わせ。まだ私はモデル仲間にさえ結婚していることを報告していないから、(だって誰からバレるかわからないよね・・・芸能界ってそんなところよ・・・。)気軽にお願いされる。

「彩夏ちゃんが来てくれるとみんな喜ぶのよ。だからお願い・・・。彼氏いるのは知ってるわよ。」

知っているのなら誘わないで欲しいわよ。きっと旦那様は行っちゃだめって言うんだろうな・・・。

「凛ちゃん。返事ちょっと待ってくれる?」
「どれくらい?明日の夜なのよ。」
「え〜〜〜〜!!」

私はすぐ旦那様にメールを入れたの。今は通常国会前の準備で忙しいからきっと返事は遅くなるんだろうな・・・。するとすぐに返事が返ってくる。

『行けば?明日は丁度党の新年会が入っているからね・・・。時間と場所教えてくれる?出来るだけ早く帰って来いよ。ちょっと心配・・・。』
『お言葉に甘えて行ってきます。場所は六本木ヒルズ。時間は18時からなの。終わったら電話するから、迎えに来てくれると嬉しいな・・・。でないと誰かに送ってもらうかもよ^^』

なんてちょっとからかってみた。やっぱり焦ったようにすぐに返事がくるんだ。わかったわかったって・・・。一度二人の仲を書かれたことあるし、結婚さえばれなかったらいいかなって思ったの・・・。ああ、また会いたい病が・・・。

 次の日私はお気に入りのパーティードレスを着て、凛ちゃんと待ち合わせして六本木ヒルズへ・・・。凛ちゃんの彼氏は今ときめくIT企業の社長さん。それも大手の・・・。今日のパーティーはIT企業の社長さんの集まりらしくって、総勢10人強。見たことあるIT企業の社長さんばかり。中にはもちろん既婚者もいるのよね・・・。女の子たちは皆モデルとか芸能人の女の子ばっかり。それも皆華やか系の・・・。

「貴史さん、彩夏ちゃん連れてきたよ。」

すると凛ちゃんの彼氏が私を迎えてくれた。凛ちゃんは彼氏の腕に手を通し、パーティーが行われているリビングへ・・・。こういうパーティーは初めてじゃないけどね・・・。IT社長ってどうしてタレント好きなんだろう。
 参加者最後の私がリビングに入ると、いろいろな社長さんが名刺片手に挨拶に来るの。

「北野さん、やっぱり可愛いなあ・・・。」
「今度俺のポルシェでデートしない?」
「おいしいレストラン見つけたんだけど、今度食事しない?」

ああいつものように・・・これをあしらうのは面倒なのよね・・・。するとぽつんと窓の外を見つめている男の人・・・。私はその人を見つめる。

(何であの人一人なのかな・・・。)

「どうしたの?彩夏ちゃん。あ、あの人?あの人最近伸びてきた会社の社長さんよ。独自のシステムを開発してね、近いうちに株式上場するって聞いたけど?確か高島巧さん。」

(高島巧???)

凛ちゃんは高島巧の手を引いてこっちに連れてくる。

「高島さん、この子、北野彩夏ちゃんよ。今をときめくCMタレントの・・・。」
「知ってるよ・・・。俺のモトカノだから・・・。」

一同は高島さんの発言に驚く。

 そうこの人は私の5人目の元彼。東大の先輩で、3歳年上。東大在学中にIT関連の会社を興して5年目かな・・・。24歳の若きIT社長ってことね・・・。1年の時に声をかけられて、なんとなく付き合っていた人。結局半年で彼が浮気してこっちから振ってやったのよ。

何かにつけて嘘ばっかりの人で、うんざり・・・。何度デートをすっぽかされたことか・・・。信用できないわよこの人は・・・。それでよく会社の社長をしているわよね・・・。ま、私と付き合うようになってから、会社が上手くいったのは確かで、上手くいったからこそ、浮気をするようになったのよね。嘘をつくようになったのもその頃からかな・・・。

パーティー中、彼はいろいろな社長さんと話をしていたのよね。そして時折私を見て微笑む。私は別に人数あわせに来ただけだから、つまんなくって、これなら参加しなかったほうがよかったかなって・・・。旦那様と食事に行ったほうがましだったかな・・・。党の新年会は夕方までだから、きっともう帰っているよね・・・。相当飲んでいるのかな・・・。迎えに来てっていわなかったらよかったかな・・・。六本木ヒルズからタクシー拾って帰っても家までそんなにかからないしね・・・。

すると私の側に彼がやってきてそっと肩を抱くの。

「彩ちゃん、なんだかつまんなそうだね。よかったらうちに来て飲みなおさない?うちはこの部屋の下だから・・・。いいだろ。」

私は彼の手を降りはらって言ったの。

「いかない。」
「まだ怒ってるの?もう過去のことじゃないか・・・。」
「あんたみたいな最低な男!」

すると無理やり抱きしめられてディープキス!!!私は思いっきり彼をひっぱたいたわ。

「何するの!!!」
「いいじゃないか、減るものじゃあるまいし・・・。ホント以前よりもきれいになって、惚れ直したんだよ。その気が強いところも好きなんだよね・・・。」
「私帰る!」

私は彼を突き飛ばして玄関へ・・・。

「例の男のところへ行くの?代議士かなんか知らないけどさ、あんなさえない男・・・。彩ちゃんには似合わないよ。」

私が一番腹立つこといったわね!旦那様の悪口言われる事が一番腹が立つ!!!

「和気さんはね、さえない男なんかじゃないの!!やさしいし、誠実で、嘘なんかつかない!めがねかけているからさえない様に見えるけど、取ったら結構いい男よ!!あんたなんて最低!裏では悪いことやっているくせに!」

そうよ私知っているんだから。最近開発したといわれるシステムだって、お金で買ったものなんだから・・・。裏では詐欺まがいのこともしているって噂よ。
 私はコートを着てそのまま帰ることにしたの。そして私は旦那様に連絡を入れようとしたんだけど、マンションの玄関口に旦那様が立っていたの。こんな寒い日なのに・・・。

ホント旦那様はめがねを取ると別人。知らない人が見ると代議士和気泰明だってわからないんだから・・・。

「和気さん!!!」

私は旦那様の胸に飛び込んだ。すると追いかけてきた彼と旦那様は鉢合わせ。 数分の沈黙が続いたあと、旦那様が話したの。

「君は高島巧さんだね。いろいろ調べさせていただきました。遅れましたが、私は彩子の夫、和気泰明と申します。」
「お、夫???」
「はい。これ以上彩子にちょっかいを出さないでくれませんか?彩子は私の大事な妻です。」
「彩ちゃん・・・結婚してたの???」

え???

旦那様ったら・・・なんで私の元彼を知っているの???この前もそう・・・教えてもいないのに上杉友哉の名前が出てきたし・・・。どこまで知っているの???

私は信じられなさそうな彼の顔を見て言ってやったの。

「そうよ!和気さんは私の大事な旦那様なんだから!!!」

彼はあっけらかんとしていたわよ。すると旦那様が・・・。

「高島さん、私と取引しませんか?丁度あなたの会社の資料が先ほど私の手元に入りましてね・・・。拝見させていただいたのですが・・・。結構悪いことしていますね・・・。私はこれでも弁護士の資格をもっていますので・・・。」
「な、なんだよ!!!取引って・・・。」
「いやあ、簡単なことです。私と彩子が結婚していることを口外しないで欲しいだけです。それと、もう彩子のことを忘れてください。」

彼はうなずいて取引内容を飲んだのよね・・・。

旦那様と私はタクシーで議員宿舎へ帰ったの。私は今夜旦那様の宿舎に泊まる事になった。私と旦那様は同じベッドの中でさっきの続きを話したの。

「悪いことって何?」
「ああ、あれね。ちょっと試してみたんだよ。あの焦り具合からわかるだろ。本当に悪いことしているよ、あいつは・・・。前あったでしょ。大手のIT企業がやってたこと。あれと同じことだよ。それと、出資法違反かな・・・。いずれ表に出ると思うよ。裏ではいろいろ調べているって聞いたからね・・・。」

旦那様は笑ってたのよね・・・。でもなんで私の元彼知っているの?聞こうとする前に、旦那様は私の横でもう寝てたのよね・・・。せっかく一緒に寝てるのに、キスひとつしないで・・・。

でも旦那様が助けてくれてよかった・・・。
これでゆっくり眠れるわね・・・。
(7)日曜朝の戦隊モノアイドル・須藤脩登(すどうしゅうと)

 今日は日曜日・・・。旦那様も休みなんだよね・・・。

 ふと早く起きてしまったからテレビをつけるの。朝7時半か・・・。ちょっと早いな・・・。と思いつつ、チャンネルを変えていくの。私が内々定をもらって断ったテレビA。朝は子供向けの番組ばかりしているのよね・・・。戦隊モノって子供にも人気なんだけど、その母親が出てくる俳優のファンになるってケースがあるんだって・・・。子供よりも母親のほうが熱心になっちゃて、最近の戦隊モノはちょっと大人向けな構成・・・。ドラマ調なのよね・・・。きっと母親世代を意識して作ってるわね・・・・。

 初めてじっくりとこういうものを見てしまった。フムフム主人公は5人なのね・・・。やっぱりかっこいい人ばっかり使ってるし・・・。ママ世代がはまるのもわかるよねって思ったの。
すると一人のリーダー格の男に目が行くの。この人って・・・・。私は新聞欄の出演者を見てみた。

『須藤脩登』やっぱりね・・・。

この人は6番目の元彼。現在25歳。昨日会った高島巧と別れた後すぐに付き合った人で、一昨年の12月まで付き合っていたの。今の旦那様と出会う直前までね・・・。

この人は元モデルで、モデル時代は同じ事務所だったの。私は大学入学と同時に今の事務所の大阪支部から本部に移ってきて、この人と出会ったの。ちょくちょく一緒にモデルのお仕事をしていたのよね・・・。そして仲良くなって、高島巧と別れたと聞いたこの人は私にアタックしてきたわけ。

その時の私は、ちょっと男性不信だったのよね・・・。散々な嘘と浮気をされたわけだから・・・。その時に相談にのってくれていた人がこの人で・・・。そういうパターンで付き合うってこと多いでしょ。私は彼のやさしさに惹かれて付き合っちゃったのよ。

まあそのやさしさは上辺だけだったってあとから気づいたけどね・・・。
 結局私は彼のお飾りだったのよ。あの人はただのナルシスト。自分を引き立たせるために私を利用したのよね・・・。1年ちょっと付き合ってた私も馬鹿だけど・・・。 
 彼はほかの事務所に引き抜かれちゃって、モデルから俳優に転向。もともと俳優をやりたいといってたからいいんじゃないの?引き抜いた事務所は私の事務所のライバルプロダクション。もちろん事務所は付き合いを知って反対されたわよ。でも違う目線で見たら彼が私を本当に好きじゃないってわかったのよね。私を愛してたんじゃなくって、自分を愛してたのよ。そして私は彼の欲求を満たすための道具だったってこと・・・。

それに早く気が付いてよかったわよ。即効彼を振ってやったわよ。深く傷つく前にね・・・。彼の別れの言葉にはむかついたわよ。

「あ、そう?」

だもん。

あれほど私に好きだよって言ったのは嘘で、私に言ってたんじゃなくって自分自身に言ってたのよね。ああ今考えただけでもむかつくわよ・・・。

私は速攻テレビのチャンネルを変えたの。

「彩子、えらい起きるの早いなあ・・・。」

あ、旦那様が起きて来たのね・・・。

「さっき見ていた子供番組・・・。」
「何?」
「出てたよね・・・・。須藤脩登。彩子の元彼・・・。」

また???何で知ってるのよ。うちの旦那様・・・。

「隠さなくってええよ・・・。ほとんどのこと知っているんや・・・。すまんな、勝手に調べて。」
「和気さん、何で?」
「ちょっと気になってな・・・。ある筋に調べさせたんや。でもな、彩子がもう元彼のこと何も思ってないことわかったからええんや。こうして俺の側にいてくれるんやし。俺の愛にちゃんと答えてくれるしな・・・。過去は過去や。過去はもう消されへん。ええ思い出もよくない思い出も、誰でもあることやし、俺はもう気にせえへんことにしたんや。今こうして側にいてくれるだけでええんやから。今が大事やろ。」
「和気さん・・・。」

なんて心の広い旦那様なんだろう・・・。私は改めて旦那様をもっともっと好きになっちゃいました。そのあと私たちは朝からイチャイチャ。久しぶりの夫婦生活を・・・。

でもちょっと待って?旦那様の一言・・・。

「散々調べても出てこんのが一人・・・。彩子の4番目って誰やろ・・・。俺よりも長くつきあっとるのに存在が出てこえへんのや。悔しいな・・・彩子の青春の一番いいとこもっていった男って誰やろな・・・。」
「まあ、気にしないで。もう過去のこと気にしないって言ったところでしょ。」
「そ、そうやったな・・・すまん。」
「4番目の人は、とても真面目で素敵な人だったけれど、和気さんのほうが素敵だし、大好きだよ。」

多分このことを調べたのは二階堂さんなんだろうな・・・。きっと二階堂さんはバレたくないからごまかしているに違いないわ。

 私と旦那様はますます絆が深まったのよね。でもいつになったら私達の関係を公に出来るのかしら?
(8)7人目の彼&旦那様、政界のサラブレッド・和気泰明と・・・・

 「彩夏、久しぶりにモデルの仕事だよ。」

後期試験が無事おわり、春休みに入った2月最終週のはじめ。そういってマネージャーから電話が入った。ホント久しぶり。モデルの仕事って・・・。なんと来年春用の新作のウェディングドレスをたくさん着るんだって・・・。京都まで仕事って珍しいな・・・。京都か・・・。ああはじめて・・・ウェディングドレスを着るのって。

 依頼主は京都で大手のウエディング総合企画会社。新作としてカタログに載せたいらしい・・・。めずらしく1泊2日のお仕事。旦那様に週末会えないのは辛いけど・・・。実はテストや仕事でひと月ぐらい会っていないのよね・・・。元気にしてるかな・・・。まあメールのやり取りとかはしているから元気なんだろうけれど・・・。

私は指定された時間に品川駅の新幹線のホームに着いた。朝早い6時台の新幹線。9時前には京都に着く。いろいろメイクとかで時間がかかるって聞いたからね・・・。新郎役とかいるのかな・・・。もしかして私一人の撮影?

京都に着くと、依頼主の会社の人が迎えに来ていた。私はマネージャーとともに用意された車に乗る。2月末だから結構京都は冷える。でも今日は違ってなんだか小春日和・・・。この前まで雪が降っていたと聞いたのに、暖かい春のような陽気で・・・。

ロケ地は京都市の北山通り沿いにある小さな教会。結構お洒落で素敵なの。もちろん今日一日貸切。その一室を借りてヘアメイクをする。側には5点ほどの素敵なドレスとそれにあわせたブーケ。そして小物たち。手馴れたスタッフでテキパキと支度をする。ここに入る前にみた撮影隊は本格的なスチール写真撮影用の人たちで、きちんと挨拶をしたわ。

ホント久しぶりモデルのお仕事・・・。事前にサイズを報告してあったのか、ドレスのサイズはぴったりで、本当に結婚するみたい・・・。

4点までは教会前の素敵な庭で一人でいろいろポーズをつけて撮影・・・。道路に面しているためか、ギャラリーが増える。もちろん土曜日だもん。

(あれって、北野彩夏だよね・・・すごい仕事中???)
(超可愛い!)
(テレビで見るよりも細い!)

私はいろいろなポーズと表情で何枚も写真を撮った。カメラマンは「いいよいいよ!」って言ってくれて、スタッフもさすが元カリスマモデルという。

また私は控え室に入って最後の1着に着替えるんだけど、もうお昼を過ぎて、おなかすいたから、ひとまず休憩。ちょこっと軽食。おなかいっぱい食べたら体の線に出ちゃうから、少しおなかに入れておくだけ。終わったら食べたらいいしね・・・。
さあ仕切りなおし・・・。またメイクからはじめる。

「次は新郎もいるんですよ・・・。」

と、スタッフが微笑みながら私に言った。きっとどこかのモデルさんよね・・・。よくあるパターンだもの・・・。イケメン系の・・・。
最後は私のお気に入りのAラインの素敵なドレス・・・。清楚なんだけど、どこかのお姫様みたいな・・・。今回はベールもつける。本当に今から結婚するみたいな感じで・・・。次は教会内で撮影なんだって・・・。    

 私は支度が整い、撮影場所と新郎役の準備が整うまで控え室で待つ。

「北野さん、どうぞ!」

女性スタッフが私に声をかけ、スタッフに手を引かれながら、教会の十字架の前へ向かう。やはり何でこのドレスを屋内で撮るのかわかったわ。だってドレスの後ろの裾が長いの。そしてベールも長い。私の後ろにはスタッフが数人付いて、すそがどこかに引っかからないかみているの。それほど長い立派なドレス・・・。

礼拝堂内に入ると、十字架の前で新郎役の人が立って十字架を眺めていた。モデルじゃないよね・・・。モデルのような8頭身じゃないもん・・・。もしかして一般公募の人?すらっとしているけれど結構肩幅があって・・・・。あの後ろからみた感じ誰かに・・・ううんあの人がいるわけないもん・・・。だって今日は仕事だよって・・・。

すると私がバージンロードの中間へ来たころ、その人は私のほうを振り返るの。

「わ、和気さん????」

そう相手は私の旦那様、和気さんだった・・・。そういえば旦那様はダイエットしているって言ってた。すごく痩せて以前に比べてかっこよくなっている。旦那様は私の顔を見て微笑んだ。私も旦那様の顔を見て微笑み、私は旦那様のもとに歩き出した。旦那様も私のほうへ来ると、私を抱きしめてくれた。

「驚いた?彩子。」
「和気さん・・・。すごく痩せて・・・。」
「うん、10キロ落とした。彩子、すごくきれいだよ。良かった似合って・・・。さ、おいで・・・。」

旦那様は私の手を引いて十字架の前へ・・・。後ろを見てみると、旦那様のお父さん、お母さん、お兄さんお姉さん弟。そしてうちのパパ、お姉ちゃん夫婦、そして二階堂さんが立っていた。

「撮影のついでに挙式も出来ることになったんだよ・・・。」

そういうと、旦那様は私の手を腕にかけて、一緒に十字架の前に立った。そして挙式が始まった。神父に誘導され、聖歌や誓いの言葉、旦那様が用意してくれてたんだろう結婚指輪。旦那様は私の薬指に結婚指輪をはめてくれ、私も旦那様の指にはめる。そして私は少ししゃがんで旦那様がベールを上げて誓いのキス・・・。これは模擬結婚式じゃない。私と旦那様の本当の結婚式なんだ・・・・。

もちろん式最中はプロのカメラマンが何枚も撮ってくれている。式が終わり、祭壇の前で、撮影・・・。いろんな表情で・・・。旦那様はとても緊張していたけれど、私の笑顔を見て緊張がほぐれたのか、微笑んで私の顔をみた。これってモデル用の撮影?それとも・・・。

祭壇前の撮影を終えると、私たち2人は礼拝堂を出てごく身内の人からのライスシャワーを浴び、祝福されるの。そして身内だけ教会前で記念撮影・・・。本当に仕事半分挙式半分で、嬉しかった・・・。やっと旦那様と正式に結婚できたんだもの・・・。

私たちは嬉しさのあまり、人目を気にせずにキス。もちろん前の道を行き交う通行人は足を止め、私たちのことを見て驚く。

「もういいんだよ、公にして・・・。」

って旦那様が言ったの。

「え?」
「事務所、そして就職先のテレビ局、スポンサーから許可が出た。もう公にして、堂々と二人で過ごそう。もうこそこそ過ごすのはごめんだ。いいね、公にして・・・。」
「うん!」

あたしは旦那様に抱きつき、私からキス。
身内のみんなは本当に微笑んで私たちを祝福してくれた。もちろん沿道の見知らぬ通行人たちも・・・。祝福の大きな拍手に包まれて、私たちは正式に夫婦になった。ああこれからは旦那様の正式な妻としている事が出来る。そして堂々と和気彩子として就職できるんだ。嬉しくてたまんないよ・・・。

ありがとう旦那様、そして祝福してくれたみんな。私は幸せになるんだから・・・。ホント旦那様っていい人だね。だってこうしてサプライズ挙式をしてくれるんだもの。旦那様らしいわ。

次の日私たちの結婚が公になった。もちろん幸せそうな写真が世の中に出回る。噂されていた私たちの突然結婚に世間は驚いたの。

左薬指の指輪を見せての結婚記者会見はなかったけれど、これでいいのよ。公にさえなれば。

私はアナウンサー、彼は代議士・・・。どんな夫婦生活になるかわからないけれど、きっと周りがうらやむような仲睦まじい夫婦になるんだ。

約束よ、旦那様。


(完)

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