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Sienite 〜シエニテ〜コミュの■500カネオンの花束■ 【P−B】

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「もっとちゃんと歩いてよ今日中に見つけて家に帰るんだから!」
小刻みに上下に揺れるツインテールの少女はオレを振り返るさま言い放った。
だが強い口調とは裏腹にまだ幼さない体格ではこの山道はつらそうだ。
「…はいはい」
口からでる言葉はとてもハキハキとはいかずまた少女になにか言われるのかと思ったものの、少女は自分が歩く事で精一杯だったようだ。
まだ年齢は6歳だとローザは言っていた。
(あー、なにが悲しくてオレはたった500ネカオンでこいつに振り回されなきゃならんのか)
何度思い返しても朝おきた出来事が悔しくてならない。


一昨日ギルドでの仕事を1段落させたオレは住処の町に戻る最中馴染みの宿ローザの家に泊まったのだ。
ここの女将は歳の割りに若々しく1人で切り盛りしているとは思えないほど清潔感溢れる宿であり、
食事も美味くなにより料金が安いとあって大きな町と町の中間にある村のこの宿はなかなかの人気振りであった。
もっとも交通網の発達した現代、お金を出せばすぐにでも目的に着くぐらいの乗り物などあるのだが交通の整っていない地域、そうギルドなどの仕事で辺境に赴く者達やこの辺りで取れるという鉱物のバイヤー達には格好の宿であった、なにしろ女将は数十年前にはソコソコ名の知れ渡った剣士でありこの付近では警察署よりも安全という噂が飛びかっているほどだ。

そんな宿屋は自分にとってお気に入りでなにかの仕事でこの方面に来た時にはかならず寄って美味い飯と酒を食らって寝るのが定番になっていた。
その夜も例に漏れず宿を堪能したオレは少し酒の抜けかからない頭のまま朝食を頂こうと1階の食堂に移動した時この少女を
女将に紹介されたのだった。
(ホント、あと1時間…いや、あと数十分遅ければこの少女をローザは上手く言い包めて家に帰していたはずだったのに)
悲しい事に自分は少女の姿が確認出来ていなかった。
だから軽い気持ちで厨房に居るローザに言ったのだ。
「なにか困った事があったらこの何でも屋のグランダに言ってくれよ、屋根の修理から草むしりなんでもやってやるよ、だから宿代安くしてくれよ常連なんだしさ」
直後厨房から眉をしかめたローザがこちらを振り向くと同時にその奥から少女が走りだしてきたのだ。
手には500カネオンを握り締めてだ。
なにか言ってはいけないタイミングで言ってはいけないような言葉を発してしまったのはすぐに分かったがもうどうしようもない。
ふぅ、とローザのため息が聞こえる。
「…わかったは、宿代は半分にしてあげるからヨキのお願いを叶えてやってちょうだい、私は宿があるから出来ないのよ」
ヨキと名を説明された少女はローザの言葉を聴くと同時に頬を赤くし、満点の笑顔でオレに500カネオンを差し出すと息継ぎする事も無く大きな声で用件を伝えてきた。
「お花が欲しいの!山にね黄色いお花があるの!!今日ねお母さんが帰ってくるの!!」
山?
話の筋が見えずにいるとローザがにこやかに言い放った。
「お昼ご飯はオニギリを作ってあげるから早速朝食食べたら行って来てちょうだい、ああ、もちろん今晩の宿代も半額にしてあげるわよ、良かったわねぇ一泊代で二泊泊まれるなんてv」
「おおおい!それってなに?1日かかる仕事なのかよ」
ちょっとした挨拶みたいな言葉でとてつもなく面倒な仕事を押し付けられたのを察し慌てるオレに。
「どうせ用事なんてな〜んにもないんでしょ?じゃぁのんびりしていきなさいよ」
そい言い放つローザの顔は少し申し訳なさそうだった。


(確かに急いで帰る用事もないけどよぉ)
はぁ、こんな形で1日じゅう山を散策する事になるとは思いもよらなかった。
目を先に向けると必死に周りを見渡しながらも懸命に歩くヨキの姿が映った。
(頑張ってるよなぁ)
ヨキが山歩きの為に家にカバンを取りに行っている最中ローザの話を聞いたところ、どうやらその花はタンポポらしい、しかし季節柄まだ咲くのは少し先といったところなのだが少女の母が長い病院生活からやっと帰宅が許されるほど回復し数年ぶりに愛する家族の元に帰ってくるらしいのだ。
ヨキは母が家にいる姿を覚えていないらしく昨晩は興奮して殆ど夜も寝ていないらしい。
数ヶ月に一度行く白い大きな病院でヨキを優しく向かいいれてくれる大好きなお母さん。
その大好きなお母さんが好きな黄色い花。
幼いながら精一杯母の為に何かしてあげたいと考えて考え抜いた答えがタンポポの花束だったのだ。
山は今は静かだが実は活火山であり地熱で火口に近づけば近づくほど地中は暖かくタンポポぐらいならもう咲いているだろ。
「…なあヨキ、太陽も傾いてきたし流石にお昼ご飯にしないか?」
「まだ大丈夫だもん!急がないとお母さんが帰ってきちゃう!!」
今まで必死に前進していた足をとめヨキは一生懸命訴えかけてきた。
「んー…でもまだ夕方までには時間あるし花の位置も検討ついてるんだ、大丈夫おじさんこう見えてもちゃんと時間計算して歩いてるから」
精一杯優しい笑顔、優しい声で喋りかけヨキを説得する。
なんせヨキから500カネオンで受けたが正式にはローザの宿代半額で了承したのだから雇い主はヨキではないのだ。
怪我させない、自力で花を採らせてあげる、かならず夕刻には帰る。
これがローザとの契約。
ヨキが頑張るのは良いが、無理に歩き続ければ必ず怪我をする、そうなる前に止めなければならないのだ。
「…うん」
少しうな垂れるようにヨキは頷くと自分の足をじっと見ているようだった。
(足やっぱり痛いんじゃないかな?)
少女の靴はすっかり山道の土や泥で汚くなってしまっていた。
歳いくばくもない少女にしては過酷極まりない道だ、家に帰るときにはマメぐらい出来ているだろう。
2人が足を止めれば木々のざわめきが聞こえるほどに静かになり遠くで水の流れる音が聞こえてくる。
「小さいが滝があるみたいだな、そこなら水も飲めるし行ってみるか?」
ヨキも静かに頷いた。


「はぁ〜食べた食べたっと、おかずのハムも美味しかったな」
グランダは陽気な声でヨキに向けて話しかけた。
まだモソモソとおにぎりを食べるヨキは元気がなさそうだ。
「どーしたんだ?ん?水もっと飲むか」
喉でも詰まらせたら面倒だとヨキの使っているコップを取ると上部から湧き出し流れ落ちる水流にコップを突っこむ。
ここら辺は今までの山道と違い滝からの水で小川が出来その水の恩恵か草が生え地面に座っても土汚れが着かず、昼にするには持って来いの場所だった。
ヨキは靴を脱ぎ捨てて地面に座り込んでる。
「ほら、いっぱい飲めよ」
ヨキにコップを差し出すがすぐに手が出てこない。
「……どうしよう、どうしよう、もうお昼とっくに過ぎてるんでしょ、お母さんが帰ってきちゃう…」
涙こそまだ出ていないようだが体が強張っているのがわかる。
頑張ったのに、頑張っているのに自分の立てた目標に到達出来そうにない事に不安で一杯のようだ。
(ローザの話だともう一時間ちょいかかりそうなんだけど…)
ココからの道のりだけで往復で2時間強。
だが帰りはオレがヨキを背負えば時間的には間に合う。
大人の歩幅と子供の歩幅。
体力もそこら辺の成人男性なんかよりはあるつもりだ。
『自力で花を採らせる』は契約だが取った後は『夕刻までに』帰せればOKだよな。
ふむ、と自分なりに契約を解釈しなおし納得する。
「…お父さんにね朝、お母さんはどんなお花も好きだから山まで行かなくて良いんだよって言われたんだ…」
ヨキは後悔しているようだった、涙も出てきている。
「でも私はお母さんの一番好きなお花をあげたかったのぉ…うっうっ」
嗚咽もでて来た。
きっと花を摘んで持ち帰ったら父と母に自分のこの冒険秘話を聞かせるつもりだったのだろう。
自分は頑張った、お母さんが大好きだから頑張れたんだと胸を張って。
(とても帰り道はおんぶされて帰ってきたなんて言いたくはないよなぁ)
ローザの契約が頭を過ぎる。
『自力で花を採らせる』はやっぱりヨキ1人の力で達成させてやってくれという事なんだろうなと改めて思う。
パン!!
オレは手を打ち合わせ今一度契約内容を頭に巡らせた。
「考え方を変えよう」
ヨキは音に驚いたようで目を開きオレの顔を見た。
咲いている花を取りに特定の場所に行っていたのではヨキの足では間に合わない。
だがこの場所付近で取れれば問題ない。
花を作りだすには種が無ければ出来ないが、咲いていなくてもタンポポさえあれば問題ない。
そう、オレには小さな花程度なら咲かせられる『術』を持っているのだから。
「ヨキはまだおにぎり半分以上あるな?よしよし、じゃぁそれを食べてろよ?」
「ど、どこかに行くの?」
ヨキは置いていかれると察し急いで口におにぎりを詰め込もうとした。
「おいおい待て待て!ハムもあるんだゆっくり食べろよ」
早く食べられてオレに着いて来てやってる所を見られてはヨキの達成感にはならないのだ。
「ここら辺でたんぽぽが咲いていないか見てくるよ、だからご飯食べてな」
「…でも…ここは咲いてないみたいだ、よ…」
ヨキは不満そうに周りを見渡した。
確かに地面に腰掛けていても地熱を感じる事もなく、周りの草も青々としているのみで名も知らない花の蕾も硬そうだ。
「そんな事無いさ、おじさんは感じるねココら辺に暖かい場所がありそうだってね」
精一杯優しい笑顔。
「きっと花は咲いているよ」


「さてと、ここら辺でいいか?」
滝の上部の丘に登り下を眺めるとヨキが水を飲んでいる姿が見えた。
ここなら彼女からオレの姿は確認出来ないはずだ。
腰にぶら下げていたベルトを緩め1冊目の本を手に取ると右手に乗せ精神を集中すると風も無いのに本が独りでに開きページが捲れていくとあるページでピタリと止み本がうっすらと光りだした。
「力を貸して欲しいんだ名も無き青葉の精霊の子」
そう呟くと開いたページの上に小さな木の葉のような物体が現れた。
「ここら辺にタンポポ無いかな?」
その声を聞いてか聞かずかまるで風に吹かれたようにヒラリと舞いながら木々の中に入っていく。
(ああ、どうか近くにありますように)
思えばもっと村の近くでコレをやっていればヨキが泣く必要も無かった気がするが、これで今晩の食卓はヨキの冒険秘話をメインディッシュに話も弾むだろう。
数十本の木を越し進むと少し開けた場所にたどり着き木の葉のような存在は地面に落ち消えた。
そこにはまだ青々とした蕾が見えたが確かにその葉はタンポポのようだ。
あとは花を咲かせば完璧だ。
改めて今来た道を振り返るココも決して村に近い場所じゃない。
「…花を取り次第またヨキは駆け足で帰らなければならないなぁ」
ふふ、こそばゆい感じの笑いが口からこぼれた。
「帰りも数時間ヨキの後頭部ばっかりみて歩くんだなオレは…」
そう呟くとまた静かに精神を集中していく。
「…力を貸して欲しいんだ芽吹きの精霊の子よ」

夕刻ギリギリ。
なんとか母親が帰ってくる前に家に送り届け契約完了。
ヨキは500カネオンをオレに差し出した。
疲れていただろうがなんて満点の笑顔。
正直1回の安食事代ほどだが彼女はこれが契約だと思っているのだからありがたく受け取るとその足で宿屋に戻ってきた。

「しかしよく受けてくれたねこの依頼」
ローザは新しく出来た熱々のおつまみをオレのテーブルの上に置くと、おごりだと言ってニッコリ笑った。
「そりゃそうだろ、オレはこの宿をひいきにしてるんだからな」
そう言うとホークで熱々のチーズ付きのポテトを突き刺した。
「女将に嫌われたりしたら人生の楽しみが減っちまう」
口に入れるとポテトはホロホロと崩れバターとチーズの香りが口いっぱいに広がった。
冷たい酒が美味い。
「まあ、今回みたいな時間ばっかり食う依頼は勘弁だがこの美味い料理に酒だ…」
ニッと笑いながらコップを持ち上げローザに酒の追加を頼む。
「生きてる時は生きてるなりの幸せを味合うのが人生の醍醐味だからな」



『終わり』

コメント(2)

小説なんてめったに書いたことない為大変読みにくい文章の出来になってしまいましたが、私なりにグランダ視点の話を書いて見ました。
小説…同人とかでずい分昔に書いた以来ですよ、かれこれ10年以上前ですか?ふふ。

オリジナル小説難しいですね!!
でも楽しかったのでまた書きますよ〜。
これからもヨロシクお願いします。

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