したり映画帖コミュの２０１３年１２月上半期③

１２月４日（水）

『トレマーズ４』０４
Ｓ・Ｓ・ウィルソン作品。監督は『ショート・サーキット』の脚本を担当した人。
西部開拓時代のトレマーズ。
基本的には面白くはないのだけれど、中国人親子やヒスパニック、インディアンたちがその土地から離れようとしないという設定にアメリカン・スピリッツと共にアメリカン・ヒストリーを感じた。
時代設定が、無理があるような心理状況に説得力を持たせる。
『１』で活躍した銃器マニアのおっさんが主人公となってがんばる。
『３』は『１』と同じぐらい面白い。（３０点）

『ラッシュアワー２』０１
全然期待していなかった『１』と共に、今回も可もなく不可もないブレッド・ラトナーらしい普通の、実に普通の作品となった。
撮影もジャッキーが出演するにあたり、フォローキャメラワークが上手い。
本当に普通の作品なのだ。
ここでは“普通”という言葉も讃辞に変わる。
ブレット・ラトナーとは必ず６０点は取る、この時代には貴重な職人監督なのである。（６０点）

１２月５日
『バイロケーション』１３
バイロケ出現のルールが、突っ込みようではあまりに脆く設定されている。後半の緊迫した調子は見せるのだが、前半のホラー部分に多く不満が残る。あと一番気になったのはモノローグ問題。誰も知らない、見ていないはずのシーンを当事者以外の人間がまるでその人間の気持ちが判っているかのように心内語を語るという矛盾は陥りやすい罠で要注意が必要である。その矛盾がオチとなっているなぞの工夫が考えられていない。（６５点）

１２月６日
『灼熱の肌』１１
カラー映画で、画家が主人公の一人という設定からか、色彩が鮮やかに使われる。
壁の色合いが赤や緑、青といった風に変化する。
それが直接登場人物たちの心理状態を反映したり、影響する事はない。
そんな野暮はしない。
主人公的役割を持った人物がふたり登場する。
いつもの愛と女性が生きるための必須条件となっている芸術家タイプの男と役者を目指しながら挫折して家庭という人間的な生き方を選択する芸術家になれなかった男である。
結局、芸術家タイプの男は破滅し、芸術家になれなかった男は淡々と生活を送り続ける。
どちらが正解だとは決して作者は判断しない。（７０点）

『ヴァージニア』１１
ちぐはぐさが最初から最後まで続く。
要所要所にＣＧを取り入れ、ユニークな人物をちりばめる。
梗概は一言で表すなら、スランプ状態の売れない作家が田舎町で出会ったドラキュラ伝説により作家として再生する怪異譚と呼べるのだが、テーマ自体も古臭く、肥り気味のヴァル・キルマーを主役として見続けるには忍耐が必要である。（４０点）

『塀の中のジュリアス・シーザー』１２
勘違い甚だしい演出。
イタリア人は素人も演技上手らしい。それが徒となっている。
冒頭、面白さの期待できる展開だったが、結局鑑賞を中断したくなるようなあざとい見え透いた演出だった。
タヴィアーニ兄弟は終わったと痛感させられる一本。（２０点）

１２月８日
『ミステリーズ　運命のリスボン』１０
パウロ・ブランコ制作。ラウル・ルイス監督作品。
旧知の友人が勧めてくれた作品で、本当に面白かった数少ない作品のうちの一本。
傑作！
この作品にはクローズアップがまずない。
唯一クローズアップの切り返しのようなシーンが存在する。
それは、その場面に登場する２人の人物がのちに一方は変装し、また一方は別人物に成りすますというという設定が仕組まれているために人物の顔を記憶させるという役割がある。
それぐらいこの作品にあってはクローズアップは希少で、ドリーや横移動、クレーン等が縦横するという贅沢な作品となっている。
セット撮影は恐らくない。
ロケ場所の城や屋敷は在りもので、調度品や壁にかかっている絵画もほとんどが本物だ。
撮影も見事である。
ナレーションの話者が次々と変化する脚本の構成もまた面白い。
２６７分の長尺ながら厳格かつユーモア溢れる演出は一時も飽きさせない。
ポルトガルの社交界を舞台に盗み見、盗み聴き、噂話、陰口が横行する時代の変遷が叙事詩的に描かれる。
監督はこの作品が完成すると間もなく亡くなった。遺作としてはあまりに面白すぎるのだ。
われわれはあまりにもラウル・ルイスを知らなさすぎる。
追記：どうやら調べると、遺作から２本目ということだ。（１００点）