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名もなき詩人の詩コミュの君のいない夏

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君のいない夏に堪えきれなくて
君がいた季節を思い出そうとして
僕はひとり、夏の北海道に渡った

「馬鹿ねぇ」

と言う君もいないから
誰もいない砂浜でひとり、函館の海を眺めていた

夏の函館の海は蒼く静かな凪
君の姿ばかりが波間に浮かんでは消える

僕は、君のいない夏を眺めていた

もう、手の届かない思い出を眺めていた

トラピスチヌ修道院のクッキーがとても好きだった君とか
クッキーが苦手で口をつけなかった僕とか

あれは何時のことだったか

手を繋ぎ二人で眺めた函館の海とか
夜景を眺める君の瞳に閉じ込められた光とか

あれは何時のことだったか

「懐かしいね」

なんてさ
時折の波音だけがくり返し
時折の波音だけが思い出す

今、この時さえも
いつか懐かしむのだろうか

もう、トラピスチヌ修道院のクッキーさえ食べられない君の代わりに

浜辺でひとり、食べてみた

今も変わらずクッキーは
美味しくもなんともなくて
ざりざりと
砂みたいな味がする

君がいなくなった後の僕の人生のように

浜辺には時折の波の音

不意に目に入った砂に涙を誘われて
どこまでも透き通る青い夏の空を見上げたってさ

それは天国から落ちてきたクッキーの食べ零しじゃあないよ

天国ではクッキーを食べることはできるのかな
さすがにトラピスチヌ修道院はないだろうけど

くだらない、空想
もっとくだらない、現実

もう、この世にいない君の代わりに

「馬鹿ねぇ」

なんてさ
自分で、自分に言葉をかけたってさ

もう、果たすこともかなわない約束の代わりに
クッキーを砂浜に投げ捨てたってさ

潮風に撫でられ微動するクッキーは
ゆっくりと砂浜と同化していくだけ

君がいなくなった後の僕の人生のように

僕は、君のいない夏を眺めていた

ずっと
ずっと
眺めていた

コメント(2)

しずかにしみました。いい詩ですね。
> トキータさん
コメントありがとうございました。
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