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驚愕の画集と漫画コミュの<アカシック・リバース> 第一話 Russian Stardust

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 ロンドンの繁華街から少し外れた場所。男は絵を描いている。無数の大道芸人たちが、芸を披露し、チップを稼いでいる。彼の絵もソレと同じ「芸」である。
 身の丈、170前後、体形は細身、髪は無造作にのばされ、あまり手入れをされていないようだ。黒縁のスタイリッシュなメガネ、レンズは濁っているが、その奥の輝きは異常で、何か魔力めいたものを感じてしまう程だ。
 
 ロンドンの華やかさ、街の景観、美しい女性達、街の活気。その全てを引き立てる側にする存在。そんな彼女が男の前に立ちどまる。
 身の丈、170前後、体形は文句の付けようのない均整、透き通るようなみずみずしいブロンドは肩までのびている。黒のワンピースを纏うその姿は、この世のものとは思えない神秘を秘めていた。

 「一枚お願いするわ。」

男は彼女を見ることなく答えた。

 「題材は貴女で?」
 
 「ええ、貴方の絵はお気に入りなの。きょうがくゆうすけさん。」

名前を答えられた男はゆっくりと頭を上げた・・・・・彼の思考がほんの一瞬停止した。高嶺に咲く一輪の花が、彼の思考を奪ったのだ。が、少しの動揺も見せることなく男はこたえる。

 「ありがとう。貴重なファンにまさか貴女のような美しい方がいるなんて、光栄です。どうぞ、そこにかけてください。」

 坦々と彼は仕事をこなした。その仕事に一片の無駄など存在しない。時間にして二十数分、作業そのものが芸術の域に達していよう。

 「題名はどうします?」

口元に手をあてて彼女はシンプルにこたえた。

 「そうね・・・ダーシャ・・私の名前。」 
 
 「それではどうぞ、ダーシャさん。」

品を受け取った彼女は上機嫌でこたえた・・

 「ありがとう、国へのいいお土産になったわ。」

自然な流れのまま男はこたえる・・

 「あなたの生まれは?」

神秘的な笑顔を含ませ、彼女はいう

 「生まれた場所はわからない・・でも育ったのはロシアよ。」

 そういい残し、彼女はその場を去っていった。生まれた場所がわからない・・そんな影を含んだ言葉。曇りなき光に落とされた一点の小さな影。たいして気にかけることもないはずの、他人の生い立ちに、彼は少しの興味を感じていた。
そして去り行く彼女の後姿を、見えなくなるまで眺めつづけていた。

 つづく

コメント(7)

 窓からさす朝日に彼は目を覚ます。空は雲っているが、隙間から時々、太陽の光をのぞかせている。ベッドから出たらまず、彼は冷蔵庫へ向かう。この部屋の冷蔵庫には500ml入りペットボトルの飲料水以外は入っていない。おもむろにそれを取り出し、部屋の中央に配置された、赤いソファーにドンと腰かけて、一口・・・ごく・・

 「ふう・・―」

 男は昨日の女性を思い返していた。ダーシャ・・ロシア人・・
初対面であることは間違いないのだが、男はなぜか彼女を知っているような気がしてならなかった。 
 (トゥルルル・・)彼の携帯が鳴った。知らない番号である。

 「もしもし?」

 「やあ、ミスターユウスケかな?私は以前、あんたの絵画展を担当した、トッド・マーチンだ。」

 「ああ、あんたか、あのイベントは、規模は小さいがなかなかよかったよ。満足してる。ところで今日はどのようなご用件で?マーチンさん。」

 「うむ、絵画展の日の話さ。あの日、君の絵を売ってほしいと言って来た女がいたのを憶えてるか?」

 「そういえば、直接は会っていないが、聞いてうれしかった。あんたに任せるといっておいたはずだけど。」

 「その女が昨日絵を引き取りにきてね。うれしそうに帰っていったよ。なんとも言えない美しい女だ。」

 「美しい女?」・・・彼の頭に一人の女性がよぎる・・・
 「その女・・名前は?」

 「名前は聞かなかったが、今日ロシアに発つといっていたがね・・」

 ダーシャ・・彼は疑問を抱いていた。自分の絵にそこまでの興味をもっている女性。高嶺に咲く一輪の花に抱いた少しの親近感。

 「マーチンさん、どこの空港かわかるか?」

 「ん?たしか、ヒースロウの午前の便ときいたが・・あんたまさか。」

 「そうさ。車を頼めるかい?」

 「全くどういう風の吹き回しかしらないが。すぐにオフィスにきな。」

 「ありがとう・・恩にきる。」
 ロンドンの都心部・・・黒いBMWに乗る二人の男。助手席には細身の日本人の青年。運転するのは体格のいいイギリス人。短めに刈りそろったブロンドは、スタイリング剤でオールバックにキマッている。歳にして40前後といったとこか。
 
 「ユウスケ、あの女に会って一体どうするってんだ?」

 「さあな。とりあえず気になる節ががいくつかあってね。確かめたいことというべきか・・・なあマーチンさん。彼女が買って行った絵ってのは一体なんの絵なんだ?」

 「ん、ああ、そういえば言ってなかったな。精巧に描いてある中世の聖剣、他にも武器の絵を数点・・・。」

 「ほう・・・物好きな女だな。しかしオレの中でもあれらは最高傑作といっていいできだ。光栄ではあるが、女が選ぶとすれば少し引っかかるな。」

 「確かに・・武器好きの美人。変な組合わせだな。」

 マーチンは胸のポケットにさしていたサングラスをかけた。走向する方角をみながら、彼は微笑んでいる。ささいな疑問の滑稽さにリラックスしているようである。
 
 ロンドンの都心から、一時間ほどのところにヒースロウ空港がある。男二人は砕けた会話をしながら、目的地を目指した。
 
  「さて、・・・見つかるのかね。」

  「さあな・・・ゲート付近か・・」

 空港は広い。わかりきった事実である。こんなところで人探しなど無謀にも甚だしい。

 行き交う人々の先の、見えない光をさがし、ただゲート付近を模倣する。途方も無い行動なうえ、時間も迫った状況である。しかし二人には確実に見つける自信があった。おそらく同じことが脳裏にあったのだろう。

  「おい、あれ・・」

  「ああ、間違いねえ」

 搭乗ゲートへ向かうエスカレーター。首から上しか確認できないうえに、帽子を深々とかぶっているが、わずかに見せるブロンドの髪、知的さと優美さを兼ねそろえた口元、なによりも、周囲とは明らかに差別せざるを得ないオーラめいたものが溢れていた。全身に黒を纏い、帽子により顔を伏せているのだが、彼女の美貌というものは、おそらく人の基準の規格外なのだろう。行き交う人々は振り返る。

 「さあ、いこうか。」

 ゲート付近。細身の日本人が神秘の美女へ接近する。

  「ダーシャさん。・・・ですよね。」

 確認するように、確信していることをいった。そして彼女は立ち止まる。
 
 急に現れた、絵描きの青年に驚くそぶりも見せず、彼女は口をひらいた。

  「あら、絵描きさん。お見送りだなんて、そういう仲だったかしら。」
 
 落ち着いた口調で、小さな笑みを浮かべながら話し、彼をみた。

  「聞きたいことがあるんだ。オレはあんたとどこかで会ったきがしてならないんだ。最近じゃない・・昔だ。ロンドンに来てまもないくらいだ・・」

  「ふふ・・そうね。あなたの言うとうり。いえ、正確には会ってはいない。でも、あたしの存在はあなたに知らせたわ。」

  謎めいた発言をする彼女。しかし冗談でなく真実を語る目をしていた。

  男は、ただ疑問の解決だけを目指し、発言する。

  「あんたがどんな方法で、おれにコンタクトを取ったかはしらねえ。だが目的はなんだったんだ?オレの絵に何か関係が?」

  「そうね。いくつか目的はあった。でも果たせなかった目的も・・あなたの絵を手に入れること。果たせた目的。」

  「わからない、オレの絵を必要とする理由・・・鑑賞目的とは考えにくい品物だ。いったい・・・」

 男の質問に答えるのではなく、不適な笑みをうかべ彼女は話を続けた。

  「果たせなかった目的・・・それは・・・」

 不適な笑みが純粋な少女のような笑顔い変わる・・

  

  「あなたを・・・・・あなたを殺すこと」


  「今・・なんて?」

  「あなたとはまた会うことになりそうね。もう一度言うわ。あたしあなたの絵、好きよ。」

 彼女はそういい残し、搭乗ゲートのさきへ消えた。
 ヒースロウ空港のラウンジで、トッドとユウスケは話をしていた。

「結局のところ何かわかったのか?ユウスケ」

「さっぱりさ、意味不明なことばかりいいやがる。オレを殺しに来ただの、また会うだろうだの・・・」

 ユウスケはコーヒーを一口飲み、気持ちを整えた。

「ただ、オレの絵に何かの目的があるといったこと。それは何かのヒントを言ったように聞こえたね。」

「ちょっと待て、今お前を殺す・・と?」

「ん?ああ、確かにそういった。マジみたいだぜ。それが果たせなかった目的だとね。」

「お前、変なやからのとこに首でもつっこんだのか?」

 鼻で笑うようにユウスケはこたえる

「まさか。日ごろの行いがよくねえのは認めるが、命を狙われるようなこたあしてねえよ。でも変だな・・全くの無警戒のオレを殺すのなんてたやすかったはず・・・」

「理由は解らないが、お前を殺して何の価値になるんだ。変わったジョークをいう女だな。」

 

 ユウスケは考えこむ・・・

(オレの絵を手に入れて・・・殺す・・・・なぜだ。そんなやばいもんを描いたってか?わからねえ。・・・・・・・ふっ、考えすぎか。)

 
 それから、数ヶ月。何事も無く、ユウスケは絵描きの活動をつづけていた。

そんなある日、一通の手紙が届いた。オックスフォードからだ・・

内容は・・

 この世界に飛ばされてからというもの・・・・

平行世界だからといって・・・・・・魔力の石・・・・魔法使い・・・・・・

・・・・・・・・・・ダーシャという少女・・・・

時空の渦・・・・・ある土地・・・・・

 
 謎の文章だ。しかしそこにダーシャの名前が確かにある。自分と無関係ではないのだろう。差出人はダーシャではない・・・

 手紙の最後に「M・K」というイニシャルだけがが記されていた。

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