享保16(1731)年〜寛政元(1789)年
井伊直惟の三男
母は側室・堀部氏
父で七代藩主である直惟が藩主の座を弟・直定に譲った為に、その後の井伊家の当主は直定の子孫に引き継がれる筈でした。
実際、直定の子・直賢が藩主の有力候補になっていたのです。
このため、直幸は控屋敷・尾末町屋敷に住むようになったのです。
この時に直幸は“直英”という字を使っていました。
直定が病弱を理由に直�鼎鵬汎弔鮠�った事で、直英は兄の補佐としての人生を考えたのかも知れません。
しかし、たった60余日で直�鼎�亡くなってしまい、藩主の座は再び直定へと戻ったのでした。
このままなら、今度は直英に藩主の話が来るかも知れない･･･
そう考えていた直英の予想に反して、早期隠居を望んでいた直定が後継ぎに指名したのは宇和島藩主･伊達村候の弟・伊織だったのです。
この報せを聞いた直英は怒ったのですが側近に宥められました。
結局、直定の望みは幕府に却下され直英が世継ぎとなったのです。
25歳の時でした。
世継ぎ決定後、すぐに藩主の座を譲られて十代藩主に就任した直英の目標は直定を超える事だったのかも知れません。
宝暦10(1760)年、将軍の名代で天皇に拝謁した事を無上の喜びと考えて名前を“直幸”に変えますが、その読み方は“なおひで”のままにしました。
藩主就任後は新田開発と領民への慈悲を心がけ、その文書でよく使われた言葉は「仁燐(思いやりの気持ち)」だったそうです。
この頃、幕府は田沼意次が台頭する田沼時代でした。
田沼意次は、十代将軍・徳川家治に重用された人物で、その権力は大きかったのですが、有力大名を門閥に組み込んでいたのです。
井伊家でも、直継系の与板井伊家当主・直朗の正室は意次の次女でしたし、直朗の娘を直幸の養女に迎え、直幸の息子・直廣は直朗の養子になっていたのです。
また、直幸の正室・伊予も与板から迎えられていました。
つまり、直幸は間接的に田沼意次の門閥に入っていたのです。
そして、直朗は意次の力で西ノ丸若年寄に就任していました。
安永8(1779)年、そんな意次が次の将軍として期待していた家治の嫡男・家基が18歳で急死します。
天明4(1784)年3月24日、田沼意次の嫡男・意知(若年寄)が江戸城内で佐野善左衛門に刃傷され2日後に没
意次と意知の二人三脚で進められていた幕政が多忙となり11月に直幸を大老としたのです。
意次は、開国を目指した人物でしたのでその政治のためにも大老の権力を欲したのかも知れませんね。
この為、後世の史家・小説家の殆どは直幸を「江戸期で唯一大老に相応しくない人物」と評価されてます。
田沼時代と言えばその終焉は天明の大飢饉と浅間山の噴火ですね、東北地方では10万人以上が亡くなったとも言われ、フランス革命の遠因にもなったこの災害は国内でも多くの餓死者を出しましたが、彦根藩では一人の餓死者を出す事も無かったのです。
天明6年8月20日、徳川家治が亡くなりますがその死は隠されて田沼意次は失脚します。
2年後、意次死去、同じ月には直幸の世子・直富が25歳で急死。
松平定信が幕政の中心になった寛政元年
2月8日、田沼時代に老中首座であり続けた松平康福が死去
同月20日、直幸が亡くなるのです59歳でした。
定信の後ろには、十一代将軍・家斉の父・一橋治済の姿が見え隠れします。
この時の遺恨が、直幸の孫・直弼が将軍継嗣問題に関わった時に多少の影響を与えたとも考えられますね。
また開国の精神も意次―直幸のラインから直弼に引き継がれていったのです。
ちなみに直幸は、自分が育った尾末町屋敷を始めとする五つの控屋敷に住む藩主一門の教育制度を強化します。
直弼の教育もこの直幸の制度の賜物でした。
そして、直幸が育った尾末町屋敷こそが、後の埋木舎なのです。
井伊直惟の三男
母は側室・堀部氏
父で七代藩主である直惟が藩主の座を弟・直定に譲った為に、その後の井伊家の当主は直定の子孫に引き継がれる筈でした。
実際、直定の子・直賢が藩主の有力候補になっていたのです。
このため、直幸は控屋敷・尾末町屋敷に住むようになったのです。
この時に直幸は“直英”という字を使っていました。
直定が病弱を理由に直�鼎鵬汎弔鮠�った事で、直英は兄の補佐としての人生を考えたのかも知れません。
しかし、たった60余日で直�鼎�亡くなってしまい、藩主の座は再び直定へと戻ったのでした。
このままなら、今度は直英に藩主の話が来るかも知れない･･･
そう考えていた直英の予想に反して、早期隠居を望んでいた直定が後継ぎに指名したのは宇和島藩主･伊達村候の弟・伊織だったのです。
この報せを聞いた直英は怒ったのですが側近に宥められました。
結局、直定の望みは幕府に却下され直英が世継ぎとなったのです。
25歳の時でした。
世継ぎ決定後、すぐに藩主の座を譲られて十代藩主に就任した直英の目標は直定を超える事だったのかも知れません。
宝暦10(1760)年、将軍の名代で天皇に拝謁した事を無上の喜びと考えて名前を“直幸”に変えますが、その読み方は“なおひで”のままにしました。
藩主就任後は新田開発と領民への慈悲を心がけ、その文書でよく使われた言葉は「仁燐(思いやりの気持ち)」だったそうです。
この頃、幕府は田沼意次が台頭する田沼時代でした。
田沼意次は、十代将軍・徳川家治に重用された人物で、その権力は大きかったのですが、有力大名を門閥に組み込んでいたのです。
井伊家でも、直継系の与板井伊家当主・直朗の正室は意次の次女でしたし、直朗の娘を直幸の養女に迎え、直幸の息子・直廣は直朗の養子になっていたのです。
また、直幸の正室・伊予も与板から迎えられていました。
つまり、直幸は間接的に田沼意次の門閥に入っていたのです。
そして、直朗は意次の力で西ノ丸若年寄に就任していました。
安永8(1779)年、そんな意次が次の将軍として期待していた家治の嫡男・家基が18歳で急死します。
天明4(1784)年3月24日、田沼意次の嫡男・意知(若年寄)が江戸城内で佐野善左衛門に刃傷され2日後に没
意次と意知の二人三脚で進められていた幕政が多忙となり11月に直幸を大老としたのです。
意次は、開国を目指した人物でしたのでその政治のためにも大老の権力を欲したのかも知れませんね。
この為、後世の史家・小説家の殆どは直幸を「江戸期で唯一大老に相応しくない人物」と評価されてます。
田沼時代と言えばその終焉は天明の大飢饉と浅間山の噴火ですね、東北地方では10万人以上が亡くなったとも言われ、フランス革命の遠因にもなったこの災害は国内でも多くの餓死者を出しましたが、彦根藩では一人の餓死者を出す事も無かったのです。
天明6年8月20日、徳川家治が亡くなりますがその死は隠されて田沼意次は失脚します。
2年後、意次死去、同じ月には直幸の世子・直富が25歳で急死。
松平定信が幕政の中心になった寛政元年
2月8日、田沼時代に老中首座であり続けた松平康福が死去
同月20日、直幸が亡くなるのです59歳でした。
定信の後ろには、十一代将軍・家斉の父・一橋治済の姿が見え隠れします。
この時の遺恨が、直幸の孫・直弼が将軍継嗣問題に関わった時に多少の影響を与えたとも考えられますね。
また開国の精神も意次―直幸のラインから直弼に引き継がれていったのです。
ちなみに直幸は、自分が育った尾末町屋敷を始めとする五つの控屋敷に住む藩主一門の教育制度を強化します。
直弼の教育もこの直幸の制度の賜物でした。
そして、直幸が育った尾末町屋敷こそが、後の埋木舎なのです。
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コメント(3)
“井伊家歴代藩主の謎の死について”
これまでの井伊家藩主の話を読むと、凄く不思議な事があります。
五代藩主・直通、22歳で死去
六代藩主・直恒、在任約50日19歳で死去
七代藩主・直惟、武芸に優れた体躯のいい藩主が37歳で死去
八代藩主・直定、歴代藩主の中で一番体格がいいのに病弱を主張
九代藩主・直�邸△修譴泙之鮃�だった人物が藩主就任約60日で死去28歳
十代藩主・直幸、松平定信の都合良く死去
他にも、直賢・直富(次に書きます)など藩主の後継ぎと目された人物が若死にしています。
でも、与板井伊家に養子に行った直矩は49歳まで生きています。
これは全て自然死でしょうか？
僕は、その殆どが毒殺(直通・直惟・直�邸δ捷�・直富は確実にでしょうね)だと考えています。
元禄年間、五代将軍・綱吉の後継ぎを巡る争いが暗に行われていました、この中で密かに殺される将軍候補(紀州の夫婦など)も居ます。
そして、こう言ったことに一番敏感なのが徳川吉宗でした。
彼が紀州藩主になるまでと将軍になるまでに都合良く亡くなった人物は数知れず･･･
その殆どは吉宗が裏で動いたと言われていますが、それは徳川の人間がけだったのでしょうか？
幕府に大きな権力を持つ人物や、その可能性がある人物も含まれていた筈です。
その筆頭が井伊家でした。
毒殺は、毒見役が居るので不可能と思われがちですが、『武士の一分』の映画でも分るように毒見役は何人も居ますし、即効性や味がおかしい毒で無い限りは何の役にも立ちません。
微量で含まれる毒についてはスルーされてしまうのです。
つまり、急いで殺す必要がない人なら時間をかけて毒を盛れるので、体調不良を感じたり、自分が病弱だと思い込む訳ですね･･･
吉宗は将軍就任後も井伊家に警戒しましたので大老にも任命しませんでした(九代将軍・家重は言語障害がある人物だったので、本来ならこういう時に大老を任命する筈)。
実直な直定は吉宗の好感を得ていた可能性もありますが、決して油断をしていなかった筈です。
こんな吉宗の血を一番引き継いだのが一橋家で、この家も自分たちの野望のために他の御三卿の人物を将軍になれない様に操作していました。
松平定信もそんな犠牲者だったのですが、それを全て田沼意次の罪に置き換えたところが一橋治済の腹黒さを証明しています。
こうして、吉宗と同じ手法で一橋治済は直幸と直富を殺害したのでしょう(松平康福も･･･)、これら三人いつてはもっと安易に強い毒を盛った可能性も考えられます。
何せ、十代将軍・家治も殺せる人なんですから･･･
ちなみに、こう言った毒殺説の時に「誰が毒を盛ったのか？」と言う話が議論の中心になる時がありますが、藩や江戸城というのは養子縁組や婚姻・新規採用などで人の出入りが激しく、今思っているほどには人の管理ができていませんでした。
ですから、膳に細工するのも忍び込むのも私たちが思う以上に簡単だったんですよ。
これまでの井伊家藩主の話を読むと、凄く不思議な事があります。
五代藩主・直通、22歳で死去
六代藩主・直恒、在任約50日19歳で死去
七代藩主・直惟、武芸に優れた体躯のいい藩主が37歳で死去
八代藩主・直定、歴代藩主の中で一番体格がいいのに病弱を主張
九代藩主・直�邸△修譴泙之鮃�だった人物が藩主就任約60日で死去28歳
十代藩主・直幸、松平定信の都合良く死去
他にも、直賢・直富(次に書きます)など藩主の後継ぎと目された人物が若死にしています。
でも、与板井伊家に養子に行った直矩は49歳まで生きています。
これは全て自然死でしょうか？
僕は、その殆どが毒殺(直通・直惟・直�邸δ捷�・直富は確実にでしょうね)だと考えています。
元禄年間、五代将軍・綱吉の後継ぎを巡る争いが暗に行われていました、この中で密かに殺される将軍候補(紀州の夫婦など)も居ます。
そして、こう言ったことに一番敏感なのが徳川吉宗でした。
彼が紀州藩主になるまでと将軍になるまでに都合良く亡くなった人物は数知れず･･･
その殆どは吉宗が裏で動いたと言われていますが、それは徳川の人間がけだったのでしょうか？
幕府に大きな権力を持つ人物や、その可能性がある人物も含まれていた筈です。
その筆頭が井伊家でした。
毒殺は、毒見役が居るので不可能と思われがちですが、『武士の一分』の映画でも分るように毒見役は何人も居ますし、即効性や味がおかしい毒で無い限りは何の役にも立ちません。
微量で含まれる毒についてはスルーされてしまうのです。
つまり、急いで殺す必要がない人なら時間をかけて毒を盛れるので、体調不良を感じたり、自分が病弱だと思い込む訳ですね･･･
吉宗は将軍就任後も井伊家に警戒しましたので大老にも任命しませんでした(九代将軍・家重は言語障害がある人物だったので、本来ならこういう時に大老を任命する筈)。
実直な直定は吉宗の好感を得ていた可能性もありますが、決して油断をしていなかった筈です。
こんな吉宗の血を一番引き継いだのが一橋家で、この家も自分たちの野望のために他の御三卿の人物を将軍になれない様に操作していました。
松平定信もそんな犠牲者だったのですが、それを全て田沼意次の罪に置き換えたところが一橋治済の腹黒さを証明しています。
こうして、吉宗と同じ手法で一橋治済は直幸と直富を殺害したのでしょう(松平康福も･･･)、これら三人いつてはもっと安易に強い毒を盛った可能性も考えられます。
何せ、十代将軍・家治も殺せる人なんですから･･･
ちなみに、こう言った毒殺説の時に「誰が毒を盛ったのか？」と言う話が議論の中心になる時がありますが、藩や江戸城というのは養子縁組や婚姻・新規採用などで人の出入りが激しく、今思っているほどには人の管理ができていませんでした。
ですから、膳に細工するのも忍び込むのも私たちが思う以上に簡単だったんですよ。
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