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風力発電機の丘コミュの風車が切り開いた「新しい論争」(エネルギーデモクラシー)

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風車が切り開いた「新しい論争」(エネルギーデモクラシー)

●「33/204」

 日本でも風力発電はもはや珍しいものではなくなってきた。この春には累積で60万キロワットを超える見通しとされており、2年後には100万キロワットの大台も伺う勢いである。電力の5%を賄うドイツの1300万キロワットにはとうてい及ばないものの、合計の設備容量で見ると国際的にも10位以内に位置する「トップグループ」に入ってきた。昨春に話題を呼んだ東京湾の「東京風ぐるま」をはじめとして、メディアで好意的に紹介される機会も多く、とくに北海道や東北、九州などでは、車窓からふと目にすることも少なくない。

 ところが、日本の風力発電業界には陰うつな空気が漂っている。多くの計画が、実現の見通しが立たずに「立ち枯れ」状態になっており、ようやく成長し始めたばかりの日本の風力発電が、なんと「存亡の危機」にあるからだ。

 2003年度に日本の電力会社が募集した風力発電の「枠」は、合計で33万キロワットであった。日本の現状から見れば大きい数字だが、ドイツが2002年に設置した風力発電の規模の10分の1にすぎない。それ以上に驚くべき事実は、この33万キロワットという枠に対して、応募のあった風力発電を合計すると、なんと204万キロワットにも達するのである。地球温暖化対策が待ったなしであることや日本の著しく低いエネルギー自給率、そして雇用や地域の発展など自然エネルギーがもたらすさまざまな経済的・社会的な恩恵を考えるとき、事業として成立が見込める自然エネルギーは、確実に実現できるだけでなく、公的負担が小さくてすむ費用効率的な施策として最優先すべきであることは論を待たない。それにもかかわらず、6倍を超える厳しい競争で風力発電を絞り込むという愚を犯しているのである。しかも、北海道電力(今年10万キロワットを募集)や東北電力(今年10万キロワットを募集)などいくつかの「大口」の電力会社が、来年度には募集を取りやめるか「募集枠」を縮小するために、「設備容量」という数字だけ積み上がる影で、風力発電業界はますます危機感を募らせ、地域づくりや環境保全活動の軸として風車を期待していた地方自治体や市民は途方に暮れているのである。

 現在の無惨な状況は、何よりも第1に、昨年4月に施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」、通称「新エネRPS法」が原因である。そもそも、はるかに堅実な普及制度を選択することができたにもかかわらず、政府(=経済産業省)が「RPS」という制度を選択したことが失敗の始まりとなった。RPSとは、1990年代後半から欧米を中心に考え方が広がってきた自然エネルギー促進制度の一つで、「Renewable Portfolio Standard」(再生可能エネルギー割当基準)の略称である。電力会社や消費者に対して、目標年次までに電力販売量や電力消費量に占める自然エネルギーの比率を高めるよう目標値を義務づける制度で、その過不足をクレジットのかたちで販売することで、自然エネルギーの設備の有無にかかわらず、すべての電力会社が義務を達成できる仕組みである。しかも、RPSクレジットの取引市場をとおして、自然エネルギーのコストが削減できるという一石二鳥の効果が、当初のRPSのウリであった。そのため一時期は、官僚や経済学者に一種のユーフォリアのような期待を生み出したのだが、後述するように、先行する英国で制度の欠陥のために混乱が生じるなど、現実にはさまざまな制度設計上の困難に直面している上に、制度そのものの持つ国家管理的な性格もあって、欧州でも日本でも徐々に懐疑的な見方が広がってきている。

 制度選択の失敗に加えて、日本(の経済産業省)は制度設計でも致命的なミスを犯している。官僚特有のたてわり性向のために、電力自由化政策や地球温暖化政策との調和を試みた形跡すらない。不透明極まりないプロセスのために、電力会社による水面下での政治圧力を受けて、2010年までにわずか1%増という「小さすぎる目標値」に抑えられたばかりか、その「小さすぎる目標値」すら5年先まで先送りするという姑息な策が弄されている。同じ期間に、ほぼゼロから10%へと拡大を目指すことを政治的に決めたドイツや英国と比較するととても「目標値」とはいえず、むしろ「抑制値」と呼ぶべきであろうし、事実、そのように機能している。

 こうして、「市場を知らない官僚」と「経営を知らない経済学者」が合作した「日本版RPS」の市場は、施行から1年が経過しようとしている現在に至るまで、まったく機能していない。これほど見事に失敗した政策も珍しいのではないか。この「33/204」という数字こそが、日本の自然エネルギー政策の抱える矛盾を象徴している

●欧州連合の「自然エネルギー3点セット」

 さて、ここで欧州連合の自然エネルギー政策の骨格を紹介しておこう。
 欧州連合が自然エネルギーの普及を目指す理由として、「4つの効果」が明快にあげられている。その第1は、いうまでもなく地球温暖化防止や地域の大気汚染防止などの環境保全効果である。1997年にブルントラント・ノルウェー首相(当時)がとりまとめた「環境と開発に関する世界委員会」(ブルントラント委員会)が提示した「持続可能な発展」もしくは「持続可能な社会」という概念に関して、欧州では、知識人レベルで基礎的な理解がほぼ共有されていると考えて良いだろう。これをエネルギー政策に適用した場合、達成するまでの時間的なズレや辿る道のりの違いがあったとしても、究極的には自然エネルギーをベースとする社会に転換する以外の選択はない。臆面もなく「二酸化炭素を放出しない原子力も持続可能なエネルギーだ」などという発言ができるのは、原子力ロビーか、特定の意図を持った反環境主義者くらいだろう。

 第2に、自然エネルギーが雇用や新しい産業を生み出す効果が期待されている。スウェーデンでは、一次エネルギーの二割近くを賄っているバイオマスエネルギーによって、三万人の雇用が生まれていると試算されているほか、ドイツでは、すでに13万人の雇用が自然エネルギーによって誕生したと報告されている。世界全体の風力発電機市場のほとんどは、ドイツやデンマーク、スペインなど欧州メーカーが占めており、北欧のバイオマスエネルギー利用の技術やノウハウは、大型ボイラーから小型のペレットストーブ、そしてバイオマス資源供給のノウハウまで、幅広く国際的に活用されている。

 第3に、自然エネルギーの開発をとおして、過疎地や遠隔地、島嶼部などの地域の発展や自立が期待されるほか、欧州が進めている「サスティナブル・シティ」(持続可能なまちづくり)のカギとなりうる。欧州連合では、域内の経済格差を縮めていくための複数年次にわたる構造改革プログラムを進めているのだが、もともと地域社会の自己決定を尊重する補完性原理を立憲原理としていることから、地域主導の自然エネルギー開発がそれぞれの地域の経済的・社会的・政治的な自立性を高めていく上で重要な役割を果たすことが期待されている。

 そして第4の効果は、「エネルギーセキュリティ」である。前回で述べたように、1990年代半ばまでに、北欧そしてドイツで自然エネルギー政策の成功例が生まれた。電力分野ではデンマークやドイツで風力発電が「新しい政策」によって著しく成長し、実質的に電力供給の一翼を担うようになってきた。また、スウェーデンやフィンランドでは環境税を導入したことによって熱利用の分野でのバイオマスエネルギーが著しく成長し、実質的に一次エネルギーの一翼を担うようになってきた。こうして自然エネルギーに量的に実質的な貢献を期待できるようになったことで、エネルギーセキュリティの効果が政治的に期待されるようになったのである。

 欧州連合は、これら「4つの効果」を具体化させるかたちで、自然エネルギー促進政策を拡大・深化させてきており、現在のところ、 (1)1997年11月に発表された「欧州自然エネルギー白書(COM(97)599)」(以下、「白書」)、(2)2001年9月に施行された「欧州自然エネルギー電力指令(2001/77/EC)」(以下、「RES指令」)、そして(3)2003年5月に施行された「欧州バイオ燃料指令(2003/30/EC)」(以下、「バイオ指令」)の3つが欧州連合の中心的な政策、いわば「自然エネルギー3点セット」となっている。なお、現在、欧州委員会で草案が提示されている「コジェネレーション指令」も自然エネルギー普及に大きな役割を果たす政策の柱一つであることを付け加えておこう。
 京都で開催された「地球温暖化防止京都会議」(COP3)のちょうど一週間前の1997年11月26日に公表された白書は、欧州域内の自然エネルギー供給を、1997年の6%から2010年に12%へと倍増させる方向を打ち出したものである。記憶されている人も多いと思うが、このとき欧州連合は、1990年比で15%削減という野心的な目標を掲げて京都に乗り込んできた。最終的に京都議定書では、欧州は8%削減へと目標を引き下げたものの、米国7%削減、日本も6%削減、そして先進国全体でも5.2%削減という画期的な合意が行われたように、絶えず交渉をリードしてきた欧州連合の強気の姿勢の根拠には、この白書があったのである。

 白書は、強制力や予算執行をともなうものではないが、欧州連合の今後の姿勢を内外に示す「エネルギー政策基本法」のような位置づけであるほか、「離陸のためのキャンペーン」(以下、「CTO」)と呼ばれるユニークな計画も含んでいる。白書の目指す自然エネルギー倍増に向けて、最初の5カ年で勢いをつけるためのパイロット事業で、「ウインドファーム1000万キロワット」「太陽光発電100万戸」「バイオマスボイラー1000万キロワット」などの自然エネルギー源ごとのプログラムに混じって、「100の自然エネルギー100%コミュニティ」という社会的なプログラムもある。これについては、いずれ欧州のサスティナブル・シティの取り組みの中で紹介する予定である。

●FIT対RPS

 その後、この白書を実現するための政策措置として、欧州連合における条例に相当するRES指令の検討が欧州委員会で始まった。RES指令の目的は、白書の掲げる「自然エネルギー倍増」の目標を電力分野で各国に割り当てることと、これを実現するための「新しい政策措置」を答申することにあった。1990年代に入って、ドイツやデンマーク、スペインが風力発電の著しい普及拡大に成功した経験を踏まえれば、電力分野における自然エネルギー、とりわけ風力発電は、「新しい政策措置」を導入すれば短期間に著しく普及拡大することが確実視されていたからである。

 最終的に発効されたRES指令の内容は、1997年時点で12%にすぎない自然エネルギー電力を2010年までに22%へとほぼ倍増させることを目指して、ドイツや英国、フランスといった大国に対してもそれぞれ軒並み10ポイント前後の増分を割り当てた野心的なものである。しかし、1998年ころから始められたRES指令の検討過程では、各国の目標値を義務にするかどうか、そのための「新しい政策措置」の選択をめぐって、激しい政治論争が行われることになった。

 当初、欧州委員会の内部では、前述したRPSだけを唯一のオプションとして検討を進めていた。ちょうど、研究者や官僚の間でRPSが「流行り」はじめたころで、デンマークでもRPSをベースにした新しい法案が提案されていた。「ユーロビューロクラット」(欧州官僚)と揶揄される欧州委員会スタッフにとっては、RES指令で答申するオプションとして、並行して進みつつあった電力自由化市場と整合する政策措置はRPS以外にはないと思いこんでいた。もう一方の論点であった「各国の目標値」については、官僚らしく、義務ではなく参照値という立場であった。つまり欧州委員会は「参照値×RPS」というスタンスをとり、官僚や経済学者の多くはこれを支持していた。

 これに対して、欧州議会は、「各国の目標値」については義務、政策措置に関しては「FIT」 (Feed in Tariff, 固定価格制度)を強く支持する立場を取った。FITとは、自然エネルギーからの電力の買い取りを電力会社(もしくは系統管理者)に義務づけ、一定の価格での買い取りを保証するという仕組みである。FITは、ドイツやデンマーク、スペインが風力発電の普及で成功した政策措置であり、とりわけドイツで「政治」(議会)が主導して導入し、政治論争の的になっていた。基本的にFITを嫌っていたドイツの電力会社は、ドイツのFITが違法な補助金や不公正な競争環境に該当するとして、欧州委員会の公正競争総局に提訴していた(その後却下された)。また、ユーロビューロクラットが主導する欧州委員会は、「イデオロギー」から価格固定を嫌って、FITをオプションから排除しようとしていた。これに対して欧州議会は、各国に目標値を義務づけ、政策措置としてはFITを支持するという「義務×FIT」というスタンスをとり、これをグリーンピースやWWFといった環境NGOや風力事業者など自然エネルギー事業者などが支持していた。

 こうして「政治論争」に巻き込まれたRES指令は、新たに「運輸エネルギー総局」(DG-TRAN)が誕生し、総局長に現実主義者のデパラシオ氏が就任することでようやく合意に達することができ、2001年9月に正式に発効した。最終のRES指令では、各国の自然エネルギー導入目標値は「参照値」とし、政策措置の選択は各国に委ねることとし、2005年にあらためてレビューすることを定めたのである。

 じつは日本でも、国会議員とNGOがFITを支持して議員立法を目指したのに対して、官僚と経済学者がRPSを支持し、電力会社や自民党の守旧派議員はFITに反対する論陣を張ったのだが、政治論争が欧州と日本でほとんど同じ構図となったことは興味深い。また、これまでにRPSを導入したのは、英国をはじめして、米国(現在13州)、オーストラリアなどアングロサクソンの国々が代表的であるのに対して、FITはドイツ、スペインを筆頭にフランスが追随しているように、欧州大陸で支配的である。これは、偶然ではなく、FITとRPSというそれぞれの政策措置が持つ「政治的な性格」を反映しているようだ。

 FITとRPSとの制度的な比較を行っている「政策研究」を見ると、費用効率性や事業リスクといった経済的な側面から分析していることが多いのだが、それは「本質」を見逃した分析にすぎない。両者の「政治的な性格」を分析すれば、割当量を官僚が計画的に義務づけるRPSは、トップダウンによる管理主義的な指向と市場(原理)主義的な要素が強いのに対して、FITは自然エネルギーの安定的な普及と地域や住民参加を尊重する政治価値が強調されている。一見、専門的・合理的に見える政策措置をめぐる論争も、じつは今日的な「イデオロギー論争」という側面こそが本質なのである。

 ところで、官僚と経済学者の熱狂をもって迎えられたRPSだが、その後の進展ははかばかしくない。1999年という早い時期にRPSを法案化したデンマークでは、議会の反対などで法案の施行に手間取るうちに、2001年の総選挙で、反移民を標榜した保守・右翼系のラスムッセン政権が誕生した。同政権は、反環境主義のイデオローグとして「悪名」高いビヨン・ロンボルグを助言者としつつ、自然エネルギーへの補助金や政策をねらい撃ちにして予算や人員の削減を進めたために、RPSなどの制度の議論どころではなくなり、今日に至るまで、不透明で曖昧な移行措置が続いている。

 さまざまなRPS制度の中で、もっとも慎重にデザインされ、日本も「手本」にした英国の自然エネルギー義務づけ制度(Renewable Obligation, RO)は、2002年4月に導入され、取引されるクレジット(ROC)も、皮肉なことにドイツの買い取り価格よりも高値で取引されてきた(ドイツが20年平均で約8.5円/キロワット時であるのに対して、英国のROC価格が9.2円/キロワット時+電気料金)。しかしながら、現在までに約65万キロワット(2003年末)と必ずしも普及の追い風にはつながっておらず、「2010年末までに10.4%」という野心的なブレア政権の目標も達成が絶望視されている。これには、RO制度だけでは解決できない英国が抱える問題(地域レベルの厳しい環境影響評価制度と地域レベルでの反対運動、脆弱な系統設備、国防レーダーとの干渉問題など)が残されたままという事情がある。その上に、昨年9月に大手の電力会社TXUが倒産して、ROの義務が履行できないという事態が発生し、ROCの取引が停止し、ROC価格が暴落することになった。これによって、英国の唯一の「出口」と見られていた洋上風力発電に対して、投資家の見る目が一段と厳しくなっている。

 その他にも、日本とほぼ同時期にRPS制度を施行したスウェーデンでは、自然エネルギーの設備を拡大しないまま、消費者の負担だけが増えたという意味で「取引可能な税金」と揶揄されている。2001年にRPSを導入していたオーストリアがドイツ型の固定価格制(FIT)に切り替えたり、自主的なRPS制度をリードしていたオランダも今年からFITに切り替えるなど、RPS制度は総崩れ状態にあるといってもよい。欧州でも、「市場を知らない官僚」と「経営を知らない経済学者」は失敗の道を歩んでいるのである。

 このほかに、風力発電をめぐる今日的な課題として、このところメディアを賑わせている風力発電と国立公園の関係、広くいえば景観や自然環境保全との問題や送電線(系統)の利用をめぐる問題もあるのだが、これらはいつか機会があれば取り上げたいと思う。

●あらためて日本

 さて、翻ってみて、日本はどうか。
 エネルギー政策や環境政策は、ますます複雑かつ相互作用のある問題として構造的に変化しつつあるため、統合的なアプローチで検討し対応することが求められているのだが、まさにこの点において、冒頭に紹介したとおり、日本の伝統的なエネルギー政策の制約や限界が露呈してきている。すなわち、組織・制度は硬直したままで、指摘されて久しい「縦割り」の弊害が一向に改善しておらず、それどころかむしろ弊害が拡大している。地球温暖化政策を巡る所管の又裂き状態が最も顕著な例だろうが、資源エネルギー庁の中ですら、電力自由化政策のような横断的な政策でも新エネルギー・省エネルギーなど他の政策との統合性は、まったく見られない。いわば、氷山に激突しつつあるタイタニック号の船上で、椅子の並べ方を争っているような状況なのである。

 これに関連して、官僚主導の政策決定プロセスは、公共政策の観点から見て、本来の民主的な手続きや市民参加を欠いているという問題を孕んでいるだけでなく、新エネRPS法での目標値の歪みなどでまさに立証されたとおり、その密室的な手続きがゆえに、古典的な政治介入によって政策が「歪められる」懸念がある。経済産業省が、議員立法で成立の可能性の高かった「自然エネルギー促進法」の成立を遮り、それに代えて新エネRPS法を成立させた動機は、自然エネルギーの普及という「公共性」を真摯に追求したというよりも、官僚組織としての「私的利益」の追求に他ならない。その結果として、自然エネルギーの促進そのものの普及が滞り、混乱に陥っている現状を考えれば、「公共性」に反していることは明らかだろう。

 加えて、「知識生産の質」の問題を指摘しておきたい。新たな公共政策の導入に際しては、本来であれば、公共性の高い複数の目的をベストパフォーマンスで達成しうる、慎重を期した制度選択と設計が求められる。しかしながら、そのような配慮をした痕跡はなく、自己利益と業界調整を閉鎖的に行う官僚の体質や手続きでは、何よりも公共政策に求められる「知識生産の質」において著しく劣っている。政策の統合性や基本的な方向性を欠いていることに加えて、知識レベルでは、政治的な現実や政策の効果を検証した政策研究や相互交流が乏しいために、「市場を知らない官僚」や「経営を知らない経済学者」と揶揄したように、日本では、およそ現実離れした「研究」(もしくは「専門家」)すら見ることができる。そうした「専門家」は都合良く審議会や内閣法制局などの既存システムに利用されるため、政策が本来目指すべき目的の達成レベルよりもはるかに低下し、しかも最終的には自民党などを介した業界の政治的な介入によって「政策失敗」のリスクをいっそう高めているのである。

 新エネRPS法の「失敗」は「知識生産の質」の低さの証であり、その「知識生産の質」こそが、今日の日本が抱える危機の本質ではないか。

◇飯田哲也(いいだ てつなり:環境エネルギー政策研究所所長)

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