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集え!ガチな映画感想家達よ!コミュの麦の穂をゆらす風

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麦の穂をゆらす風  (2006)

英題; THE WIND THAT SHAKES THE BARLEY
126分
製作国 イギリス/アイルランド/ドイツ/イタリア/スペイン

監督: ケン・ローチ

出演:
キリアン・マーフィ        デミアン
ポードリック・ディレーニー    テディ
リーアム・カニンガム       ダン
オーラ・フィッツジェラルド    シネード
メアリー・オリオーダン      ペギー
メアリー・マーフィ
ローレンス・バリー
ダミアン・カーニー
マイルス・ホーガン
マーティン・ルーシー
ジェラルド・カーニー
ロジャー・アラム
ウィリアム・ルアン

 社会派ケン・ローチ監督が、激動の歴史に翻弄される2人の兄弟を軸に、独立戦争から内戦へといたる1920年代のアイルランド近代史を描いた悲劇の物語。 2006年のカンヌ国際映画祭では最高賞のパルムドールに輝いた。主演は「バットマン ビギンズ」「プルートで朝食を」のキリアン・マーフィ。
  1920年。長きにわたりイギリスの支配を受けてきたアイルランドでは、疲弊した人々の間に独立の気運が高まっていた。そんな中、南部の町コークでは、医師を志していた青年デミアンが、ついにその道を捨て、兄テディと共に武器を取り、アイルランド独立を目指す戦いに身を投じる決心をする。そして、イギリス軍との激しい戦いの末に、イギリスとアイルランド両国の間で講和条約が締結された。しかし、完全な独立からは程遠い内容に、条約への評価を巡ってアイルランド人同士の間に賛成派と反対派の対立が生まれ、ついには内戦へと発展してしまう。そして、デミアンも兄テディと敵味方に分かれて戦うことになるのだった…。

上記が映画データーベースの記述なのだが、政治的、特に歴史的に長く続く抗争が世界的にしられている地域についての映画を製作するときにはかなりの考慮がいる。 映画制作の目的は言わずもがな、監督、製作者が観客に見せたいものを提示するということであるのだが、そこにはさまざまな思惑が働く。  

1970年代に日本の写真家が北アイルランド問題のことを含めて写真を提示しその状況を新書にしたものに接し、そこで初めて近隣国から搾取され続けてきた人々が自国の独立を求めて侵入者(この場合英国)に対して武力闘争をつづけるそのポイントがベルファスト、ロンドンデリーでありダブリンであり、そこに宗教もからめて説明されていた。 そこでテロリストとレッテルを(英国とアイルランドのプロテスタント側から)張られているIRAの背景も示され、同時にパレスチナ国家建設をもとめるPLOのことにも触れていたのだった。 当時は高校生で周りが二度目の日米安保条約改定時期にさしかかり、自立、独立ということの大切さを考えていた者たちには当然自国の歴史、文化の中で異なものに興味を持たないことはなく、自国が正しいものであってほしいというのは青春をその国で過ごす個人のまっとうな世界観ではあるだろう。

その時に、自分、自国の「正しさ」の中には他人、他国の「正しさ」とは齟齬があるかどうかの考慮があり、もし、そこに齟齬があればそれは何に由来するかということを知った上で判断しなければそれは勝手な主張ということになるわけで、それを敷衍すれば「正しさ」はさまざまな観点から検討されなければならないこととなる。 それに中立の判断を下せるという理想的な、もしくは少々シニカルなもの言いをすれば、「能天気」な考えを持っていたのが60年代後半の高校生の自分だ。

太平洋戦争後15年経ったときに小学生だった頃にはアメリカのテレビがなだれをうって日本に入ってきており、それもアメリカの対日文化政策でもあったのだが、そういう白黒テレビで育ったものだから英雄譚の多い戦争ものや西部劇で育ち日ごろの生活ともかなり違う画像、音楽などに惹かれた。 そこで観たのは正義が勝つ、いつも最後の危ないところで男が来て六連発のリボルバーやマシンガンもしくは肉体的、機械的暴力が最終的解決をもたらし容貌の醜い悪漢は倒れ麗人がその英雄を慰めめでたしめでたし、もしくは英雄はその場を去り次の場所に消える、ということだったのだ。 誠に能天気ではあるがそれが現実との齟齬から生まれる夢であるのは大人には分かるものの子供たちの脳内にはそれが楽天的正義観のイメージとして残るのだ。

法と秩序が守られないところでは「正しく」武力を扱う者にはその優れた武器とその技量の裏打ちにより法と秩序を回復することができるのだ、というアメリカ的理想像が繰り返されるのだが、これは古来地球上で言われてきた言説の繰り返しではあるけれどパックスアメリカーナのプロパガンダとしてみれば現代に至る戦後史の底流を裏打ちする思想であることは間違いない。 

秩序はさておき法の「正しさ」は誰が判断するのか。 それは法を作る権力を持つものであり、現在、その所在は内容を別とすれば大抵は「民」ということになるだろう。 歴史的、生物学的な「王」というのは地上に残り、「元首」、「君主」として現存するものの、おおむねその法的な内容は「民主」としてあるだろう。

本作はカンヌで賞を獲得したのだが、「王」を倒し人民の自由を標榜してきた国フランスの映画祭で、世界の大国でありすぐ目の前の海を越えたところにある英国によって搾取され続け自由を奪われていたアイルランドの完全自由を求めるところにある場にこのような映画を製作することによって英国が主に戦後処理の中で作り上げたシオニストの国イスラエルに抗うパレスチナとアイルランド独立の運動も自然と浮かび上がってくるのも偶然ではないだろう。

本作では「マイクロコスモス」が提示される。 しかしそのマイクロコスモスはそれを膨張させた時には歪みが出る可能性がある。 それはマイクロのもつ小さな差異がスケールがあがると見えなかったもの、計算の誤差、というものが顕然化することでもあるのだろう。 たとえば、イギリス兵達の暴虐無人な振る舞いの強調化がそれに当たるのかもしれない。 あれは英国の不良な軍人で兵の士気を煽る軍曹などで軍隊というものは規律に則って行動するからそんなものではない、というものがいるとする。 日ごろのニュースを見るにつけ古今東西世界中の軍組織には変化はない、との印象を持つ。 上官、司令、国は手を汚さず、「規律をまもらない」ものたちが徐々に「勝手に」他国の堤を切り崩し、相手の責として洪水、浸水を起こさしめその後は仮の堤を相手方深く構築しそれがそのうち仮ではなく定着させてそこに居座る、というのが大概のプロセスだろう。 人の生活を向上させる上での経済活動援助というのは悪くはない。 それがその地域の人々の生活をただ単に豊かにするというのではなく、貧しかった頃にあった例えそれが小さなものであっても小さいがゆえに尊かったその「幸福」感を、こんなはずではなかったと思わせない前提であれば悪くないだろう。 

「真綿で首を絞める」という言葉がある。 死ぬほど首を絞められたことのないものにはその苦しさはわからない。 真綿である。 真綿であってもコンピュータのケーブルであってもその苦しみには変わりがない。 真綿のその柔らかさにはじめは目を細めた結果、首を絞められていることに気づき逆戻りがきかないところで喘ぎ、抵抗し、その抵抗が無駄かどうかの判断をする時間があればそのエネルギーを生存のために使え、というのがメッセージなのだろう。 そこでは最期の吐息、もがいて求める酸素というものが自国の「自由」ということなのだろう。

それでは自分が求めた酸素と自分がこの地上から消え去った後に残った者たちが呼吸する酸素はそこに質の違いがあるのだろうか。 「自分の自由は他人の迷惑」ということもある。 ここでの自由は多分「勝手」ということばに言い換えられるかもしれない。 「勝手」という言葉には含蓄がある。 勝つ手、勝った手、勝った者、勝者、ということなのだろうか。 勝った者のすること、振る舞いなのだろうか。 その振舞い方が政治、経済的に勝った英国がアイルランドに対して何世紀にも亘り施してきた政策に対する二十世紀はじめのアイルランド人が英国の圧制に対して始めた運動の抗争をマイクロコスモスにして示したのがこの映画なのだ。 

嘗てテロリストと呼ばれたIRA,シンフェーンのリーダーたちが今ではアイルランド政府の高官に納まり、15年前、20年前には世界のテロリストと言われていたアラファト議長も世界舞台でパレスチナの基礎を幾分かは築いて今は亡く、アメリカをバックとして国連議決をもたびたび蹂躙するイスラエル政府に対して国際世論も異教、異文化に対する戸惑いと「西」の政治的経済的背景から解決策やには「テロリスト」のラベルの取り扱いには二の足を踏む状況であるようだ。

今から50年、100年経って今言われる中東のテロリストたちがどのような扱いを受けているのか知りえない自分ではあるが興味はある。 スコットランドでパンナム機が爆破され270人もの死者を出したロッカビー事件から20年、首謀者が人道的理由から釈放されリビアでは英雄的な扱いを受けたことに対して憤りの声が西側で起こっている今日、テロ行為の「正しさ」がどこにあるのかないのかを考える縁にはなるだろう。

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